ガスト博士が我が神羅カンパニーに戻ってからもう数年は経つ。
宝条博士が新しい計画のために必要になったので迎えに行くと言って連れてきたのだ。
監視をしていたことは知っていた、伴侶が出来て娘が産まれたのも知っていた。
その後“約束の地”を目指すための新たなプロジェクトにガスト博士を主任に据えたと報告してきたのは少々驚いたが。
一緒に提出してきた計画書を見た時、プロジェクト協力者にガスト博士の妻、ミセス・イファルナの名前があった。
ガスト博士がアイシクルロッジで古代種の研究を続けていた時の助手も務めており、なんと古代種の生き残りだそうだ。
それを聞いたとき私はガスト博士へ再び期待を寄せたのだ。
その答えは神羅カンパニーの利益となってもたらされた。
上がって来た報告内容に書かれている地域を探ると魔晄エネルギーが確かに他に比べ多く溢れており、魔晄炉建設の為の調査費用が削減出来た事で大いに役立った。
この調子でいけば“約束の地”を発見するのも近いと年甲斐もなく胸が高鳴ったのを憶えている。
しかし上手く事は運ばず、ガスト博士主導のプロジェクトも最近は進展が見られない。
そこで私は総責任者の宝条博士を呼び出し説明を求めた。
「宝条博士、古代種のプロジェクトはどうなっているのだ」
「その事についてですが、一旦休止にした方が宜しいかと存じます」
「どういうことだ」
こちらが鋭く睨みつけるもまったく怯む様子もなく眼鏡を上げて説明を続ける宝条博士。
「以前に古代種は“星との対話”が出来ると申し上げた事はご存知かと思います。
ただどうやら星の声を聴くにも
「嘘を吐いているという可能性は」
「それはあり得ませんね。
私も何度かガスト博士と共に実験を行いましたが、娘の方が優れているとデータが出ています。
どうやら
実験と言うと目の前の男は何をするか分からないが、ガスト博士の方はとても慎重で安全に配慮しているらしく、当初は娘を実験する気はなかったが成長するに従い、娘自体が『パパとママのおてつだいがしたい』と言い出したのでそれならばと何度か行っていたようだ。
家族そろって協力的なのは良い事である。
軟禁を解いて市内への居住を許可した甲斐があったな。
「それならば娘を主体にして進めればいいのではないかね」
「単純な理由ですよ、これ以上の実験を行う場合はサンプルが幼すぎて難しいのです。
しばらくは監視のみで良いでしょう」
「……まぁ致し方ない、それは承知しよう。
だが科学部門としての我が社への貢献はどうするのだ」
「ご安心下さい、もうすぐ戦場を一変させる例の実験体達を投入出来そうです」
実験体達、つまり強い兵を創るという奴がいま最も力を入れている計画か、最近人体実験も始めたと聞いている。
「ヒトを使い始めてから早いじゃないか」
「あの子が『自ら戦う意志が無ければ役に立たん』と言っていたのでね。
神羅の兵から強くなりたいと思う者に施してみたところ、精神と肉体が安定したという結果が得られたのです」
さらに宝条博士の説明は続き、精神力が高い者が適性が高いそうだ。
どのような理由であれ戦う意志が有る者ということは精神力も高いという事で、神羅の兵をすべて一度適性検査を行いたいとも提案してきた。
「無論すべてに適性があるとは思っていませんがね、サンプルは多い方がいい」
「わかった、承認しよう。
ところでその強化された兵士はなにか名称があるのか」
「【プロジェクト・S】を参考に考え出した計画。
いずれはあの子が従える兵士達。
【S計画】ソルジャー……」
……一通り報告を終えた宝条博士は部屋を去る。
「ソルジャーか……」
【プロジェクト・S】とはセフィロスのことか。
確かにあの子供はとんでもない奴だ。
作戦に投入すれば任務は絶対に成功させ、部隊損失は僅か……
いや兵員に限って言えばゼロである。
そのセフィロス程の兵士を量産しようというのだから確かに魅力的な計画だな。
奴は最後に『セフィロスを超えるのはありえませんがね』などと言っていたが、それでも既存の兵よりは強くなることは間違いないとも言っていた。
だったら協力しようじゃないか。
早速、私はS計画の為に兵の志願者が増えるよう広報に記事を書かせる指示を出した――
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科学部門では月に一度、各々が携わるプロジェクトの責任者が研究成果を発表する報告会がある。
科学者として、また研究者として他のプロジェクトを知ることは自分の知識の幅を広げる、自分のプロジェクトへの新たなる発見に繋がるため余程の事がないかぎり科学部門に在籍する研究員全てが参加する。
私はその報告会に向けて、とある過去の資料をもう一度確認しようと思い資料室で棚を漁っていた。
「また奴の
目的の資料を探している時にふと口から漏らしてしまう。
いつも最後に発表するのは現科学部門統括でありジェノバプロジェクト総責任者の宝条である。
ガスト博士が居なくなった後、私は宝条との権力争いで、科学部門統括の地位は奴に奪われてしまった。
ジェノバプロジェクトの総責任者はガスト博士が奴を指名して休暇に入ったもんだから異議すら唱える暇も無かった。
科学部門統括の地位もジェノバプロジェクト総責任者となったならば予定調和の様なものだろうが、だからと言って納得は出来ない。
ジェノバプロジェクトには二つの計画、【プロジェクト・G】と【プロジェクト・S】があった。
過程は違うがどちらもジェノバ細胞が胎児にどう影響するかを実験する計画だった。
この二つの計画は当初ガスト博士は反対していたが、十分安全に配慮し胎児は同プロジェクト内の女性研究員3人の子供を本人達の合意の下で提供するという事でやっと許可が下りた。
ただ私と宝条なら許可が無くてもやっていただろうとは思う。
私の担当は【プロジェクト・G】。
まずは私の妻であるジリアンにジェノバ細胞を移植してお腹の中の胎児にどう影響があるかを観察。
それとほぼ同時にジェノバ細胞が定着したジリアンの細胞をもう一人の女性研究員の胎児に移植して同じように観察した。
奴よりも早く成果も出せると喜んでいたのも覚えている。
なんせ宝条の担当する【プロジェクト・S】は
ただコレが逆に奴にとっての幸運となってしまった。
宝条はこちらの成果を見て、あろうことか
私はその時、奴は焦って無茶をしたな馬鹿め、と内心嘲笑っていた。
しかし、経過観察を重ねる内に【プロジェクト・S】は【プロジェクト・G】以上のデータを叩き出してきたのだ。
その内、私のプロジェクトは期待するデータが得られなくなり、代わりに宝条のプロジェクトは期待通りのデータを示す。
しかも、その期待通りとは当初より大幅に上方修正した値での事だ。
【プロジェクト・G】の子供達は赤ん坊の頃に失敗と判断された。
それでも私は成長すれば何か変わるのではないかと期待を寄せたがジリアンが子供を連れて逃亡する。
ジリアン達は捕まり処分はガスト博士の恩情もあって免れたが、ただ【プロジェクト・G】は完全に立場を失い経過観察を残し検証や実験などは不可能となった。
その間にも【プロジェクト・S】の子供、セフィロスはどんどんデータを更新していき、私は嫉妬と後悔に駆られた。
なぜ、最初に安全を取ってしまったのかと、自分も直接ジェノバ細胞を胎児に打ち込めば良かったと。
その後、ジェノバ細胞が古代種でないと疑いが持たれ、それがきっかけとなり【プロジェクト・G】の子供達も見直された。
データでは【プロジェクト・G】の子供達も普通の子供に比べれば非常に高い能力を示している。
だがセフィロスは……宝条の息子は
セフィロスはそのあとも、戦闘に関する実験や検証でさらなる結果を生み出していった。
それも宝条が元々高めに考えていた予想を驚異的に上回る結果だったのだ。
しかし私はまだ【プロジェクト・G】に何か手掛かりがないかと完全に諦めきれないでいる。
資料室の棚に探している資料を見つけ手に取った瞬間に名前を呼ばれた。
「ホランダー博士も何かお探しかな」
私に声を掛けてきたのはかつての科学部門統括兼ジェノバプロジェクト総責任者のガスト博士だ。
「これはガスト博士、何か用ですか」
「私もちょっと気になる事があって資料を探しにね。
そしたら君がいたので声をかけたんだよ」
「そうですか、私も探し物です。
それよりもガスト博士が気になる事に興味ありますな」
「丁度君の持ってる資料だよ」
私と同じ【プロジェクト・G】の資料を探していたらしく、手に持っていた資料に指を指してくるガスト博士。
「そのプロジェクトで生まれた子供二人が神羅に来るそうじゃないか。
一人はジェネシス、そしてもう一人は君の息子アンジール」
「ガスト博士も御存知でしたか」
「元とは言え責任者だ。
改めて確認しておこうと思ってね。
それに彼等の力にもなりたいと思っている。
しかし何故神羅に来ようと思ったのかは知らないのだ」
「それはあのセフィロスに感化されたからですよ。
仲間を見捨てず困難に立ち向かう勇敢な“英雄”にね」
最初は大げさだなと思っていたが、実際にセフィロスと部隊を共にした者達から聞けば、誇張でもなんでもなく絶対に仲間は見捨てない、困難な任務も自ら進んで従事し達成させると現場からも信頼を寄せられている。
それに目を付けた神羅の広報がセフィロスの活躍を記事にして祭り上げたのだ。
当の本人はあまり快く思っていないそうで
『手の届く範囲の事を精一杯やっているだけだ』
とだけ答えたそうだが、逆に奴の人気に拍車をかけ気付けば“英雄”などと大それた称号で呼ばれるようになっていた。
「…そうか、私はあまりその呼び名は好きではない」
ガスト博士は顰めた表情でそう呟いた。
彼はセフィロスが英雄と呼ばれる事に良い感情を抱いていないそうだ。
もしやコレは……
「ガスト博士、先程二人の力になりたいとおっしゃりましたよね。
もし良ければ私の研究を手伝っていただけませんか」
「……どういった内容かね」
訝しむ顔で私の様子を探るガスト博士。
コチラも彼にそっぽを向かれないように言葉を選びつつ目的を説明する。
「私は宝条博士とは違いますよ。
ただ単に子供たちが無事に成長していけるかどうか、
ジェノバ細胞が悪影響を及ぼさないように研究を続けたいと思いましてね」
「そういう事なら、喜んで協力させてもらおうホランダー博士」
そう言って握手を求めた私の手をしっかり握り返してくる。
私は宝条とは違う。
奴は部下としてガスト博士の方から計画に加わるならともかく協力の依頼は絶対しない。
奴はガスト博士に多大なるコンプレックスを感じているからな。
でも私は利用出来るモノはすべて使う主義だ、結果を出すための過程なぞ拘らん。
あのガスト博士が私に協力してくれるなら、宝条を出し抜くことが出来るかもしれん。
仮に結果が出なくとも、宝条の人望の無さをついて奴を敵視する連中と手を組みガスト博士を担ぎ上げる。
そして宝条を今の立場から引きずり落とすという手もある。
地位に関して今のところあまり興味がない。
ただ奴の下というのが堪らなく苦痛だ。
今はガスト博士に対して友好的に振舞って利用し、宝条への復讐を成し遂げてやる。
「それにしても【プロジェクト・S】の資料は殆ど見当たらないな」
「それはニブルヘイムの方にほとんど置いてきていますね。
宝条博士が『ニセモノの資料は必要ない、ホンモノは私が知っている』と言ってね。
まぁ資料自体を破棄したわけじゃないですし、その時は邪魔にならないよう置いてきたんじゃないですかね」
「そうなのか、いずれ改めてそちらも確認しておこう」
奴のセフィロスへの執心はミッドガルにきてから目立つようになった。
ガスト博士が総責任者だった頃よりも二人の距離も近くなったように見える。
宝条はセフィロスから接近してきたと言っているが、私から見ればお前の方からも明らかに近寄っているよ。
私にセフィロスの研究成果を語る時のお前は少なくとも科学者には見えない。
ジェノバプロジェクトの研究は一時期、セフィロス一色だった事もあった。
宝条の事を毛嫌いする癖に
セフィロスを実験体としか見てないと言い張るのに希望はなるべく叶えてやろうとする宝条。
お前達は間違いなく親子だよ、お互いが歪んでいる親と子だ。
その歪な状態、そこに付け入りさせてもらおうか。
「この資料は見終わったらガスト博士に届けます」
「そうか、ありがとう。
では失礼するよ」
ガスト博士と別れた私は、私室に戻りガスト博士にお近付きの印として【バノーラ・ホワイト・ジュース】の1年分を寄贈するための注文書を書き始めた。
エアリスのパパママ呼びはも少し成長したら原作通りにする予定です。
にしてもおっさんしか書いてない。
原作じゃ逃げたエアリスは15年間協力要請はしても無理やり連れて行くまではしなかったので意外とそこらへんは弁えているのかただ執着がないのか……
宝条「ああ、イファルナか。元気にしてるのか」とかね
ジェノバプロジェクトの当時の背景はこの作品での解釈です。
実際は、
ガスト博士はGとSはあまり関与していなかったらしい ←責任者それでいいのか
計画は宝条とホランダーが率先して行った。
行った内容は書いてある通りだがなぜGが母体へ、Sが胎児へ直接になった経緯は不明
ジェネシスの実母は実際は不明
子供が生まれた順はアンジール・ジェネシス→セフィロスでズレはあるが同年代である
CCアルティマニアが参考文献です