閃の軌跡~軌跡の刃~ 作:兄上、お労しい
五月下旬
ライノの花は完全に散り、新緑薫る風が吹き抜ける季節。
特別実習を終えたエルドたちは、本格的に始まったカリキュラムと学園生活に追われていた。
そして、今は、男女に分かれて貴族クラスのⅠ組との合同授業を行っている。
女子は調理実習で、男子は動力端末。
初めて触れる最先端の技術に、エルド達は最初こそ圧倒されながらもなんとか授業に付いて行った。
担当教官のマカロフはと言うと、一通りの説明をすると、適当に課題を出され、授業中に終わらせろと言って、今は、タバコを吸いながら外を眺めている。
「ふぅ…何とかコツは掴めてきたかな」
「ああ。最初はどういうものなのか、まるで見当もつかなかったが」
「ユーシスやマキアスはすぐ覚えたみたいだけどね」
「まぁ、優秀だからなぁ。もっとも、マキアス以前から興味はあったみたいだがな。俺も色々助けられたよ」
なんとか課題を終えたエルドとガイウス、エリオットはリィンの傍に集まり、授業の事を話し合っていた。
「ユーシスは興味がなくても軽々とこなしちゃう感じだよね。マキアスはそこが面白くないんだろうけど」
そう言ってエリオットは、課題をとっくに終わらせ、腕を組み、椅子に座っているユーシスを見る。
「……先月のB班、酷かったんだって?」
「ああ。危うく殴り合いになるところだった。止めはしたんだが、二人とも話を聞かなくてな……サラ教官が来てくれたからよかったものの、来なかったらどうなっていたことか………」
ガイウスは実習のことを思い出し、溜息を吐く。
流石のガイウスも、あの二人の仲の悪さには困ったみたいだ。
「失礼する」
その時、一人の貴族生徒がエルドたちに声をかけてきた。
「確か、Ⅰ組の……」
「パトリックだったか?」
「ああ、その通りだ。ついでに言うと、僕のフルネームは、パトリック・T・ハイアームズだ。そう言えば、わかるだろ?」
「ハイアームズって……」
「そうか、《四大名門》だったか……」
「《四大名門》って言うと、ユーシスと同じだな」
「うん。でも、ユーシスの実家と比べると、格はちょっと下がるけど……」
エリオットの余計な一言に、パトリックはエリオットをギロッと睨む。
睨まれたエリオットは慌てながら、ガイウスの背後に隠れる。
「フン、君たちのような庶民や外国人に興味はない。シュヴァルツァー、喜び給え。僕の口利きで、君を貴族専用のサロンに招待してあげようではないか」
「え?」
驚くリィンの表情に、パトリックは満足したのか、笑う。
「いくら男爵家とは言え貴族は貴族だ。Ⅶ組などと言う、胡乱なクラスに在籍してるとは言え、ハイアームズ家の僕が口利きをすれば、サロンの使用許可も下りるだろう。感謝したまえよ」
早い話、自分たちの派閥にリィンを入れるための誘いだ。
リィンは、どう断ろうか言葉を考える。
「やれやれ。こんなところで勧誘とはな」
「ユーシス・アルバレア!?」
その時、何処からともなくユーシスが現れて声をかけてきた。
「ハイアームズ家の三男殿は派閥ゴッコがお好きらしい。そういう話はまず最初に俺に声をかけるのが筋じゃないのか?」
「くっ…君は好きでサロンに来ないだけだろう!?あれほど2年の先輩たちが熱心に誘っているにも関わらず!」
「興味がないからな」
「もういい!シュヴァルツァー!とにかく考えておきたまえ!誰に付くのが、君の将来にとってプラスになるのかを……!!」
そう捨て台詞を吐くと、パトリックは教室を出ていく。
よく見ると、もう授業時間は終わっていた。
「ありがとう。ユーシス、助かった。どう断ればいいか迷ってたんだ」
「ふん。お前を助けたわけじゃない。ただ、先月の実習では迷惑をかけたからな」
それだけ言ってユーシスも教室を出て行った。その背中をリィンたちは何とも言えない顔で見送った。
「先月って…ケルディックでの領邦軍との揉め事だよね?」
「なるほど、改めてお前たちに詫びたかったのだろうな」
「それじゃあ、今日はここまで、明日は《自由行動日》だから、存分にリフレッシュしときなさい。それと、来週の水曜は《実技テスト》もあるから、忘れないように」
サラの言葉に、何人かは溜息を吐く。
溜息を吐いたのは主に先月のB班のメンバーだった。
「あと、《実技テスト》の後に、次の《特別実習》の実施場所と班分けも発表するからそのつもりでね。最後に、来月の半ばに《中間試験》もあるから、赤点は取らないようにしなさいよ。でないと、私がハインリッヒ教頭に嫌味言われるから」
そう言ってサラはマキアスに号令を指示する。
マキアスの号令で、全員が挨拶をし、寮に帰ったり、クラブに顔を出しに行ったりする。
「じゃあ、リィン、エルド。僕たちは行くね」
「失礼する」
エリオットとガイウスは、リィンとエルドに近寄りそう言う。
「ああ。二人ともクラブか?」
「うん。でも、夕飯は一緒に食べよう」
「最近学食続きだったし、今日は街のカフェなんかどうだ?」
「ああ、いいぞ。帰ったら寮の玄関前に集合でいいか?」
「そう言えば、街のカフェには行ったことがないな。少し楽しみだな」
「うん、そうだね!」
「では、また後で」
エリオットとガイウスはそう言い、それぞれのクラブへと向かう。
「しかし、二度目の実技テストに特別実習か………それに、来月は初めての中間試験。やることが多いな」
改めて学院のカリキュラムの濃さとハードさを痛感し、リィンに問い掛ける。
「分かっていたこととは言え、少し疲れるな」
エルドの問いに、リィンは困ったような笑みを浮かべる。
「ね、ねぇ!」
すると、アリサがリィンに声を掛けてきて、リィンがそちらを向く。
「アリサ。アリサも今からクラブか?」
「う、ううん!今日は活動の日じゃないから」
「そうなのか?それじゃあ、俺に何か用か?」
「そ、それは………別に何でもない!じゃあね!」
結局、アリサは何も言わずにそのまま教室を去って行く。
「また何かしでかしたのか?」
今度は、ラウラが近づいて来る。
「いや、何かしでかしたつもりはないんだが……」
「リィン、もしかして知らない内に何かしでかしたんじゃ……」
「ううん………その可能性は否定しきれないな」
「ふふ、冗談だ。それで、明日の自由行動日はまた旧校舎の地下に潜るのか?」
「ああ、そのつもりだ。学院長からも頼まれてるし」
「会長たちからの依頼を片付けた後に行くつもりだ」
「なら、その時は私も呼んでくれ。力になろう」
そう言い、ラウラもクラブ活動へと向かう。
これで教室には、エルドとリィン、そして、マキアスだけとなった。
「マキアスは確かチェス部だったよな?クラブに行くのか?それとも、図書室で勉強か?」
リィンがそう問いかけるも、マキアスは何も言わなかった。
「マキアス?」
不思議に思い、リィンがもう一度問い掛ける。
今度は立ち上がり、そして、マキアスはリィンを冷たい目で見た。
「僕が放課後をどう過ごそうと、君には関係ないだろ?」
「ま、マキアス?」
冷たい言葉を投げかけられ、リィンは驚く。
「……マキアス、まさかリィンが貴族だってことを隠してたのを怒ってるのか?」
エルドは、マキアスにそう問いかける。
「別に。ただ、あっさりと騙された僕が間抜けだっただけさ」
「あ……すまない、マキアス。あれは騙そうとしたとかそんなつもりは」
「言い訳は結構さ。この際、君が貴族であるかどうかは関係ない。ただ、嘘をつく人間を信用することは出来ない。それだけのことだ」
そう言い、マキアスは教室を出ていく。
その際、教室に戻って来たエマとぶつかりそうになるも、マキアスは一言謝るだけして去って行った。
「リィン、あまり気にするなよ。俺ももう行くから。じゃ、また後でな」
エルドはそう言い、エマにも挨拶して急ぎ足で教室を出る。
「マキアス!」
エルドは教室を出るとすぐに玄関へと向かい、今まさに出て行こうとするマキアスを呼び止める。
「エルドか……僕に何の用だ?」
「別に用なんてないよ。ま、強いて言うなら少し話がしたがっただけだ」
「話か………その話と言うのは、リィンを許してくれとかいう話かい?それならお断りだ。彼が貴族である以前に、僕は彼が嘘をついていたことが許せないんだ」
「……まぁ、確かにあの時のリィンの言葉は不誠実だったな」
「え?」
エルドの言葉に、マキアスは思わず面食らった。
この一ヵ月で、エルドとリィンの仲はⅦ組内でも一番仲がいいとマキアスは思っていた。
だからこそ、自身がリィンに言ったことを咎めに来たと思った。
にも関わらず、エルドはあっさりとリィンの非を認めた。
「でも、マキアス。本当にリィンの事が許せないのは、嘘をついていたことか?」
「あ、当たり前だ!嘘をつく行為自体、貴族だろうと平民だろうと許されたことじゃ「俺が貴族だって言ったら、マキアスはどうする?」………え?」
エルドの問いに、マキアスは固まった。
「確かに俺は平民だ。でも、明日どうなってるかは分からない。もしかしたら、何処かの貴族の養子になって、俺の身分が貴族に変わるかもしれない。そうなったら、マキアスはどうする?」
「そ、それは…………!」
エルドの問いに、マキアスは何も言えず、ただ言葉を詰まらせるばかりだった。
「………すまない、意地の悪い質問だったな。でも、リィンのことをもっとよく見てやってくれ。貴族としてのリィンでも、嘘をついたリィンとしてでもなく、Ⅶ組の仲間としてのリィンを」
「…………」
「じゃあ、また明日な。マキアス」
エルドはそう言い、マキアスの横を通り過ぎて学院を出た。
アンケートを行います。
次回のエルドの実習での班です。
A班だと原作にエルドが加わります。
B班だとオリジナルになります
期限は今日から5/9までとします。
次回のエルドの実習先
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A班
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B班