閃の軌跡~軌跡の刃~ 作:兄上、お労しい
野盗たちとの戦いは、すぐに決着が付いた。
エリオットとアリサの攻撃に野盗は驚き、動きが止る。
その隙を逃さず、エルドが《流流舞い》を使い、敵と敵の隙間を動き、素早く武器を全て弾いた。
そして、リィンとラウラが接近し、動きを封じ、野盗は為すすべなく無力化した。
「さぁ、勝負はついたぞ。大人しく投降して。大市の人たちに謝罪してもらうぞ」
野盗を拘束しようとしたその時、エリオットが声を上げた。
「あれ?」
「どうした、エリオット?」
「うん、今、笛のような音が聞こえた気がして………」
そう言われ、耳を澄ませるがそのような音は聞こえず、その代わり、森の奥から地響きのような足音が聞こえる。
「リィン、何か来るぞ!とても大きな、魔獣の匂いだ!」
エルドの言葉に、全員が武器を構え、警戒していると、奥から、一体の魔獣が現れる。
その魔獣を見て、野盗たちはすっかり腰を抜かし、動けなくなっていた。
「なんだコイツは!?」
「さしずめ、この公園の主ってところだろう!」
「どうする!?」
「どうするって……この人たちを置いてはいけない!追い払!」
「それしかないな!」
リィンは覚悟を決め、魔獣を見る。
「承知!」
「わ、わかったわ!」
「め、女神様~……!」
最初に仕掛けてきたのは、魔獣だった。
咆哮を上げ、ラウラに向かって突進してくる。
「はっ!」
ラウラはその攻撃を躱すと、横っ腹目掛け、大剣を振り下ろす。
が、表面が硬く、ラウラの一撃は弾かれた。
「リィン、この敵は固い!生半可な攻撃ではダメだ!」
「なら、強い一撃を与えるまでだ!エルド!」
「任せてくれ!」
エルドは、跳躍し敵の枝を掴み、更に昇る。
そして、魔獣の頭上を取り、勢いよく降りる。
「《岩の呼吸 弐ノ型 天面砕き》!」
落下のスピードを余す所なく込めた一撃を上から叩き込み、魔獣は思わずふら付く。
「喰らいなさい!《フランベルジュ》!」
そこに追い打ちをかける様に、アリサが炎を纏った矢を魔獣の顔目掛け打ち込む。
火が弱点だった為が、魔獣は顔を抑え、大暴れする。
「少し落ち着いてもらうよ!《ブルーララバイ》!」
暴れる魔獣に、エリオットが眠りの鐘を鳴らし眠らせようとする。
鐘の音を聞いた魔獣は、徐々に暴れるのを止め始め、動きが鈍くなる。
「《肆ノ型 紅葉切り》!」
リィンは《紅葉斬り》を使い、魔獣の足を狙う。
足をやられた魔獣は、その場に倒れ、動きが鈍くなる。。
「《鉄砕刃》!」
鉄すらも砕きかねない、強力な一撃をラウラは、魔獣の頭に落とす。
「ラウラ、止めだ!」
「承知!」
ラウラの手にした大剣が光を放つ。
「我が渾身の一撃、喰らうがよい!奥義!《恍刃乱舞》!」
大剣による二連撃に、止めの回転切りに、魔獣はとうとう動きを止める。
だが、最後の力を振り絞り、ラウラに最後の攻撃をする。
ラウラは大技を出した直後で、動くことができなかった。
「《炎の呼吸 壱ノ型 不知火》!」
エルドが動き、魔獣とラウラの間に割って入る。
「からの《弐ノ型 昇り炎天》!」
刀を振り上げ、魔獣の一撃を受け止める。
だが、咄嗟に使った技の為踏み込みが甘く、そのまま魔獣は力でごり押しで、エルドとラウラを潰そうとする。
(ラウラ!エルド!頼む、動いてくれ!今だけでいい、二人を……俺の仲間を守れる力を!限界を…………超えてくれ!)
リィンはそう願った。
その瞬間、体から力が溢れる様な感じがした。
「炎よ!我が剣に集え!」
その瞬間、リィンの太刀が炎を纏う。
「《焔ノ太刀》!」
炎を纏った一撃は、魔獣の命を刈り取り、倒した。
後には、魔獣を倒した静けさしか残っていなかった。
「リィン、今のは……」
「《八葉一刀流》の技の一つさ。まさか、この状況で、習得できるなんて思わなかった。限界を……超えれたよ」
リィンは太刀を鞘に納め、疲れた笑いをする。
その笑顔に連れられ、エルドも笑い、刀を鞘に納める。
「何はともあれ、一件落着ね」
アリサは笑顔でそう言うが、その直後、劈く様な笛の音が響く。
「貴様ら、そこで何をしている!」
現れたのは領邦軍だった。
領邦軍たちは駆け足でエルドたちに近寄ると、銃口を向けた。
「なぜ、我らに銃を向ける?」
「黙れ!学生だからと、甘く見られると思ったか!」
「大人しく手を上げろ!」
そんなエルドたちを見て、野盗たちはにやにやと笑いだす。
「完全にグルか………」
「呆れるわね……」
「何のことかね?」
悪態をつく俺たちに、領邦軍の隊長と思しき人物が近寄る。
「確かに、盗品もあるようだが、彼らがやった証拠はなかろう。可能性で言えば、“君達”の仕業ということもあり得るのでは?」
にやにやと、下種な笑みを浮かべる領邦軍の隊長。
「そこまで我らを愚弄するか」
「そんなことが本気でまかり通るとでも……?」
「弁えろと言ってるのだよ。これ以上、学生如きに引っ掻き回されては堪らんのだよ。手を引かぬなら、このまま容疑者としてバリアハードへ連行する」
「その必要はありません」
その時、一人の女性の声が、領邦軍の後ろから掛けられる。
そこには、一人の女性を先頭に、その女性と同じ制服に身を包み、手には最新式の銃を手にした集団がいた。
「な!?き、貴様らは……!」
領邦軍隊長は、その集団を見て、あからさまに狼狽える。
「あれって、《鉄道憲兵隊》だ」
「それって、正規軍の中でも最精鋭って言われる……」
鉄道憲兵隊の登場に、誰もが驚きを隠せないでいた。
そんな中、鉄道憲兵隊の先頭に立っていた女性が一歩前に出る。
「《鉄道憲兵隊》所属、クレア・リーヴェルトです」
「ア、《
「き、貴様ら《鉄道憲兵隊》がなぜここにいる?ここはアルバレア公爵が治めるクロイツェン州だ。この地域の治安維持は我等、クロイツェン州領邦軍の仕事だ。貴様ら正規軍に介入される謂れはない!」
「お言葉ですが、ケルディックは鉄道網の中継地点でもあります。そこで起きた事件は、我々にも捜査権が発生する。その事は、ご存知ですよね?」
有無も言わさない眼差しに、領邦軍の隊長たじろぐ。
「そして、元締めの方をはじめ、関係者の話から判断するに、その学生さんたちに犯人の可能性はありません。それに対して異議はありませんか?」
「……ない」
「では、この場は我々が後を引き継ぎます。盗品の返却も含め、後はお任せを」
「チッ……!撤収!」
領邦軍の隊長は部下にそう指示し、領邦軍はケルディックへと帰っていった。
「あの者たちを拘束してください」
「「イエス・マム!」」
女性は部下にそう指示し、野盗たちを拘束する。
「お疲れ様でした」
女性は、先ほどとは違い、柔らかい笑みで、俺たちに話し掛けてくる。
「改めまして、《鉄道憲兵隊》所属、クレア・リーヴェルト大尉です、トールズ士官学院の方たちですね。調書を取りたいので、お付き合い願います」
調書のために、ケルディックに戻ったエルドたちは、事情説明を行い、オットーさんたちに報告をした。
オットーや二人の商人、他の大市の出店の人たちからもお礼を言われ、事情を聞きつけ迎えに来たサラと共に、列車でトリスタに戻ることになった。
帰りの列車の中で、改めてⅦ組が何のために作られたのかを考えてみることになった。
特別実習で様々な経験をさせ、その上で起きた問題に対し自主的に行動する、判断力と決断力、そして問題解決能力を養わせることが目的なのではという結論に達した。
そんなA班の答えに、サラ教官は半分あたりと答えたが、残りの半分については語ろうとしなかった。
「なんかそれって《遊撃士》に似てませんか?」
リィンが突如、そんなことを言い出す。
《遊撃士》とは、民間人の保護と地域の平和を目的とした民間の団体《遊撃士協会》に属する、《支える籠手》の紋章を掲げた者たちのこと。
どうやら的を得ていたのか、サラはあからさまな態度で、寝たフリをし、そして、本当に寝た。
「まぁ、いずれその辺りのことも明かしてくれるだろう。我らは次の実習に備えればいい」
「そうだな………皆、聞いてほしいことがある」
リィンは何かを決意し、口を開く。
「入学してもうひと月も経っているのに、俺は皆に対して不義理をしていたんだ」
「それって……」
「実は、俺の身分は“貴族”にあたるんだ。帝国北部の山岳地ユミル。そこを治めているシュバルツァー男爵家が俺の実家になる…」
「シュバルツァー男爵家と言えば、男爵家でありながら、皇帝家と縁のある誇り高き名家だな」
「まさか、リィンまで貴族の若様だったなんて……」
「若様はよしてくれ。それに、貴族と言っても、養子で血が繋がっていないんだ」
「貴方も、色々事情があるみたいね」
「そんなに大層な事情じゃないさ。ただ、これから共に過ごす仲間だから、隠し事はしたくなかったんだ」
「隠し事か………なら、俺もリィンが自分の秘密を話してくれたし、俺も話すかな」
エルドがそう言うと、他のメンバーは少し驚いた顔をする。
「秘密?」
「そなたにも、隠し事があったのか?」
「まさか、エルドも貴族の若様とか!?」
「違うよ。そもそもグリファス家は、剣術家ってこと以外はただの平民だよ。秘密ってのはコレの事さ」
そう言い、エルドは前髪を上げる。
そこには炎の様な痣があった。
「炎の……痣?」
「ああ、生れた時からある痣なんだ。俺自身、この痣の事は気にならなかったんだけど、初対面の相手にだと驚かれたり、酷い時だと気持ち悪がられたりするんだ。だから、普段はこうして、前髪を下ろして隠してるんだ。リィンの秘密と比べると些細なことだけど、折角だし、隠すのは止めようかなって」
「確かに驚いたけど、それだけだ。俺は気にしないよ」
「うん、僕もだよ。むしろ、話してくれて嬉しいよ」
「そうね。てか、少し考えすぎよ。もっと気楽に考えなさいって」
「そうだな。少なくとも、我等は些細な違いでお主を嫌うほど、無知な輩ではない」
「皆、ありがとう。学院に帰ったら、他の皆にもちゃんと話させてもらうよ」
エルドの痣ですが、痣がるのは鬼滅の刃での炭治郎と同じ位置にあります。
隠し方は、痣が隠れるように前髪を垂らし、横に流す感じで隠してます。