セフィロス逆行物語   作:怪紳士

17 / 51
第17話 宝条博士の様子

神羅ビルには研究所と別に病気や怪我の治療を目的とする医療センターが設置されたフロアがある。

担当しているのは医務課であり、組織図では科学部門の管轄という事になっている。

しかし治安維持部門の管轄である総務部調査課【タークス】が統括命令よりも社長を優先とする社長直属のような扱いであるように、この医務課も所属する医師や看護師達を管理している課長が統括に近い役割を担っており独立した部門のような状況である。

課長本人も医術の心得がある医師で、部下達から親しみを込めて「院長」などと呼ばれている。

またガスト博士とは、娘や奥方の体調について非常に世話になっていたそうで、家族共々院長とは親しい間柄となっているそうだ。

院長はプレジデント神羅(社長)の主治医も担当しているためか課長であるにも関わらず権限が強く、科学部門統括である私でもおいそれと勝手に患者を連れ出すことは出来ない。

それどころか、患者がいる病棟に入る時もわざわざ申告しなければならず、面倒である。

 

 

私はここに預けられている実験体(アレ)の様子を伺うためにフロアの受付に声を掛ける。

滅多に来ないが、それでもジェノバプロジェクトに関係することであり観察は必要だ。

 

「901号室の患者に面会したい」

 

「承知しました、901号室の面会は院長の許可が必要なため少々お待ち下さい」

 

この医療センターは70階建の神羅ビルのうち占領フロア数が多く入院患者も多岐にわたる。

3桁のうち最初の数字は階層を表すのではなく、病気、怪我等の専門ごとの分類を目的としており、9は精神関係の数字である。

 

「はい、宝条統括が、はい、面会したいと……」

 

内線で院長に許可を取る受付を見てなぜ統括である私がいちいちこんな事をしなければと少し腹立たしく感じてしまう。

いずれは科学部門で完全に支配できるようにしてやろうと考えていると

 

「お待たせしました、許可は取れましたが他の面会者がいるので少々お待ち……

 あっ、ちょっと宝条統括!」

 

許可さえ貰えればどうでもいい、むしろアレに誰が面会に来ているのか確かめてやると、受付の呼び掛けも無視をして私は病室に向かった。

さて誰だ、アレの親類などはすでにいないはずだ。

いや厳密には居るのだがそれはあり得ない。

そう考えると面会するような人物は恐らく科学部門の関係者だろう。

この私に断りもせずアレに近付くとは場合によってはその面会者はこの神羅から()()()()()()()()()必要がありそうだな。

病室の前まで来た私は、入る前にその不届き者がアレとどんな会話をしているのか少し気になり、その場で耳を澄ませてみる。

 

 

「……がお世話になりました」

 

「そう言ってもらえると私もうれしいです。

 早く良くなって息子さんに会えるよう頑張りましょう」

 

中からはアレの他にもう一人の女の声がする。

 

「私は…あの子に会う資格なんかあるのでしょうか」

 

「有りますよ、母親が息子に会うのに資格なんか必要ありません」

 

私はそれを聞いて、この面会している女はもしや、と扉を開けた。

アレと会話をしていたのはガスト博士の嫁イファルナで、ベッドの近くの椅子に座っている。

扉を開けた私を見て、ベッドから私の方に体を向けた彼女は挨拶をしてきた。

 

「あら、宝条博士、ご無沙汰しております。

 うちの主人もお世話になっています」

 

「これはこれは、イファルナ殿、なぜこんな処にいらっしゃるのですか?」

 

「えぇと、最初は院長さんから年も近いので少し話し相手になってくれないかと頼まれまして。

 ただ、今は私が望んでルクレツィアさんと御会いしています」

 

今はということは既に何回か会っているのか、院長め余計な事をしてくれたな。

だがコレは直談判してそれを元に医務課の主導権を握るのも悪くないかもしれん。

 

「それにしても初めて会ったときは驚きましたよ。

 あの宝条博士にこんな美人な奥様がいるなんて……

 あっ、すみません」

 

「……大丈夫です」

 

「それに私と年が近いのにこんなに若々しくて、同じ一児の母として嫉妬しちゃいますわ。」

 

()()()()()()()()()()、と言いたそうに見るアレを他所に会話が止まらないイファルナ。

次から次へとアレと今までどんな交流をしていたかを語ってくる。

成る程、たまに来るたび、精神が安定してきた傾向があると思っていたが原因はこの女のせいか。

今までの会話から推測すればイファルナはセフィロスの本当の親について既に知っているのだろう。

ガスト博士が教えたのだろうか、しかし神羅にいない期間に口封じする気はなかったから仕方ない。

問題はそれをセフィロスに教えたかどうかだ。

当初はまったく交流が無かったはずだが、ある時を境にセフィロスはガスト博士の家に出向くようになっている。

 

「うふふ、夫婦の時間を邪魔しちゃ悪いわ、私はこれで帰ります。

 また来るわルクレツィアさん。

 宝条博士、失礼しました」

 

「イファルナ殿、セフィロスに両親の事は教えたのですか」

 

病室を出て行こうとするイファルナを呼び止め、抱いている疑問をぶつける。

 

「……ご安心ください、私()()伝える気はまったくありません」

 

「そうですか、貴方の御主人の立場もある。

 それについてはくれぐれも御内密にお願いしますよ」

 

私の返答を聞くと立ち止まり、立腹したような声色でイファルナは異議を唱えてきた。

 

「別に、主人の立場だとかそういう事を気にしているんじゃありません。

 本当の事をセフィロスに伝えるのは父親であるアナタの役目だと思うからです」

 

「それについては「それと!」

 

「言うつもりはありませんでしたが、やっぱり言わせてもらいます。

 もっとルクレツィアさんを大事にしてあげて下さい!」

 

「では」、と私を睨みつけてさっさと病室を出て行くイファルナ。

ガスト博士の嫁は思っていた以上に気の強い女だな。

まぁそれについては後日ガスト博士に詳しく聞き出す。

私は開けっ放しの病室の扉を閉めてベッドの近くに腰かけた。

 

「具合はどうだね」

 

「……セフィロスの事、アナタの口からも聞かせてもらえるかしら」

 

「そんなに聞きたいかね」

 

あの子の事は今までは話すことなどないと突っぱねていたが、なぜか今日は話しても良いと思った。

 

「クックックッ、いいだろう聞かせてやろう」

 

今はガスト博士の嫁が言うように私達なりの夫婦の時間とやらを過ごすとしようか。

 

 

その後、院長への直談判は結局行う事はなかった。

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 

「……以上で報告会を終了する。

 各自持ち場に戻りなさい。

 あぁガスト博士はこちらへ」

 

科学部門内での報告会議を終えたあと、私は会議室を出て行こうとするガスト博士を呼び寄せて、先日の件を問いただした。

 

「先日、奥方に会いましたがセフィロスの件はなんと伝えているのですか」

 

「あぁそのことか、イファルナから聞いているよ。

 妻が失礼してすまなかったね」

 

「いえ、それは気にしておりません。

 それより奥方がセフィロスに伝えないよう極力注意を。

 無論貴方もですよ。

 でないとアナタ方の扱いもまた改めねばなりませんよ」

 

少し脅しかけるように伝えるがガスト博士はあまり気にも留めてない。

 

「それについてなんだがね。

 私も妻と同意見で、君が伝えるべきなんじゃないかと思っている」

 

「ほう、何故ですか」

 

「最初はね、自分の立場なんか関係なく私が伝えなければならないと思っていたんだがね。

 そしてセフィロスの親に成ろうと思っていたよ。

 何度か家に呼んだりして家族の時間を過ごしたりした」

 

「……それで」

 

セフィロスがガスト博士達と家族ゴッコをしているのは把握していたが、止める気はなかった。

ガスト博士が神羅に復帰してもセフィロスは私に従順であったし不必要に機嫌を損ねる必要もないと思ったからだ。

 

「改めて君たちの関係をよく見たらね、セフィロスは()で宝条博士と接しているんだ。

 私に対してはどうも距離を置いている」

 

「そんなことは……」

 

「一度、宝条博士の事を呼び捨てにするのはどうかと注意したら

 『それはガスト博士には関係ありません』と言われてしまったよ」

 

セフィロスが私の事を呼び捨てにすることを改めるさせる気はなかった。

ただ言われてみれば私以外の研究員には何かしら敬称は着けていたかもしれん。

 

「昔、私が言った『気に掛けてやってはどうかね』という言葉。

 あの時の返事は守る気が無いように見えたが、嘘ではなかったんだな。

 神羅に戻って来た時、私が居た頃よりあの子との関係が改善していたようで驚いたよ」

 

「別にそんなつもりはありませんでしたよ。

 ただ向こうから近付いてくるのをわざわざ無下にする必要もないと思ったのです」

 

「それにセフィロスはジェノバは母親ではないという事を知っているではないかね。

 君が教えてくれたと言っていたぞ」

 

教えたと伝えられると語弊がある。

それはセフィロスが私の周りを一時期であるが護衛していた頃だろうか。

きっかけはなんだったか思い出せない。

たまたまジェノバの話になった、そしてセフィロスにキミの親だなんて私が言ったのだろう。

セフィロスはハッキリと私の目を見据えて

 

『ジェノバは俺の本当の母親ではないだろう』

 

『もうその話は聞く気はない』

 

どこで知ったかは頑なに言わなかったが、私はセフィロスにジェノバが母親ではないとは認めた。

しかしその後は本来続くであろう質問、本当の両親については一切聞いてもこない。

そしてセフィロスが本当の両親について知っているかどうか、この私ともあろうものが()()()()()()でいた。

 

「宝条博士、この件は君が伝えるべきなんだ。

 きっともうあの子は気付いているよ。

 君に対しての“宝条”はあの子なりの“親父”のつもりなんだよ」

 

「……下らない」

 

「あくまで私の意見だ、どうするかは君が決めるべきだろう。

 ただ私はこれからも親のつもりでセフィロスを支えていく」

 

ガスト博士は最後に私の肩に手を置くと「大丈夫だ」とだけ言って会議室から出て行ってしまった。

 

私がガスト博士の言っていた言葉を気にしないように努めた。

今の私とセフィロスとの関係を表す、最適な言葉を探し求めた。

私は、古代種の研究においてはホンモノであるガスト博士、貴方に任せますよ。

私は、古代種の研究においてはニセモノだった。

しかしジェノバの研究では私こそがホンモノの科学者となる。

 

 

実験体は……

奴は……

あの子は……

セフィロスは……

 

 

そう、私にとっての“()()()()

 

 

 

 

 

 

 




医務課なんて公式にありませんのでご注意ください。
医療目的の施設はあったんですけどね
あと精神病んでる人の話は否定しちゃだめですよ
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。