閃の軌跡~軌跡の刃~   作:兄上、お労しい

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プロローグ

七耀暦1204年 3月下旬

 

ライノの花が咲く季節、帝都ヘイムダルから出発した列車が、帝都近郊の小都市トリスタへと到着しようとしていた。

 

『本日はケルディック経由、バリアハート行き旅客列車をご利用頂きありがとうございます。次はトリスタ、トリスタ。一分ほどの停車となりますのでお降りになる方はお忘れ物の無いようご注意ください』

 

車内アナウンスが響き、トリスタで降りる者たちが次々と降車の準備を始める。

 

そんな中、赤い制服を着た一人の少年は動かなかった。

 

周りでは、同じような造りをした緑や白の制服を着た者たちが列車を下りようとしているにも関わらず、少年は動く素振りすら見せなかった。

 

何故なら、少年は窓際の席に座り、窓枠に肘を置き、頬杖を付きながら眠っていたららだ。

 

「そろそろ起きた方がいいぞ」

 

「……ん?誰だ?」

 

何者かに声を掛けられ、少年はゆっくりと目を開ける。

 

隣を見ると、そこには少年と同じ赤い制服を着た、黒髪の少年が居た。

 

「気持ち良さそうに眠っているところ悪いけれど、そろそろ駅に着くぞ。君も、トールズに通う生徒だろ?」

 

「もうトリスタに着いたのか……?寝すぎたか……」

 

起こされた少年は欠伸を一つし、起こしてくれた少年に向き直る。

 

「起こしてくれて助かった。入学初日に遅刻したら大変だったよ」

 

「構わないさ。それより、俺達も降りる準備をしよう」

 

「ああ」

 

降りる準備を終えると、丁度列車がトリスタ駅に着き、殆どの乗客が降り始める。

 

降りた乗客の殆どは、先程の制服を着た者たちだった。

 

少年は人ごみに流されるように移動し、駅を出る。

 

駅を出ると最初に、ライノの花が咲き乱れる駅前広場だった。

 

「あれ、さっきの……」

 

その光景に、少年は思わず見とれていると声を掛けられる。

 

そちらを見ると、そこには先程彼を起こした黒髪の少年が居た。

 

「ああ、そう言う君はさっき俺を起こしてくれた人か。改めて言わしてもらうけど、さっきは起こしてくれて助かった。俺はエルド・グリファスだ。よろしく」

 

「いや、気にしないでくれよ。大したことはしてない。俺はリィン。リィン・シュバルツァーだ。改めて、よろしく」

 

エルドとリィンは自己紹介をし、握手をする。

 

「それにしても、エルドも同じ赤い制服なんだな」

 

「そう言えばそうだな。確か、トールズの制服って緑と白の二つだけって聞いてたんだが、一体どう言うことなんだろうな」

 

「それに、この装置(オーブメント)にしても、制服と一緒に届いた割に何の説明も無いし」

 

「士官学校の備品にしては、中々に凝ったものだよな」

 

そう言い、二人は懐から懐中時計より一回り程大きい機械を取り出す。

 

獅子の様なデザインを施された銀色の装置をしばらく見つめるも、二人は使い方など分からず諦めて懐へと戻す。

 

「ま、学院に行けば何かしらの説明があるだろうし、今は考えても仕方ないだろ」

 

「そうだな。とりあえず、学院に向かうか」

 

二人は一緒に学院へと向かい、その道すがら色々話をした。

 

校門まで着くと、二人はそこにある学院を見上げる。

 

「やっばり改めてみると大きいな。流石はトールズ士官学院」

 

「ここが、かのドライケルス大帝が創設したと伝えらえる学校か」

 

「入学おめでとうございまーす!」

 

学院の規模にエルドもリィンも驚嘆していると、どこからか可愛らしい声が聞こえる。

 

声がした方を見ると栗色の髪の背の低い少女と、技術者風の格好の男性がいた。

 

「うんうん、君達が最後みたいだね。リィン・シュバルツァー君とエルド・グリファス君でいいんだよね?」

 

「え?なんで俺たちの名前を……」

 

「えへへ、ちょっと事情があってね。今はあまり気にしないでね」

 

少女はそう言って笑う。

 

「それが申請した品かい?一旦預からせてもらうよ」

 

ここは士官学院で、いわば軍人の養成学校。

 

入学説明書には個人で武器を持ち込むのが許可されており、エルドが担いている長袋の中にはエルドの武器がある。

 

リィンも肩の長袋には武器が入ってるらしく、エルドと同様にそれを男性の方に渡す。

 

「確かに。ちゃんと後で返されるとは思うから心配しないでくれ」

 

「入学式は、あちらの講堂であるからこのまま真っ直ぐどうぞ。あ!そうそうトールズ士官学院へようこそ」

 

「入学おめでとう。充実した2年間になるといいな」

 

二人から入学の祝辞をもらい、二人は礼を言って講堂に向かう。

 

「あの二人、先輩なのかな?」

 

「多分そうだろう。てか、あの女性の人はそう見えないな」

 

「確かにな。……でも、俺たちで最後ってどういうことだ?」

 

「そうだな。他にも登校してきてる生徒はいるみたいだし……」

 

そんなことを考えていると、突然鐘が鳴り響き、入学式の時間が迫っていることを伝える。

 

「やばい!急ごう、リィン!」

 

「ああ!」

 

二人は慌てて走り、講堂へと向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「最後に君たちに1つの言葉を贈らせてもらおう」

 

入学式が終わりに近づき、トールズ士官学院の学院長を務めるヴァンダイク学院長が最後を〆る。

 

「本学院が設立されたのは、およそ220年前のことである。創立者は、かのドライケルス大帝『獅子戦役』を終結させたエレボニア帝国中興の祖である。即位から30年あまり。晩年の大帝は、帝都から程近いこの地に兵学や砲術を教える士官学校を開いた。近年軍の機甲化と共に本学院の役割も大きく変わっており、軍以外の道に進む者も多くなってきたが……それでも、大帝が遺した『ある言葉』は今でも学院の理念として息づいておる」

 

学院長はそこで一拍置き、両手を机に置いて、身を乗り出す勢いで言う。

 

「『若者よ、世の礎たれ。』『世』という言葉をどう捉えるのか。何をもって『礎』たる資格を持つのか。これからの2年間で自分なりに考え、切磋琢磨する手がかりにしてほしい。わしの方からは以上である」

 

「以上でトールズ士官学院第215回入学式を終了します。以降は指定されたクラスで、学院におけるカリキュラムや規則の説明を行います。それでは以上解散!」

 

入学式が終わり、緑色の制服と白い制服を着た生徒たちはそれぞれのクラスへと向かう。

 

だが、エルドは席を立つことが出来なかった。

 

そもそもクラスが分からなかった。

 

送られてきた書類には、所属クラスのことは何も聞いておらず、てっきり入学式で発表されると思っていたので困惑していた。

 

エルド以外にも同じ生徒がいるらしく、その生徒たちは揃いも揃ってエルドと同じ、赤い制服を着ている。

 

「リィン、クラスについてなんか聞いてるか?」

 

とりあえずエルドは、リィンに声を掛ける。

 

「いや、俺は何も。どうして俺たちだけ……」

 

「さぁな。……ところで、隣の君は?」

 

「ん?ああ、いま知り合ったんだよ」

 

「僕は、エリオット。エリオット・クレイグだよ。よろしく」

 

「ああ、俺は、エルド・グリファスだ。エルドでいいぞ、よろしくな」

 

お互いに自己紹介が終わったので、再びどうしようか相談しようとした時誰かの声が聞こえた。

 

「はいはーい、赤い制服の子たちは注目!」

 

声の方に注目すると、女性の教官が立っていた。

 

「どうやら、クラスがわからなくて戸惑ってるみたいね。実は、ちょっと事情があってね。君たちにはこれから『特別オリエンテーリング』に参加して貰うから。まあ、まずわたしについて来て」

 

そう言って女教官は、先に行動を出ていく。

 

それに続いて、他の生徒たちも付いていく。 

 

「えっと、本当どういうことなのかな?」

 

「さぁな。ともかく、あの人についていこう。話はそれからだろ」

 

「ああ、そうだな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

女教官に連れられて着いた場所は学院の裏手にある古い建物だった。

 

「な、何かいかにも出そうな建物だよね……?」

 

「……そうだな」

 

「大丈夫だって。そんなもん出ても気にしなけりゃいいだけだろ」

 

建物のホールに集まると、女教官がエルドたちの前に立つ。

 

「サラ・バレスタイン。今日から君達Ⅶ組の担任を務めさせてもらうわ。宜しくお願いするわね♡」

 

「な、Ⅶ組……!?」

 

「そ、それに君達って……」

 

「ふむ……聞いていた話と違うな」

 

「あ、あの……サラ教官?この学院の1学年のクラス数は5つだったと記憶していますが。それも各自の身分や、出身に応じたクラス分けで……」

 

「お、流石首席入学。よく調べているじゃない。そう、5つのクラスがあって貴族と平民で区別されていたわ。あくまで“去年”まではね」

 

「え……?」

 

「今年からもう1つのクラスが新たに立ち上げられたのよね。即ち君達“身分に関係なく選ばれた”特科クラスⅦ組が」

 

「特科クラスⅦ組……」

 

「み、身分に関係ないって……本当なんですか?」

 

誰もがサラの言ったことに驚きを隠せていなかった。

 

それもそのはず、身分制度はこのエレボニア帝国に古くからあり、この学院ではⅠ・Ⅱ組を貴族クラス、Ⅲ~Ⅴ組を平民クラスと分けており、また制服も貴族が白、平民が緑になってるし、寮だって貴族と平民で分かれている。

 

なのに、このⅦ組はその身分関係なく集められた。

 

「冗談じゃない!身分に関係ない!?そんな話は聞いていませんよ!?」

 

すると眼鏡をかけた男子が声を上げる。

 

「えっと、確か君は……」

 

「マキアス・レーグニッツです!それよりもサラ教官!自分はとても納得しかねます!まさか、貴族風情と一緒のクラスでやって行けって言うんですか!?」

 

マキアスは納得が行かないらしく、声を張り上げてそう言う。

 

「うーん、そう言われてもねぇ。同じ若者同士なんだからすぐに仲良くなれるんじゃない?」

 

「そ、そんな訳ないでしょう!」

 

反論するマキアスに対し、隣にいた男子が詰まらなさそうに鼻を鳴らす。

 

「…君。何か文句でもあるのか?」

 

「別に。“平民風情”が騒がしいと思っただけだ」

 

「これはこれは……どうやら大貴族のご子息殿が紛れ込んでいたようだな。その尊大な態度…さぞ名のある家柄と見受けるが?」

 

「ユーシス・アルバレア。『貴族風情』の名前ごとき、覚えてもらわなくても構わんが」

 

アルバレアの名にこの場にいる誰もが反応した。

 

褐色の肌に長身の男子と銀髪の小柄な女子はよくわかっていないみたいだった。

 

正確に言うと、男子はわかっていないらしく、女子は興味がないのか欠伸をしていた。

 

「し、《四大名門》…」

 

四大名門とは、エレボニア帝国において最も家格の高いとされる4つの貴族の家系のことで、爵位として存在する五爵位の中の最上級である公爵家のカイエン家、アルバレア家の二家、そして二番目に位置する侯爵家のログナー家、ハイアームズ家の二家の計四家の大貴族の総称として用いられる。

 

「東のクロイツェン州を治めるアルバレア公爵家の…」

 

「…大貴族の中の大貴族ね」

 

「なるほど……噂には聞いていたが」

 

「だ、だからどうした!?その大層な家名に誰もが怯むと思ったら大間違いだぞ!いいか、僕は絶対に……」

 

「はいはい!喧嘩はそこまで。色々あるとは思うけど文句は後で聞かせてもらうわ。そろそろオリエンテーリングを始めないといけないしねー」

 

「オリエンテーリング……それって一体、何なんですか?」

 

「そういう野外競技があるのは聞いたことがありますが……」

 

「………もしかして……門の所で預けた物と関係が?」

 

リィンが何かに気づいたらしく、そう尋ねる。 

 

「あら、良いカンしてるわね」

 

そう言ってサラは、エルド達の方を見ながら後退していった。

 

そして、壁にある何かのスイッチを押す。 

 

その瞬間、振動が起き、床が急に斜めに傾き、全員が滑りながら暗闇に落ちていく。

 

「くっ!」

 

そんな中、エルドは何とか床のわずかな隙間に足と手の指を引っ掛け、なんとか踏みとどまりサラを見る。

 

「サラ教官!一体何のつもりですか!?」

 

「あら、意外と根性ある奴もいたのね。でも、これオリエンテーリングだから素直に落ちてほしいわね。それと、フィーも」

 

サラが上を見上げながらそう言うので、エルドも上を見上げる。

 

そこには、先程欠伸をしていた銀髪の小柄な少女が居た。

 

どうやら、床が傾く直前、ワイヤーを上に投げ、柱に引っ掛けることで落下することを免れた様だった。

 

「ちゃんと参加してくれないと、オリエンテーリングにならないでしょうが」

 

そう言ってサラはナイフを投げ、銀髪の少女、フィーの持っていたワイヤーを掠める。

 

ワイヤーはミリミリと音を立て、切れ始める。

 

「はぁ……めんどくさいな」

 

フィーがそう呟くと同時に、ワイヤーが切れ、フィーが落ちる。

 

「なっ!?」

 

その光景にエルドは思わず驚き、床から手を離しフィーを下でキャッチする。

 

そして、そのまま地下へと落ちて行った。

 




オリ主の名前の由来

エルド→炭治郎は長男→長男は英語でEldest son→Eldest-est=Eld→エルド

グリファス→継国緑壱→緑壱→緑はみどり→みどりは英語でグリーン→壱はファースト→(グリーン-ーン)+(ファースト-ート)→グリ+ファス=グリファス
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