閃の軌跡~軌跡の刃~   作:兄上、お労しい

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志望理由

自己紹介を程々にしたオットーは、二人の意見を聞き、その上で解決策を提示した。

 

それは一週間おきに交代で正面に店を開くというものだった。

 

もちろん正面で開けない間も、他の場所をとって開けるようにした。

 

そして、今週正面で開くのは帝都から来た商人だった。

 

帝都からの商人を卑下にする様な扱いをすれば今後、帝都に限らず他の町から来る商人もその話を聞き、来ないかもしれない。

 

かと言って地元の人間を卑下にすれば、地元民からの信用を失う。

 

どちらを選んでも大市には影響が出る。

 

なら、交代制にし、その上で帝都から来た商人を最初の週に回せば、帝都の商人は満足する。

 

後に開く方は、かなり売り上げに影響するだろうが、一週間後には正面で開けるからなのど、休憩所の隣と言う正面よりは劣るが、それなりに良い位置だったこともあり、渋々だったが了承した。

 

「あの、どうして領邦軍はあの現場に来なかったんですか?」

 

オットーの家でお茶を頂き、話を聞いてる時、エルドはオットーにそう尋ねた。

 

領邦軍とは、各州を治安維持に努める四大名門が有する軍だ。

 

本来なら、あのような揉め事にも介入してくるはずなのに、それがなかった。

 

何か別件があって来なかったのではと思い、訪ねる。

 

「うむ……実は、先日、大市での売上税が大幅に上がってな。売り上げからかなりの額が引かれるようになってしまったんじゃ」

 

「売上税……そう軽々しく上げていいものではないと思うが」

 

「あの、反対とかされなかったんですか?」

 

「無論、バリアハードにある公爵家には何度も陳情に向かった。だが、一向に取り合ってもらえず、門前払いでな」

 

「確かクロイツエェン州を治めてるのは………」

 

「アルバレア公……四大名門だな」

 

「ああ、大貴族の中の大貴族。そして、ワシのしたことはアルバレア公の有する領邦軍にも伝わった。………そして、増税に対する陳情を取り消すまで、大市には不干渉を貫く。と、詰所の隊長殿に仄めかされてな」

 

その言葉に、全員が反応する。

 

「おっと、すまん。余計な事まで話してしまったの。これはワシら商人の問題。お前さん等はお前さん等のことに専念しなさい。明日も今日と同じようにいくつか依頼を用意しておく。明日もよろしくお願いする」

 

そこで時間もちょうどよかったので、エルドたちはオットーの家を後にし、宿屋へと帰っていった。

 

その道すがら、アルバレア公の行いについて色々話したが、なんの解決策も出ず、そもそもこれは学生の身ではどうすることもできない案件、加えて貴族の、それも四大名門と言う大貴族の中の大貴族相手だ。

 

 

「どうやら悩んでるようね、若者たちよ」

 

全員で悩んでいると、サラが現れた。

 

「サラ教官!」

 

「こんな時間にどうしたんですか?」

 

「う~ん、それがね。ちょっとB班のほうで問題が起きて、これからB班に合流するのよ」

 

「え?でも、B班の実習地って………」

 

「紡績町パルム……ここから相当離れているが………」

 

「ま、なんとかなるでしょう。それじゃあ、もう行くわ。女神の加護を。レポート、楽しみにしてるわよ」

 

そう言い残し、サラは駅へと向かった。

 

「そう言えば、レポートがあるんだっけ……」

 

「もうご飯食べたら、すぐ寝ちゃいそうだよ………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、頭の隅にアルバレア家の事を置きながらも、夕食をとるため、宿屋に帰った。

 

地元の食材を使った料理を堪能し、全員で食後のお茶を飲んでいると、エリオットが口を開いた。

 

「それにしても、Ⅶ組って何を目的にしてるんだろう?」

 

「どういうことだ?」

 

「ほら、僕たちってARCUSの適性が高いって理由で集められたけど、なんか、それだけじゃない気がするんだ」

 

エリオットの言葉に、皆が納得した。

 

「それだけならば、今日のような実習にはならないだろうしな」

 

「なんか私たちに色々なことを経験させようとしてるみたいね」

 

「そうだな………士官学院への志望理由が同じってわけでもないだろうしな」

 

「だろうな………そう言えば皆がトールズを志望した理由ってなんだ?」

 

思わず、気になりエルドは皆にそう尋ねた。

 

「志望理由か……私は単純だ。目標とする人物に追いつくため、と言ったところだ」

 

「目標としてる人?」

 

「この場で名前を出すのは控えておく。アリサはどうだ?」

 

「そうね……端的に言うと、自立したかったかしら?実家と上手くいってないってのもあるけど……」

 

「そう言う理由だと、僕は少数派だな。元々、僕は音楽系の進路を目指してたし」

 

「あら、そうなの?」

 

「まぁ、色々あってそっちの方は諦めたんだけど………リィンは?」

 

リィンの順番が来て、リィンは少し考えてから、話し出した。

 

「………自分を見つけるため、かな」

 

「え?」

 

「いや、そんな大層な物じゃないんだ。ただ、あえて言葉にするなら、そんな感じかなって」

 

「いいじゃない、カッコよくて」

 

「貴方がそんなこと言うなんて、ちょっと意外ね」

 

「変な事を口走ったな。エルドはどうなんだ?」

 

「そうだな…………皆はさ、俺の技を見てどう思う?」

 

志望理由のはずが、エルドは皆にそう聞いた。

 

「え?どうって、凄い技だなって思ったけど」

 

「私も同じね。武術の事に関してはあまり知識はないけど、素人目からしてもかなり凄いと思うけど」

 

エリオットとアリサがそう言う中、ラウラとリィンは少し考えてから口を開いた。

 

「確かに、其方の技は素晴らしい。だが、其方が見せた数多の技、その中でも水と雷の技は驚くほど洗礼されている。だが………」

 

「水と雷、それ以外の三つの技は、まだ荒い面が見える」

 

「流石はラウラとリィンだな。その通り、別に使えない訳じゃないんだ。でも、水や雷の呼吸と比較すると、どうしても拙い部分が目立つ。使えるだけじゃダメ、使いこなせてこそ一人前なんだ。三つの呼吸を使いこなせるようになる。そう言う点では、士官学院で別視点から学ぶことも、必要だと思ったんだそれが志望理由だ」

 

そこで、今日は終わりとし、後は本日のレポートを書いて眠ることにした。

 

「リィン、少し良いか?」

 

部屋に戻ろうとした時、ラウラはリィンを呼び止め、リィンが立ち止まる。

 

「迷いもあったがやはり聞いておこう。そなた。どうして本気を出さない?」

 

「え?」

 

「そなたの剣、そなたの太刀筋…かの《八葉一刀流》で間違いないな?」

 

ラウラの問いに、リィンは思わず目を見開いた。

 

「《剣仙》ユン・カーファイが興した東方剣術の集大成とも言うべき流派。皆伝に至った者は理に通ずる達人として剣聖とも呼ばれるという」

 

「…エルドと言い、詳しいんだな。帝国ではほとんど知られていない流派のはずなんだけど。」

 

「我が《アルゼイド流》は古流ながらも他の流派の研究も欠かしておらぬ。それに父に言われていたのだ。『そなたが剣の道を志すならばいずれは八葉の者と出会うだろう』とな」

 

「光栄と言うか、恐れ多いというか……俺は、ただの初伝止まりさ」

 

「え?」

 

リィン言葉に、ラウラは思わず言葉を失った。

 

「確かに一時期、ユン老師に師事していたこともある。だが、剣の道に限界を感じて老師から修行を打ち切られた身だ。だから別に手を抜いてるわけじゃないんだ。八葉の名を汚しているのは重々わかっているけど…これが俺の限界だ…誤解させたのならすまない」

 

「…………そなた自身の問題だ。私に謝る必要はない…いい稽古相手が見つかったと思ったのだがな」

 

そう言って、ラウラは「少し素振りをしてくる」と言い、宿屋を出る。

 

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