閃の軌跡~軌跡の刃~   作:兄上、お労しい

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特別オリエンテーリング

フィーをキャッチしたエルドは、呼吸を整える。

 

「―の呼吸 玖ノ型 ――」

 

フィーはエルドがそう呟くのを聞いた。

 

その瞬間、エルドは縦横無尽に床を駆け下り、そして、そのまま地下へと着地した。

 

「ふぅ……えっとフィーだっけ?大丈夫か?」

 

「……うん、問題ない」

 

「そっか、なら良かった」

 

エルドはフィーを優しく下ろし、辺りを見渡す。

 

「ここは一体………そうだ、リィン、エリオット、無事か?」

 

辺りを見渡し終え、エルドはリィンたちの安否を確認する。

 

「こ、ここだよ……はぁ~、心臓飛び出るかと思った」

 

エリオットは手を上げて応える。

 

そして、リィンはと言うと…………

 

「リィンは大丈夫………あ」

 

「リィン………」

 

エリオットの隣で倒れているリィンの姿を見て、エリオットとエルドは言葉を失った。

 

何故なら、リィンは金髪の美少女の胸に顔を埋める様に下敷きになっていた。

 

「………!」

 

リィンから退いた女少女は顔を真っ赤にしながら、キツイ目でリィンを睨みつける。

 

「えっと……とりあえず申し訳ない!」

 

リィンは慌てて謝る。

 

「でも無事で何よりだった」

 

「くっ!」

 

直後、少女の平手打ちがリィンに炸裂する。

 

リィンは頬に紅葉マークを拵えた。

 

「その、災難だったね」

 

「ああ……厄日だ」

 

「どんまい」

 

リィンの肩に手を置いて、エルドは励ます。

 

「それにしても、ここは一体………」

 

その時、エルドの腰から何かの音が鳴り響く。

 

全員同じらしく、全員があるものを取り出す。

 

「これは!」

 

「入学案内書と一緒に送られてきた……!」

 

「携帯用の導力器か」

 

『それは特注の戦術オーブメントよ』

 

すると、導力器からサラの声が聞こえる。

 

「この機械から?」

 

「通信機能を内蔵しているのか!」

 

「まさか、これって!?」

 

金髪の少女が何かに気づき、声を上げる。

 

『ええ、エプスタイン財団とラインフォルト社が共同で作った次世代型の戦術オーブメント。第五世代戦術オーブメント“ARCUS(アークス)”よ』

 

サラが言うには、これに結晶回路(クオーツ)をセットすることで魔法(アーツ)が使えるとのことだ。

 

『と言うわけだから各自受け取りなさい』

 

その言葉と同時に、部屋の明かりが付き、全員が驚く。

 

『校門で預かった君たちの武具と、特殊なクオーツを用意したわ。それぞれ確認をしたうえで、クオーツをARCUSにセットしなさい』

 

全員色々思うところがあるみたいだが、今はそれを言わず各々の武器の所に移動する。

 

エルドも自分の所に移動し、武器を手にする。

 

『それはマスタークオーツよ。ARCUSの中央に嵌め込めばアーツが使えるようになるから』

 

指示通り、クオーツをセットする。

 

すると、ARCUSとエルドの胸の中央が光り始める。

 

光が収まると再びサラの声が聞こえる。

 

『今のが君たちとARCUSが共鳴・同期した証拠よ。これで、めでたくアーツが使えるわ。それじゃあ、さっそく始めましょうか。そこから先はダンジョン区画になっているわ。結構入り組んでるし、迷うかもしれないけど、無事目的地まで辿り着ければ旧校舎一階に戻ってこられるわ。ま、ちょっとした魔獣なんかも徘徊しちゃってたりするけど』

 

なんで魔獣なんかがっとエルドは思ったが、ここでそれを問い質しても意味がないことが分かっていたので、何も言わずにした。

 

『では、これより士官学院・特科クラスⅦ組特別オリエンテーリングを開始する。各自、ダンジョン区画を抜けて旧校舎一階まで戻ってくること。文句があったらその後に受け付けてあげるわ。何だったらご褒美にホッペにチューしてあげるわよ』

 

サラは楽し気にそう言い残して通信を切る。

 

部屋一帯に沈黙が漂う。

 

そんな中、最初に動いたのはユーシスだった。

 

「待ちたまえ!一人で行くつもりか……!」

 

そんなユーシスにマキアスが声を掛ける。

 

「馴れ合うつもりはない。それとも“貴族風情”と連れ立って歩きたいのか?」

 

「なっ!?」

 

「まぁ、魔獣が怖いのであれば同行を認めなくもない。武を尊ぶ帝国貴族として、一通り剣は使えるつもりだ。貴族の責務(ノブレス=オブリージュ)として、力なき民草を保護してやろう」

 

「だ、誰が貴族なんかの助けを借りるか!もういい!だったら、先に行くまでだ!」

 

マキアスはそう叫び、先にダンジョンへと進む。

 

そんなマキアスを鼻で笑い、ユーシスもダンジョンへと向かう。

 

「えっと……」

 

「ど、どうしましょう?」

 

「どの道終わらせないといけないんだ。だったら進もう」

 

「そうだな。だが、この先どんな危険があるかわからない。念のため、数人で行動しよう」

 

エルドがそう言うと、髪を束ねた長身の少女がそう提案する。

 

結果、エルドとリィン、エリオット、そして褐色の男子の四人と、長髪を束ねた少女とメガネの少女、そして、リィンを平手打ちした少女の三人で別れることになった。

 

「では、我らは先に行く。男子故、心配無用だろうが、そなたらも気を付けるがよい」

 

そう言って三人はダンジョンへと進む。

 

「さてと、じゃあ、ダンジョンに入る前に一応自己紹介と互いの獲物の確認でもするか」

 

「それがいいだろう」

 

「なら、俺から先に行かせてもらおう。俺はガイウス=ウォーゼルだ。帝国に来て日が浅いから、宜しくしてくれると助かる」

 

「ああ、俺はリィン・シュバルツァーだ」

 

「俺はエルド・グリファス。よろしく頼むよ、ガイウス」

 

「僕はエリオット・クレイグ。よろしくね」

 

「リィンにエイド、そして、エリオットだな。よろしく頼む。それで、俺の獲物はコレだ」

 

そう言って、褐色の男子ことガイウスが見せたのは十字槍だった。

 

「じゃあ、次は僕だね。ボクの武器はコレだよ」

 

エリオットが見せたのは杖だった。

 

「それは、オーブメントか?」

 

「うん。魔導杖(オーバルスタッフ)って言う新しい技術を使った武器なんだって。入学時、適性があるって言われて使用武具に選んだんだけど、なんでも試作段階の武器らしいんだ。それで、リィンは?」

 

「俺のはコイツだ」

 

そう言ってリィンが出したのは刀だった。

 

「それって……剣なの?」

 

「帝国の物と違うようだが……」

 

「こいつは太刀さ。切れ味はちょっとしたものだが扱いづらくてな」

 

「その割には結構様になってたよ」

 

「頼りにさせてもらおう」

 

「最後は俺だな。と言っても、俺もリィンと同じだよ」

 

そう言って、エルドはリィンと同じ刀を見せる。

 

「エルドも太刀使いだったんだな」

 

「まぁ、家柄自体東方寄りだからな。一応、子供の頃から鍛錬を積んでるから期待してくれ」

 

「そいつは、頼もしいな。それじゃあ、先へ進むか」

 

リィンの言葉に全員が頷き、ダンジョンへと足を進める。

 

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