閃の軌跡~軌跡の刃~ 作:兄上、お労しい
二回目の特別実習。
エルドたち、B班は全員で合流するとすぐに駅へと向かい、セントアーク行きの切符を購入した。
列車が来るまで待っていると、そこにリィンたちA班が現れた。
「エルド、それに皆も。もう切符は買ったのか?」
「ああ、ついさっきな。そっちは………相変わらずって所か」
エルドはリィンの後ろでそっぽを向きあってるマキアスとユーシスを見て苦笑する。
「まぁ……なんというか……」
「正直、ウザったい……」
「フィ、フィーちゃん……!」
フィーの正直な物言いに、エマが止める。
そこでちょうど、セントアーク行きの列車到着のアナウンスが鳴り、エルドはリィンに激励を送って、他のメンバーと列車に乗る。
「A班、大丈夫かな?」
列車が動くなり、エリオットがそう言い出す。
「ふむ、無事であることを祈るしかあるまい」
「そうね。何があっても、離れてる私たちじゃどうしようもないし」
ラウラとアリサもA班の事が心配ではあるか、どうすることもできず無事を祈るしかできなかった。
「だが、今回はリィンが居る。リィンなら、きっとあの二人の仲を取り持つことが出来るさ」
そんな中、ガイウスだけはリィンの事を信じており、心配はしているも何処か落ち着いていた。
「でも、マキアスはリィンの事も嫌っちゃってるし難しいんじゃないかな?」
「いや、きっと大丈夫だろう」
エリオットが不安そうに言うと、エルドがそう言った。
「リィンなら、あの二人を仲良くするとまでは言わないけど、仲を好転させる事が出来るはずさ」
「ガイウスもそうだけど、エルドも随分とリィンの事を信じてるのね」
「俺だけじゃないさ。皆だって、リィンならって信じてるだろ?」
「それは……まぁね」
「ふむ、言われてみるとそうかもしれないな」
「ははは、それはそうかもね」
「ああ、きっとリィンならあの二人の風向きも変えてくれるさ」
エルドの問いに、それぞれらしい反応を返し、エルドは笑う。
「それじゃあ、実習地の話しをしよう」
エルドが話題を変えたことで、全員がエルドに注目する。
「とりあえずは、セントアークについてのおさらいだな」
旧都セントアーク
またの名を白亜の旧都
帝都ヘイムダルと他の各州の州都と同じく、帝国の五大都市一つである。
セントアークは帝国内の他の主要都市と比べて人口規模では少し劣るものの、「旧都」の名の通り中世初期・暗黒時代の一時期には帝国の都であり、帝国の歴史上において重要な都市でもある。
また、古くから「芸術の都」としても名高く、中世以前より多くの著名な芸術家を輩出してきた。
治安維持はサザーランド領邦軍が担っている。
「確か、《四大名門》が治めてるんだよね?」
「ああ。フェルナン・ハイアームズ侯爵。Ⅰ組のパトリックの父親だ」
エルドがそう言うと、エリオットとガイウスは先日の導力端末の授業でのことを思い出す。
「うう……パトリックみたいな人だったらどうしよう……できれば会いたくないよ……」
「残念だが、実習開始に当たって侯爵家を訪れるように言われてるんだ。嫌でも会うことになる」
その言葉にエリオットはさらに憂鬱そうに下を俯く。
その後、列車の中でいつも通りエルドの弁当を食べ、雑談したりなどして時間を過ごしセントアークへと到着した。
「白亜の旧都って言う割には、白くはないんだな」
駅を出るなり、ガイウスがそう言う。
「昔は、その名の通り白い街並だったんだけどな。今じゃ、その名残が見えるぐらいだな」
エルドも街を見渡し、そう言う。
「エルド、侯爵家へと向かうのだろう?あまり時間をかけるのはよくないと思うのだが」
「ああ、すまない。それじゃあ、侯爵家に向かおう」
「失礼します。トールズ士官学院の皆さまですね」
声を掛けられ、そちらを向くとそこには一人の執事が立っていた。
「はい、そうですが……」
「私はハイアームズ侯爵家に使える執事です。皆様をお迎えに上がりました。どうぞ、こちらへ」
執事に案内され、導力リムジンに乗り、エルドたちは侯爵家へと向かった。
「こちらです。中で、お待ちになられています」
そう言い、執事が扉をノックする。
「旦那様、トールズ士官学院の方々をお連れしました」
『ああ、入ってくれ』
「失礼します」
執事が扉を開け、エルド達を中へと招き入れる。
「よく来てくれた」
エルド達が中に入ると、椅子に座っていた男性が立ち上がり、エルド達の前まで来る。
「サザーランド州の統括を任されているフェルナン・ハイアームズだ。君たちの来訪を歓迎しよう」
ハイアームズ侯は笑顔でそう言った。
「トールズ士官学院《特科クラス》Ⅶ組、エルド・グリファスです。到着とサザーランド州での実習開始にあたってご挨拶に参りました」
「うむ、了解した。よき成果が得られることを願おう。早速だが、これが実習内容となる」
ハイアームズ侯は机の上に置いてあった封筒を手に取り、それをエルドへと差し出す。
「承ります」
エルドは封筒を脇に持ち、姿勢を正す。
「市内のホテルに君たちの部屋を用意しておいた、そこを拠点に実習を行うといいだろう。何か困ったことがあればここを訪ねてくれたまえ。では、女神の加護を」
ハイアームズ侯に見送られる形で、エルド達は侯爵家を出る。
「はぁ~、ビックリした。あのパトリックの父親とは思えないぐらい優しい人だったね」
屋敷を出るなり、エリオットは息を吐き、そう言う。
「ああ、ハイアームズ侯は《貴族派》の中でも穏健派で、彼の統治には民からの不満も少ないという」
「なんて言うか、貴族らしくないって言うか、本来の貴族らしいって言うか………」
「ふむ、帝国にはあの様な貴族もいるのだな」
「まぁ、貴族が皆、横柄な奴じゃないってことさ。ハイアームズ侯の様に自身が治める領地の領民を思いやる貴族も居れば、アルバレア公の様に利己的な貴族もいる。貴族と言っても、一括りにはできないってことだな」
その後、エルドたちはハイアームズ侯が手配したホテルへと向かい、荷物を置くとロビーへと集合する。
「それじゃ、実習内容の確認をするか」
渡された封筒を取り出し、中身を確認する。
『特別実習1日目
南サザーランド街道の手配魔獣 【必須】
ヴァンダール流との交流試合 【必須】
結婚指輪の捜索
絵のモデル探し
実習範囲はセントアーク周辺、200セルジュ以内とする。
*実習の為、紡績町パルムまで向かう際は、一度侯爵家城館を訪れる様に。
なお、1日ごとにレポートをまとめて、後日担当教官に提出すること』
「ふむ、前の実習と同じような感じだな」
「ちょっと待って。この交流試合、場所がパルムになってるわ」
「そう言えば、パルムとセントアークはそれほど遠くないと言っていたな。馬を走らせれば一時間もかからないはずだ」
「注意事項の部分によると、パルムに行く際は一度侯爵家に報告しないといけないみたいだね」
「ふむ………とりあえず、先に絵のモデル探しと指輪の捜索をしよう。手配魔獣は、パルムへの道すがら討伐。そして、最後に交流試合。こんな流れでどうだ?」
一通りの流れをエルドが作り、他のメンバーに問い掛ける。
「私はいいわ」
「私もだ。その方が無駄もないだろう」
「俺も異存はない」
「僕もだよ」
「よし。それじゃあ、Ⅶ組B班、実習を開始しよう!」