【神羅ニュース!! ルーファウス神羅の躍進】
私達が勤めている神羅カンパニーの最高責任者であるプレジデント・神羅には息子が居る。
その名をルーファウス神羅。
将来は神羅カンパニーを背負っていくと予想されているこの若者の評価は神羅に入社するまでは甘やかされているボンボンという印象だったと一部の社員(詳細は伏せる)は語っていた。
しかし入社して実際に業務に携わるようになると瞬く間に頭角を現し、自身の有能さを身をもって周りに知らしめた。
また、社長の息子という立場に胡座をかいて社内で指示を出すだけという事はせず、街へ繰り出し自分の足で商売に繋がる営業活動を行い、時にはスラム街、時には魔晄炉、更には戦場にまで赴いて現地で調査や情報収集を行っていたことが社内外の人間の評価を変えた要因の一つとなっている。
なお子供の頃から付き人をしていた者が「何かあったら……」と不安と緊張感が治まる事を知らず、プレジデント神羅にルーファウスの身を案じて辞めさせるように進言したら
『ルーファウスが結果を出している以上、私は何も言わんよ』
とむしろ社長公認の言質を取る形になってしまった。
神羅カンパニーとしても彼には多大な期待を寄せておりこれからの活躍にも注目が集まっている。
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神羅ビルのとある訓練室の中で二人の男が対峙をしている。
どちらも神羅カンパニー中では知らない人間はいないほど活躍中の若手のエースである。
片方は戦いを生業とする特殊部隊の総隊長を務める銀髪の英雄。
片方は戦いとは一見無縁な業務ながらも必死に食らいつこうと猛烈な攻めを披露している金髪の御曹司だ。
金髪の戦闘スタイルは銃を使った遠距離攻撃が基本だが、時には銃を鈍器の如く振りかぶって殴り、ある時は盾のように銃身で剣を受け止めるなんとも独特な戦い方であった。
剣先をこちらに向け構えたセフィロスが声を掛けてきた。
「かなりの期待を寄せられているじゃないか、こんなところで油を売っていいのか?」
社内報の記事を見たのか、こっちの攻撃をなんなく躱し余裕の表情で煽ってくるセフィロス。
「魔晄エネルギー時代に油など売れん」
「冗談の通じない奴め」
「存在自体が冗談みたいな奴がそれを言うか」
傍から見れば互角かのように軽口を叩き合いながらの戦っているが実際は違う。
奴は呆れた強さだ、ずいぶんと長く攻撃を続けているがこちらの有効打をまったく与えられない。
私が意地で澄ました表情を作っているのと違ってセフィロスのあっけらかんとした表情は正にその通りなのだろう。
スタミナだって殆んど消耗していないハズだ。
余計な事を考えるのは止め、目の前の相手に集中する。
セフィロスの足がわずかに踏み込むような動作をしたのを見逃さず次の攻撃に備えた。
どうやらその判断は間違ってなかったようで、備えた直後に奴の左手の剣が俺に襲い掛かってきた。
少しでも判断が遅れていれば危なかったであろうその攻撃を間一髪で躱し体勢を整える。
「よく躱したな、今のはうちの3rd連中でも難しいかもしれん」
「そうか、なら今の私はソルジャー3rdよりは強いってことになるのか?」
戦闘は止まっていても視線は常に相手を捉え続ける。
「まぁそうだろうな、ソルジャー手術を受けて適合すれば1stになる可能性もあるんじゃないのか?」
「そこまでの手術は必要ない。
私は戦い専門の職に就く貴様達と違って他にもやることが有るのでな」
ハッ!っと奴の提案を鼻で笑い、乱れた呼吸を整えた。
ふと訓練室の時計に目をやると社長室に伺う予定の時刻が近づいている事がわかった。
「……もうこんな時刻か、付き合ってもらって悪いがそろそろ上がらせてもらう」
「別に構わないさ、また必要なら付き合ってやる、骨のある奴は大歓迎だ」
「骨のある奴か……
私に対して上からの態度を取れる人間も今の社内じゃ貴様と
社長へのイエスマンも多いが野心家の社員も多いこの神羅じゃ社長の息子という肩書でも臆することなく接してきた奴はそれなりにいた。
無論そんなことで機嫌を損ねるようなつまらない人間ではないと実力を持って黙らせてきたが、入社当初の敵だらけな状況は少し懐かしい。
「そういえば何時しか俺に対しての勧誘もして来なくなったな」
額の汗を拭っている私とは対照的に涼しい顔したセフィロスがそう言った。
「勧誘し続ければ私の部下になったか?」
「いや、ならんさ」
一切の迷いが無く言い放つので此方も未練などはない。
「だろう、無駄な事はしない主義なのでな」
「ならこの戦闘訓練はどうなんだ?
護衛などいくらでも付けられるし、前線で戦うなんて事ないだろう」
私の立場を見たら確かにその疑問は湧くだろう。
その疑問こそ私を更なる高みへと目指す為の試練でもある。
「どんな権力を持っていてもいざという時、身を守れなければ意味がない。
常に護衛が必ず居るわけでもなく、もしかしたら護衛が裏切るかもしれん。
己の身くらいは守れるようにしておかないとな」
そして今の
財力、権力、武力と3つ揃っていると自負しているようだが武力そのものは本人自体に付与されている訳ではない。
万が一、命を狙うテロリストが目の前に現れたらどうするつもりなんだか。
「ほぅ、殊勝な心掛けだな。
だがそれなら俺やタークス連中に命を狙われる可能性も考えないのか」
「もちろんそれも考えてあるが、本人を目の前にして喋る気はないぞ」
「……たしかにな」
現時点ではブラフだが、セフィロスとの交流は弱点を探る意味もある。
しかし交流の回数を重ねるほど弱点あるのかと疑いが増すばかりだ。
私のブラフをどう捉えたか分からないが向こうが腕を組み黙ってしまった。
なので話題を変えるため彼方の部隊の近況でも聞いてみることにした。
「そちらのソルジャー部隊は部門として独立するために精力を尽くしているようだな」
「主任が野心家なのでな、馬車馬のように働かされている」
憎まれ口を叩きながらもクックックッと愉快な表情で語るセフィロス。
主任となる事は大変有能であり十分な出世だが、そこから上の幹部となるにはまたさらに高い壁が存在する。
野心家であってもそこで立ち止まってしまう者はこの神羅じゃ珍しくない。
「そちらの主任はかなり優秀なようだな」
「俺達の以前は期待されていた若手のうちの一人だったらしいからな。
期待の新人が今度は期待の統括になるかどうかというところだ」
「ラザードと言ったな、何時か顔を見せておくか」
「社内政治か?」
社内政治。
どこの部門でも当たり前のように行ってる出世や立場を守るための手段。
目の前の英雄のような圧倒的な存在でもない限り、有能だろうが、無能だろうがこれを疎かにすると後々の自分の状況が危ぶまれるという、神羅カンパニー内に蔓延る古臭い社風だ。
とは言え、私はコレを真っ向から否定する気はない。
自分がコントロール出来れば有利になるものだ、使えるモノは使うさ。
「まぁそんなところだな」
「実力でねじ伏せるタイプかと思ったらそうでもないのか」
セフィロスは「冗談のつもりだった」と口から漏らし物珍しそうな態度でマジマジと私を見てくる。
相変わらず奴の冗談は上手いとは言えんな。
「実力でねじ伏せるさ、そして私の派閥に加えるのも実力のうちだ。
貴様にはわからんだろうがな」
時計を見れば次の予定まであまり余裕もない時刻になっている。
着替えの時間もあるのでいい加減訓練室を出なければ間に合わない。
銃から空薬莢を抜き出し、部屋を出て行こうとすると後ろから「今回の戦闘における反省点は?」と呼びかけられたので簡潔に述べる。
「距離の詰め方、隙を作る誘い方が下手、攻撃から防御に移るのが遅れる、こんなところだろう」
「上出来だ、よくわかっているじゃないか。
欠点を自覚しているならあとはひたすら鍛錬だ。
相棒でもいたらそこらへんはカバーしてもらう事も出来るんだがな」
「相棒としてのポジションにまで信用できる人間はそうそう居ないさ。
ただアドバイスとして頭に留めておこう」
時間も差し迫って来たので会話を切り上げ訓練室の出口へ向かう。
「呼び止める必要はなかったな」と時計を見ながら私に言うので「では、失礼する」とセフィロスに別れを告げて訓練室を後にした。
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「
先日、息子であるルーファウスが社長である私に提出してきたある計画書を手に持ちデスクで眺めながらそう呟いた。
内容はソルジャー隊員の一部を神羅の広告塔として使う計画である。
既にセフィロスが英雄として世に広まっており、それに憧れて神羅に入社してくる者もいるが、この現状をさらに強化して幅広い世代が神羅カンパニーに肯定的な感情を抱かせる事が目的だそうだ。
ウータイに武力介入して戦争を仕掛けたことは、社内外に関わらず神羅カンパニーを批判する声はあった。
ウータイ側が魔晄炉建設を拒み続け、あまつさえ我が社に対して敵対的な行動を取るため、こちらも神羅にとって大きな障害と判断した。
最初は少々脅しかけて、有利な立場から条約を結ばせるために対話の席に着かせる算段であったが、ウータイ側が思いのほか激しく抵抗してきたため、お互いの軋轢が大きくなり戦争にまで発展してしまった。
すでに当初の予定は大きく狂い、未だに争いが続く状態となっている。
神羅側の大義名分として【魔晄炉の建設はウータイ側の支配層が富を独占出来なくなるからとそれを拒み今も国民を苦しめている。神羅カンパニーはそんなウータイの人々を支配層から解放して豊かな暮らしを提供するために立ち上がった】となっている。
脚色は加えてあるが実際のところ全てが嘘というわけではなく、ウータイに勝利したあかつきにはあちらの国民に豊かな暮らしを提供する用意はちゃんとある。
こちら側から仕掛けた戦争であり、敗北は決して許されない。
「勝った方が正義なのだ」
そう独り言を吐き書類をまとめ、目の前に置いた。
ルーファウスの提出してきた計画は神羅カンパニー側が正義という印象を強くするために役立つ可能性を秘めている。
最近ソルジャー部隊を部門として立ち上げる話も纏まってきているため、この計画を行う時期として丁度良いかもしれない。
口元が寂しくなったので葉巻を吸うためにデスクの引出しに手を掛けたその時、向いにある階段からルーファウスが上がってくるのが目に入った。
息子に注目している私にあちらも気付いたようだが、焦る素振りもなく堂々と近付いてくる様に怖いもの知らずだった若い頃の自分を思い出す。
「書類には目を通していただけたようですね、
親子であろうと、ここは会社であり私は社長だ。
デスクの目の前に立った息子は普段の生意気な態度を潜め、一人の社員として私に接してくる。
「あぁ、見せてもらった。
計画については凡そ容認できる内容だ。
だがお前の口から聞きたい。
一番の問題となる
葉巻を出そうと引出しに伸ばしていた右手はいつの間にかデスクの上で左手と組んでいた。
「それは勿論、
「注目をあまり好まない男をメディアに引っ張り出す事が出来るとでも?」
「別に彼等に歌って踊れという訳でも、TVショーに出演しろという訳でもありません。
今より目立たせる。
ただそれだけでいいのです。」
フッと言って髪をかき上げる仕草をして私の反応を伺うルーファウス。
最初は真面目な態度であったが徐々に本来のふてぶてしい本性がにじみ出てくる。
「1st達はただいつも通り任務や訓練に励んでもらえれば良い。
彼らの戦いはそれが既に創作かと疑うようなヒロイックさに溢れ出ている。
記録した映像や写真を広報が巧く編集し発信して世論を誘導していけば十分です。」
任務の結果報告や訓練の映像は私も目を通して知っている。
物語として見たら谷の無いようなモノだ。
「隊服も色だけでなくもっと1stと判りやすい物に。
それから撮影する範囲も増やすべきです。
彼等に演技など必要ない。
そのままでも多くの人間を魅了します」
一通り話して満足したのかルーファウスは私に対して早く了承しろと言わんばかり睨んでくる。
「書類を読む限りではあまり予算は必要ないが見返りは大きい。
やってみる価値はありそうだな」
「ではっ」
「許可を出そう」
「ありがとうございます。
では早速準備を開始しますので失礼します」
そう言って私に対して軽い一礼をしてそそくさと社長室を後にしたルーファウス。
それを見た後、忘れかけた一服を思い出し引出しから葉巻を取り出す。
葉巻を咥えて火を点けると改めて私は書類に目をやった。
治安維持部門からソルジャー部隊が独立したら例の主任がソルジャー部門の統括だ。
部門への独立のためソルジャー達と共に奮闘していると聞く。
それに関してのエピソードもまた利用出来るだろう。
「それにしても
フゥーッと鼻から葉巻の煙を出して一息つく。
そして計画の承認印を書類に押したのだった。
神羅とウータイの戦争は約10年ほど続いたとされています。
ちなみに神羅は何歳くらいから活躍できるのか
ザックスは13歳から入社して16歳で既にソルジャーセカンド。
タークスのシスネも16歳で活躍。
能力さえあれば十代中盤で活躍できる土壌はあるみたいです。