セフィロス逆行物語   作:怪紳士

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第21話 正宗(後編)

「お待ちしておりましたラザード主任、社長(プレジデント)が上でお待ちしております」

 

神羅ビルでは最上階の1フロアが社長室であり、その下の階は社長の側近たちのフロアとなっている。

69階にやってきた私は秘書に案内され、70階に繋がる階段を上る。

社長のデスクが見えて来た所で火が付いた葉巻を手に持ち席でふんぞり返ってるプレジデント神羅が上ってくる私に注目しているのがわかったので少し急ぎ足でデスクの目の前に立った。

 

「お待たせしました、ご用件はなんでしょうか」

 

「おぉ、来たか。

 まぁ楽にしてくれラザードくん」

 

そう言って社長は私を案内してきた秘書に下がるよう指示を出し葉巻を灰皿に押し当て火を消した。

楽にしてくれと言われても私は姿勢を崩さなかった。

 

「君の活躍は知っている、大したもんだよ。

 あの曲者だらけの治安維持部門でよくここまで出世したものだ」

 

「お褒めにあずかり光栄でございます」

 

自分の口から出た言葉とは裏腹に嬉しいとも思わない社長の賛辞に一礼をする。

 

「そこまで固くなる必要はない。

 どうだ、ソルジャー部隊の管理で困っていることはあるかね?」

 

自分の目的がバレたのかと警戒しつつ社長の言葉の意味を探る。

ここは問題ありませんと言いたいところだが、丁度頭を抱えている難題がある。

もしかしたら何か解決の糸口があるかもしれないと正直に話してみることにした。

 

「困っている事でありますか……

 実は弊社の英雄セフィロスが希望する武器を詮索しているのですが中々手掛かりがなく手詰まりな状況へと向かっております」

 

「正直でよろしい。

 その件に関しては私も把握している。

 そしてそれはこの後解決するだろう」

 

「御見それしました。

 ということは用件はその事でしょうか?」

 

セフィロスの武器については色んな所に聞きまわっていたから社長の耳に入っていても不思議ではない。

とは言え社長の手前、相手を立てる言葉もしっかりと付け加えておく。

 

「それもあるが、本来の用件は別にある。

 それはソルジャー部隊は部門として独立し君はその統括に就任するという事だ」

 

「ソルジャー部門……

 私が統括……」

 

正直、部門として独立するのはもう少し時間と実績が必要だと感じていたし、現治安維持部門の統括(ハイデッカー)からは何もアクションが無かったので私には寝耳に水であった。

 

「驚いているようだな、実績不足なのと統括からの話が無かったからか?」

 

「……その通りでございます。

 理由をお聞きしても宜しいでしょうか?」

 

「無論、説明はしよう」

 

私の考えを見透かしたかのように言い当てた社長は鋭い目つきになり、理由を説明し始めた。

内容を聞くと、本来であれば部門への独立にはもう少し実績と時間が欲しい所であったが、ウータイとの戦争によるこの状況下で治安維持部門の統括ハイデッカーには多くの負担が強いられており、その上で今までとは運用が異なるソルジャー部隊の管理までは荷が重いだろうという配慮。

またソルジャー部隊は独立させた方が戦略的に扱い易いという判断。

そして私自身の実績と期待値も含めてソルジャー部門を立ち上げても問題ないだろうという事らしい。

最後に神羅では幹部への就任発表は社長自らが、直接本人に伝えるのが決まりだというのだ。

 

「いくら評価が良くても最後は私自ら本人を見て決定を下すのだよ。

 出会って違和感を覚えた場合はその場で就任は取り消す場合もある」

 

世界一の大企業の社長が己の感覚で判断するというのだから、神羅カンパニーが如何に独裁で成り立っているかを物語っている。

 

「そういう訳でラザードくん。

 君は無事、統括として幹部に昇格だ。

 おめでとう」

 

表情が少し柔らかくなり、ハッハッハと笑いながら懐からソルジャー部門統括への発令書を差し出して来た。

 

「ありがとうございます」

 

私は両手で受け取り中を見て社長直筆のサインがしっかりと記されているのを確認した。

それを見た私は内心ほくそ笑んだ。

今まではたまたま運が良かっただけかもしれない社長の感覚便りの発令もこの私を就任させてしまった時点であてにならないと証明されたも同然だ。

母と自分を見捨てた()()()()()()()()()()()()を目的としているこの私を統括にしてしまったのだからな。

 

 

 

──『あの男は私達を見捨てたのよ』『スラムで生活する羽目になったのもあの男のせいよ』

  『恨むならあの男を恨みなさい』『すべてあの男が悪い』

 

私の母の口癖だった。

母は元々スラムの住民という訳ではく神羅カンパニーの社員としてプレート上層部に住んでおりプレジデント神羅とも恋仲だったそうだ。

しかし奴との子供、つまり私を身ごもった事が発覚した途端突き放され、会社からも退職に追い込まれたと言っていた。

頼る親もおらず他に就職も出来ずそのままスラムに流れ着いたそうだ。

母は終ぞ幸せになることなくずっと恨みを抱いたまま死んでいった。

 

『ラザード…あの男に…復讐を…』──。

 

 

 

私達がスラムで惨めな生活を送っていたのはプレジデント神羅が原因である。

母の恨みを晴らすため、私は復讐を誓い、神羅に入社してその機会を伺った。

そして今がその時ではないかと思う。

部屋にはプレジデント神羅と私の二人きりで他に誰もいない。

武器は持っていないが奴との対面している距離ならいきなり襲い掛かって首でも絞めれば殺すことは容易である。

だが警報装置を隠し持っているかもしれない、どこかに監視カメラがあり襲ってもすぐに警備が駆けつけるかもしれないという不安はある。

復讐した後この身はどうなっても構わないが復讐の失敗は避けたいので中々決断出来ずにいた。

その時、下の階から誰かが上がってくる足音がしたので後ろを振り返ると私と同じ髪の色をした人物がやって来た。

 

「取り込み中失礼する」

 

上がってきたのはプレジデント神羅の息子であり私とは腹違いの兄弟であるルーファウス神羅であった。

彼は布に包まれた長い()()()を抱えており、私の事など気にも留めずにツカツカとこちらに近寄って来る。

 

「ご注文の品だ、ここに置かせてもらう」

 

「あぁごくろう。

 ラザードくん、今の君が探し求めている物だ」

 

社長はそう言い、ルーファウスは持っていた物を社長のデスクに置いて布を取り払う。

目の前に現れたのは刃渡り2m以上は確実にある長大な【刀】であった。

それを間近で見た瞬間セフィロスの頼みが頭を過った。

 

「社長、コレはもしや【正宗】でしょうか?」

 

「そのとおりだ、君が探していた物だ」

 

「いったい何処で手に入れたのですか?」

 

あれだけ探しても見つからなかった【正宗】を見つけてきたプレジデント神羅。

敗北した気持ちではあるが好奇心が勝りついつい訊ねてしまう。

しかし私の質問に返答してきたのは私の横で立っていたルーファウスであった。

 

「手に入れたというよりは手元にあったんだ。

 それを加工して刀の形状にしたのがコイツだ」

 

「手元にあった……

 加工した……?」

 

元々プレジデント神羅が所持していたというのは分かった。

だが加工したとはどういうことだと詳しく聞こうとすると

 

「ルーファウス、写真を見せてやれ」

 

そう言って社長に指示を出された隣の息子は「コレだ」と写真を取り出して見せてくる。

写真には刃の先端が輪っかを作るかのように二股に別れ金色の謎の文様が刻まれた柄が赤いなんとも不思議な形をした大剣が写っていた。

 

「コレが加工前の【正宗】だ。

 この大剣が何故かずっと前から我が家の倉庫に仕舞われていた。

 そして一緒に古いメモがあり〈伝説のガードが使用した武器、正宗〉とあった」

 

社長はルーファウスの説明に「そうなのだ」と呟き補足を付け足す。

 

「メモの意味は正直わからん、しかし素人目に見ても不思議な存在感を放っていてな。

 科学部門で分析させたところ、少なくともこの星には存在しない素材で出来ており非常に丈夫な武器と言うのがわかった。

 さらに詳しく分析するために科学部門はありとあらゆる実験を行いたいと申し出てきたよ」

 

社長は口を動かしながら引出しから葉巻を取り出しシガーカッターで両端を切断している。

 

「科学部門にそんな許可を出せばそのままで返ってくる保障はないと思いますが」

 

「それも含めて許可を出した。

 貴重なモノかもしれんがそのままではただ飾っておくしか出来ん。

 原形が無くなろうともその分析結果が我が社の為になるならそちらの方がいい」

 

吸う準備が整ったようで社長は葉巻を口にくわえると神羅の文字が入ったライターで火をつけ一服し始めた。

独特の匂いがあたりに漂う。

それがまるで合図かのようにルーファウスが社長の説明を引き継ぐ。

 

「ものの見事に武器の原形が無くなっていたな。

 ただ分析は大いに役に立った。

 完全にとは言えないがある程度再現可能で特殊合金として今の神羅製の兵器に使われている」

 

「初耳です」

 

「それを知れたのも幹部昇格のおかげだな」

 

神羅に入社して以来情報収集に手を抜いたつもりはない。

段々に態度が大きくなってくるルーファウスが気になりつつも説明により幹部にならなければ知ることが出来なかった情報があると早速理解した。

ただその特殊合金の作り方は制作に関わる極一部の者と社長しか開示されないというので全てを知ることが出来るわけではない。

 

「ではその原型の無くなった武器がどうしてこうのように加工されたのですか?」

 

目の前の刀を眺めながら目下最大の疑問を解消すべく私はルーファウスに質問をぶつけた。

 

「あちこち欠けた状態の正宗(大剣)を復元するのは難しいと判断してな。

 ならばといっそのこと新しい武器としてコレに作り直した」

 

どうだと言わんばかりに掌をかざし正宗の紹介を強調するルーファウス。

そして葉巻を吹かしながら様子を見ていたプレジデント神羅も口を開く。

 

「形状を()にしたのはウータイの魂とも呼ばれる武器だからだ。

 その()をこの神羅が造り、それを装備したソルジャーが奴らと対峙する。

 しかも武器としての性能は自分たちの物より圧倒的にこちらが上だ、彼奴等はどう思うかね」

 

「物理的な面に留まらず精神的な面にも傷を残すでしょうね」

 

「そうだろう。

 我が社の()()が【刀】を希望せずとも、コレを扱わせる気でいたんだが丁度良かったよ」

 

悪辣な笑みを浮かべ、【正宗】を指さし葉巻を吹かすプレジデント神羅。

これが物語であったなら悪の総大将としての演技力は私も賞賛するだろう。

 

「さて、ラザードくん。

 これで君の問題は解決したな。

 それとソルジャー1st達の個人武器の使用を認める件だが、ついでに服装も変更だ。

 せいぜい目立つようにと伝えておきなさい」

 

「ご配慮感謝いたします。

 が、服装も自由とは?」

 

「なに、広報戦略の一環だよ。

 これからの神羅の顔となる部門のエース達だ、その方がより目立つだろう。

 一応何着かこちらでも用意してあるが気に入らなければ1st自ら見繕って構わん」

 

どうやら社を上げて新しい部門の存在をアピールしていくという事に力を注いでいくらしい。

新しい隊服はすでに該当するソルジャーの私室に届けたそうだ。

 

「ソルジャーも神羅の一つの部門となる。

 これからも君とソルジャーの活躍に期待している」

 

呼び付けた用事はもう済んだようで、部門となる場合の待遇などや詳しい内容はまた後日説明をすると言われ一旦はお開きとなった。

私の復讐の機会は次に持ち越されることとなった。

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 

私は渡された発令書をスーツの内ポケットにしまい【正宗】を抱えて69階へ降りてきた。

そこで後ろから同じように降りてきたルーファウスから呼び止められる。

 

「ラザード主任、統括に就任おめでとう。

 挨拶が遅れたがルーファウス神羅だ、以後お見知りおきを」

 

「あぁ、ありがとうございます。

 こちらこそ遅くなりました。

 ソルジャー部隊を指揮しているラザードです」

 

初対面がプレジデント神羅の目の前で行う事になる可能性は十分にあり得たので特に驚きはしなかった。

ルーファウスの評判は把握しており、次期副社長との噂もすでにちらほら出るくらいの評価をされている。

彼に恨みはないが私の目的の邪魔となるなら排除することもいとわない。

 

「フフフッ、私はプレジデント神羅(オヤジ)以上に貴方を評価している。

 いつか頼った時は宜しく頼む」

 

「それはそれは……。

 こちらこそ何かあればよろしくお願いします。

 では失礼します」

 

世辞か本音か分からないが、私はこの場で彼との腹の探り合いは危険だと思い、早々に会話を切り上げてこの場を後にしようとした。

しかし私が抱えている正宗を見ながらルーファウスは引き留めるかのように言葉を放つ。

 

「【正宗】とは大層な名前だな。

 ()()()()()という意味が含まれている。

 自分が行っている事は果たして正しい事なのか、関わる者達は誰も分からない」

 

「何が言いたいのですか?」

 

彼の言葉に引っかかるものを感じて、エレベーターに向かう予定だった足を止めて振り向きながら私は少し強い口調で言い返した。

 

「その【正宗】は神羅が英雄に授ける。

 つまり英雄は神羅の為に刀を振るい、神羅の為に正義を行っていくということだ。

 ウータイに勝利した暁には神羅が世界を制し、その存在はより強固なものになるだろう。

 だが……」

 

ルーファウスは一旦言葉を飲み込み、真上に社長席があると思われる付近の天井に顔を向ける。

 

「その時、あの席に座るのはプレジデント神羅(オヤジ)ではない。

 もっと正しき人物がいると思わないか?」

 

この言葉を放った後、私の回答を促してくるかのようにこちらに視線を落としてくるルーファウス。

質問の意図は一体なんだと考えを巡らせる。

プレジデント神羅を社長の座から引き摺り下ろす同志を探しているのか、幹部となる者の社長への忠誠心を試されているのか今の私に断定出来る材料はない。

あまり間を置くのも怪しまれると判断してありきたりな回答で場を濁す。

 

「……その質問の答えを私は現在持ち合わせておりません」

 

「そうだろうな」

 

知っていたと言わんばかりにルーファウスは怪しげな笑みを浮かべ私に近付いて来るが歩みを止める様子はなくそのまま横を通り過ぎて行こうとする。

 

「いつかもう一度同じことを聞く時が来るだろう。

 答えを楽しみにしている」

 

通り過ぎる瞬間、忠告するように言葉を残しそのままエレベーターに乗りこの69階から姿を消していった。

どうやら私はルーファウスのおかげで、またやっかいな難題を抱える事になってしまったらしい。

 

「まったく……」

 

もう今月は何度出したかわからない、ため息が無意識のうちに口から洩れてしまっていた。

ただ既に抱えていた難題(正宗)はもうすぐ解決出来そうだと思い、セフィロスの居場所へ赴くのだった。

 

 

 

 




正宗のネタはFF10-2のシンラ君に関する裏設定を意識してます。
あと今回の話のラザードの母親の回想についてですが
アルティマニアシナリオスタッフインタビューで
『ラザードの母親がプレジデント神羅に捨てられた』
と言っているのとラザード本人は自分が息子だとプレジデントにバレてないと思っている様子なので子供の頃に面識はなさそうだなと思いました。
なので母親が捨てられた時期は身籠ったあたりかなと考えました。
あとは会った事もない父親に復讐を誓うくらいですから母親が言い聞かせていたんでは?と思いました。
逆に母親がまともなら恨みこそすれ子供に復讐を抱かせるような事は避けるでしょう。
ラザードがアンジールの細胞を埋め込まれコピーとなり復讐心が薄れたのもあくまできっかけであり100%自分の意志で決めた事ではないから本来の聡明なラザードに戻ったのだと思います。
逆に完全に自分で腹をくくった復讐なら簡単にアンジールの細胞に呑まれるラザードと人の意志を尊重しないアンジール(細胞)というのは何か違うかなと思い、その結果このような展開になりました。
賛否有るかと思いますが何卒ご容赦下さい。


アンケートへの投票ありがとうございました。
この先のお話も是非よろしくお願いします
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