閃の軌跡~軌跡の刃~   作:兄上、お労しい

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交易町ケルディック

ケルディックに着くと、町はかなり賑わっていた。

 

大市目当ての観光客や、外国や帝都からの商人とかが来ており、のんびりしていながら、何処か活気のある町だった。

 

町の雰囲気を堪能した後、サラの案内で、エルドたちは実習の間お世話になる宿へと向かった。

 

風見亭。

 

この町では宿屋であり、酒場でもある場所だ。

 

宿屋の女将とサラは親しい間柄らしく、快くエルドたちを歓迎してくれた。

 

その後、エルドたちを部屋に案内した女将は、実習内容の封筒を渡し、仕事へと戻った。

 

なお、部屋は男女一緒でアリサは最初こそ文句を言ったが、ラウラの「士官学院の生徒である以上、扱いは軍人と同義。軍では男女関係なく寝食を共にする」という言葉に折れる形で納得し、男子三人に釘を刺した上で了承した。

 

「それで、リィン。実習の内容はなんだ?」

 

「待ってくれ。今確認する」

 

リィンが封筒を開け、実習内容を読み上げる。

 

『特別実習1日目

 

東ケルディック街道の手配魔獣 【必須】

壊れた街道灯の交換      【必須】

薬の材料調達

 

実習範囲はケルディック周辺、200セルジュ以内とする。

なお、1日ごとにレポートをまとめて、後日担当教官に提出すること』

 

「これってお手伝いって言うか、何でも屋って言うか……」

 

実習内容にエリオットがそう呟く。

 

ラウラにアリサも、実習内容に困惑している。

 

だが、エルドとリィンだけはあることに気づいた。

 

「なぁ、リィン、これって……」

 

「ああ、似ているな」

 

それは、トワとリアンに頼まれた生徒会の手伝いとよく似た形だ。

 

「二人とも、どうかしたのか?」

 

二人の様子が気になったのか、ラウラが聞いてくる。

 

「いや、何でもない」

 

「とりあえず、一度サラ教官に確認しよう」

 

全員が賛成し、一回にいるサラに尋ねに行く。

 

すると、そこではつまみを食べながらビールを飲むサラがいた。

 

「んくっ、んくっ、んくっ……ぷっはあああッ!! この一杯のために生きてるわねぇ!」

 

「完全に満喫してるし……」

 

「しかもまだ昼前なんですけど……」

 

「あら君たち、まだいたの?あたしはここで楽しんでるから遠慮なく出かけちゃっていいわよ?」

 

エルドたちに気づいたサラ教官は、そう言ってまたビールを飲む。

 

「勝手に纏めないで下さい!何なんですか、『特別実習』の内容って!?」

 

「思っていたよりもハードじゃなかったのは安心したんですけど……」

 

「んー、まあそうね」

 

サラはそこで少し間を開けてから続ける。

 

「とりあえず、必須のもの以外は別にやらなくてもいいわよ? 全部君たちに任せるからあとは好きにするといいわ」

 

「だから!そういい加減に「いや、そういう判断も含めての特別実習なんですね」……え?」

 

サラの態度に今にも憤慨しそうだったアリサだったが、リィンの言葉に怒りが一気に覚める。

 

「うふふん……実習期間は2日間。A班は近場だから明日の夜にはトリスタに戻ってもらうわ。それまでの間、自分たちがどんな風に時間を過ごすのか……せいぜい話し合ってみることね」

 

意味あり気に笑い、そして、きりっとした真面目な表情でそう言うサラに、アリサたちは呆気に取られながら、宿屋を出る。

 

「……ねえ。いったいどういう事なの?」

 

アリサが真っ先に質問をする。

 

「僕も気になるかな。それに、リィンだけじゃなく、エルドも分かった様な感じだし」 

 

「ああ、それは……」

 

「先日の自由行動日。そなた達がどう過ごしたのかと関係があるといった所か」

 

リィンが答えようとしたところで、ラウラが自分の推測を話した。

 

「リィン達のこの前の自由行動日って言ったら……」

 

「ああ、その通りだ」

 

「生徒会に頼まれた仕事の手伝い。今回の実習内容とよく似ている。いや、むしろ同じだと言ってもいいぐらいだ」

 

「それに、一通り熟して行く内に、トリスタや学院のことを理解できたこともあった」

 

「恐らく、この特別実習の目的の一つはそう言うことなんだろう」

 

「なるほど……確かに、この町のことも本で読んだくらいしか知らないし」

 

「そう言った依頼を通じて見えてくるものもありそうだね」

 

「うむ、帝国はとにかく広い。その土地ならではの実情を自分たちなりに掴むというのは得難い経験になるだろう」

 

「ああ、俺達もそう思ってさ。サラ教官の思惑はともかく……まずは周辺を回りながら依頼をこなしていかないか?」

 

リィンの言葉に、全員が少し間を置く。

 

「分かった。乗ってやろうじゃない」

 

「えへへ、ちょっとワクワクしてきたかな」

 

「何事も挑戦あるのみだ」

 

「全員納得のようだな」

 

「よし、それじゃあ行こう」

 

 

 

 

 

 

 

 

壊れた街道灯の交換と薬の材料調達はすぐに終わった。

 

街道灯の交換を済ませると、俺たちはその足で、手配魔獣のことを詳しく聞くためにサイロさんのお宅へと向かった。

 

サイロさんが言うには、手配魔獣は街道の外れにある高台付近にいるらしく、かなり獰猛とのことだった。

 

「まぁ、このメンバーなら大丈夫だと思うし、戦術リンクもある。余程のことがない限りは大丈夫だと思うが……」

 

「そうだな。油断の無いように進もう」

 

全員でしっかり準備を整え、高台へと向かう。

 

そこには話通りの手配魔獣が我が物顔で大声を上げ、暴れ回っていた。

 

「あれが手配魔獣か」

 

「うわ~……かなり凶暴そうだよ……」

 

「あの爪と牙、かなり危険だな」

 

「よし、俺とリィン、ラウラで先陣を切って、エリオットとアリサが魔導杖と弓で援護だな」

 

「俺も賛成だ。エリオットとアリサはリンクを繋げといてくれ」

 

「では、私たちはどうする?戦術リンクは二人でしか繋げれないぞ」

 

ラウラの言う通り、戦術リンクは二人でしか繋げれない。

 

つまり前衛のエルドたちの誰かは余る。

 

「なら、リィンとラウラが繋いでくれ」

 

「いいのか?」

 

「ああ。二人が繋げれば、大きな力になる。俺はアイツを撹乱しつつ、隙を作る」

 

「行けるのか?」

 

「ああ、いける」

 

「よし、それじゃあそれで行こう」

 

戦術リンクを繋げ終え、全員が武器を構える。

 

「行くぞ!」

 

リィンの声を合図に、一斉飛び掛かる。

 

「はあああああああっ!!」

 

まずラウラが切り掛かり、魔獣を大きく怯ませる。

 

そこにリィンががら空きとなった脇に居合切りで、一撃を入れる。

 

魔獣はリィンとラウラの攻撃に、どちらを攻撃しようか一瞬悩むが、ラウラに狙いを定めたらしく、咆哮を上げ、噛み付こうとする。

 

エルドはラウラが切り掛かった瞬間、大きく迂回し、魔獣の背後を取っており、そのまま魔獣の背後から攻撃をする。

 

背後からの奇襲に魔獣は悲鳴を上げるが、尻尾を使い薙ぎ払おうとする。

 

だが、アリサが弓で魔獣の目を狙い、魔獣は怯んで、攻撃の手を止める。

 

その隙にエルドが距離を取る。

 

「はっ!」

 

エリオットが魔導弾を打ち、魔獣の動きを阻害する。

 

「今だ!《ブルーララバイ》!」

 

動きが阻害されたのを見逃さず、エリオットが技を打ち込む。

 

上手く決まったらしく、魔獣は動きが鈍くなり、目も瞼が落ちそうになっていた。

 

「《炎の呼吸 壱ノ型 不知火》!」

 

距離を取ったエルドは、力強く踏み込み、間合いを詰めて袈裟斬りをする。

  

「リィン、ラウラ!今だ!」

 

「《肆ノ型 紅葉切り》!」

 

「くらえ!《鉄砕刃》!」

 

二人の攻撃が直撃し、魔獣は息絶え、動かなくなる。

 

「やった!倒せた!」

 

「これで依頼完了ね」

 

「ああ。アリサ、援護助かったぞ。エリオットもあの隙を見逃さず、よく技を打ってくれた」

 

「ふふ、どういたしまして」

 

「へへ、僕も少しは成長できたかな」

 

アリサとエリオットの二人を労い、エルドはリィンとラウラも労おうと声をかけようとする。

 

だが、ラウラは何故かリィンのことを黙ってみていた。

 

「………リィン、もうじき夕方になる。急いで報告をしよう」

 

「ああ、そうだな」

 

何がありそうな感じがし、ラウラには話しかけず、エルドはリィンに町に戻るように言う。

 

町に戻りつつ、サイロさんに魔獣の退治の件を報告し、ケルディックへと戻る。

 

街道灯の修理完了も報告し、宿へと戻ろうとした時だった。

 

「ん?」

 

「どうした、エルド?」

 

「なんか、あっちの方が騒がしい気がして」

 

「気になるわね。ちょっと行ってみない?」

 

「ああ、そうだな」

 

原因が気になり、その場所に向かう。

 

そこは大市が開かれる広場だった。

 

「ふざけんな!ここは俺の店の場所だぞ!」

 

「それは、こちらのセリフだ!この通り、許可書だってある!」

 

大市では二人の男が大声で揉め合っていた。

 

成り行きを見守っていた人に話を聞くと、若い男は地元の商人で、身なりの良い方は帝都の商人で、出店場所で揉めているとのことだった。

 

「それは妙だな。こう言った市での出店許可は領主が出しているはず」

 

「ここの領主って言うと……あっ!」

 

アリサが声を上げ、何事かと思い、騒ぎの方を見る。

 

見ると、男たちは怒鳴り合いから、掴み合いになっており、一触即発の状態だった。

 

「まずい!」

 

「止めるぞ!」

 

リィンとラウラの二人が男を引き離し、落ち着かせようとする。

 

「君たちは……その制服は、何処かの高等学校の者か?」

 

「おい、ガキども!大人の話に首を突っ込むんじゃねぇ!」

 

「話し合いってレベルじゃなかったような……」

 

「大人だと言うなら、もう少し落ち着いて話し合ってください」

 

「自分たちは《トールズ士官学院》の者です。実習でこの町を訪れています」

 

「いまだ軍属ではないが末席には連なる身……公の場での私闘はいささか見過ごせぬな?」

 

学生とは言え、軍人の卵相手にくってかかる度胸も力もない二人は、おとなしくなる。

 

だが、一度起きた争いの火を鎮めることもできず、二人はもやもやした気持ちを抱え込んだような表情になる。

 

「やれやれ。何をやっておるんじゃ」

 

そこに、呆れたと言わんばかりの声が聞こえてきた。

 

振り返ると一人の老人がこちらへと歩いてきていた。

 

その姿に二人が反応する。

 

「あなたは……」

 

「も、元締め……」

 

「二人とも。話は聞かせてもらった。どうやら双方とも同じ位置の許可証を持っておるようじゃな?」

 

「そ、そうなんスよ!」

 

「期限もまったく同じ……どうなってるんですか!?」

 

「ともかく、ここで争っては他のお客さんの迷惑じゃ。向こうで事情は聞くからいったん矛を収めるがいい」

 

「わ、分かったっす……」

 

「了解しました……」

 

煮え切らない様子だったが、元締めの言葉と言う事もあり、二人は大人しく矛を収めた。

 

「お前さんたちも止めてくれて助かったわい。さすがは士官学院の特別なクラスの生徒たちじゃな」

 

エルドたちが士官学院の生徒であり、特科クラスと言う事も知っている発言に驚く。

 

「ワシの名はオットー。ここ大市の元締めじゃ。この話が片付いたら、お茶でもご馳走するから、しばし付き合ってくれ」

 

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