『生きるためには喰うしか無かった』   作:ブラウン・ブラウン

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いつも読んでいただきありがとうございます。
仕事場で書くのが思いの外、はかどることに気が付きました今日この頃です。


第26話【抜き取られた生気の行方】

 トボトボと、4人とも自転車にも乗らないで歩いていく。

 歩いて行くのは、もはや見慣れた壊れた街。

 次なる目的地に向かって歩いているけど、先ほどの異様な光景にみんな少し口数が少なくなってる気がする。

 みんなさっきのことを考えているんだろう。私もその一人だ。

 

 あれは一体何だったんだろう。

 触れただけで、ちょっと押しただけであんな人よりも大きな木が倒れるなんて。

 倒したまんまの状態で逃げるように出てきちゃったけど怒られないかな、大丈夫だよね?

 

 倒れるときに触れた感じがとても軽かった。いや、普通に木としての重量感はあったけど、地に根を張っているみたいなずっしりとしたのは無かった。

 中身が空洞のような軽さ。きっと枯れていたんだと思う。

 

 木が枯れるのでパッと思いつくのはシロアリとかが代表的だけど、私はそんなにシロアリについて詳しくはないけど、でもそういう感じじゃなさそうだった。

 一部分だけがやられているんじゃなくって、なんだか全体から生気が失われているみたいで、表面を触ってもカラッカラの乾燥状態、葉っぱも触れただけで粉々になるくらいだった。

 しかもそれが1か所だけじゃなくって木全体。しかも目に入った木は全部だなんて。いくら何でもちょっと不気味な感じがする。

 

 

 今までの普通じゃないおかしな現象は、私たちの敵であるバーテックスを除いてほとんどが私関連のことだった。

 だから私含めて、きっと見つかるだろう”力”を持った人たちにだけ変わったことが起きているんだと思っていたんだけど、もしかして違うのかな?

 ……でも違うって言われたって何も分かんない。前提から違うとか?

 

 うーん……、頭がそこまでよろしくない私にはムズカシイなぁ。

 

 でも全然へこたれない。

 だって今の私には頼れる仲間がいるんだから。しかもたっくさん。

 私1人の頼りない頭じゃ思いつかないんだったら他の人にも相談してみんなで考えてみないと。そのための仲間なんだから。

 

 と思ったので善は急げみたいな感じで、まずは前を歩いているペラさんに話しかけてみよう。糸電話のギネス記録を知っていたりと変わった知識を持ってるから、面白い意見が聞けるかも。

 

 

「あのぉペラさん、ペラさんはさっきのアレどう思いますか?」

 

「ん? さっきのって、岩波ちゃんがぶん殴ったあの木のことっすか?」

 

「だからぁそれは違いますって。で、どうなんですか?」

 

「そうですね……まず分かるのは当たり前のことっすけど、自然に起きたことじゃないってことですね。確実に人の手なりなんなりが加わっています。

 あれを”枯れた”と表現するとしますと、いくつかやり方があります。けど、どれもこれも何か月も時間がかかる作業でしかもあんな風にはならないっす」

 

「やっぱりそうですよね、あんなの普通じゃありえませんって」

 

 私の相槌を受けて、ペラさんは指を1本ピンと立てて、

 

「一応枯らす方法を紹介しておくと、まず思いつくのは、木の幹に穴を開けて除草剤を入れる方法。あ、除草剤っていうのは雑草を枯らすための薬のことで」

 

「いやいや、除草剤くらい小学生でも分かりますって」

 

「ああ、そうなんすか。あとはロープを幹に巻きつけたり表面の皮を剥いでみたりといろいろあるけど、半年とか何年もかかったりするんで、一般的には木が邪魔なら切り倒すのがいいです」

 

「でもそんな跡なんてなかったですよね」

 

「そうなんすよ。しかも、もしボクたちが痕跡を見つけられなかっただけだとしても、あの木があった場所は商店街。管理している人もいるから気が付かないわけがないんす」

 

「そう、ですよね……」

 

「あと思いつく可能性としては……」

 

「可能性としては?」

 

「岩波ちゃんっすかね」

 

「え。わ、私ですか? ってまだ言うんですか!?」

 

 何度同じやり取りを繰り返すんだー、と思っていると少し慌てた様子で手を横にブンブン振り、からかいではない新たな意見を言ってくれた。

 

「いやいやそうじゃなくって。岩波ちゃんて、作業中に何度も見せてもらったけどすんごい力使えますよね。人間重機みたいな感じで。

 以前言ってた言葉は確か、その力は自分の体の中から湧き上がってくる、でしたっすよね?」

 

「はいそうですけど、それがどうかしたんですか?」

 

「いやー普通に考えておかしいんすよ。元々岩波ちゃんにはその力は無かったのに、何故か力は岩波ちゃんの中から流れてきている。力の出所が無いんすよ」

 

「確か、灯ちゃんが鍬を握ったらそうなったんだよね?」

 

 こちらの話に興味を持った鈴さんも話し合いに参加してきた。1人で考えているのも飽きちゃったんだろう。

 ちなみに布川さんは、さっきからずっと必死に地図とにらめっこしている。次の目的地を探してくれているんだけど、なんでも地図音痴なんだとか。

 サポートしていた鈴さんがこっちに来ちゃったから、今はちょっと進んでは立ち止まって、ちょっと経ったらまた進んでを繰り返している。

 

「そうです。あ、そういえばコレただの鉄製じゃないんですよ。おじいちゃんが言ってたんですけど、どこかの神様が持っていた神器を溶かして作ったやつらしいんです。ホントばちが当たっちゃいそうですけど」

 

「へぇー神、神っすか……。うーん、……岩波ちゃん、ちょっとボクの手を握ってから力を使おうとしてみてくれますか? あ、もちろん握るのはお手柔らかにお願いするっす」

 

「いいですけど、ペラさんの中の私ってどんな生物なんですか……私は普通の女の子ですよ」

 

 へらへらと笑いながら手を差し出してくるペラさんの提案に、不思議に思いながらも右手を差し出す。

 言われた通りに軽くその手を握ってから、体の中心に呼びかけて力を引き出していく。

 さすがに力を手に入れてから何日も経っているから、力加減はパーフェクトにバッチリだ。……まあもしミスってもペラさんならいっか。

 

「この後私は何をすればいいんですか?」

 

「……いや、もう確認できました」

 

「いったい何の実験だったの?」

 

「蛍井さんも見ましたでしょう、さっきの枯れた木。ボクは岩波ちゃんの話を聞く前まで、岩波ちゃんが力を使ったからあの木が枯れたんじゃないかって思ってたんすよ」

 

「えっと、どういうこと?」

 

「つまり、岩波ちゃんの力の正体は周囲からエネルギー、今回の場合は生命エネルギーを巻き上げたものなんじゃないのかってことです。でも違いましたね。だってボク元気っすもん」

 

 ハハハと1人愉快そうに笑っている。

 でもこの人笑っているけど、とんでもないことをしようとしていたんじゃない。

 だってもしペラさんの仮説が正しかったら、私がペラさんから生命エネルギーだかを吸い取っていたかもってことだよね。

 そんな危険なことを勝手にやろうとしていたなんて、これはいくら何でも抗議しなきゃ。

 

「ちょ、そういう大事なことは早く言ってくださいよ!」

 

「そうよ、危ないじゃない!」

 

 勢いよく2人で言っても、当の本人は素知らぬ顔で笑っている。

 あと、急に私たちが大きな声を出したから話に参加していない布川さんがビクッってしていた。

 

「違うってなんとなく確信していたんで大丈夫っすよ。あんまり信じられないけど、多分その力は神様とかそこらへん由来のものだと思います」

 

「なんとなくって……。あ、ペラさんもそう思いますか」

 

「はい、じゃないと力の出所が分からないですから。現代日本ではありえないファンタジーな考えですけど、それが一番無難なんで」

 

「それじゃ、私や光みたいな人は神様に選ばれなかったってこと?」

 

「たぶんそうなんじゃないかと。これで岩波ちゃんの称号は”勇者から””神に愛された勇者”に上書き保存っすね」

 

「な、なに勝手に合わせてるんですか! それここ以外で言わないでくださいよ!」

 

 合わせてはいけないものと合わせてはいけないものが合体されてしまった。

 今の勇者だけでも恥ずかしいのに、そんなのが広まっちゃったらもう外に出られなくなる……。

 

「かっこいいじゃないっすか、ねえ蛍井さん」

 

「うん、うん、そ、そうだね…………っぷははは! あーダメおかしい。ごめんね灯ちゃん面白くって……」

 

「謝るくらいなら笑わないでくださいよ……」

 

 名誉そうな不名誉な称号に大笑いされた。

 自分じゃなかったら私も100%笑ってたけど、自分のこととなると笑い声じゃなく冷汗しか出て来ない。お願いだから広まんないでよ……。

 

「あーお腹痛い。ねえねえ光聞いてた? 今の話」

 

「んよし着いた! って、ん? どうしたんだみんな」

 

 呼びかけに応じた布川さんは目を白黒させている。本当に真剣に地図と戦っていたみたいでこの状況について来れていない。聞かれてなさそうで良かったぁ。

 そんな何も知らない布川さんに対して、あろうことか喋り出そうとする鈴さんを後ろから抑え込む。

 これ以上被害を拡大させるわけにはいかない。少し抵抗されたけど、話しかけるのをやめてくれた。後でもう一度2人にちゃんと口止めしておかないと。

 

「んまあいいや。さて、みんなお待たせしてしまってすまなかったね。なにぶん地図は得意ではないもんでさ。でもようやく着いた」

 

「男の人は地図が得意だって言うんだけどねー」

 

「地図が苦手な男が目の前にいるの知ってるだろう」

 

「2人とも。目的地に着いたんですし、ちゃっちゃと中を確認して帰りましょうよ。ここは安全ではないんですから」

 

「ペラ君の言うことももっともだな。じゃ入ろうか」

 

 長くなりそうなところをペラさんがぶった切ってくれたので、私たちは次の目的地に入っていった。

 その場所は、デパート旭からさほど離れていないビルの2階にあるお店、カラオケ店だ。

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