閃の軌跡~軌跡の刃~   作:兄上、お労しい

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貴族派と革新派

人数が四人から五人になったことと、マキアスの銃の腕が良かったこともあり、エルド達は次々と魔獣を蹴散らし、奥へと進んだ。

 

左右への分かれ道があり、どちらへ行くか悩んでいると、片方の道から女子のグループが現れた。

 

「そなたたちは…」

 

「みなさんも…ご無事で何よりです」

 

眼鏡の少女は安堵の表情でエルド達を見つめる。

 

「ふむ、そちらの彼も少しは頭が冷えたようだな?」

 

「ぐっ…おかげさまでね」

 

 長身の少女に尋ねられたマキアスは唸った後気を取り直して答えた。

 

「遅ればせながら名乗らせてもらおう。ラウラ・S・アルゼイド。レグラムの出身だ。以後、よろしく頼む」

 

そして長身の少女、ラウラは自己紹介をする。

 

「レグラム…」

 

「えっと、帝国の南東の外れにある場所だったっけ?」

 

「アルゼイド…そうか、思い出したぞ!確かレグラムを治めている子爵家の名前じゃなかったか!?」

 

ラウラの家名が貴族の者だと知り、マキアスは声を上げる。

 

「ああ、私の父がその子爵家の当主だが、何か問題があるのか?」

 

「い、いや…………………………」

 

 ラウラに静かな表情で尋ねられたマキアスは口ごもった後、複雑そうな表情で黙り込む。

 

「ふむ、マキアスとやら。そなたの考え方はともかく、これまで、女神に恥じるような生き方をしてきたつもりはないぞ?私も、たぶん私の父もな」

 

「いや…すまない。他意があるわけじゃないんだ。そ、そちらの君は…?」

 

ラウラの答えを聞いて、マキアスは他意有りかつ若干焦った様子で答えた後、眼鏡の少女に視線を向けて尋ねた。

 

「エマです。エマ・ミルスティン。私も辺境出身で…奨学金頼りで入学しました。よろしくお願いしますね」

 

眼鏡の少女、エマは軽く頭を下げた後自己紹介をした。

 

「奨学金…そういえば教官が首席入学者と言ってたな。むむっ、まさか主席が女の子だったとは…」

 

エマが自己紹介した後、今度は金髪の少女が口を開く

 

「アリサ・R。ルーレ市からやって来たわ。よろしくしたくない人もいるけどまあ、それ以外はよろしく」

 

リィンを睨みつけながらそう言い、睨みつけられたリィンはバツが悪そうに頬を掻く。

 

「そ、そう言えば…あのトランクの中身はその弓だったんだな?面白い造りをしているけど導力式なのか?」

 

「その通りだけど、あなたとは何の関係が?」

 

「うっ…」

 

リィン自身何とか先程の事を謝りたいと思っており、話のキッカケを繰り出すも、あっさりとそう言われ、リィンは項垂れる。

 

「そ、そういえばこれからどうしようか?せっかく合流したんだしこのまま一緒に行動する?」

 

その様子を見ていたエリオットは話題を変えるかのように、ラウラたちに尋ねる。

 

「そうだな、そちらは女子だけだし安全のためにも…」

 

 エリオットの提案を聞いたマキアスも頷いた。

 

「いや、心配は無用だ。剣には少々自信がある。残りの二人を見つける為にも二手に分かれた方がいいだろう」

 

「そうですね…あの銀髪の女の子もまだ見つかっていませんし」

 

「そういう事なら別行動で構わないだろう。お互い、出口を目指しつつ残りの二人も探して行く。それで構わないか?」

 

「ああ、構わない」

 

話を聞いていたガイウスがそう言い、ラウラは頷く。

 

「アリサ、エマ。それでは行くとしようか」

 

「…そうね」

 

「また後で…それでは失礼します」

 

そうして、ラウラたちは去って行く。

 

「やはり、女子だけってのは心配だな。誰か一人は向こうに着いた方がいいんじゃ」

 

「いや、その必要はなさそうだ。あのラウラと言う娘、見た所尋常じゃない腕を持っているようだ」

 

ガイウスはラウラたちが去って行った方を見つめ言う。

 

「だろうな。アルゼイド子爵と言えば、《光の剣匠》と呼ばれる、帝国最高の剣士だ。恐らく彼女も、《アルゼイド流》の剣術を使うんだろう」

 

「レグラムの《アルゼイド流》。古くから皇族の守護を務めた《ヴァンダール流》と共に、武の双璧と呼ばれる剣術だ。恐らく、新入生では最強。彼女に勝てる奴はいないだろう」

 

「そ、そうなのか……」

 

「帝国にはそんな流派があるのか」

 

「リィンもエルドも詳しいね……」

 

「まぁ、一応剣の道に関わってる端くれだからな」

 

「有名処の流派だけだよ、知ってるのは」

 

とりあえず、ラウラたちの事は心配ないだろうと判断し、エルド達はさらに道を進む。

 

しばらく歩くと、剣戟の音が聞こえ誰かが戦ってると思い、エルド達は走る。

 

すると、開けた場所でユーシスが魔獣複数を相手に戦っていた。

 

助太刀に行こうとしたが、エルド達が行動する前にユーシスは宮廷剣術で次々と魔獣を圧倒していき、結局助太刀の必要はなかった。

 

「うわぁ……凄い」

 

「あれも帝国の剣術なのか?」

 

「ああ、貴族が使う伝統ある宮廷剣術だ」

 

「それもかなりの腕前だな」

 

「ふう…それで、何の用だ?」

 

「くっ…!」

 

疲れた様子をみせない澄ました顔で問い掛けてくるユーシスの態度に、マキアスは唇を噛みしめる。

 

「いや…お見事」

 

 リィンはユーシスの戦いを称賛した後、ユーシスに近づいて自己紹介を始めた。

 

「リィン・シュバルツァー。さっきは名乗る暇もなかったから自己紹介をしておくよ」

 

「ど、どうも…エリオット・クレイグです」

 

「ガイウス・ウォーゼルだ。よろしく頼む」

 

「俺はエルド・グリファス。よろしくな」

 

「ユーシス・アルバレア。一応、改めて名乗っておこう。それにしても、中々殊勝な心掛けだな」

 

ユーシスはマキアスの方を見て、馬鹿にするような態度を取る。

 

「な、なに!?」

 

「あんな啖呵を切ったくせに、後で冷静になって殊勝にも詫びを入れに行ったのだろう。貴族風情にはとても真似のできない素直さだ」

 

「その傲岸不遜な態度……君たち貴族は皆同じだ!僕達平民の事を見下して生きているんだろう!」

 

「そんな事、お前に言われる筋合いはないな。カール・レーグニッツ帝都知事の息子、マキアス・レーグニッツ」

 

「あ、そうだ!レーグニッツって言えば!」

 

エリオットはマキアスの父親が、帝都知事だと言うことに気づき声を上げる。

 

「帝都ヘイムダルを管理する平民初の行政長官、ソレがお前の父親だ。只の平民と言うにはあまりにも大物だと思うが」

 

「だ、だからなんだ!帝都知事だろうと、うちが平民なのには変わりない!君たちの様な特権階級と一緒にしないでもらおうか!」

 

「別にも一緒にはしていない。だがレーグニッツ知事といえばかの”鉄血宰相”の盟友でもある”革新派”の有力人物だ。そして宰相率いる『革新派』と四大名門を筆頭とする『貴族派』は事あるごとに対立している。ならば、お前のその露骨までの貴族嫌悪の言動。ずいぶん安っぽく分かりやすいと思ってな」

 

「このっ!!」

 

とうとう怒りが抑えられなくなり、マキアスがユーシスに詰め寄る。

 

「ま、待て!マキアス!」

 

そんなマキアスを、リィンが止める。

 

「気持ちは分かるが、落ち着いてくれ。そちらも、言葉が過ぎるぞ!」

 

リィンに抑えられ、マキアスの頭の血はいくらかばかり下がり、マキアスが大人しくなる。

 

「………すまない、少し頭を冷やしてくる。君達は代わりにそいつと行くといい」

 

マキアスはそう言い残し、去って行く。

 

「流石に、家のことを言い出すのは貴族としてどうかと思うが」

 

マキアスを横目に、エルドはユーシスにそう言う。

 

「ま、先に家の事を持ち出したのはマキアスだが、仮にも貴族ならもっとそれなりの対応をするべきだったんじゃないか?」

 

「ちょ、ちょっと!エルド、ダメだって!相手は公爵家の若様なんだから!」

 

ユーシスにタメ口で話し掛けるエルドに、エリオットが慌てて止める。

 

「ふむ……確かに、口が過ぎた様だな。すまなかった。俺もまだまだ修行が足りんな」

 

だが、意外にもユーシスはあっさりと自身の非を認め謝罪を口にした。

 

「え?」

 

「ん?なんだ、その意外そうな顔は?」

 

「いや、だって公爵家の若様なんでしょ?それなのにそんな殊勝な……ってすみません!」

 

ずけっとした物言いをしてしまい、エリオットは慌ててユーシスに謝罪する。

 

「構わん。無用に畏まるな。学院の規則にもあるだろう、身分の区別はあっても士官学院生は対等の立場だ」

 

「そ、そうだけじゃなくて!そうですけど!」

 

「とりあえず、リィン。ここは任せてもいいか?俺はマキアスの方に行く。流石に一人だと心配だしな」

 

「ああ、構わないぞ。マキアスの事は頼んだ」

 

エルドはリィンたちと別れ、マキアスの方へと向かう。

 

「マキアス」

 

マキアスとの距離はそう離れておらず、すぐに合流することが出来た。

 

「エルド、どうしてここに?」

 

「一人は危ないぞ。ましてや、マキアスは銃なんだ。複数魔獣に囲まれたりしたら、苦労するだろ?」

 

「うっ……すまない。そこまで考えが及ばなかった」

 

「まったく………とにかく、俺と一緒に行動しよう。いいな?」

 

「ああ、むしろこちらからお願いしたぐらいさ」

 

「よし、じゃあ進もう。早く出口を見つけないといけないしな」

 

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