「な、なんでこいつらがここにッ!?」 「騙されたのか……」
「クソッたれ、ソルジャーはジュノンに居ないんじゃなかったのか!!!」
「死んでも星に還るだけだ、怯むな!」 「リーダーが来るまで持ち応えるんだ」
「もう駄目だぁ」 「ごちゃごちゃ言ってねぇでお前らも戦……ぎゃあぁぁぁぁ」
「オイ!今一人やられッッ――」
本来であれば成功した
アバランチ側が事前に、とある
兵力の差はあるものの警備兵だけならば奇襲により十分勝機はあったはずなのだが……。
実際に事を起こしてみれば、何処に潜んでいたのであろうか大量のソルジャーが現れて、今回の作戦に参加したアバランチ兵は成す術もなく無力化されてしまった。
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(私がみんなを…救い出す)
漁船にカムフラージュしたアバランチの小型船が人気のないジュノンの港に静かに停泊する。
船の中からやや暗めの茶色の髪をした女性が港に降り立つと、纏っていたマントが風になびく。
「無茶です、エルフェさん。
街にはソルジャーが大量にいて先発隊はすべてやられたようです。
ここは一旦引きましょう」
「ダメ、今助け出さないと神羅に何されるかわからない……」
エルフェと呼ばれた女性は海を背にしてジュノンの都市を睨みつける。
その飴色の目には憤りと共に揺るぎない決意が宿っていた。
「しかし、シアーズさんとの定期連絡も数時間前から途絶えています……。
撤退のご決断を!」
「私は……、私はアバランチのリーダーだ!
ここで仲間達を見捨てるわけにはいかない!」
随伴してたアバランチ兵の必死の説得も虚しく、エルフェは制止を振り切り突入しようとする。
その時――。
「なッ!!?」
エルフェが気配を感じた時には既に攻撃が届く直前であった。
咄嗟に装備していた剣でなんとか受け止めることが出来た……いや出来てはいなかった。
自分の剣と相手の刀がぶつかった衝撃で彼女は仲間もろとも吹っ飛ばされてしまった。
「
攻撃を仕掛けてきた者の魔晄色の目が冷たい眼差しで倒れ込んだエルフェを見下ろしている。
「セ、セフィロス……」
目の前にいるのはソルジャーの中でも圧倒的な戦闘能力を持つと言われる神羅の英雄であった。
一緒に居たアバランチ兵はエルフェが盾になる形であったので一命は取り留めた様だが衝撃の余波で気を失っている。
剣で身体への直撃は防いだのにもかかわらず、エルフェは立ち上がるのが困難なほどダメージを受けていた。
「クッ…こんな…もの……」
仲間の為、やられるわけにはいかないという思いを胸に剣を杖のようにして体をなんとか持ち上げるエルフェ。
そして目の前の敵に対して根性で剣を構えた。
それを見てセフィロスは応えるように正宗を向ける。
「ハァ…ハァ…。
わたし……た…ち…の……邪魔をするなぁ!!!!」
「眠っていろ」
自分の言葉に対する敵の返答が耳に届くより早く、正宗の峰がエルフェの身体に食い込んだ。
「あぐッ……」
既に満身創痍な彼女には見切れるはずもなく、その一撃で気を失ってしまう。
意識を失った体がその場に倒れ込もうとするがセフィロスの右腕が優しく支えた為、彼女が固いコンクリートに激突することは無かった。
セフィロスはそのまま彼女を右肩に担ぎ、その場を後にしようとした。
すると街の方から遅れてやって来たソルジャーが彼の元に駆け寄ってくる。
「セフィロース、こっちは大方片付いたぜ……ってオイオイ、女の子になんてことしてんのよ!」
自分の名を呼ぶ声が聞こえたのでセフィロスは足を止め、呼び止めた声の主へ顔を向けた。
「ザックスか、安心しろ殺してはいない。
それよりアンジールとジェネシスから連絡は?」
「あ、あぁミッドガルで待機していたアンジールはタークスと協力して魔晄炉を爆破しようとしたシアーズって奴を捕獲したみたいだ。
こっちに居るジェネシスはフヒトって奴を倒しちまった。
多分、そいつが今回のジュノン襲撃の指揮を執ってたみたいで、他のアバランチ共も投降し始めたぞ」
「ならば俺は撤収する、現場の指揮はお前に任せる。
その後、報告書をまとめておけ」
「えぇっ!?あっ、ちょっと待っ…」
つい最近、1stに成ったばかりのザックスにとって今回の任務はいつも以上に張り切っていたのだが、最後にめんどくさい役を拒む隙も無く命じられてしまい困惑する。
押し付けてきた当本人はザックスに指示を出すと担いだエルフェと共に近くで待機していた神羅のヘリにさっさと乗り込みミッドガルへ帰還してしまった。
「帰ったら文句の一つくらいは言わせてもらうからな!」
不満を口にしながらも部下たちに指示を出し現場の後始末を必死でこなすが、被害状況、詳細となった敵の情報、作戦費用の支出計算など、この後の報告書の量が途方もない事になりそうで今から頭を抱えるザックスであった。
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セフィロスがジュノンから連れて帰ったエルフェは敵のリーダーという立場であるため、神羅では最重要参考人として
タークスとは表沙汰には出来ない仕事を行う少数精鋭の集団である。
戦闘能力だけ見ればソルジャーのトップ層には及ばないモノの諜報、隠蔽、裏工作、暗殺、護衛など多種多様な特殊任務に携わり、それらをこなせる能力が必要なため、
当然、敵から情報を引き出す
しかしその中で一人だけ動揺を隠し必死で平然を装っている人物がいる。
エルフェと同じ髪の色をした中年の男性、タークスの主任であるヴェルドだ。
(まさかフェリシアなのか…!?)
過去にあった、とある事件で瀕死の重傷を負い、科学部門にて治療を施されるも行方不明になったと聞かされていた最愛の娘フェリシア。
その娘に瓜二つであるエルフェは現在薬で眠らされタークス専用の尋問室で拘束されている。
「ヴェルド主任、準備が整いましたので尋問開始の許可をお願いします。」
「今回の尋問にはもう少し事前情報が欲しい。
詳しい報告書が提出されるまで待て」
「……承知しました」
いつもなら準備が整い次第、即座に開始する尋問に珍しく待てとの命令が下されたので少々違和感を覚える部下。
しかし同時に信頼する主任の言葉であるため、特に問い詰めることもなくその場は素直に従った。
その後ヴェルドは最大の選択を迫られる事になる。
何故なら科学部門からフェリシアの身体情報とエルフェの身体情報を照らし合わせたところ完全に同一人物であるとの結果を突き付けられたからだ。
つまりアバランチのリーダーはヴェルドの実の娘である事が確定する。
『この事実に関しては
科学部門の仕事は分析とタークスへの報告までが責任の範囲である。
その先の情報の扱い、開示する相手の選択、社長への報告はタークスの仕事である。
報告を受けたとき、ヴェルドは悩みに悩んだ。
行方不明と言われた時から娘の事は片時も頭を離れることなく時間を見つけては捜索を行った。
手掛かりは中々掴めなかったが、それでも何処かで生きていること信じて諦めることはしなかった。
やっと再会出来たのに、自分の置かれた立場のせいで素直に喜べない。
だがヴェルドは
(私はタークスとして失格だな)
会社に忠誠を誓う身として、仕事よりも私情を優先するなど言語道断である。
(
ヴェルドはこの日、一身上の都合により神羅を退社することに決めた。
ただし正式な手続きを踏んでの退社ではない。
会社の暗部であるタークスの人間が神羅を去る場合、情報漏洩を起こさないようにする事が絶対である。
故に会社を辞めるという事は命を失うという意味だ。
尋問を先延ばしにするにも限界がきている。
娘という情報は自分がせき止める事が出来る立場であっても科学部門のアノ男が知っている以上気掛かりである。
退社する上で唯一の心残りは信頼している部下たちを裏切る事だった。
本当ならば正直に話して謝りたいと思っているのだが、タークスとして信頼してるからこそ彼等には話すことは出来ない。
知ってしまえばその時点で敵対である。
その逆でヴェルドの手伝いを望まれてもそれはそれで茨の道。
今の生活は破綻し部下共々神羅から付け狙われる逃亡生活である。
もう後には引けない。
ヴェルドはタークス主任と言う立場を最大限活かし
BC本編でもジュノンの演説は襲撃されてからタークスを呼び寄せていますから
油断していたのでしょうね。