セフィロス逆行物語   作:怪紳士

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第4話 宝条博士

現在のジェノバプロジェクトがニブルヘイムからミッドガル本社に移管することが決まり、研究員達が慌ただしく引っ越し準備の作業を行っている。

地下室で必要な資料のまとめと要らない資料の処分を行っているとガスト博士が訪ねてきた。

 

「宝条くん、後で相談がある」

 

作業する手をいったん止めてガスト博士の方を振り向く。

 

「おやおや、私に相談とは珍しいですねぇガスト博士、どういったご用件で?」

 

「あまり他の人に聞かれたくない話なのだ、作業が一段落してからでいいから私の部屋へ」

 

そう言って去っていくガスト博士を見て私も彼に報告したい()()があるので丁度いいと考え、再び作業を進めて行った。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

作業を終えたので部屋の前に行きノックをすれば中から「入りたまえ」と返事をもらう。

 

「失礼しますよガスト博士、先ほどの相談とはなんでしょう?」

 

扉を開ければいつもいる奥の机にガスト博士がおり、手のひらで手前の椅子に座るよう促して来た。

 

「宝条くんは何か飲むかね?」

 

そう言ってこちらの返事を聞かぬまま愛用のマグカップにインスタントコーヒーを淹れてストーブの上に置いてあるケトルを手に取りお湯を注いでいく。

 

「では同じくコーヒーを頂きましょう」

 

「わかった、少し待っていてくれ」

 

椅子に腰を下ろし待っていると、両手にマグカップを持ったガスト博士が近づいてきて左手のコーヒーを差し出してきたので「どうも」と受け取る。

ガスト博士はそのまま元の机に着いた。

受け取ったコーヒーを一口飲み相手に目を向けるとガスト博士が口を開く。

 

「相談とはこのプロジェクトが当初の目的にはたどり着くことは不可能な事だ」

 

予想の範囲に収まる内容だったので特に驚くこともなく、私はそのまま耳を傾ける。

 

「君も知っている通り、このプロジェクトは古代種を人工的に生み出す、そして古代…」

 

「古代種は()()()()()()()()が出来るから実験体達は何れ約束の地の場所を知ることが出来る、そしてそれを聞き出し約束の地を探し当てる、というのが目的でしたな」

 

「あ、あぁその通りだ宝条くん」

 

話を遮ったが言いたいことは同じだったらしくこちらの言葉に頷くガスト博士。

 

「それで、目的が達成出来ないというのはどういうことですか?」

 

「今から言う事はまだ口外しないと誓ってくれ」

 

「わかりました、約束しましょう」

 

神妙な面持ちで見つめてくるガスト博士は一呼吸置いて語りだす。

ガスト博士は自分のコーヒーにまったく口を付けないでいた。

 

「アレは……ジェノバは古代種などではない。

 全くの別の恐るべき存在、伝承に存在する()()だ」

 

「やはり、ガスト博士もそうお考えでしたか」

 

彼はこちらの返答に驚きを隠せないようで目を見開いている。

こんなガスト博士を見るのは初めてかもしれないなと思いながら私の()()と同じ考えに辿りついていた事を嬉しく思ってしまうのは何故だろうな。

 

「君も気付いていたのか……」

 

「まぁまだ仮説ですがね、とはいえサルの突然変異からして、どうも古代種とは明らかに別ものでありましょう。

 何処かに古代種の生き残りでもいればハッキリとするんですがねぇ」

 

「少なくとも古代種でないのは()()であろう。

 宝条くん、私は君とルクレツィアくんの子供にとんでもない事をしてしまった。

 謝って済む問題ではないが本当に申し訳ない。

 即刻このプロジェクトは中止にしよう、彼らが危険だ」

 

成る程、()()とは流石だなと思い、頭を下げ謝罪してくるガスト博士に目を向けた。

だがジェノバが古代種だろうが厄災だろうが私にとっては興味深い研究材料でしかない。

とはいえ、このままプロジェクトを中止にされたんじゃ私の好奇心は何で満たせばいいのか困ってしまう、それくらい魅力的な研究でもあるのだ。

 

「ガスト博士、お気になさらずに。

 アレについては今のところ安定していますしもう少し様子を見ましょう」

 

「しかし……」

 

「ここでプロジェクトを中止にしたほうがむしろ危険だと思いますがね、研究継続で神羅に利益をもたらすのが絶対条件として会社は実験体達の命を保障したんですよ。

プロジェクトが無くなればアレらはただの危険因子だ、即刻処分されるでしょうね」

 

「だが約束の地の場所へたどり着けないなら利益にするのは難しい」

 

確かに古代種でなければ約束の地の場所なんて分からないだろう。

だが、それとは別にジェノバ細胞は使い道がある。

無論それは神羅への利益にもなることであり十分に好奇心を満たす事である。

ただし目の前のお人好し博士は許可を絶対に出さないだろう。

 

「それに私はこの先も継続して研究なんか出来ない、怖ろしくなってしまったのだ」

 

目の前で頭を抱えて唸っているガスト博士を見て一つ思い付いた提案をしてみる。

彼にとっては悪魔のささやきにも聞こえるかもしれない。

 

「ガスト博士、それでしたら私がこのプロジェクトを引き継ぎましょう。

 今までの責任もすべて私が引き受けますよ」

 

「いやッ!そんなこと出来るわけないだろう、それじゃ私が逃げただけで何も解決はしない」

 

「違いますよ、逃げるのではなくて()()ですよガスト博士。

 貴方は今、だいぶ参っているようだ。

 責任者である貴方がそんな状態ではプロジェクト全体にも悪影響が出そうです」

 

()()という響きに動揺したのかガスト博士は口をつぐむ。

 

「一旦リフレッシュすればまた新たな解決の糸口が見つかるかもしれませんよ?

 だから()()()の休暇を取ってくださいガスト博士。

 なに、貴方が必要になったら私からまた声をお掛けします。

 ()()()()()達の命も必ず保障するよう私が会社と交渉しますよ。

 だからご安心ください、ガスト博士」

 

実験体の命は保障する、私は嘘は言ってはいない。

ガスト博士が淹れてくれたコーヒーは既に冷め切っていた。

 

 

 

 

 

 

 

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