閃の軌跡~軌跡の刃~   作:兄上、お労しい

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交流試合

エルドの母、カナ・グリファスのお陰で危機を脱したエルド達は、一先ずパルムへと向かうことにした。

 

全員が馬に乗って移動する中、カナはと言うと、並走する形で走っていた。

 

その光景に、エルド以外驚いていた。

 

呼吸を乱すことなく、汗一つ掻かず走る姿は、何処か余裕が見え、その気になれば馬より早く走れるのではと思えるほどだ。

 

パルムに着くと、一同は馬を停め、街の中に入る。

 

「それで、母さん。どうしてセントアークに居たのさ?」

 

「決まってるでしょ」

 

カナはそう言い、エルドに近づき、肩を掴む。

 

「入学してから一度も連絡をよこさないバカ息子に会いに来たに決まってるじゃない」

 

そう言い、カナは勢いよく頭突きをした。

 

「うごっ!!?」

 

頭突きを喰らったエルドは、頭突きされた場所を抑えその場に蹲る。

 

あまりにも鈍く、大きな音が響いたのでガイウスたちはエルドの額の骨にヒビでも入ったのではと心配した。

 

「まったく………忙しかったのかもしれないけど、文の一つ出せない程忙しい程じゃないでしょ?せめて近況報告の一つはして欲しいの。お父さんも、言葉には出さないけど心配してるんだから」

 

「………ごめんなさい、母さん」

 

「うん、よろしい。それじゃあ、母さんはセントアークに戻るから。実習、頑張りなさいね」

 

カナは最後にそう言って笑い、エルドの頭を撫でる。

 

「皆さん、息子をよろしくお願いします。皆さんも実習、頑張ってくださいね」

 

ガイウスたちにも頭を下げ挨拶し、カナはセントアークへと戻った。

 

「なんと言うか、エルドの母上は凄いな」

 

「うん………ところで、エルド大丈夫?」

 

「ああ………まだ痛むけど、平気だ」

 

「凄い音がしてたぞ」

 

「でも、手加減はしてくれたみたいだ」

 

「あれで手加減してたの!?」

 

「母さんの本気の頭突きだったら、今頃意識飛んで額が割れて血が出てるよ。母さん、一度家の近くに現れた猪を頭突きで撃退してるし」

 

エルドの言葉に、全員が言葉を失った。

 

確かに、カナの強さは自分たちと比べると遥か高く、それでいて強大な壁があった。

 

そんな人が猪を頭突きで撃退したとは、冗談にしても笑えない。

 

「それより、交流試合に行こう」

 

エルドは立ち上がり、そう言う。

 

その言葉に、ガイウスが前回の実習の時にパルムの地図を覚えており、道場まで案内した。

 

道場に着き、中に入ると中では数人の門下生と思われる人々が木剣を手に稽古していた。

 

「おや?君たちは?」

 

そんな中、稽古の様子を見守っていた男性がエルド達に気づく。

 

「トールズ士官学院の者です」

 

「ああ、君たちか!待っていたよ!私は、ウォルトン!一応、ここパルムのヴァンダール流道場の責任者です」

 

ウォルトンとエルドが挨拶を躱し、そこでウォルトンが稽古を停める様に声掛けをする。

 

「普段は型を反復したり、門下生同士で模擬試合をしたりしてるんですが、それでは代わり映えがせず、いい刺激にもならないんですよ。そんな時、近々トールズ士官学院の学生が実習でパルムを訪れると聞いて、折角なので手合わせをお願いできないか、依頼したのですよ。まぁ、前回の時は間に合わず、今回ハイアームズ侯に無理言って依頼に入れてもらったんです」

 

「そうでしたか。自分達としても、ヴァンダール流と手合わせできるのは嬉しい限りです。ぜひお願いします」

 

「ありがとうございます。それでは、試合形式ですが、三対三で行おうと思います」

 

「分かりました」

 

一度ウォルトンから離れ、エルド達は集まる。

 

「さて、まず誰が出る?」

 

「私が行かせてもらおう。アルゼイド流の剣士として、ヴァンダール流の剣士と戦えるのは願ってもない」

 

「私はパスね。そもそも弓じゃ、あの剣を使う相手とは相性が良くないわ」

 

「僕もかな。そもそも、魔導杖の扱いがまだ完璧じゃないし」

 

「なら、残りの二枠は俺とガイウスだな。ガイウス、いいか?」

 

「ああ。異国の剣術、ぜひ興味がある」

 

メンバーが決まり、エルドとラウラ、ガイウスの三人が土俵に上がる。

 

同じく、ヴァンダール流の門下生が三人土俵に上がる。

 

「それでは!これより、トールズ士官学院とヴァンダール流道場の交流試合を行う!両者、ベストを尽くし戦う様に!それでは………はじめ!」

 

ウォルトンの掛け声で、試合が始まる。

 

「はああああああ!!」

 

最初に、男門下生が仕掛けてくる。

 

その剣を、エルドは受け止め押し返し、刀を振るう。

 

「《水の呼吸 壱ノ型 水面斬り》!」

 

「くっ!」

 

男門下生はエルドの攻撃を受け止める。

 

「はっ!」

 

「ふっ!」

 

横からラウラとガイウスが、大剣と槍で襲い掛かるが、すぐさま別の男門下生と女門下生が守りに入り、男門下生を守る。

 

「せいっ!」

 

「やあ!」

 

二人の門下生は、そこから攻撃に切り替え、ラウラとガイウスを攻撃する。

 

後ろに飛んで攻撃を回避し、エルドも後ろに下がる。

 

「流石はヴァンダールの守護剣術。守りに置いて、右に出る技はないか」

 

「帝国に来て日は浅いが、驚かされることが多いな」

 

「ああ、こうして手合わせの場を設けてもらったんだ。悔いのない戦いをしよう」

 

エルドたちは笑いそう言う。

 

「これがアルゼイド流。我らのヴァンダール流とは対極に位置する攻撃の剣術か。流石の威力だ」

 

「あの槍使いのノルドの民も凄いわ。あの槍裁き、気を抜いたら一瞬でやられる」

 

「それ以上に、あの技。あれがグリファス家の妙技、呼吸の技か。このような場でソレが見れるとは、感激だな」

 

対して、ヴァンダール流の門下生たちもエルド達を称賛し、笑顔になる。

 

流派や武器は違えど、共に武の道を歩む者同士、今回の交流試合は得難い体験と思っている。

 

「《雷の呼吸 壱ノ型 霹靂一閃》!」

 

エルドは居合の構えからの高速移動で、距離を詰める。

 

ガイウスやラウラも同様に距離を詰め、それぞれ肉薄する。

 

高速移動からの抜刀術に、門下生は押されるもすぐに態勢を直し、エルドの一太刀を受け止める。

 

(やはりヴァンダール流の剣術は強い。彼ら相手に、使い慣れてない技を使うのは自滅行為。なら、得意とする水と雷の呼吸で倒す!)

 

《霹靂一閃》を受け止められながらも、エルドは次の技を繰り出す。

 

「《水の呼吸 弐ノ型 水車》!」

 

垂直方向に身体ごと一回転しながら斬りつける技に、門下生は刀で受け止める。

 

「《雷の呼吸 弐ノ型 稲魂》!」

 

「うをっ!?」

 

一度で五回斬り付ける技を使い、相手の防御を崩す。

 

「《雷の呼吸 参ノ型 聚蚊成雷》!」

 

防御を崩すと、相手の周囲を回転しながら斬撃による波状攻撃をし翻弄する。

 

「ぐっ!速い!」

 

「速いだけじゃないですよ!!《水の呼吸 捌ノ型 滝壷》!」

 

翻弄し、背後から怒涛の勢いと共に上段から刀を打ち下ろす。

 

《水の呼吸 捌ノ型 滝壷》は水の呼吸の中でも、威力、攻撃範囲ともトップクラスの技。

 

そんな技を背後から防御もせずに受ければ、どうなるかは想像がつく。

 

「うわあああああ!!」

 

滝の様に大量の水をぶつけられたかの様な衝撃に、門下生は飛ばされ倒れる。

 

「《洸円牙》!」

 

「ぐあっ!?」

 

「《タービュランス》!」

 

「きゃあっ!?」

 

ラウラが相手を引き寄せ、剣の横凪で男門下生倒し、ガイウスは槍を回し風を竜巻の様に起こして女門下生を倒す。

 

「そこまで!勝負あり!勝者、トールズ士官学院!」

 

ウォルトンの声により、勝者が決まった。

 

倒された門下生は立ち上がり、武器を仕舞う。

 

「アルゼイドの剣技、この身を以ってしっかりと味わえました。感服です」

 

「いえ、私もまだ修行の身。此度はヴァンダールの剣術、存分に見せて頂いた」

 

「我流の槍裁きとは思えない技でした」

 

「いや、貴女の剣捌きも見事だった。気を抜けばこちらがやられていた」

 

「グリファス家の妙技、呼吸の技。流石でした。その若さで、この強さ。お見事。もっとも、五つの技の内二つしか引き出せなかった以上、私は未熟ですね」

 

「いえ、俺が使いこなせるのはお見せした二つだけなんです。俺もまだまだ半人前。もっと精進しないといけませんから」

 

戦った者同士握手をし、交流試合は終了となる。

 

「士官学院の皆さん、本日はありがとうございました。我らにとって得難い体験でした」

 

「いえ、俺達にとっても得難い体験でした。今日は本当にありがとうございました」

 

エルド達は見送られ、セントアークへと戻った。

 




エルドの母の容姿は、鬼滅の刃の栗花落カナヲを大人っぽくした感じですが、性格に少々、炭治郎の母、葵枝さん要素を入れてます
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