セフィロス逆行物語   作:怪紳士

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第4章
第36話 新療法開発


【神羅ニュース!!科学部門が新しい治療法を開発】

 

昨日、神羅カンパニー科学部門より魔晄中毒患者に対しての新しい治療法を開発したとの発表があった。

魔晄中毒とは魔晄を浴びて精神に異常をきたしてしまう症状の事である。

患者の多くは魔晄に関する仕事に携わっていた者達であったり、神羅カンパニーの開発した一部兵器のエネルギーは魔晄であるため事故などにより()()達が中毒者になるケースも少なくない。

これまで有効な治療法が確立されておらず、中毒者本人の時間経過による回復に頼る以外無かったが今回の発表により状況は一変したと言ってもいいだろう。

この新療法は科学者であるホランダー氏が主導する研究プロジェクトで開発したとされており、氏いわく『本来は別の目的であったが、応用すれば魔晄中毒の改善にも繋がると思い開発に至った』とコメントしている。

同部門統括の宝条氏は『皆様の……お役に立てれば幸いです』と謙虚な対応であった。

我が社の社長は『まずは臨床試験でより正確なデータを集め、安全であると確定次第、一般市民への治療に許可を出すつもりであるが、苦しむ人々に為に一日でも早く開始できるよう全社を挙げてこのプロジェクトを支えていくつもりである』と前向きな姿勢を見せた。

ホランダー氏のプロジェクトの成果は魔晄中毒に苦しむ患者達が大いに期待できる発表であったと言えよう。

 

 

 

 

 

==========

 

 

 

 

 

「ガスト博士、コレで良かったのですか?」

 

自身の携帯端末で神羅カンパニーの広報から発表された記事を見ながらホランダーはラボの片隅にある休憩所で缶コーヒーを片手に一服しているガストに向かって言った。

 

「自信を持ちたまえホランダー博士」

 

「しかしこれでは私の手柄みたいでは……」

 

今回の治療法はガストの発想の転換により生まれることなった物であり、記事のどこにも彼の名が無い事にホランダーは珍しく後ろめたさを感じていた。

 

「無論、手伝ってくれた他の研究員達のおかげもあるが、一番の手柄は君が一人でも〈プロジェクト・G〉の研究を続けてたからだ。

 元々の基礎研究があったからこそ出来たモノで私はちょっと知恵を貸したに過ぎんよ」

 

「まぁそこまで言っていただけるなら素直に受けておきます」

 

「それでいいんだ、それにあの宝条くんの驚いた顔が見れただけで私は満足だ」

 

この新療法が出来た事を二人が報告した時の宝条は『まさかコイツが!』とでも言いたそうな表情であった。

魔晄中毒者の治療に関しては会社から科学部門に要請は出ていたが宝条は他にやることがあるとずっと後回しにしていた。

ある意味でホランダーは一矢報いることが出来といえよう。

 

「さて、ジェネシスとアンジールの治療についてだが……」

 

ガストは手に持っていた缶コーヒーを飲み干してこの研究の本来の目的を切り出した。

 

「改めて確認するが、一番の問題はジェノバ細胞の持つ()()()()()()による情報の拡散。

 そしてそれによる身体の劣化だ」

 

空になった缶コーヒーをゴミ箱に捨て、ラボのモニターでデータを見ているホランダーの横に座り話を続ける。

 

「双方向コピーとはG細胞自身の持つ情報を他の細胞に与え、与えられた細胞はその性質を受け継ぎ変化し、元々持つ情報はG細胞へと引き抜かれる現象。

 これは古代種の言い伝えによるジェノバが古代種に化けてウィルスをまき散らし、感染した古代種が心無い化け物となってしまったという事に一致している」

 

データに表示されている数値を指で指しながらお互いに認識のズレが無いか相手の顔の反応を見ながら説明を続けるガスト。

 

「その数値はアンジールのG細胞、ジェネシスのG細胞の2種類を更に他細胞へコピーを行わせたサンプルとそうでないサンプルに分けて、経過を観察したデータだ。

 アンジールの細胞はコピー前後ともに劣化はあまり見られないがジェネシスはコピー後に大きく劣化しているし、コピーをしなかった細胞でも時間経過とともに僅かだが劣化が生じている」

 

「プロジェクト・Gと言っても厳密にアンジールとジェネシスはまったく同じ過程で誕生したわけではないので、そこで差異が生まれたんでしょうな」

 

「うむ、ジェノバ細胞を埋め込んだ母体で生まれたのがアンジールだが、ジェネシスはさらに間接的な過程でジェノバ細胞の投与されたのが結果的に不完全な形になってしまったのだろう」

 

そう言ってキーを押しモニターに表示されている画像を切り替えるガスト。

次に表示されたのはセフィロスの細胞…つまりプロジェクト・Sで誕生したS細胞に関するデータであった。

 

「G細胞が双方向コピーと言う変化を伴う能力ならば、S細胞は他の影響を受けず情報も拡散しない不変の能力。

 本来のジェノバはこの両方の特性を備えていたわけだから、G細胞のみというのは不安定になるのも理解できる」

 

S細胞とG細胞は補完し合っている……正確にはお互いに相手を抑制する存在。

しかし片方が欠けているならば、それぞれの細胞は能力を存分に活かす結果となる。

G細胞は常に変化を求め続け、やがて劣化を引き起こす。

そして……。

 

「仲間を増やすことも出来ず、他者の情報も取り込めない。

 本来とは状況が違う、そんな状態だからこそS細胞は己のみで完璧な()となった……それがセフィロスですか」

 

この世に生を受けた時、その肉体は完成されていた。

S細胞はヒトのカタチを保ったまま。

 

「まぁ私としては彼個人の努力もあったからと思っているのだけれどね」

 

「S細胞を使い、G細胞の劣化という名の変化を止めるのが治療に繋がるわけですか。

 そしてそれは魔晄中毒の治療にも応用できたという訳ですな」

 

ホランダーの問いに簡単な解説を改めて説明するガスト。

その内容は魔晄中毒の詳しい原因について。

魔晄中毒の直接の原因はライフストリームからくる多種多様で膨大な情報が接触者の脳に流れ込むため。

常人では脳が耐えきれずキャパシティーオーバーさせ自我が崩壊するという事がこれまでの研究で分かっていた。

新治療の原理は押し寄せた情報をG細胞の能力で取り込み脳の負荷を下げ、S細胞で情報と混濁し散らばってしまった意識を個として再び確立することにより自我を取り戻すというものである。

もちろんソルジャーの施術に使うような純度の高いオリジナルのジェノバ細胞は一般人に対して危険もあるので、使用するのはG細胞とS細胞を参考にして作られた改良型ジェノバ細胞である。

 

「魔晄中毒治療に関しては治験でも今の所問題は出ていない、患者の状態も良好だ。

 だがこの治療法はあくまで応用であり本来の目的である二人の治療に関しては……」

 

ガストはその先の話を言い淀んだ。

そしてその理由をホランダーが口にする。

 

「二人の()()()()()という目的は達成出来ますが、この治療を彼等が受け入れるかどうかは分からない。

 なにせソルジャーとしての能力は失われる結果になりますから」

 

ガストに変わってホランダーがモニターの画面を変えると二人の治療方法の概要が表示された。

その治療方法は簡単に言えば変化を求めるG細胞を不変のS細胞で抑え込む。

人の手ではS細胞とG細胞の均衡は取れない。

そもそも本来のジェノバとは別の成長を遂げてる肉体を今更元通りとはいかないのだ。

故にG細胞の不活性化が出来る限りであった。

 

「……彼等がソルジャーであることに強い拘りを持っているのは知っている。

 それに関しては素直に応援してあげたい、が……」

 

「ガスト博士、この件は私から彼等に伝えます」

 

ホランダーの発言を聞いたガストは彼の顔を見た。

 

「君が……そうか……」

 

ガストはずっと前から、それこそ共同研究を持ち掛けられた頃から気付いていた。

自分が宝条に対抗する為に利用されている事に。

今回の研究は全てが二人の為を思っての行動では無い事を。

 

「原点は貴方のジェノバプロジェクトでしょうが、プロジェクト・Gの責任者は私です。

 それが筋かと思います」

 

当時はそれでも良いと思って手を取った。

そうでもしなければプロジェクト・Gには関われなかっただろう。

長い付き合いだ、彼の人となりなどは判っている()()()であった。

 

「うん、そうだな、それがいい」

 

「納得して貰えたようで何よりです」

 

そう、所詮は()()()である。

学者たるもの証拠も無しに決めつけるなどもってのほか。

学者たるもの観察眼に優れていなければならぬ。

僅かな変化を見落とすようであれば学者としての先は長くない。

 

「私も年を取ったな」

 

「何を言っておられるのですか、まったく」

 

「いや、特に意味はないよ……。

 これから先も全面的に私は協力するからヨロシク頼むよ」

 

ガストは右手を差し出し握手を求める。

 

「まったく頼もしいかぎりです」

 

ハハッと笑ったホランダーは差し出された手をしっかりと握り返した。

 

 

 

バノーラ・ホワイトジュース一年分は最初に受け取った年から、毎年ファレミス家に届いている。

 

 

 

 

 

 

 




天才と言われながら描写の少ないガスト博士。
二次創作としてはある意味ありがたい存在でもあります。
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