頭ハッピーセットなんで、深く考えずに思いつきで書いてるため変なところあっても見逃してください。
どれくらいまで歩いただろうか。少しばかりの恐怖心が芽生えたせいで、今朝よりも足取りが遅く重くなっている。
止まったら足が震えてしまいそうで、そんな自分を見るのが怖いから止まることができずに歩き続けている。
少し時間が経ったおかげで、さっきよりも冷静になってきた。
今振り返ってみて、さっきまでの自分はおかしかった。
亡くなった人の家の中を物色して、中の荷物を無断で持ち出すなんて。あの人にも家族がいるはずなのに、生前の痕跡を盗んでしまった。
その後に立ち寄った彼女の家に行かなかったら、もしかしたらずっとあのままだったかもしれない。
そんな恐ろしいこと、考えただけでも身震いしてしまう。
なんであんなことをしてしまったんだろう。
あんな人間離れした思考回路。
結果的に考えてみれば、あんな状況であっても冷静に物事を判断することができていた。
いつもの私だったら、確実に恐怖で足が動かなくなっていたはず。
だからその点を考えてみれば、存外プラスとも捉えられなくもないかもだけど、あんなの不気味すぎる。
人の死を悼めない人間などにはなりたくない。
この原因があの謎の力の影響なんだったら、こんな力もう二度と使いたくない。
……けど。
あれがあったから、あのバケモノから、明を守ることができた。
あれがあったから、家族の死にも、心が壊れずにいられた。
あれがあったから、飢えることなく、食料を確保することができた。
人でなしのような手段ではあるけど、今の私にとって生きる手段でもあるように思える。
……だったら。
もしそうなんだったら、恐れているだけじゃなくて、しっかりと使えるようにしておいたほうが良いんじゃないのかな……。
私はさっき、地獄を見てきた。町の人がことごとく殺されているという地獄。
もう楽観視なんてしていられない。これは少なくとも日本中、最悪世界中で起きていることだと考えたほうが良いかもしれない。
こんなにもたやすく人の命が失われてしまうことが、この地域だけなんてあるはずがないんだから。
この地獄を切り抜ける手段を、私は他に思いつかない。
あまり手を出したくない手段だけど、生き残るため、守りきるためには使わなければいけない。
頼りなかった足取りが、徐々に芯を持った歩みに変わってきた。
まだ恐怖はある。だけどそれよりも優先しなきゃいけないことができた。
体は震えてはいるけど、怯えているだけではいられない。
しっかり先を見て行動しないと。お父さんとお母さんに約束したんだ、明は絶対守るって。
決意を新たにして、意識を外に切り替えると、空はだんだんと暗くなっていた。
焼けるように赤い夕日がゆっくりと沈み、地平線が茜色に染まっていく。
”落ち込んだ時は空を見上げよう” 何かのテレビで言っていたのを思い出す。
明にも見せてあげたら少しは気持ちが楽になるかも。
善は急げ、早くしないと夕日が沈んでしまう。
「ねえねえ、明。夕日がとってもきれいだよ」
背中を揺さぶって起こそうと試みる。
「……ぅ……。ぅん~」
「起きた? 前見てほら、すっごいよー」
「ん~? なに、まえってって……うわ~!」
「きれいでしょ」
「うん、きれーだね~!」
「いやー、こんなきれいな夕日見たことないよ」
「あかりも!」
もっと気落ちしているかと思っていたけど、絶景効果のおかげなのか多少落ち着いているように見えた。
寝起きにこんなこと聞きたくないけど、これからの私たちにとってこの質問はとても重要なもの。だから……、
「明、大丈夫? 何があったか覚えてる?」
「えっと……」
「明は家の中に入ったら倒れちゃったんだよ」
「…………ぁ、そうだ! あのひとは?!」
「あの人はね、ダメだったんだ」
「ダメってどういう」
「死んじゃってたんだ」
「しん…………うそ」
「嘘じゃないよ」
「っぁ……」
「あの白いのに襲われたみたいでね、間に合わなかったんだ」
「…………」
「でもね、あの人、うれしかったと思うよ」
「……どう、して?」
「だってあんな所にいたんじゃ中々発見してもらえないでしょ。あそこに独りぼっちは寂しいじゃん。それを明が見つけてあげたんだよ」
「……そうなの、かな………」
「きっとそうだよ。明のおかげであの人は独りぼっちじゃなくなったんだよ」
「………そっか……そうだといいな……」
「それにね、なにも住民があの人だけじゃなかったんだよ」
「? どーゆうこと?」
「あの町には生きてる人がいてね、このリュックを分けてくれたんだ」
「えーー! なんでおこしてくれなかったのー!」
よし、うまく話題転換ができた。
「ぐっすりだったからねー。起こすのも悪いかな、と思って」
「そんなのいいのに~。どんなひとだった!?」
「明くらいのかわいい女の子だったよ。みきちゃんていうんだって」
「みきちゃんか~。あいたかったなー」
「用事があるからっていうから別れたけど、またいつか会えるよ」
「あったら、いっぱいあそびたいな~」
その場その場のアドリブでなんとか誤魔化しきれた。……ふぅ。
ショックからもある程度立ち直らせることができて、暗い話題からも変えることができた。なかなかの成果だと思う。
もちろん、このリュックはあの男の人のものだし、あの町には生き残りなんていなかった。
みきちゃんのことだって、家の荷物に書いてあったのを覚えていただけ。声すら聴いたこともない。
嘘はつきたくないけど、今回は仕方がない。
そして、私はもう1つ嘘をつかなきゃいけない。
「あ、それとね」
「ん?」
「みきちゃんがお母さんたちと会ったらしくてね」
「っ! それでそれで!?」
「ちょっと、背中で暴れないの。えっと、伝言を預かったらしくて、『しばらく会えなくなるけど、お姉ちゃんと2人で協力して頑張って』だったかな」
「どゆこと?」
「よく分からないけど、お母さんたちもやらなきゃいけないことがあるんじゃないかな」
「えー、はやくあいたいのに~」
「仕方ないよ、お母さんは警察の人なんだから。こんな時こそ一番働かないと」
この嘘をつけば、お母さんたちにしばらく会えなくても納得できるだけの理由になるだろう。
実際生きていたらそうなっていたはず。だからそんなに嘘はついていない。
違うのは生きているか、そうでないか。
「それまでお姉ちゃんがしっかり明の面倒見てあげるからね」
「え~ ともちゃんじゃ たよりないよ~」
「なにを~」
いつの間にか、落ち込んでいた空気も少し和らぎ、いつものにぎやかさが顔を出してきた。
「ほらほら、遊んでる場合じゃないよ。暗くなったんだから、早く寝る場所探すよ」
「りょーかいしましたー!」
後ろを振り返ると、暗く澄んだ空が一面と広がっていた。
地平線に沈んでいく夕日を見て、世界が今日の終わりを告げているのを感じた。
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けど、私の世界はまだ沈まない。
明が寝たのを確認し、寝床からのっそりと立ち上がる。
幾分眠たいけれど、この作業は時間がかかって日中にはできないから仕方がない。
今最優先されるのは、自分の研究。
自分のことを知らないと勝てないぞ、みたいな名言もあった気がするし。
半袖だから、夜風が吹くと少し肌寒く感じる。
体を動かす前にしっかり準備運動をして体を温めないと。
ホントは鍬じゃなくて、ラケットを振っているはずだったんだけどな……。
カネアキを握ってそんなことを考えてしまった。
これからしばらくの間はコレが相棒になるんだから、しっかりしないと。
ひらけた場所に出て、目を閉じ呼吸を整える。
そしてあの力をひねり出す。イメージは体の中に眠る力を引っ張り出して纏う感じ。深呼吸するときにも似ている。
まずは、全力でジャンプしてみよう。
脚力がどれだけあるか分かるだけで、ピンチの時の行動が変わってくる。
足が速いんだったら、障害物がなくてもアイツらから走って逃げれるし、もしすごい跳躍ができるんだったら、それはそれで作戦も変わってくる。
気合を込めるため靴ひもを結びなおして、跳ぶ。
跳んだんだけど……
「うぉわわわあああ!! ちょ、ちょっと跳び過ぎ!?」
跳べて自分の身長くらいかと思ってたのにこれって!?
自分どころか一軒家だって軽々飛び越えられるほどのジャンプ力。
あっ、待ってこれ……。
「着地の仕方分っかん、ない……!」
普通こんなに人間は跳ばないんだよっ!
足から!? でもこんな高さじゃ足折れるんじゃでも他に、あっ間に合わ!?
「痛~~~!! ……………くない……?」
重量感のある音とともに、着地点から波紋状に土ぼこりが舞う。
下手な着地のせいで足から全身に伝うような痺れはあるけど、全然痛みは感じない。
垂直跳びのおかげでキチンと両足で着地できた。たぶん両足じゃなくても平気だったと思うけど。
「と、とにかく、脚力は上々ってことで……」
結果は無事だったけど、一歩間違えれば大ケガの可能性もあったかもしれない行為に、心臓がバクバクいっている。
ものすごいスピードで血が体中を駆け巡って、寒さなんて感じないほど火照ってしまった。
たった1回の跳躍でここまで取り乱すなんて、予行練習やってよかった……。
「次は力を試したいんだけど、何かに当てたらうるさいしな……」
跳躍力があんなだったんで、自分の攻撃力も気になる所だけど、今何かに力をぶつけたら衝撃音で明が目を覚ましちゃう。
ホントは試したいけど、ここは……。
「重いものを持ち上げるってことで」
ひとまず左手をカネアキで塞いで、右手だけで試してみる。
最初は石ころ、余裕。
そこら辺のガレキを持ち上げても楽々。
大きいガレキは掴みにくいけど、これも問題なし。
「何でも持ち上がっちゃうねー」
最後は何にしようかと探していると、壁一面がそのまま落ちているのを発見した。
「これ持ち上がったら、さすがにゴリラだよね……」
もし片手で持ち上がってしまった時の心の持ち様が心配なので、カネアキを後ろに回して両手で持ち上げてみる。
「よいしょっと…………うわぁ……」
軽々とはいかないけど、持ち上げることができてしまった。
女の子が壁を持ち上げている、なんだこれ。
こんな所、部員に見つかったら『ゴリラ部長』って言われるに決まってる。
ジャンプ力はトランポリン並み、腕力はゴリラ並みという女の子にとって悲しいことが分かって、心にダメージが入る。
こんな事実、知りたくなかった……。他人がこんなだったら大笑いするのに、自分だったら全く笑えない。
こんな力、人の域を超えている。『超人』そんな肩書が頭から離れない。
「でもでも。カネアキを離したら、ほら!」
私は自分が普通の女の子だと証明するように、カネアキを手放してもう1度挑戦する。
「ほら、ほらほらほら!」
これでもし持ち上がっちゃったら私は……。
なんてのは杞憂で、期待通り1ミリも持ち上がらなかった。
「ほら見て、私は普通の女の子!」
あまりのうれしさに、ついはしゃいじゃう。誰もいないのに語りかけるような口調になってしまう。
「アレもコレも全部あの力のせい! 私は悪くない!」
自分が異常者でないことが再確認できて気分がノった私は、その後も何回かいろいろな方法で自分の力の限界を図っていった。
私の夜はしばらくの間続いた。
安定の 姉妹の情緒不安定と進行の遅さに、驚きを隠せない……。