閃の軌跡~軌跡の刃~ 作:兄上、お労しい
エルド達は慎重にダンジョンを進みながら、魔獣を倒していた。
ガイウスは十字槍の扱いにかなり慣れており、うまい具合に前衛のエルドとリィンをフォローしつつ、敵を攻撃し、エリオットも、物理攻撃が効きにくい相手に魔導杖の攻撃で倒していた。
そして、リィンも扱いづらいと言いつつも、太刀を巧みに使いこなし、力を発揮していた。
エルドはと言うと、リィンのフォローをしつつ、時にはガイウスやエリオットを守りながら、魔獣へと攻撃をしており、その動きにリィンは思わず感嘆の声を上げる。
「凄いな、エルド。流石は、子供の頃から鍛錬を積んでるだけはあるな」
「ありがとう、リィン。リィンも見事な太刀裁きだよ。ガイウスも我流とは思えない洗練された戦いをするし、エリオットも新しい武器をここまで使いこなせてるとは思ってもいなかったよ」
「そう言われると、こちらも嬉しい限りだ」
「へへ、ありがとう。でも、まだまだだよ。もっと上手く使いこなさないとさ」
四人で互いを褒め合いながら進んでいると、エルドが突然歩みを止める。
「ん?エルド?」
「どうした?」
「何処か怪我でもした?」
「匂いが急に変わった……来るぞ!」
エルドがそう叫ぶと、頭上から魔獣が四匹飛び降りてきた。
咄嗟のことに、エリオットは武器を構える間もなかった。
ガイウスは攻撃が間に合わないと判断して防御態勢を取り、リィンはなんとか反応し迎撃態勢になる。
そんな中、エルドは自身の刀を抜く。
黒い刀身の刀を構え、呼吸をする。
「《全集中 水の呼吸》!」
そして、淀みない動きで魔獣に斬り掛かった。
「《肆ノ型 打ち潮》!」
斬撃から斬撃を繋げ、あっという間に魔獣四匹を倒す。
「皆、大丈夫か!?」
「あ、ああ。問題ない」
「す、凄い………!」
「エルド、今の技は………」
「今のは、全集中の呼吸。俺が子供の頃から教え込まれた、我が家に伝わる操身術だ」
エルドは刀を鞘に納め、リィンたちにそう説明する。
「全集中の呼吸?」
「ああ。著しく増強させた心肺活動により、一度に大量の酸素を血中に取り込むことで、身体能力を瞬間的かつ大幅に上昇させ、強力な剣戟を繰り出す。それが全集中の呼吸だ。そして、今のは“水の呼吸”と言って、五つある呼吸の内の一つだ」
「そうか、グリファス家……思い出したよ。昔、老師から聞いたことがある。東方の血を引く一族で、五つの独特の呼吸法を使う剣術家の家系。それが、エイドの家なんだな」
「ああ。俺は一応、グリファス家の次期当主でもあるんだ。もっとも、五つの呼吸の内、まだ二つしか会得してないんだがな。まだまだ半人前の身だよ」
「だとしても素晴らしい技だった。感服したよ」
リィンからの賛辞に、エルドは少し照れ臭くなり、頬を掻く。
「僕が手を出すまでもなかったか」
すると声が聞こえ、聞こえた方を振り向くと、銃を構えたマキアスがそこにいた。
「危ない所だったが、無事でよかった。……さっきは身勝手な真似をしてすまなかった」
マキアスはそう言って、謝ってくる。
「いくら相手が傲慢な貴族とは言え、冷静さを失うべきじゃあなかった」
「いや、気にすることはないさ」
「君たちは、四人だけか?」
「ああ、他のメンバーはもう先行してるから、最初の部屋には誰もいないぞ」
「そうか。もし、良ければ僕も同行しても構わないだろうか?見ての通り、銃の扱いには自信がある」
「ああ、喜んで。リィン・シュバルツァーだ」
「エリオット・クレイグだよ。よろしくね」
「ガイウス・ウォーゼル。よろしく頼む」
「エルド・グリファスだ。よろしくな」
「マキアス・レーグニッツだ。改めてよろしく頼む」
自己紹介を終えると、マキアスは少し躊躇ってから、また口を開く。
「ところで……身分を聞いてもいいだろうか?含む所があるわけじゃあ無いんだが、相手が貴族かどうかは念の為にも知っておきたくてね」
明らかに含むところがあり、エルドたちは思わず顔を見合わせる。
「えっと、ウチは平民出身だけど」
「俺もだ。と言うより、故郷に身分の違い存在しなかった」
「なるほど。留学生なのか。それで、君たちは?」
最後に、エルドとリィンの二人を見て聞いてくる。
「俺も同じだ。うちはただの剣術家系の平民だ」
「そう、だな。少なくとも高貴な血は流れてない。そういう意味では皆と同じと言える」
何処か濁したような言い方に、エルドは少々疑問を感じたか、恐らくリィン自身が言いたくない事情があるのだろうと思い、聞かずにスルーした。
「そうか、安心したよ。見た所、女子もいないようだし、万が一何かあったら大変だから、僕らも急ごう」
マキアスの提案に、全員が頷き、再びダンジョンを進む。
この作品で登場する呼吸は基本の五つしか出ない予定です。
派生の呼吸は出ないと思います。