第28話 転機
〈ソルジャー適性検査の結果通知〉
社員番号:××××××
氏名:クラウド・ストライフ
性別:男
判定:不可
理由:魔晄により精神崩壊を招く恐れが有り施術が困難と判断したため。
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ウータイとの戦争は神羅カンパニーの勝利で終わった。
ここミッドガルは勝利に沸き立つ市民で都市全体が軽い興奮状態と言っても過言ではないだろう。
テレビでも連日、ウータイとのこれからの関係についての解説ニュース、神羅カンパニーのヒストリー番組、各幹部に対するインタビュー等既に見飽きるほど流している。
しかし、そんな中でもついつい目についてしまうのはこの戦争で大活躍したとされるソルジャー部門を紹介する番組だ。
部門全体の説明、現統括から戦時中であった出来事の解説、各人員のドキュメンタリー等……
特に1st特集は当の本人たちはメディアに露出しないのにも関わらず視聴率が稼げるのかゴールデンタイムに何度も特番を組まれるほどだ。
子供時代の俺ならば食い入るように見たであろうが、今はその番組をあまり見たくはなかった。
『俺、ソルジャーになりたいんだ』 『セフィロスみたいな最高のソルジャーに』
故郷の幼馴染に夢を語り、希望に抱いて村を出た。
しかし俺は成れなかった。
夢だった職業に、憧れの存在に。
それでも、あの世界に名だたる大企業の一社員として、治安維持部門の制服に袖を通したときは少なからず誇らしかったし、前向きに考えようともした。
だけど身近でソルジャー達を見るようになれば、自分を誤魔化せるはずもなく、やるせない気持ちが何日も続いている。
でも俺はどうすればいいかわからず、日々の業務にひたすら真面目に従事するだけの毎日を送るばかりだった。
初めて届いた母親からの手紙には当たり障りのない故郷の日常や身の回りのちょっとした出来事の内容と共に『暇が出来たら帰っておいで』という文が書かれていた。
返信には自分でくだらないと分かっているのにプライドが邪魔をして『早く一人前になるためにしばらくは帰れない』とつい強がって出してしまっていた。
「そろそろ準備をするか……」
ボソっと呟き、制服に着替え装備の確認を行う。
今日の任務はミッドガルの下層にある弐番街スラムのとある一部セクターのモンスター掃討だ。
戦争も終わり、神羅カンパニーは滞っていた都市開発に再び力を入れるべく持て余している神羅兵を使い、プレート内部、スラム街及びミッドガル周辺の整理を進め始めていた。
モンスター掃討もその一つであり、またスラム街から通う神羅社員の安全確保やスラム住民の悪感情の抑制も目的に含まれているのだろう。
「仕事は仕事だ、切り替えて行こう」
やる気の出ない自分に対して口から声を出し己の尻を叩く。
そう言えば事前に聞かされている内容では今日の指揮を執るのはソルジャー部門の人間だそうだ。
治安維持部門の兵がソルジャーの指揮下に入るのはそこまで珍しい事ではない。
しかし弐番街スラムのモンスター掃討など、治安維持部門の兵だけで間に合うような任務であり、実際に数回はソルジャー無しで行っている。
強力で危険なモンスターが出たとの情報も聞いていないので尚更ソルジャーが必要なのか疑問である。
とはいえ俺がそんな事考えてもしょうがないと開き直って、かなり早いが遅れるよりは良いと思い集合場所に向かった。
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神羅ビルのロビーを抜け、正面玄関に辿り着く。
指定された集合場所には、同じ制服の人間はまだ誰もいない。
代わりに目の前で何故か勢いよくスクワットをしている者が一人そこに居るだけだった。
服装からしてソルジャーみたいだが、今は集合時刻よりだいぶ早いので任務の関係者なのか、ただの筋トレ中の人なのか判断に困る。
声を掛けようか迷っているとあちらが俺に気付いたようでスクワットを止めこちらに近付いてきた。
「お、来たか!
こんなに早く来るなんてやる気十分だな!」
「えっと、今日の弐番街スラムの任務でここに来たのですが」
「うん、俺もそれ。
ソルジャー2ndのザックスだ、よろしくな」
アッ!?と思わず心の中で叫んでしまい、慌てて姿勢を正し、自分の所属を申し上げる。
「ッ失礼しました。
治安維持部門、都市警備課、クラウド・ストライフ下級兵です」
「いやいや、そんなガチガチにやらなくて大丈夫よ?
そっちは上下関係すげー厳しいみたいだけどこっちはあんまり気にしないから」
にこやかな表情でそう告げてくるソルジャーの人だったが、こちらとしては入社して以来コレで通して来たのだ。
いきなりしなくても良いと言われてもそこまで器用な人間でない事は自分が分かっている。
「ま、とりあえず気楽にしてくれクラウド。
俺の事はザックスと呼んでくれて構わないから」
「ぜ、善処します」
「固いなぁ~、もっとこう、フレンドリーにいこうぜ!
クラウドはどこの出身なんだ?
好きな子とかいる?」
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初対面なのに近い距離間でコミュニケーションをとってくるソルジャーの人……ザックスは神羅カンパニーの中でも一際目立つ存在で部門を超えて名前が広まるくらいには社内でもちょっとした有名人だ。
2ndながら1st並みの戦闘能力が有り、あの英雄から直々に手解きを受けるソルジャー部門が期待する次世代のエース。
人柄も良く、お調子者だがやるときはやるという、まるで物語の主人公みたいなタイプの人物。
俺も話だけは聞いていたが実際に会ってみると噂は本当だという事が雰囲気からすぐに感じ取ることができた。
彼に戸惑いながらも任務のメンバーが集まるまで会話を続けていれば、人付き合いの苦手な自分がいつの間にか自然体のまま話が出来ている事に気付くのに時間はかからなかった。
「そういえば、今日の任務って指揮はザックスが行うの?」
「そのとおりだぜ。
そして俺の1st昇進にもかかっているんだ、実はな―――」
ザックスは右手の親指を自身に向けながらそう言って、今日の任務の重要性をアピールし説明を始めた。
聞くところによれば他にもう一人ソルジャー1stが同行してザックスが部隊を率いる能力が有るかどうかを見極めるというのだ。
「つまり昇進はその人次第ってわけ?」
「そーいうこと。
ま、同行する1stはアンジールっていう俺を推薦してくれた人だしまぁ大丈夫だろ」
昇進のかかった任務なのにどこか楽観的で、あっけらかんとしている彼を見て自分にもこれくらい図太い神経があればなどと羨ましく感じていた。
そのうちに集合時刻が近付くにつれて、他の一般兵もチラホラ現れ始め、10分前には1st以外は全員揃う形となった。
メンバーは俺含めて5人であり横一列に並ぶ。
目の前には正面玄関を背にする形で一人一人をしっかりと見据えて頷きながら腕を組み仁王立ちしているザックスが居る。
「よーし、全員揃ったな。
後もう一人ソルジャーが来るからそれまで休めの姿勢で待機だ」
「「「「「ハッ」」」」」
「それにしてもアンジール遅いなぁ、飯でも食い過ぎて腹でも下したか」
任務開始まで残すところ数分もないのに一向に現れないソルジャー1stに対して突拍子もない事を口にして「アハハッ」と笑うザックスであったが背後から登場した人物によってその表情はすぐ様ひきつる事になった。
「残念ながらアンジールは来ないぞザックス」
「ゲッ!セフィロスッ!」
予想だにしなかった英雄の登場により現場にはピリッとした空気が走り、休めの状態をとっていた俺達一般兵は全員すぐに直立不動の姿勢になった。
「聞いてないよ!」
「推薦者が監督したら可笑しいだろう」
「うぐッ、た、確かに」
ガクッとうなだれるザックスを見て呆れた表情で腰に手を当てる英雄。
「まったく、大丈夫か?
今日の俺は一切何もしないからな。
それから一般兵諸君、この任務に俺は居ない者と思って欲しい」
初めて間近で見た感動も一瞬で過ぎ去り、こちらに顔を向けて話す英雄に対して残った印象は
クラウドはまだ入社して2か月立たないくらいのイメージです
原作時系列的にBCよりも前ですね
クラウドの登場シーンだけ並べるとBC→CC→本編となるんですが
BCではけっこう尖がってます
CCだと仕事に慣れてちょっと余裕が出てきた感じはあります。