何卒ご了承下さいますようお願い致します。
子供の頃に敵をバッタバッタと切り伏せて、快進撃で中央突破を果たす英雄をテレビで見て以来、俺は彼に強い憧れを持つようになった。
その後はテレビで特集を組まれるたび釘付けになり、新聞の記事は切り抜き、英雄の情報が載った雑誌は親にねだっては買い集めた。
我ながら熱に浮かされ過ぎていた気もするが、子供が夢中になればそんなもんだろうと自己弁護する。
そんな少年時代の俺だったが、ある時をきっかけに、ただの憧れが目指すべき夢に変わったのだ。
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俺の出身であるゴンガガ村はミッドガルから西側に見てウータイに近い立地条件で、田舎とは言え魔晄炉があり稼働しているため継続的な魔晄エネルギーの供給が可能である。
そのため西側の戦地に赴く軍隊への補給や兵器の整備、戦場からの撤兵した者達の一時的な待機場所、野戦病院から移された傷痍兵の療養所等、軍の要所として役割を担っていた。
そのおかげか寂れた田舎にしては過ぎた賑わいを見せており、村の数少ない店の人達は『『『今が稼ぎ時だ!』』』といって軍人を相手に大盛況な様子だった。
中でも村唯一の食事処は屋内だけじゃ席が足りず、屋外に簡易的な席を設けて対応に追われており、店主は嬉しそうに『ゴンガガにもビアガーデンが出来たぞ』なんてこの村には似つかわしくない言葉を使っていたのを覚えている。
とはいえ、そこまでするほどに人が多く、村の大人だけでは人手が足りず、子供の俺も手伝いに駆り出される事は多々あった。
俺としては特に苦も感じず、御小遣いが貰える上に軍人達から都会や戦場といった色んな話を聞くことが出来たのでむしろ楽しくやっていたと思う。
ただ一番のお目当てであった英雄の話は、配属先が違うらしいのかゴンガガに来る軍人達の中で直接会った者がおらず、聞ける内容はメディアで知ることが出来る物と差異がなかったので、内心がっかりもしていた。
ある時俺はミッドガルへ帰郷する予定の一人の兵と出会う。
その男は気立てが良く物事を明け透けに言うの人で、他の兵が俺の事を『坊主』や『少年』と呼ぶ中一人だけ『ザックス』と名前で呼んでくるため、俺も彼の事を馴れ馴れしく『オッちゃん』と呼んだ。
オッちゃんは神羅の正規兵ではなく徴兵された人であり、任期が終わりゴンガガにしばらく滞在したのちミッドガルに帰るらしい。
本来ならもう少し早く帰れる予定だったらしいが戦況の変化で今になってしまったという。
オッちゃんとは良く顔を合わせて、その度に俺にいろんな事を物語ってくれた。
元々大工だったらしく兵役中は現地での建築作業が主だったと言っていたが場所は最前線であり陣地の構築は常に危険と隣り合わせだったという話は現場の生の声でありテレビではまず聞けないような貴重な内容であった。
ある日、オッちゃんが一人で飲んでおり、時計を見れば店もあと少しで業務が終了するという時間だった。
オッちゃんとはだいぶ仲良くなっていた俺はその日、ふと英雄について聞いてみたくなった。
英雄に会った事のある人物は今まで居なかったのであまり期待はしておらず物は試しと言う事だったが、予想外の回答が返って来たため俺は目を丸くしていた。
「んー俺は……。
会った事あるぞ」
「えっマジ!?」
驚いた顔が徐々に満面の笑みになり「聞かせて!聞かせて!」と話を催促する俺に対して、ほろ酔い気分でだらしない顔つきだったオッちゃんが急に真面目な態度になり真剣な表情に変わっていく。
「ザックス、お前は英雄についてどう思っている?」
「そりゃーもう強くてカッコよくてとにかくスゴイ!ってことかな」
ニシシッと歯を見せながら感想を述べる俺を見て、フゥーッとため息を吐くと手に持っていたジョッキを机に置き、オッちゃんは語り始めた。
「お前の憧れたイメージを崩すようで悪いが、俺が出会ったあの子はテレビや雑誌で見るような輝く存在じゃなかった」
すでに周りには人がおらず、店主も厨房で店仕舞いの作業に取り掛かっているため、店内はさながら貸し切りのような状態だ。
俺はオッちゃんの話に固唾を飲んで耳を傾けた。
数年前、オッちゃんがいる部隊が本部を離れ新しい陣地構築のため戦場を移動中、敵の奇襲に遭ったそうだ。
本来ならば敵は一掃されているハズの場所で予期せぬ敵との接触。
工兵他に援護兵も随伴してはいたが応戦しても勝てる見込みはなく、すぐさま撤退を開始する。
しかしこの襲撃はあろうことか挟撃であった。
救援要請をするも、本部も襲撃を受けているという事実が判明し、《現地にて対処されたし》という返答を最後に通信も途絶えてしまったのだ。
前進も後退も不可能な状態で部隊は孤立し、その場で防戦に徹する事しか出来ずジリジリと追い詰められていく。
状況は絶望的であり、最初は生き残る事に奮起していた部隊連中も抗戦を続ける中、だんだんと絶望感が広がる。
おまけに部隊は徴兵された者が主であり、救援の優先順位も恐らく低いだろうという事実が隊員の心に影を落とす事に拍車をかけていた。
抵抗も虚しく味方が敵の銃弾で倒れていく。
「俺はもう駄目だと思って、故郷に残して来た女房に詫びながら死を覚悟したよ。
その時、セフィロスが駆けつけてくれたのさ」
「やっぱり英雄じゃん!
銀髪をなびかせながら颯爽と来たんだろ?」
「いや、ボロボロだった」
オッちゃんは俺の期待を否定するように顔を横に振りながらそう答えた。
「セフィロスはなんて言ったと思う?」
オッちゃんの問いに俺は何も答えられない。
あの英雄が戦場では満身創痍だったという事実を知り、脳が思考を止める。
『遅れてすまなかった』
英雄はそう言ってオッちゃん達に撤退を促し自身は殿を務めたそうだ。
退却中、後方に居た敵がどうなったのかと気がかりだったがそちらは既に全員倒されていた。
辛くも本部に辿り着きセフィロスがボロボロだった理由を聞けば本部を襲撃した敵を撃破し休むことなく救出に向かったからだという。
指揮官は当然、出撃する彼を止めたそうだ。
今まで命令には従順であった彼が初めて拒否を示したそうでただ一言理由を述べた。
『見捨てることは出来ない』
そして当時はまだ少年と呼べるほどの年齢だった彼がたった一人で敵陣を突っ切て来たのだ。
「部隊員全員が生存して故郷に帰る事は叶わなかった。
ただセフィロスが来てくれなかったら俺も含め生き残った連中もみんな殺されていたさ」
その後、無事に生きて戻った英雄は治療が済み次第、命令違反で営倉入りを命じられた。
オッちゃん達は異議を唱えたそうだがセフィロスが甘んじて受け入れたという。
「ザックス、俺は神羅が作る英雄の映像は好きじゃねぇ。
俺は実際の彼を見てあげて欲しいと思う」
力強く俺に訴えかけるようにオッちゃんは話してくれた。
すべてを語り終えてもう夜も遅いから家に帰りなさいと促されたが、話を聞いたうえで最後にどうしても気になる事があった俺はオッちゃんに質問する。
「オッちゃんにとって英雄……
セフィロスはどういう人なんだ?」
「命の恩人だ」
躊躇なくハッキリと言い切ったその言葉。
その日、俺はオッちゃんの言葉を胸に刻み家に帰っていった。
オッちゃんがゴンガガからミッドガルへ帰省する当日。
俺はお別れの挨拶を、そしてあの日から自分なりに考え決意した目標を伝えるためオッちゃんの下を訪れていた。
彼はすでに荷物を纏めトラックに乗り込む寸前だったが、俺を見かけると運転手に「少し待ってくれ」と伝えてこちらに向かって手を上げた。
「よぉザックス、お見送りか」
「オッちゃん!俺、ソルジャーになるよ。
そして英雄を目指すんだ!」
手を振りながら近づいてくるオッちゃん対して俺のいきなりの宣言。
だが特に気にしていないようで腰に手を当てハハハッと笑いながら俺の目の前に立った。
「そーか、何を思ったかは俺にはわからねぇがザックスが決めた事だ。
途中で投げ出すんじゃねーぞ」
そういってワシャワシャと俺の頭を無造作に撫でるオッちゃん。
「ミッドガルに来るなら俺のとこにも顔出せよ。
そんときを楽しみにしてるぜ」
「わかった!俺も次会う時は今よりカッコよくなって驚かせてやるぜ」
向こうが改めて住んでる場所と名前を俺に伝え、「忘れるなよザックス」と念を押してくる。
そんなやり取りも関係ないとトラックから短いクラクションが鳴る。
出発するから早くしろとの意味が込められているのであろう、オっちゃんが振り向けば運転手が荷台を指さしさっさと乗れと睨んでくる。
「またな、ザックス」
「またな、オッちゃん」
再開の約束が込められた短い別れの挨拶を交わしオッちゃんはトラックに乗り込んだ。
エンジンを吹かし出発したトラックを俺は見えなくなるまで目で追っていた。
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あの日から俺も成長し、故郷ゴンガガを飛び出しミッドガルに来てからどれくらい経つだろうか。
神羅の門を叩き、適合検査と試験を経て無事ソルジャーと成れた俺は任務と訓練に日々明け暮れている。
明日はとうとう2nd昇格試験、しかし俺は未だにオッちゃんとの再開は果たせないでいた。
「まさか3rdは寮生活で私用の外出禁止だとはな、ソルジャーに成る前に会っておけば良かったぜ」
ぼそりと愚痴をこぼせばそれを聞いた同室の同僚カンセルが俺を戒める。
「仕方ないだろう、軍人は個ではなく組織。
ソルジャー部門は出来きて日が浅いから治安維持部門よりも慎重になっている所はあるだろうし、ソルジャーへの志願は誰でも可能だから俺達3rdの中には初めて軍人になった奴もいるんだ。
そもそも事前に説明があっただろ」
カンセルが呆れた声で言うが、どうやら事前に説明があった
説明会は初めて一人の長旅で疲れて寝てたし、規約書なんかサインをしたらさっさと提出してしまった。
「はぁ~俺、ミッドガルの観光もまだしてないんだぜ……」
「晴れて2ndに昇格すれば外出もある程度自由にはなるよ。
だから明日の試験頑張ろうぜザックス」
「あぁ二人そろって昇格しよう!」
俺は自分にはっぱをかけるよう力強く返事をしてカンセルに向けて親指を立てる。
カンセルも同じように俺に向かって意思表示を決め「もちろんだ」と頷いた。
そう、2ndには絶対にならなければならない理由が俺にはある。
1stを目指すならば2ndは通らなければならない道である事。
ミッドガルに来た当初、駅で一緒に財布を探してくれた亜麻色の髪の女の子に改めてお礼に行く事。
名前も知らない上にだいぶ経ってしまったから見つかるか、そもそも向こうが覚えているか不安だけど……。
そして最後にオッちゃんとの再会の約束だ。
名前も住んでる場所もバッチリ覚えている。
『ザックス、俺は伍番街スラムのゲインズブールだ、しっかり覚えておけよ』
お待たせしましたザックスです。
あとオリキャラ?のオッちゃんがなんで大工かと言うと、奥さんが
スラムにしてはだいぶ良い家に住んでる理由は廃材を利用して上手い事建てたのではないかと思ったからです。
原作でもそうだけどRは更に増築されていて彼女の家はとてもスラムに立つ家とは思えませんね。
ザックスの実家は1ルームだぞ……