『生きるためには喰うしか無かった』   作:ブラウン・ブラウン

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いつも読んでいただきありがとうございます。
もしなんか喋り方とか前と違うなと感じても、最新話が公式設定ですので、こうだったかもと鵜呑みしてください。(作者の記憶力不足)


第25話【世界はまた1つズレていく】

《2015年8月6→10日 外》

 

「さあ、今日からまた外の探索を始めていこうか」

 

 数日間に及ぶ店外清掃も一旦区切りがついたので、そろそろ閉じこもっているだけじゃなく外にも出て行かないと。

 今日の天気は晴れ。ここ数日間の空はずっと晴れで作業も順調に終わらせることができた。

 連日の作業のおかげでみんなの一体感が強まって、少しずつだけど下を向いている人が少なくなってきた。

 

 そして今日。

 今日からようやく今までできなかったことができるようになるんだ。これでさらに探索がしやすくなる。

 人類の足なんかよりもずっと文明的で効率的でいい感じでナイスなヤツ。そう、自転車。

 

 これまでは道路にガレキの塊が落ちていたり街路樹が倒れていたりで、人の足と比べても大差が無かったから使ってこなかったけどもう違う。

 わざわざといっては何だけど、かなりの時間をかけてまでガレキの除去作業に力を入れたんだ。きれいになった道をしっかり使わないと。

 自転車だったら小回りもきいて急なバーテックスの襲撃にも対応できるはず。

 

 とても言い方が悪いんだけど、今なら自転車は盗み放題だから、途中で邪魔になったら乗り捨てて別のやつに乗ればいいだけだからすっごく便利な乗り物だ。

 家の敷地内にある自転車に鍵をかける人はあまりいないと思うけど、もしカギがかかってても家の中に大抵合鍵があるだろうし最悪引き千切ればいい。……なんだか最近思考が野蛮になってきてる気がする。

 ベルもついているから、あらかじめ鳴らし方を決めていれば危険があったりしたら遠くにいても知らせられるし、もう乗らない手が見つからない。

 

 といっても自転車はまだ用意していない。まずみんなでどこかの家に寄ってから自転車を調達してくる流れになっている。

 今回の探索メンバーは前回と同じくデパート内で1番外での経験がある布川さんと鈴さん、それとペラさんだ。

 リーダー的存在の人が外の危険な世界に行くのはまずいんじゃないかと思うけど、本人曰く、先頭に立つ人が最前線で戦うことでみんなをやる気にさせられるんだそう。

 何だか小難しいことを言っていたけど、つまりみんなを危険な目に遭わせたくないってことかな?

 

 ペラさんは私が来る前からずっと布川さんたちと一緒に外で活動していたというから、実績もバッチリ。

 『自分も外に行きたい』という人も何人かいたんだけど、行きたいという欲求よりも外に対する忌避の感情が上回ってみんな辞退していた。

 慣れていない場所に出て来られても危ないだけだし、私としては辞退してくれてよかった。

 結果、外での経験が1番豊富な4人で出かけることになった。

 

 ちなみに私は自転車には乗らない……というより、乗れない。

 家から小学校は自転車に乗って登校しちゃダメだったし、友達の家に行くのだって歩いて行けたから、自転車に乗る必要が無かった。

 だからもうすぐ中学生になるけど、自転車に乗れない私は間違っていない。

 まあ別に? 今の私は自転車程度に乗らなくったって、むしろ走ったほうが断然速いまであるし?

 仲間外れで寂しいなんて……ないし。

 

 

 

 今日も元気よくデパートのみんなに行ってきますをして、近くの空き家に入っていく。

 もともとこの家は掃除をしているときから目を付けていた場所だから、幾分きれいな状態にしてある。

 

「私これがいい!」

 

「じゃボクはコレにしましょっかね」

 

「2人とも、そんなはしゃぐ場面じゃないだろう……」

 

 この家の庭に置いてあった自転車を見て、競争のように自分のものを主張している2人。

 結果、鈴さんは赤、ペラさんは紫、布川さんは黒の自転車に乗ることになった。

 この家は5人家族だったから、あともう2台自転車があったんだけど、1台はママチャリでもう1台は気持ち悪いほど小さなタイヤをしているやつだったので除外された。あれを乗るのは、乗れないけど外では恥ずかしくって乗りたくない。

 

 空気圧を確かめて自分用に各々サドルの高さを調節してから自転車にまたがる。ありきたりの普通のサドル。

 私のお父さんは自転車に凝っていたから変なサドルをよく買ってきた。中でも1番嫌だったのがすんごく細いサドル。初めて乗った自転車がそのサドルだったんだけど、お尻の骨が変に圧迫されてすごく痛い目に遭った。私が自転車に乗らない理由はその時のトラウマも影響している。

 

 普通だったら横一列に並んで走っていたら危ないけど、今は車も走っていないからやりたい放題。

 私はその後を、時には前に出たりしてぴょんぴょんと跳びながらついていく。

 やっぱり自転車は速いもので、この前来た場所は歩いて数十分もしたのに早くも着いてしまった。前回はかなり警戒していたのもあるけど、それにしたって文明の利器はすごいと思う。

 

 そしてその先をさらに進んでいくと、ちょっとした商店街みたいな感じになっていた。

 

 ところどころにシャッターが閉まっていて、あと20年もしたらシャッター街になりそうな本当にちょっとした商店街。

 大きな道の真ん中には中くらいの木が一定の間隔で植えられている。そしてその周りを椅子で囲んであって、木陰でホッと一息つけるように設計されている。

 この場所に来たことはないけど、こんなに誰もいなくひっそりをしているのを見ると、なんだか寂しさを覚えてしまう。

 

「光、ここで合ってるんだっけ?」

 

「ああ。今日の目的地はここ コマドリ商店街だ」

 

「こんだけ店があるんだったら、まだ生きている人もいるかもしれないっすね」

 

「そうかもしれないですね! 手分けして探す……ってのは危ないですもんね……」

 

「旭にあったマップでなんとなく見てきただけで、さすがに初めてくるところだからね。

ベルでの合図は決めたけど、商店街に路地裏はつきものだし、どこからひょっこり飛び出してくるか分からない。最初は固まって行動しようか」

 

「近くにバーテックスがいたら2回、遠くに見つけたら1回でしたっけ?」

 

「ああそうだ。遠くで見つけて余裕がありそうだったら鳴らさずに教えてくれていいからね」

 

「オッケーです」

 

 合図の確認も終わったから、まずは右側に沿ってお店を見て回る。さすがに自転車からは降りた。ゆっくり回りたいからね。

 まず始めに、テレビで見たことのある昔ながらのお肉屋さんやお魚屋さんを見つけた。

 初めて見るものだったからワクワクしながら近づいたんだけど、冷えてない中、長時間太陽に照らされていたせいで変な臭いがプンプンしていた。

 

 果物屋を見てみても、ほとんどの果物が黒くなったり茶色くなったりとどれもこれも腐ってしまっていた。

 一部大丈夫そうな見た目をしている果物もあったんだけど、他の果物が腐っている中でコレが本当に大丈夫な食べ物なのかがちょっと不安だったので、やめておくことにした。

 

 そのあと八百屋さんも見つけたけど、やっぱりどれもダメになっていて、この調子だともう自分で育てていくしか新鮮な野菜を食べることはできないんじゃないかと思えてきた。

 ほかの3人も同意見だったから、八百屋さんや果物屋に置いてあった植物の種を持って帰ることになった。

 

 そこまで商店街は長いわけでもなかったから、一度休憩がてらにベンチに座って盗ってきた種たちを眺めているんだけど……、

 

「これって持って帰ってもいいけどさ、私農業やったことないから作れないよ?」

 

「ボクもやったことないですね」

 

「あっ、私おじいちゃんの手伝いでほんの少しならやったことあります」

 

「確か大俵さんも農業の経験があると言っていたよ」

 

「それじゃ帰ったら聞いてみますね」

 

「灯ちゃんが土いじってる姿、すっごく似合いそう」

 

「なにせ常時持っているのが鍬なんすからね。そりゃもう適正抜群っすよ」

 

「でも灯ちゃん、農業部じゃなくてバドミントン部らしいのよ」

 

「えっ蛍井さん、岩波ちゃん鍬部じゃないんすか!?」

 

「そんな部活はありません!」

 

 ペラさんのとんちんかんな発言にびっくりして思わず席から立ちあがってしまった。

 それにしても鍬部って……そんな宗教染みた部活誰も入らないよ……。

 でも実際、今は朝の素振りもラケットではなくこのカネアキでやっているから鍬部といえば鍬部なのかな……?

 自分が所属しているクラブが何なのかだんだん分からなくなってきた。

 

 せっかく立ち上がったので、後ろにある中くらいの木に寄っかかってみることにする。

 近くで立ってみるとよりよく分かる、この木の大きさ。街の長い歴史を眺めて生きてきたことが伝わってくる。

 この木も太陽の温もりを持っていて、寄りかかるとほんのり温かくって気持ちいい……。

 

──グラッ。

 

 ……グラ?

 

「ふーっ全く。大体ですね……ってちょっとま、ううわあぁ!」

 

「ええっ! 大丈夫灯ちゃん!?」

 

「び、ビビった……」

 

「痛ててて……何が起きたのさ?」

 

「岩波君」

 

「な、なんですか」

 

 大きな音が聞こえた気がしたんだけど、よく分かんないし耳がキーンてなっててよく聞こえない。

 かなり驚いた様子でゆっくり丁寧に、1つ1つ言葉を紡いでいった。

 

「……そんなに、怒っていたのかい?」

 

「ケホケホッ土煙が……。怒るって私がですか? いや全然ですけど?」

 

「いや、しかしだね……」

 

「えっ?」

 

 顔を向けている先をだどってみると、そこにはさっきまで寄りかかっていた木が倒れているのが見えた。

 しかも途中からとかじゃなくって、根元からゴッソリ土付きで。

 根っこもむき出しになっていて、へーこうなっていたんだ なんて見当違いのことを思い浮かべてしまう。

 

「ってえ! 何ですかコレ!?」

 

「あんま調子に乗ってるとこうなるわよ、っていう見せしめっすか……気を付けるっす」

 

「いやいや私じゃないですって!」

 

「今のはどう見ても灯ちゃんがやったように見えたけど」

 

「偶々ですって、偶然木が寿命を迎えたんですって! そんなしょうもないことでキレませんよ」

 

 いやうん違うよね……。そんな短気じゃないし。

 さすがに不思議過ぎたから、木に近寄ってまじまじと見てみると1つ気になることを見つけた。

 

「この木……枯れてません? ほら乾燥してますし」

 

「あっホントだ。よく見たら葉っぱも枯れてるのね」

 

「ホントっすね。でも今は夏ですよ? こんな状態になるのなんてそれこそ12月とかくらいになんないとじゃないですか」

 

「変ねー」

 

 みんな集まって枯葉を眺めるけど全く理由が思いつかない。

 ペラさんの言う通り今は8月。普通だったら濃い緑色のはずなのに、この木は触れただけですぐにボロボロに砕けちゃう葉っぱしかついていない。

 気になってさらに辺りを見渡してみると、さっきまでは気が付かなかったけど他の木も似たような感じで、大部分の葉っぱが既に散っていた。

 

「なんか不気味、ですね」

 

「そう、だね。今は8月だっていうのになんでなんだ?」

 

「……ほ、ほらさ! もうここでの用事は大体済んだんだし、もうここから出てもいいんじゃない?」

 

「そうだな。じっとしているのももったいないし、そろそろ次に行こうか」

 

「はい賛成! さすが光分かってる」

 

 勢いよく小刻みに肩を震わせながらそう宣言する鈴さんの決定で私たちは早々にここから出ることになった。

 

 

 それにしても変な所だったな……。

 夏なのに植物が枯れるなんて、人が手を加えない限り早々起きそうもないことなのに。それも全ての木がなんて。

 ……変なの。




【独自設定】(今に始まったことではない)

神樹が結界を張る時に、周囲の生命力とか自然エネルギーとかも吸い取って結界を張ったのではないか、と思ったのでこういう感じにしました。
なので結界がある限りエネルギーを吸われ続けているので、結界外の自然は死に続けます。
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