セフィロス逆行物語   作:怪紳士

27 / 51
第27話 悔しい博士

ウータイとの戦争は『オレ』の時よりも早い結末を迎える事となり、アンジールとジェネシスが神羅から離れる事もなかった。

念のためなるべく隊を分けずに行動して動向を伺っていたのだが、そういった素振りも見せず終戦となった。

『オレ』の時は二人が()()()()とザックスに伝えたが、今の俺はあの神羅からの離脱を()()()と言うのは疑問が残る。

彼等の背景を知っている今だからこそ、何故その行動に移してしまったのかが分かるし神羅側にも責められる理由は十分あるからだ。

かく言う自分も過去に行った事を考えれば、尚更彼等を否定することも出来まい。

ただ彼等については、これから起こる悲劇が回避されたという訳でもないので、そのために自分が出来る事があるならば協力を惜しまないつもりである。

 

 

 

神羅ビルの資料室には二人に関係する【プロジェクト・G】の資料が保管されている。

資料室で目的の資料を読み漁り、自分の記憶と状況を頭の中で整理していく。

 

『オレ』の時は戦闘訓練で負傷したジェネシスがホランダーに傷の治療を受け、その過程でG()()()()()()が発覚。

ホランダーがその劣化を治す事を条件に神羅への復讐計画に協力することをジェネシスに持ちかける。

ジェネシスはそれを承諾し、作戦行動中に大量の3rd、2ndの部下を引き連れて失踪しアンジールも説得のため戦線離脱。

しかしアンジールの説得は失敗に終わり逆に自身の隠されていた真実を知りソルジャーの誇りを失い苦悩する。

ホランダーの治療方法もこの時点で確立されていたわけではなく研究段階なため、ジェネシスはホランダーに協力的だった。

引き連れて行った部下達にG細胞を埋め込み強化し、それを従え神羅ビルを襲撃したのでその後は完全に敵対することになった。

しかしアンジールは最後までホランダーの復讐を良しとせず、だからと言って神羅に戻る事も出来ずに最後はザックスの手によって倒され、バスターソードを後輩に託した。

その後ジェネシスとホランダーの関係は逆転していき、治療には俺の持つS細胞が必要と判明したので、『オレ』に対して提供を求めてくる。

しかしコレを拒否した『オレ』が()()()()居なくなってしまったため治療手段も一時失ってしまった。

その数年後、ジェネシスは紆余曲折あったが【女神ミネルヴァ】という存在に己を浄化してもらい劣化は無くなった。

 

「女神ミネルヴァ……。

 ウェポンの一種か?」

 

頭の中で記憶を整理していく過程で登場してくる謎の存在。

ジェネシスの劣化を防ぐのはこのミネルヴァの癒しとやらに頼るのがいいのだろうか。

 

「しかし、条件がわからん」

 

全く同じ条件にするには今のままでは非常に難しいうえに犠牲も伴う。

ライフストリームで得られた知恵と知識を総動員したいところだが実はそれも不可能である。

自分の体が成長するに従ってわかってきたことだが、古代種でもないので知恵や知識は直接ライフストリームと触れていなければわからない。

それは今の資料室のように必要な知識をライフストリームから引き出すからであり、またジェノバとの融合が肉体を変化させ脳の処理能力が格段に上がり多種多様な知識を覚える事が出来た。

ライフストリームに落ちておらず、ジェノバとの融合もしていない()()()()()では自分が深く関わった事やその他一部があくまで記憶として残ってるだけに過ぎないのだ。

 

「まずは真実を、あまりショックを受けないよう伝えるか。

 俺に出来るかわからんが……」

 

「ほう、それをあの二人に伝えるのか」

 

自分が呟いた言葉に反応する人物がいつの間にか側に居た。

口元を髭で覆われ、少々腹の出ただらしない体格にバノーラ名物リンゴ缶詰のTシャツを身に着け羽織った白衣からそのロゴを覗かせる男、ホランダーだ。

 

「ホランダー博士、何時からそこに?」

 

パタンッと閲覧していた資料を閉じて元の棚に戻し顔をそちらに向ける。

正直、気配には気付いていたが宝条と同じくあまり好ましい人物ではないため向こうが話掛けてこないのならばそれでいいと思っていたのだが、そうもいかなくなってしまったようだ。

 

「その資料を手に取ったあたりからだな。

 だいぶ熱心に見ていた様だが何故その資料を見ようと思った?」

 

「ガスト博士と貴方が今取り組んでいる研究が気になった」

 

「それで真実を知ってしまったという訳か」

 

ガスト博士本人から『ホランダー博士と共同である研究をしているのだ』と聞いていたのでプロジェクト・Gに関して改めて研究しているということは予想出来きておりホランダーの口ぶりでこの件は確定となった。

 

「悪いがあの二人にこの件を伝えるのは待ってくれ。

 それにその役目は私だ」

 

「今まで隠していたのにどういうことだ?」

 

「隠していた……

 まぁそうだろうな、だが準備をしていたのだ。

 もうすぐG細胞の優位性の証明と()()を克服する方法が見つかりそうなのだ」

 

()()ということは既に劣化の事は知っているのだろう。

定期的にあの二人の検査をしていた上に今はガスト博士も加わっているので過去とは段違いに捗っている事は想像出来る。

ただ優位性と言うのはコピー能力のことだろうか。

 

「どうやら驚いてくれたようだな」

 

「あぁ、少しな」

 

俺の返事に気をよくしたのかホランダーは聞いてもないのに語りだす。

その内容は双方向コピーという他者の細胞を取り込み、また自分の細胞を他者へ分け与え肉体を強化及び変化させる能力についてであった。

しかしながらジェネシスはその能力を使えば劣化現象が激しく進行するという事も同時に伝えられた。

更にもう一人についても。

 

「アンジールは今の所安定はしているが、この先劣化が起こらないという保証はない。

 そこで君に協力をして欲しいのだが……」

 

「俺に出来る事であれば協力しよう」

 

自分の持つS細胞を欲している事は予想できるがこの時点でその存在を知っている方が怪しいので知らないフリをしていた。

協力の要望を自分で出しておきながら俺が前向きな姿勢を見せたことでホランダーが驚いた顔を見せた。

 

「おぉ本当かね!?

 ならばさっそく君の持つSさ「ホランダー博士、それ以上はいけない」

 

何処からかホランダーの言葉を若干荒げた声で遮る者が現れた。

声がした方を見れば白衣のポケットに手を突っ込んで此方を凝視した宝条がそこに居た。

 

「宝条、何故ここに?」

 

「私だって科学者だ、資料室に居ることが可笑しいかねセフィロス。

 それよりもホランダー博士、アナタは何を勝手な事しているんですか?」

 

コチラの疑問を軽くいなされ、ホランダーの方に詰め寄りながら宝条は話を続ける。

 

「困るんですよねぇ、例の研究は承認しましたが、セフィロスに協力してもらうという説明は聞いていませんよ」

 

「け、研究の許可が下りたなら誰に手伝ってもらっても構わないではないか!」

 

焦りながらも嫌いな人物に屈しないという必死の思いがホランダーの表情から見て伝わってくるが、対照的に余裕を持った態度で不気味にあざ笑う宝条。

 

「それは他の誰かだったらの話ですよ。

 セフィロスならば一度私に話を通してくれないと。

 まぁそこまでしても()()()()()にはなるとは思いませんがね」

 

「ッき、貴様ッ!!

 言わせておけば、私の生み出した二人は失敗作では断じてないッ――!!!」

 

奴の見下した発言が決め手となり今まで溜まりに溜まった鬱憤が暴発したのだろう。

叫びながら今にも殴り掛かろうとするホランダーの腕を俺は咄嗟に掴み抑えた。

 

「離せ!セフィロス」

 

「落ち着けホランダー博士」

 

宝条はその様子を見ても微動だにせず表情を一切変えずに「やれやれ」と小さな溜息を吐く。

 

「手を出そうとするなど、自分で反論出来ないと証明しているようなものじゃないか」

 

ホランダーは俺を振り解くなど出来るはずもなく、歯を食いしばりながら火に油を注いだ相手を恨めしそうに睨みつけている。

果たしてジェネシス、アンジールを侮辱されたからなのか、自身の研究を否定されたからなのか俺にはわからないが、今回ばかりは相当に頭に来ている様子だった。

 

「宝条、いい加減にしろ。

 俺はホランダー博士に協力する、そっちの意見など知った事か」

 

このままでは埒が明かないと思い、自分の意志を奴にハッキリと示す。

向こうは少々考える素振りを見せるもすぐにどうでも良いといった投げやりな態度となり

 

「……そうかい、なら好きにするがいいさ」

 

そう言って資料室の奥に消えて行った。

視界から消えもう大丈夫だろうと抑えているホランダーの腕を開放する。

 

「すまんな、少しだが溜飲は下がったよ」

 

「宝条はああ言ったが、俺は貴方達の研究の方を信じる」

 

「そうか、その信頼はガスト博士が占めているのだろうがそれでも感謝する。

 詳しい内容は研究室で話そう」

 

信頼の大部分は当たっているが自分の記憶よりも幾分かまともなホランダーにも実は少々芽生えていた。

俺は言葉を濁すように返事をしたのだが、それでも向こうは宝条の思い通りにならない場面を見たことが嬉しいのか上機嫌となっている。

ホランダーに連れられて研究室に向かえばガスト博士がすでに中で待っており珍しい組み合わせで登場した俺達を見て「私が出る幕は無かったみたいですね」と全てを察したようだ。

 

S細胞の提供がこの先にある悲劇の回避に繋がればいいと二人の博士の説明を聞きながら期待を寄せるのであった。

 

 




誤字報告ありがとうございました
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。