セフィロスに休みを言い渡した翌日、朝食をとっている私の元に宝条博士が訪れた。
今日の休みを不服に思い、実験すべきだと進言しに来たのだと思っていたらどうやらそうでなく、別件で不可解な点が有ることが別の研究員から報告がありそれを伝えに来たと言う。
「ガスト博士、お食事中に失礼ではありますが、一つ報告があります」
「すでに食べ終わった所だ、気にしないでくれ。それより宝条くん、報告とは一体何かな?」
空になった食器を端にやり、宝条博士の報告に耳を傾ける。
「ガスト博士、それではまずこちらの資料を御覧ください」
宝条博士から差し出された資料を受け取り内容を確認する。
どうやらこのプロジェクトの最初期に行った動物実験についてのようだ。
「これはジェノバ細胞を埋め込んだラット達の経過を纏めた資料のようだが…」
「そうです、始めた当初から現在までのね」
椅子に腰を下ろしこちらを見つめながら話を続ける宝条博士。
「ラットについては数回試しただけですぐにサルによる実験をしたのはガスト博士も記憶にあると思いますがラット自体も経過観察は続けていたのですよ」
「それは知っているよ宝条くん、ジェノバ細胞に適合出来なかった個体は早々に破棄されて残ったのは1匹だけだったと記憶している、その後は観察だけなので別の研究員に任せたはずだが」
当時は神羅の上層部が結果を急がせるあまり早々にラットからサルに実験を移行したのを思い出す。
完全に安全を確認してから実験を進めて行きたかったのだが、当時は私も若く焦っていた気持ちも確かにあった。
ただサルをとばしてヒトで行うよう求めてきたのは流石に安全も不透明な状態では危険だと突っぱねた。
その後、サルの実験は比較的安定していたのでラットという種自体がジェノバ細胞と相性が悪かったのだと判断したのを覚えている。
「えぇ、その研究員からの報告は私がまとめていましてね、ラットはまだ生きているのですよ」
「まだ生きているだと……
あの実験からはすでに5年以上も経過しているではないか!?」
思わず声を上げてしまったがすぐに落ち着き顎に手を当て考え込む。
実験用ラットの寿命はせいぜい3~4年、特別長生きだったとしても流石に5年以上は常識を疑う。
どういうことだと頭を悩ませているのをよそに宝条博士は話を続ける。
「私もね、最初は長生きだなくらいにしか思わずに気にも留めていなかったのですが流石に最近怪しいと思いましてね、昨夜そのラットを改めて調べたところなんと老化自体していなかったのですよ」
「老化自体していなかったということは、不老ということか?」
「さぁわかりません、なので詳しく調べるために今までジェノバ細胞を投与した実験体たちすべての細胞を改めて採取したいのですが構いませんよね?」
クックックッと怪しい笑みを浮かべながら宝条博士は私に提案をしてきた。
私はその提案を即座に受け入れ、指示を出す。
「当然だ、バノーラ村にいる監視員にも連絡して彼女達〈ジリアン、アンジール、ジェネシス〉からも採取するよう頼んでおこう、ルクレツィアくんは君が直接対応するようにしてくれ」
「わかりました、セフィロスはどうするのですか」
「あの子には今日は休みだと伝えてしまっている、採取だけとはいえ研究室に入れるのは忍びないので今日はいい、そっとしといてやってくれ」
セフィロスの件を聞いた宝条博士が不服そうな表情になり意見を述べる
「そうですか、私はさっさと済ませたいのですがね。
まぁガスト博士がそうおっしゃるなら明日にしましょう」
「宝条くん、君はあの子の父親だろう、少しは気に掛けてやってはどうなのかね」
「気に掛けてより良い結果が残せるのでしたらやりますよ。
今のところその必要は感じませんがね、まぁ善処します……」
最後は明らかにこちらの頼みが届いていない、ただ言葉を並べただけのような返事をして宝条博士は部屋を出て行った。
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その後の研究結果で驚くべきことが分かった。
ジェノバ細胞に適合したものはある程度まで成長すると老化を止め不老となる。
いや正しくは、今の自分に必要な身体能力を維持するためにジェノバ細胞が働きかけているといった方が良いかもしれない。
バノーラ村に軟禁されているジリアンは後悔はしつつも現状を受け入れ再婚した相手と、息子の成長を見守っている。
それに対し精神が病んでいるルクレツィアは現実と妄想とが入り交じっており、時間の経過が自分でも分かっていないようでセフィロスの事はまだ赤子だと思っているようだ。
そして両者を見るとジリアンはしっかりと老いているのに対し、ルクレツィアはまったく老いていないのである。
アンジール、ジェネシス、そしてセフィロスと子供達もしっかり成長はしているので特に精神状態が大きな要因となっているようである。
さらに時が経つと子供達は普通の子供と比べて身体能力の上昇が凄まじいことがハッキリとデータで確認できるようになっていた。
この結果を聞いた宝条博士はクックックッといつもよりも若干高笑いしながら、「若い期間を維持できてさらにこの身体能力の高さならうまく利用すれば最高の兵士が作れるな」などと恐ろしい事を言う。
彼のその言葉を聞いたとき、実はとんでもない思い違いをしていたのではないかと恐ろしくなった。
古代種とは伝承によれば約束の地にたどり着くために長い旅をしていたのだという。
長い旅であるならば辛い状況に適応出来るように身体能力が高いのも、若い時期を維持しようとするのも納得は出来るが、果たしてそれで良いのだろうか。
私は自らをなんとか肯定しようと無意識に都合の良い解釈をしていたが、それもしばらくしたら不可能になってしまった。
実験体であったジェノバ細胞を埋め込まれたサルが世話係の研究員を殺したのだ。
さらに研究員だけではなく、襲われている研究員を助けようとした銃を持った警備員すらも殺してしまった。
その後、数名の警備員でサルにとどめを刺したそうだが、調査のため運ばれてきたサルを見て愕然とした。
それはサルとはとても呼べるような状態じゃない
検証を進めていくと、身体能力がある一定まで向上し限界を迎えるとそれを超えるためにジェノバ細胞が突然変異を起こし身体構造を劇的に変化させる事がわかった。
その結果、安全のために残っていた実験体のサルたちはすべて処分された。
ヒトの方もすぐに処分し、プロジェクトを中止にしたほうがいいのではないかと唱える神羅社員や研究者もいたが、すぐに私は彼女達や子供達にも生きる権利はあると反対をした。
宝条博士、ホランダー博士など主要メンバーも賛同してくれていたおかげで、さらに厳重な管理を出来るよう研究所をニブルヘイムからミッドガルに移管する事に同意することで被検体達の生命は保障された。
ただ宝条博士達の反対理由は私とは恐らく違うだろうなというのも感じてはいる。
プロジェクト当初の私の目的、そして他のメンバーの目的との相違が深まっていったのはこの時からだった……。
ちょっと言い訳します
そもそもいきなり人体実験に踏み切るような人にイファルナさん惚れますかね?
さらにイファルナさんと出会う前は古代種自体のサンプルがないのに
何をもってジェノバ≠古代種だと判断したのですかね
古代種は実は凶暴だった等の伝承があったりしたら分かりますけど
あとジェノバは自由に擬態できる=細胞を変化させる事が出来ると解釈しています