閃の軌跡~軌跡の刃~ 作:兄上、お労しい
「マキアス、待ってくれ」
「ん?どうしたんだ?」
エルドとマキアスがダンジョンを進んで言ると、突如、エルドがマキアスを止めた。
「………いるんだろ?出てきたらどうだ?」
「へー、今度は気配をそれなりに殺してたのによく気付いたね」
エルドがそう言うと、近くの柱の影からフィーが顔を出す。
「鼻がそれなりに利くからな。今度はってことは、他にも同じようなことをしたのか?」
「うん。黒髪の人、リィンだっけ?彼にもバレた」
「流石はリィンだな。それで、こんな所で何してるんだ?」
「別に。ちょっとした暇つぶし。ゴールまではもうすぐだよ」
「まさか、もう出口まで辿り着いていたのか。なら、君も一緒に」
一緒に行かないかと、エルドが誘おうとした瞬間、通路の奥から何かの声が響く。
「今のは!?」
「少なくとも、ここで遭遇した魔獣の鳴き声とは違うね」
「フィー、リィンにもバレたってことは、既にリィンたちはもうこの先に言ったってことなんだよ!?」
「そうだね。と言うより、二人が最後」
それを聞き、エルドは先に向かった全員に何かあったのではと思った。
「マキアス、フィー!何かあったのかもしれない!俺達も向かおう!」
「ああ!」
「しょうがないか」
三人は走って通路の奥に向かうと、そこではリィンたちが巨大なガーゴイル相手に戦っていた。
「リィン!皆!」
「エルド!それに、マキアスとその子も!」
「な、なんだ!?その魔獣は!」
「ちょっと厄介そうだね」
「頼む!三人も手伝ってくれ!」
「ああ!」
「わ、分かった!」
「ん」
リィンに言われ、三人はそれぞれの武器を構える。
「導力銃のリミットを解除!喰らえ、ブレイクショット!!」
マキアスの一撃が、ガーゴイルに直撃し、ガーゴイルが怯む。
「ふっ」
フィーも一瞬で、ガーゴイルの背後を取り、後ろ脚を切り裂く。
エルドはと言うと、居合の構えを取っていた。
「《全集中 雷の呼吸 壱ノ型 霹靂一閃》!」
次の瞬間、エルドはガーゴイルの背後に移動していた。
そして、ガーゴイルの片翼が斬り落とされ、ガーゴイルは悲鳴を上げる。
「なっ!速い!」
「だけじゃない!あの一瞬で、翼を斬り落としたのか!」
ガイウスとユーシスは、エルドの技に驚きの声を上げる。
「チャンスだ!今の内に総攻撃!」
リィンが声を上げ、全員が武器を構える。
その時、全員の体から青い光が溢れる。
アリサとマキアスがガーゴイルを弓と銃で打ち抜き、ガイウスとユーシスが槍と剣でガーゴイルの体を切り裂く。
エマとエリオットが魔導杖で、ダメージを与え、フィーが連続で斬撃と銃弾を浴びせる。
リィンとエルドで、ガーゴイルの頭に技を当て怯ませたところを、ラウラが止めを刺しガーゴイルは倒れる。
倒れたガーゴイルは、そのまま石化し、消え、胴体も石化して消えた。
「やった…!!」
「よかった、これで…」
「ああ、一安心のようだ」
「それにしても…さっきと僕達が戦った事に起こった最後のあれ、何だったのかな?」
「そう言えば…何かに包まれたような」
「ああ、僕を含めた全員が淡い光に包まれていたな」
「ふむ、気のせいか…皆の動きが手に取るように視えた気がしたが…」
「…多分、気のせいじゃないと思う」
「おそらくだが、このARCUSの力なんじゃ……」
エルドは懐のARCUSを出し、言う。
「そう。ARCUSの真価ってワケね」
サラ教官の声が聞こえ、そちらを向く、
「いや~、やっぱり最後は友情とチームワークの勝利よね。うんうん。お姉さん感動しちゃったわ♪」
白々しい笑顔に誰も何も言えず、全員がげんなりする。
「これにて入学式の特別オリエンテーリングは全て終了なんだけど…何よ君達。もっと喜んでもいいんじゃない?」
「よ、喜べるわけないでしょう!」
「正直、疑問と不信感しか湧いて来ないんですが…」
「あら?」
「単刀直入に問おう。特科クラスⅦ組…一体何を目的としているんだ?」
「身分や出身に関係ないというのは確かにわかりましたけど…」
「なぜ我らが選ばれたのか結局のところ疑問ではあるな」
もっともな質問に、サラは頷きながら答えた。
「ふむ、そうね。君達がⅦ組に選ばれたのは色々な理由があるんだけど…一番わかりやすい理由はそのARCUSにあるわ。エプスタイン財団とラインフォルト社が共同で作った次世代型の戦術オーブメント・アーツが使えたり、通信機能があったりと様々な機能があるけど、それの真価は《戦術リンク》にあるわ」
「それって、まさか俺たちが最後に感じた……?」
「その通り。これが使えれば、仲間の行動をを把握したり、最大限に連携をすることだって可能よ」
サラの説明に全員が驚き、関心を示す。
「でも、現時点で、ARCUSは個人的な適性に差があってね。新入生の中で、君達は特に高い適性を示したのよ。それが身分や出身に関わらず君達が選ばれた理由でもあるわ。………さてと。約束どおり、文句の方を受け付けてあげる」
その言葉に、全員がサラ教官を見る。
「トールズ士官学院はこのARCUSの適合者として君達10名を見出した。でも、やる気のない者や気の進まない者に参加させるほど予算的な余裕があるわけじゃないわ。それと、本来所属するクラスよりもハードなカリキュラムになるはずよ。それを覚悟してもらった上で”Ⅶ組”に参加するかどうか、改めて聞かせてもらいましょうか?あ、ちなみに辞退したら本来所属するはずだったクラスに行ってもらうことになるわ」
暫しの間、沈黙が流れた。
そんな中、リィンとエルドの二人が前に出た。
お互いに気づいたエルドとリィンは、互いに見つめ合い、笑い合った。
「リィン・シュバルツァー、参加させてもらいます」
「同じく、エルド・グリファス。自分も特科クラスⅦ組に入ります」
「ふぅん、どうやら事情がありそうだけど……」
「いえ、我が儘を言って行かせてもらった学院です。自分を高められるなら、どんな場所でも構いません」
「俺も同じです。自分の事を想うなら、より困難な道を選ぶまでです」
「そういう事ならば私も参加させてもらおう。ラウラ・S・アルゼイド。元より修行中の身。此度のような試練は望む所だ」
「ガイウス・ウォーゼル。俺も同じく。異郷の地から訪れた以上、やり甲斐がある道を選びたい」
「エマ・ミルスティンです。私も参加させてください。奨学金を頂いている身分ですし、少しでも協力させていただければ」
「エリオット・クレイグです!ぼ、僕も参加します……!これも縁だと思うし、みんなとは上手くやって行けそうな気がするから」
「アリサ・R。私も参加します。テスト段階のARCUSが使われているのは個人的には気になりますけど……この程度で腹を立てていたらキリがありませんから」
「………ユーシス・アルバレア。Ⅶ組への参加を宣言する。アルバレア家からしてみれば、他の貴族も平民も同じようなもの。勘違いした取り巻きにまとわり付かれる心配もないし、むしろ好都合だろう」
「マキアス・レーグニッツ!特科クラス"Ⅶ組"への参加を宣言する!古ぼけた特権階級にしがみつく、時代から取り残された貴族風情にどちらが上か思い知らせてやる!」
「これで、9人ね。それで、フィー、あんたはどうする?」
サラは、最後にフィーに尋ねる。
「私はどっちでもいい。サラが決めていいよ」
「だめ、自分の事は自分で決める約束でしょ?」
「めんどくさいな。じゃ、参加で」
フィーも参加することに決まり、サラは満足そうに頷く。
「これで10名、全員参加ってことね。それでは、この場をもって特科クラスⅦ組の発足を宣言する。この一年、ビシバシしごいてあげるから楽しみにしてなさい!」
「やれやれ、まさかここまで異色の顔触ぶれが集まるとはな。これは色々と大変かもしれませんな」
その様子を上から見ていた、ヴァンダイク学院長は隣にいる男性にそう言う。
「確かに。ですが、これも女神の巡り合わせと言うものでしょう」
問い掛けられた男性は、何処か嬉しそうにそう言う。
「ほう?」
「ひょっとしたら、彼らこそが“光”となるかもしれません。動乱の足音が聞こえる帝国において、対立を乗り越えられる唯一の光に」
そう言い、男はエルドを見る。
「君にも期待しているよ。日を継し者、エルド・グリファス君」
エルドを優しい眼差しで見つめ、彼、エレボニア帝国王子、オリヴァルト・ライゼ・アルノールは笑った。