「本日を持って諸君は治安維持部門からこのソルジャー部門へ異動となった。
前の部門とは勝手の違う部分が多々あるとは思う。
君達には色々と苦労を強いるだろう。
数々の困難も待ち受けていると思って欲しい」
神羅ビルには数百名は収容可能な多目的ホールが存在し、今日はソルジャー部門が使用許可を取っていた。
そこで俺を含む元治安維持部門の者達が整列して、壇上のソルジャー部門統括の言葉に耳を傾けている。
なぜこのような大規模な異動があったのかというと、一月ほど前にソルジャー部門が新体制を発表した事が発端だ。
内容は同部門内で候補生の枠を設けるという事であった。
しかし、誰でもその候補生に就けるわけではなく、事前にソルジャー部門が独自に調査を行っていたそうで、適性があると判断された者のみ候補生になれる権利があるという。
正直、自分には関係のない事だと思っていたが、発表直後にソルジャー部門から呼び出しを受けた。
まさかと思い伺ってみると、俺が候補生となる能力が十分に備わっているとのことで、異動するかどうかの選択肢を与えられた。
「しかし強制してここへ連れてきたのではない。
ソルジャー部門への異動を希望したのは他ならぬ君達である。
当然、皆既に覚悟は決まっているのだろう」
返事をするまでの猶予は1週間と言われたのでその間じっくり考えた。
ミッドガルに来て知ることが出来た、故郷を出るまでいかに小さい世界で生きていたのかという事を。
憧れだけではない現実。
間近で見た誇張無しのソルジャー達の実力と覚悟。
自分が本当に彼等のようになってやっていけるかどうか。
「今後の予定についてだが、まず複数のグループに分けそれぞれ専任の者が君たちを受け持つ。
その者が一旦は直属の上司となり、また教官でもある。
彼等の指示に従い、まずはソルジャー部門に慣れて欲しい」
見返してやりたい奴らがいる。
安心させたい人がいる。
約束を果たしたい人がいる。
一度は諦めたソルジャーへの道。
そして俺は二度目の決意をした。
「最後になったが、我々は君たちを歓迎しよう。
ソルジャー部門の更なる発展に貢献することを期待する。
以上」
夢に向かって再び歩むことを――
――ラザード統括の話が終わると、その日は解散となった。
皆は忙しくなる明日へ向けて早めの休息を取るため、移り住んだばかりであるソルジャー部門の寮へ向かっていく。
俺は、少し用事があったので街へ向かうため神羅ビルのエントランスまで下りてきた。
するとそこで以前任務を共にしたソルジャー1stのザックスと、黒いスーツをビシッと着こなし栗色でウェーブが掛かった髪の女性が何やら話をしているのが目に入る。
会話を邪魔をするのは申し訳ないが、これから上司になる人に一言挨拶をするべきだと思い近寄っていくとザックスが俺に気付いたらしく先に声を掛けてきた。
「よぉクラウド、統括の話はもう終わったのか」
どうやら候補生になった事は既に知っていたらしい。
顔を合わせたのはコレで2回目のハズなのに陽気に話しかけてくれたおかげ緊張が和らいだ。
なので俺も前と同じような態度で返事をした。
「うん、思っていたよりあっさりと終わったよ。
治安維持部門の時は延々と神羅の社員となる心構えを聞かされたから拍子抜けしちゃった」
「アハハッ、ハイデッカー統括は話長いもんね」
俺の言葉を聞いたザックスと一緒に居た女性が笑いながら同意してきた。
社内では見かけたことのない人であり、もしかしたらザックスの恋人?なんて考えが一瞬過ぎったがすぐに相手が自己紹介をしてくれたおかげで、勘違いしたままにならずに済んだ。
「初めましてだよね?
私はシスネ、所属は総務部調査課よ。
一応今度から同じ部門になるわね」
そう言って彼女は片手を目の前に差し出して来た。
それに応えるようこちらも彼女の手を握り挨拶を交わす。
「こちらこそ初めまして、
それにしても総務部調査課って事はつまりシスネさんは…」
「思ってる通りだぜクラウド。
シスネはタークス、すっごいエリートだぜッ!」
「なんでザックスが誇らしげなのよ、まぁ悪い気はしないけど……。
そして
「えっ、そうなんですか?」
ラザード統括が話していた担当者の件は当日になるまで誰になるか分からず、てっきりソルジャーの誰かが受け持つのだろうと思い込んでいたので驚いてしまった。
「あなた、さっき
彼女の指摘を受けて思い返してみると、確かに発表の場でも人事発令でも先程も
これも自分が勝手に都合よく解釈していたのだろうか。
という事はもしかして俺はソルジャーではなくタークスの候補生なのかと不安になる。
「いや、その言い方!
クラウドが不安そうな顔になっちまったじゃねーか」
「ごめんごめん、大丈夫よ。
ソルジャーにも成れるチャンスはあるわ」
どうやら自分の内心が分かりやすく表情に出ていたようで向こうがクスクス笑いながら続きを説明してくれた。
「まぁ明日になればわかる事だから今更隠す事でもないわね。
あなた達の候補生ってのはソルジャーかタークスって事なのよ。
今回、候補生の殆どはソルジャー適性の不可判定を受けた人たちなの。
あなたもそれは身に覚えがあるわよね?」
「はい、確かに俺は不可判定でした。
ただ統括の話では訓練次第でソルジャーになれるという事でした」
「まず今までソルジャーが行っていた訓練ってのはソルジャーの手術を受けられる適性が有った人前提の訓練なの。
で、今回の候補生は適性が無い人ばかりだからまずはタークス式の訓練を実施してもらうわ。
何故なら私達タークスはね、特別な手術は何も受けていないのよ」
タークス達の事実を告白された俺は衝撃を受けた。
彼等の戦闘能力を直接見た事はない。
しかしタークスの任務に同行した同僚からはソルジャーに引けを取らない強さだったと聞いたことはある。
なので何かしら肉体改造は受けている物だとばかり思っていたのだ。
「ソルジャーの手術ってのは裏技みたいなモンでさ、タークスは言うなれば正当に鍛え上げたトップアスリート。
俺は正直尊敬してるんだ」
「あら、嬉しい事言ってくれるわねザックス」
「まぁな。
つまり今までのソルジャーは即戦力を求められたけど、クラウド達はじっくり鍛え上げるって事だ」
彼女の説明を補足するようにザックスが分かりやすく教えてくれる。
同じ任務で二人は良いコンビネーションで戦っていたのだろうという事が伺える。
「そういう事よ、まずはソルジャー3rdと同等までは鍛えてあげる。
その後、ソルジャーからの指導に切り替わるわ。
因みに戦闘能力以外にも光るモノがあればそのままタークスとしての道もあるからね」
「タークスの道はソルジャー以上に厳しいけどな」
戦争も終わり、部門内の余裕が出来た。
予算も
なので次世代の育成に力を注いでいく方向になったのだそうだ。
「そういうわけなんですね。
シスネさん、明日から宜しくお願いします」
そう言って俺は彼女に頭を下げた。
「死んだ方がマシってくらいビシバシいくから覚悟してね」
「頑張れよクラウド。
プライベートな特訓なら俺も付き合ってやるから。
なんなら1st総出で鍛えてやるぞハハハッ」
なかなか恐ろしい事を満面の笑みで言い放った二人は「明日ね」「またな」と言って立ち去って行った。
話を聞いてちょっと臆したがすぐに立ち直る。
俺はもう後ろを振り向かないと決めたのだ。
決意表明としてこの後故郷へ二通の手紙を出す気でいる。
一通は母への手紙であり、今まで誤魔化していたことを正直に謝り、その上でソルジャーになるために心機一転したこと書いた。
そしてもう一通は……初めて出す幼馴染への手紙。
ろくにやり取りもしていないのにいきなり手紙を送ってごめん。
だけどどうしても伝えたい事があるんだ。
俺はミッドガルへ来て神羅に入社したけど実はソルジャーになれなかったんだ。
自信を無くして、恥ずかしくて君へ報告が出来なかった。
でもソルジャー部門から候補生として誘われた。
ソルジャーになるチャンスを貰えたんだ。
あの時、給水塔で交わした約束。
今度は俺から改めて伝えるよ。
ティファ、君が困っていたら俺は絶対に助けに行く、約束する。
手術受けてなくてもソルジャー並みかそれ以上に戦える人間がそこそこいるFF7の世界って……。
シスネのグループは比較的マシだと思いますよ多分
さてこの章はこれで終わりです。
次の章はアンジールとジェネシス(ともしかしたらホランダー)にスポットをあてます。
また今回のように間を置かずに読んで欲しいので書き溜めて一気に投稿します。
毎度申し訳ありませんがしばらく時間を下さい。
宜しくお願いします。