神羅カンパニーには治安維持部門と呼ばれる部署がある。
その名が示す通り、
場合によっては排除も厭わない事もあり、年々その傾向は強くなっている。
過去においては一企業の警備部門に過ぎなかったのだが、神羅が大きく成長するに伴い、陸・海・空と戦力を充実させ今では一国を相手に戦争を始めるまでの規模に肥大化した部門でもある。
私自身は兵としての戦闘能力は有していないが、頭脳を買われて作戦立案や作戦補佐として従事し、治安維持部門内での立場を確立していった。
そんな時、新たに設立される部隊を私に任せるという話を統括から頂いた。
なんでも科学部門が現在行っている研究で、特殊な施術で戦闘能力を大幅に強化された兵をまとめ、特殊部隊として運用するために専任の指揮官が必要となりその役目に私が抜擢されたというのだ。
さらに活躍次第では後々、新部門として独立させる案も持ち上がっており、そうなった場合は指揮官に命じられた私がそのまま統括として就任する可能性が高いとの事らしい。
特殊部隊名はソルジャー部隊、そして総隊長としては例の子供が任命されている。
この話は私にとって渡りに船であった。
私は
以前ハイデッカー統括にいつまで仕事を続ける気か直接聞いてみた事がある。
『社長が引退するまでだガハハッ。』
豪快に笑いながら当分先だという意味の回答を貰った後に
『なんだ統括の座を狙っているのか。
ラザード、お前は若すぎる。
血気盛んな兵を束ねる者は“貫禄”というのも必要なんだ。
お前の能力なら俺の次は統括になるさ、焦るな』
と言われてしまい、少々腑に落ちないが反論も出来ずに終わってしまった。
実際、兵をまとめあげる事において見た目というのも重要ではある。
私はハイデッカー統括より能力は劣ると思っていないが、だからと言って彼も能力が低いわけでもない。
たしかに“貫禄”と言われてしまったら若造な私に比べ所属年数が長く年上で豪傑なハイデッカー統括が現状は適任であろう。
新しい特殊部隊の指揮官への任命すると言われたこの話。
場合によっては統括としての地位、つまり最高幹部への昇格も有り得るとなれば断る理由がない。
早速、任命を承諾するとハイデッカー統括から後日改めて指揮下に入るセフィロスの紹介を実施すると言われた。
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任命式当日、私は少し緊張していた。
新しい立場に就く事は出世を重ねた私には慣れていたので、ソルジャー部隊の指揮官になる事もいつも通りだと感じていたが、総隊長に就任している彼に面と向かって会うのはこれが初めてであった。
統括室の扉を開ければすでに少年の面影を残しながらも青年となった“英雄セフィロス”が静かに佇んでいる。
部屋に入ると統括に手招きされてセフィロスの横へと移動した。
必要な者が揃った事を確認出来た統括は私を掌で指しセフィロスに紹介する。
「お互いにこうやって顔を合わせるのは初めてだな。
セフィロス、特殊部隊を指揮する事になったラザード主任だ。
彼は非常に優秀でな、お前も存分に戦えるだろう」
セフィロスはハイデッカー統括の話を聞いて体をこちらに向け挨拶してくる。
「ラザード主任、これから指揮下に入るセフィロスだ。
よろしく頼む」
「キミたち特殊部隊を預かる事になりました。
ラザードです、こちらこそ宜しくお願いします」
そう言ってこちらの手を差し出すと、向こうも握り返してきてくれた。
後ほど部隊員の紹介も一人一人行う予定だが、まずは彼に信頼されないと話にならない。
部隊員から信頼されている彼にそっぽ向かれると全体の指揮も危ぶまれる。
お互い握手をしている私達を見て統括も安心したようで
「うむ、お互い納得しているようで何よりだ。
今後とも更なる活躍を期待する。
では以上だ、下がれ」
満足そうな顔して私達にそう言うと顔合わせはあっさりと終了してしまった。
部屋を出た私とセフィロスはお互い同じ方向に向かう。
セフィロスは私の一歩先を行く形で歩いている。
特別話すことなどないが、これからの交流も深める意味でもここは年が上の私から話を切り出すことにした。
「セフィロス、君の評判は聞いているよ。
君の活躍は今やミッドガルだけじゃなく世界中に広まっているね」
「そんなものに何も価値はない」
私の言葉に何を思ったのかセフィロスは足を止め、こちらを振り向いてそう言い放った。
「そんな謙遜することないじゃないか。
私も君…いや君達がもっと活躍出来るよう全力を持って取り組むつもりだ。
そしてこの部隊を神羅内で部門として独立させよう」
「ラザード主任、貴方は俺達を利用して出世し統括となり、神羅の幹部になりたいと思っていますね」
出会って間もないのにいきなりの質問をぶつけてくるセフィロスに私は少々驚いてしまった。
だがこんな質問をされて誤魔化すのもいかがなものか。
ここは本音で話すと決め、セフィロスの目をまっすぐ見つめて私の考えを伝える。
「……そこまで言うなら君に対して取り繕うつもりはないから正直言おう。
出世欲はそれなりにあるからね。
申し訳ないが君達を利用してのし上がるつもりではあるよ。
とは言え君達を無下に扱うという事はしないとも約束はしよう」
「その約束を守ってくれるならば俺達も貴方の期待に応えます。
貴方自身が内心どう思うとも自由です。
無論、明らかにおかしいと感じた命令には異議を唱えますがね」
「どうやら釘を刺されてしまったようだね、こちらも君たちに失望されないよう善処しましょう」
回答に満足したのかセフィロスは口元を緩めフッと笑い、「失礼します」と昇りのエレベーターに乗り去っていった。
「やれやれ、実は治安維持部門で手に負えそうにないから私に押し付けたのが真相だったりしてな……
だが当初よりもやりがいを感じる仕事になりそうだ。」
自分に言い聞かせるような独り言を吐き、下がってくるエレベーターを待ちながら私もフッと笑っていた。
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後日、セフィロス立ち合いの下、他のソルジャー達とも顔合わせを終えた私は各人員の書類に目を通しながらこれからの方針を練る。
セフィロスには総隊長としての意見を聞きたいので残ってもらい、今は私の対面に座っている。
今までのソルジャー運用方法は一般兵の部隊に投入し部隊の戦力を上げる事が主であった。
更にもっと以前はセフィロスただ一人が特異な兵としての扱いであり、一般兵では彼に後れを取る場面も多々あった為、随伴出来る兵隊を求めて科学部門によって特殊な手術で身体能力を上げる技術が確立された事がソルジャー部隊設立の起因となっている。
募集を掛け志願した兵全員がソルジャーに成れた訳ではないが、それでも部隊を組める程度には兵員が揃った。
これからはソルジャーを主部隊とは別の特殊任務に就かせ敵地に潜入させ情報収集や奇襲をかけたり、強力なモンスターの退治を任せたりと少数精鋭としての作戦も出来るようになるだろう。
「手術を受けたソルジャー達のデータは一般兵と比べたら確かに能力は高い。
しかし
既に数名のソルジャーは実戦も経験しており十分な活躍をしている者もいるがそこは個人差がある、全員が同じ能力とはいかないか。
「戦闘能力もそうだが指揮能力が全くなく、中には手に入れた力に自惚れているのか単独行動をする者も見受けられる」
「……俺の部隊であれば部下に勝手な事をさせるつもりはないが、そうもいかないのだろう?」
「まったくその通りで、従える者が君だけしかいないとなると結局運用できる部隊も一つしかないも同然だ。
これでは同時に複数の作戦が展開出来ない」
「こればかりは経験しかないだろう」
この現実を受け入れ諦めたような顔してセフィロスがそう言った。
ソルジャーの手術は志願すれば経歴が関係なく神羅に入りたての新人でも受けられる。
そんな新人でも手術が成功すればそのままソルジャー部隊に配属となってしまう。
適合する身体を持つことが優先事項となっているこの現状の弊害であろう。
「そこで各員の能力ごとのクラス階級制度を設けたいと思っている」
「つまり優劣をつけるという訳か?」
「これは必要な事だ。
各員の能力値を視覚化し認識させることで彼等がどれくらいの任務をこなせるか私以外の人間にも分かりやすくなる。
部隊員は目標が定めやすくなり、外部から仕事の依頼がある場合に必要な部隊員の能力で指名が出来るようにもなる。
ソルジャー部隊に配属されたからといって全員が同等の力を持っているという訳ではないとハッキリさせないと何時か間違いが起きるだろう」
「確かに俺が遂行可能な任務でも新人では荷が重いという場面は当然ある。
それでどうクラス分けをするつもりだ?」
私の提案に思いのほか乗り気なようでセフィロスは興味深くこちらを見てきた。
「暫定的にではあるが3クラスで考えているよ。
戦闘能力も高く作戦遂行の為に状況に応じて部下に適切な指示も出せる者を
戦闘能力は十分あり、状況に応じての行動も可能だが部下を従える能力が足りない者を
手術を受けたばかりの新人や、作戦遂行能力が著しく低い者を
そしてセフィロス、君は1stだ」
「1stは俺だけなのか?」
「1stの指標はセフィロスを参考としたのでね、今のところは君だけだ。
とはいえ君とまったく同じ能力にならなければ1stに昇進出来ないとはするつもりはない。
それにこれはあくまで暫定的であって評価項目などはこれから精査していく予定だ。
そしてこれが2nd予定の隊員達だ、そちらの意見も聞きたい」
そう言って私は2ndに任命予定の隊員が記された資料をセフィロスに渡す。
資料を受け取ったセフィロスは注意深く目を通していく。
「君の立場から見て不釣り合いなクラスの者が居たら遠慮なく言って欲しい。
付き合いは君たちの方が長いんだ、データだけでは見えてこない何かもあるだろう」
「特にはないな、一旦はこのままでも良いだろう。
ただ後々1stに昇格しても大丈夫だと思う者は何名かいるな」
「参考までに聞きたい、誰か教えてくれないか?」
1stにしても良い人物とは誰のなのか非常に気になった私に、セフィロスは資料から2枚の紙を抜き出しこちらに差し出して来た。
「とりあえず、この2名だ」
「アンジールとジェネシスか。
確かに戦闘能力は他に比べ秀でているし、状況判断も適切だ。
しかし私から見たら、部下への指示能力は未知数で把握しきれていない。
だが君から見た評価はどうなのかな」
「アンジールは部下にも活躍の機会を与える指示を出し、普段も面倒見が良い人物だ。
ジェネシスは単独行動の兆しはあるが、逆に自分の邪魔にならないように部下が勝手な行動を取らないよう指示はしっかり出す。
正反対な二人だが1stには向いている」
「なるほど、私はそこまで気付くことは出来なかった」
私の質問に簡潔であるが的確な答えを出して来たセフィロスに感心して、改めて2枚の資料に見比べる。
この二人は同じ出身地であり、科学部門のホランダー博士とガスト博士から様子がおかしいようだったらすぐに報告をくれと頼まれている。
どうやら他とは違う手術が施されたらしいが詳細は教えてはくれなかった。
私も深追いするのは危険だと判断したのでその場で二人の頼みを了承し一旦切り上げたのだ。
ただいずれはこちらで調べて私のある目的に利用出来ないか探ってみるつもりではある。
その後も各隊員の私からの評価とセフィロスからの評価の照らし合いを続け、クラス制度の条件についてもいくつか意見を貰った。
その内の一つに1stへの昇進条件には1stからの推薦も必要とすることを設定した。
つまり現在の状況では1stはセフィロスただ一人なので、昇進するには彼の推薦を受ける以外に方法がない。
なので今は、アンジールとジェネシスが1st昇進への最有力候補となっている。
一通りの話が済んだので後はこちらでまとめると伝えるとセフィロスは最後に忠告をしてきた。
「アンジールとジェネシスは選択を間違える可能性もあるので注意して欲しい」
「それは状況判断がまだ正確という訳ではないという事かな?
もちろん上司として適切な指示をするつもりです」
「……あぁ、よろしく頼む」
そう言って席を立ち退室していったセフィロスの背中を見送る。
彼が心なしか不安が残るような顔でお願いをしてきたので暫くは私の記憶に引っかかっていた。
当初ハイデッカーはこの時点では統括じゃないつもりで話を作りましたが
原作における時点でプレジデント神羅一番側近で古参幹部という設定なので
やっぱり統括ということにして話を修正しました。