閃の軌跡~軌跡の刃~   作:兄上、お労しい

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※今話は短めです


派生の呼吸

ホテルに戻った後、今日の実習報告を書いてると、男子部屋を女子たちが訪ねてきた。

 

「アリサ、それにラウラも。どうしたんだ?」

 

「いや、そう言えばまだ話を聞いていなかったと思ってな」

 

「話?」

 

「貴方のお母さんの事よ」

 

「花の呼吸。お前から聞いた話では、呼吸はお前が使う水・雷・炎・風・岩の五つと聞いている。なのに、あの人は花の呼吸と言う呼吸を使ってた」

 

「そう言えば……どういうこと?」

 

「ああ、それか」

 

エルドは納得したような表情になり、話し始める。

 

「《花の呼吸》は《派生の呼吸》。《水の呼吸》を基に生み出された呼吸だ」

 

「派生の呼吸?」

 

「ああ。《全集中の呼吸》は著しく増強させた心肺により、一度に大量の酸素を血中に取り込むことで、瞬間的に身体能力を大幅に上昇させる特殊な呼吸法だ。その為、この呼吸を使える者は限られる。つまり、継承できる者が少ない」

 

継承者が居ない。

 

これはグリファス家の《全集中の呼吸》に限らず、全ての武術に言えることでもあるが、継承者がいないということは、その代で長年の歴史を終わりにしてしまうことを意味する。

 

「その歴史の中で生まれたのが、《派生の呼吸》だ」

 

五つの呼吸を学び、自身に合わせて作り出される新たな呼吸、それが《派生の呼吸》。

 

エルドが言うには、歴代当主には五つの呼吸を極められなかったものの、《派生の呼吸》を極め当主となった者もいるとのことだった。

 

「つまり、《派生の呼吸》とは。個々人に合わせた技と言う訳か」

 

「ああ、そうだ。ちなみに母さんは、父さんと俺の鍛錬の様子を見て、見様見真似で覚えたんだ」

 

「「「「え?」」」」

 

「で、そこから《水の呼吸》を自身に合わせて生み出したのが《花の呼吸》。父さんは、「昔から眼が良いのは知ってたけど、ここまでとは思わなかった」ってさ。それからは、親子三人仲良く、毎日鍛錬尽くしだったな」

 

エルドは楽しそうに語るが、全員が心に一つの言葉を思い浮かべた。

 

((((いや、眼が良いってレベルの話じゃない))))

 

その後、レポートを終わらせ、ホテルの食堂で夕食を取り、明日に備え眠ることになった。

 

(そう言えば、家族の話をしたのは初めてかもな。もう少し話してもいいと思うけど、中々言い出せるタイミングも無いしなぁ………)

 

ベッドに入るなり、うつらうつらと仕掛けながらそんなことを、エルドは思う。

 

(あ、そう言えば)

 

もう少しで寝落ちる寸前と言う所で、エルドはあることを思い出した。

 

(グリファス家の当主は、当主を襲名する時、当主の肩書き以外に、自身が極めた呼吸の名と“柱”の名が与えられるんだったな)

 

つまり、グリファス家当主が《水の呼吸》を極めていれば“水柱”、《炎の呼吸》を極めていれば“炎柱”と言う具合に、当主とは別にもう一つの肩書きが与えられるのだ。

 

“柱”と言うのが何を意味するのか、エルドは知らない。

 

“柱”の意味を知るのは、歴代の当主と、現当主の父のみ。

 

(そう言えばサラ教官が俺は“柱”って言ってたけど、それと関係してるのか?いや、そもそもアレは、サラ教官も人から聞いたって言ってたし…………一体、誰から聞いたんだろ…………)

 

そこまで考え、エルドは眠りに落ちた。

 

Ⅶ組の“柱”とグリファス家の“柱”。

 

ソレが同じものを意味するのかは、エルドは知らない。

 




この世界での《全集中の呼吸》は習得が難しいものとしてます。

当主候補は最低限、五つの呼吸(水・炎・雷・岩・風)が使えるのが条件で、その五つの中から自身が極めた呼吸の名に柱の名が付きます。

歴代当主には五つの呼吸を使えながら、派生の呼吸を生み出し極めた当主もいます
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