セフィロス逆行物語   作:怪紳士

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第5話 セフィロス その2

最近、屋敷内の様子が慌ただしいなと思っていたら、どうやら研究所をここからミッドガルへ移すようで、もうそんな時期かと時間の流れの速さに驚いてしまった。

子供のころはとても長く感じた年月も大人になれば短く感じるというのは肉体ではなく精神に依存するのは本当だったんだなと昔に知った知識を思い出す。

 

ということは、そろそろガスト博士がいなくなってしまう時期か。

過去の記憶では失踪という扱いになってはいたが果たしてどうなるのか、早めに今の俺の状況を打ち明けたほうがいいかどうするべきかと悩んでいると、過去と同じようにガスト博士から大事な話があると呼び出されてしまった。

 

部屋へ行くとガスト博士の他に宝条もその場に居る。

宝条の方には目もくれずガスト博士に「何の用ですか」と尋ねれば

 

「セフィロス、君に伝えなければならない事がある。

 このニブルヘイムの屋敷からミッドガルという場所へ引っ越しをすることになった」

 

「ミッドガルですか?」

 

「そうだ、ものすごく大きい街だ、君も驚くだろう。

 面白いモノもいっぱいあるぞ、楽しみにしていなさい」

 

たしかこの時、初めて別の場所へ行くということを知ったはずだ。

ミッドガルにはそれなりに興味を感じた覚えがあるが今の俺には何も湧かないな。

いやそれよりも、この時に宝条はこの場いたのだろうかと考える。

そもそも過去を知っているとはいえ全てを鮮明に覚えているわけではない。

この後少し経ったらガスト博士は失踪してしまうので秘密を打ち明けるなら今のうちかもしれないが、宝条には正直知られたくない。

仕方ない、まだ多少は猶予があるから今は諦めようと考えていると

 

「それと、次からはこっちの宝条くん……。

 宝条博士が君の責任者となるので覚えておくように」

 

「えっ……」

 

思わず声を出してしまったがそれも仕方ないはずだ。

鮮明な記憶はないとは言え、これに関しては絶対に聞いた覚えがない。

ガスト博士が失踪していつの間にか宝条が責任者に代わっていたのが『オレ』の記憶だ。

 

「そういうことだ、よろしく頼むよセフィロス」

 

クックックッと笑いながらこっちを見て話す宝条に俺は黙ってしまう。

 

「やれやれ、嫌われてしまったな」

 

「まぁ待ちたまえ宝条博士、きっとセフィロスも驚いているだけだろう」

 

たしかに驚いているがそういうことではないと言いたい。

いったん堪えてこちらの聞きたいことを質問する。

 

「なぜ責任者が変わるのですかガスト博士?」

 

「私は長期の休みを取ることになったのでね。

 その間、責任者がいないのはまずいという事で私が宝条博士に頼んだのだよ」

 

「休み……ですか、どれくらいなのですか?」

 

「それは……」

 

こちらの質問に言いよどむガスト博士を遮るように宝条が口を挟む。

 

「セフィロス、ガスト博士は大変疲れているようでね、お休みが必要なんだ。

 最初は君の事が心配だからと無理をして働こうとしていたんだがね。

 ただ君は私や他の人の言う事にもちゃんと従うようになっていたからそれなら任せられると私に権限を預けてくれたのさ」

 

それを聞いたとき思い出した。

確かに過去、この時期の『オレ』は宝条や他の研究者に対してはあまり従順では無い存在だったかもしれない。

ガスト博士が居なくなって周りに味方がいない状況になったからこそ子供の『オレ』は言う事を聞くようになったのだと。

些細なことではあるがもう知っている過去ではなくなってきているのだろう。

 

「ガスト博士は今日の夜から休暇に入るそうだ」

 

「そういうことだセフィロス、お別れだ、元気でな」

 

やはり知っている過去とは違う、記憶によればミッドガルでも少しはガスト博士は居たはず。

ガスト博士の言葉を最後にその場は解散になり、宝条は部屋を出ていき、俺も部屋を後にする。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

その夜、神羅屋敷を出ていこうとするガスト博士を玄関を出たすぐ側で待っていた。

やがて扉が開き、大きめのスーツケースを手に持ち、いつもの白衣ではなくブラウンのロング

コートを羽織ったガスト博士が出てきた。

こちらにすぐ気付いたのか、ガスト博士は近寄ってきて声を掛ける。

 

「見送りかねセフィロス、ありがたいが明日は早いんだからもう部屋に帰りなさい」

 

「ガスト博士、本当に出ていくのですか」

 

「あぁ、そうだよ、だからしばらくの間良い子にしているんだよ」

 

そのしばらくの間とは、本当はしばらくでは済まない事になりそうだと伝えたい。

その場に立ちすくんでいる俺をジッと見ていたガスト博士だが、俺が動こうともしないと判断したのか諦めて正門の方に向かって行く。

それを見て追いかけ、ガスト博士のコートを掴み問いかける。

 

「教えてください、ガスト博士は本当にお休みなのですか?」

 

その言葉を聞いた瞬間に何かを感じ取ったのかスーツケースを置きガスト博士は俺を抱き寄せた。

 

「セフィロス、本当に…本当にすまない、私を許しておくれ」

 

本当にすまないか……

過去の『オレ』が聞きたかった言葉だろうが聞いても本当の意味を知ることはないだろうな。

今だからこそわかる、これは単に研究所から居なくなることを謝罪しているのではないと。

 

「ガスト博士、俺は別に怒ってはいませんよ、むしろしっかり休んで下さい」

 

「すまない、セフィロス……」

 

そう言っていっそう強く俺を抱きしめるガスト博士。

 

お互い沈黙が続くが「そろそろ行かないとな」と腕を解いて俺の肩に手を置く。

 

「ガスト博士、もし俺が自由になったら博士に会いに行ってもいいですか?」

 

少々驚く顔をしたガスト博士だが、すぐに優しい顔になり俺を見つめる。

 

「あぁいいともっ!是非来てくれ、歓迎するよ」

 

「ありがとうございます。

 俺、楽しみにしていますね」

 

「あぁ約束するさ、その時は美味しい料理も振舞おう」

 

「約束…ハイ!約束です」

 

そうしてガスト博士は立ち上がるとスーツケースを持ち直し、正門を出て行く。

出て行ったあとも一度こちらを振り返り正門に居る俺に手を振ってくれた。

だんだん小さくなり、やがて見えなくなるガスト博士を見届ける。

これが今生の別れにならないようにする事を決意する。

 

時刻は既に深夜を回っている。

明日のミッドガルへの出発はもう少し遅くなってくれないかと、そんなことを考えながら部屋に戻っていった。

 

 

 




Q、さっさとすべて伝えればいいじゃん

A、英雄は不器用なんです
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