零のソウル   作:真田

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 うちの近くに聖ウルスラ学院なる高校がある。
 うん、まぁそれだけなんだけど。


生者としての旅路の始まり

 その不死の旅の始まりは、牢獄の中から始まった。

 不死は主神ロイドと呼ばれし英雄に狩られる運命にある。しかし殺しても死ぬことがない不死は、世界が終わるその日まで、はるか北に存在する牢獄に閉じ込められる。

 その不死もそのうちの一人だった。

どれくらいの間捕まっていたのかはもう覚えていない。時計もなく、外の光も届かないために昼夜すらも分からない上に、自分の身体も不死ゆえに老いることがない。つまり何一つとして変化のないこの場所ではすぐに時間の感覚がよく分からなくなった。

ただ、このままいけば亡者となるのだろうと。おぞましくて、かろうじて人の姿をした化け物に変わっていくのだろうと思うと、怖くて怖くて仕方がなかった。

 かといって脱出しようという気力はなく、また脱出したとしてもいつかは亡者になるのは変わらなくて。ただただ絶望のみが体を満たしていく日々。

 どのくらいの時が立っただろう。何の変化もなかったその牢屋に一つの異変が起きた。

 何かがその部屋に投げ込まれたのだ。それに伴って響いた音に俯かせていた顔を上げる。そこには先ほどまではなかった死体が転がっており、そんな光景にまず驚きを覚える。そして次に死体が投げ込まれたのであろう、天井に存在するポッカリと空いた穴を見た。

 そこでは一人の立派な鎧を身に纏った騎士がこちらを覗き込んでいた。しかし、その騎士は何か言葉を作ることなく、すぐにどこかへと去って行った。

 

「嫌がらせ……かな」

 

 突如死体が投げ込まれるという訳の分からない一連の行動に首をかしげ、投げ込まれた死体に視線を移す。するとその死体の腰に銀色の鈍く光る金属が提げられていることに気づいた。

 手に取ってみる。すると、それが何かの鍵だという事がすぐに分かる。それを見、少し考えてからおもむろに立ち上がり、ゆっくりと牢屋の鉄格子の鍵穴に鍵を差し込む。

 入った。そして回す。カチャリ、という音が響く。

 そして鉄格子を押すと、ギギ……と言う錆びた音が響きながら、開いた。

 

「ぁ…………」

 

 呆然としながら開いた扉を見る。出られる。逃げられる。その事実をゆっくりと心中に染み渡らせる。

 そして、その不死は脱獄を決意する。

 牢屋から出て、歩き出す。

 

 

 それから数分後。彼女の目の前には、上級の騎士であることを示す銀色の鎧を身に纏った騎士がいた。もはや立つことすらままならないのか、全身を弛緩させ、壁に寄りかかるように倒れ込んでいる。

 

「おぉ……君は、まだ亡者じゃないみたいだな……」

 

 そしてその騎士は先ほど鍵付きの死体を投げ入れた人物でもあった。声は弱弱しく、今にも死んでしまいそうなほどに覇気がない。

 

「……なぜ、私にあの鍵を?」

「少し、頼みがあってな……君に一つ頼みごとをしたい」

 

 そう言われ、彼女は少し悩む。が、やがてコクンと頷いた。聞くだけなら損もない。

 

「言ってみて」

「あぁ……頼みというのは恥ずかしい事に私の使命だ」

 

 彼は語る。彼の家には代々不死の使命が伝えられている。不死は呪いではなく使命の徒であることの証。そして北の牢獄には古き神々の地、ロードランへと至る道がある。そしてロードランに存在する二つの鐘を鳴らし、不死の使命を知れ、と。

 

「どうして私に?」

「……残念なことに、私はもうじき死ぬ。死ねばもう正気を保てないだろう……。……引き受けてはくれないか。君にしか頼める相手はいない……」

「私は……不死であると同時に呪術師でもある。それでもいいの?」

「構わないさ。それに私のような不死も嫌われ者なのだ。呪術師であることぐらい私は気にしない」

 

 よほど大切な使命なのだろうと思う。それは彼の様子を見ていればわかる。

 彼女は悩む。が、さほど長い時を掛けずに答えを出した。

 

「いいよ、引き受ける。貴方は私を助けてくれた。そのお礼」

「そうか……よかった。これで希望を持って死ねるよ……あぁ、そうだ。これを君に」

 

 何やら緑色のビンのようなものと一つのカギを差し出される。

 

「この先に進むための鍵。それと不死の宝、エスト瓶だ……もう行ってくれ。亡者となって君を襲いたくはない」

「ん、ありがとう。……おやすみなさい」

「あぁ……」

 

 彼女は背を向ける。そして視界の端で彼が剣を持ち上げている光景をとらえる。

構わずに歩を進める。

 そして……数歩進み、彼の騎士が見えなくなったとき、ザシュ。と言う肉を絶つ音が遠くから聞こえた。

 それは彼の騎士が自害したことを示す音。持ち主を失ったソウルが、もっとも近くにいた自分の身体に取り込まれたことを感しる。

そして一歩。前へと歩を進めた。

 

 それが、不死の英雄の物語のプロローグ。

 絶望に満ちた旅路へのプロローグ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 すでに夜遅い時間。夜空には星と月が美しくきらめいている。

 聖ウルスラ医科大学病院。ここはそのように呼ばれている病院だった。かなり大きな病院であり、医療技術が発達しているレミフェリア王国の支援を得ていたりするため、医療に関しては最先端を行っていると言ってもいいだろう。

 

「ふわぁ……」

 

 そんな病院の出口から一人の女性が出てくる。ピンク色の清潔感のあるナース服を身に纏っているところから彼女が看護師であることが見て取れた。

 その女性の名を、セシル・ノイエスと言った。年は現在十六。新人の看護婦だ。

 

「さすがに眠いわね……」

 

 この夜遅くまでずっと仕事をこなしていた彼女は目をこすりながらそんなことを呟く。

早く寮に戻って寝てしまおう。そんなことを思いながら歩き出す。

そんな彼女が不死の英雄の物語に巻き込まれたのは必然なのか偶然なのか。ただ、この時間、この場所にこなければそれを目撃するのは彼女ではなく、別の誰かだったということは確かなのだろう。

 最初の異変は光だった。

 

「あら……?」

 

 ─なんか……光ってる……?

 

 病院の少しはずれでは川と隣接しており、そこでは小さな池のかのような空間が存在している。その手前には花壇やベンチなどが設置されているために、ここの職員が休憩に来たり、時たまサボりに来たりするような場所だ。それ以外には何もない場所。なのに、そこからなにかが光っているのが見える。

セシルの心中では、未知の体験への好奇心と恐怖。そして睡眠欲といった、それら三つの感情がバトルロワイヤルを繰り広げる。やがて好奇心が勝ち残ったらしい。その発光している場所に近づき、セシルは発光原因を見た。

それは何らかの幾何学的で円の形をした白い紋章だった。例えるのなら、召喚魔法などに使われてそうな魔方陣と言ったところか。

そして、それが起きたのは次の瞬間だった、

 

「……ぁ……え?」

 

 その魔方陣のような物から「それ」は現れた。

 立っていながらも目は瞑られている。

 全身を灰色でボロボロなフード付きのコートで身を包んでいた。フードは外れており、全く手入れされていないのであろうボサボサで長い黒髪が背中に流れている。

 年齢のころは9、10歳と言ったところだろう。

 右手には何かの生物の甲殻のような素材で作られている剣が握られている。

 つまり、要約するとだ。

 

「女の子……?」

 

 と言うわけである。

 さらに具体的に言うのならば、突如魔方陣のようなものが出現。そこから幼女とすら言える女の子が全身ボロボロな身なりで登場、だ。

 そして、そのセシルの脳内に混乱と言う嵐を巻き起こしている張本人は、ゆっくりと瞼を開く。それと同時に彼女が出てきた魔方陣も薄くなっていき、それに伴ってあたりをうすく照らしていた光も消え去った。

 そして少女はキョロキョロと首を動かし、あたりを見渡す。前、右、左、上、下。最後に上半身を捻って後ろ。

 

「……ぇ?」

 

 後ろに向けた視線を前に戻しながら小さく呟く。

 

「なに……これ」

 

 表情に大きな変化はない。が、その声の声音から、いま彼女が驚きや混乱といった感情を持っていることは分かった。

 セシルはそんな少女を見、何はともあれ話さなければ始まらないとばかりに、少女に声をかける。

 

「あなた……大丈夫?」

 

 そんな声に少女の視線がゆっくりとセシルへと向けられる。そしてわずかな間が開いた後、少し目つきを鋭くさせる。

そして次の瞬間。セシルの喉元に一本の剣が突きつけられた。右手に持った何かの生物の甲殻で作られたようなわずかに反りのある曲剣を。あと少しでもそれを動かせば確実にセシルの命を刈り取るであろう距離にまで。

 

「……誰。これは貴方のせい?」

 

 ただ、それでもセシルに恐怖はあまりなかった。

 怯えと混乱と。

 少女の目がそれ一色で染まっていたから。少女の見せる姿勢が虚勢だとすぐに理解できたから。

それとただ単に相手の身長的にこちらが見下ろす形だったし、相手が何とも可愛らしい顔立ちをしていたせいで迫力がまるでなかったのも恐怖を和らげている要因だった。

 

「大丈夫。私は貴方の敵じゃないから。安心して?」

「……そんな事聞いてない。質問に答えて」

 

 そう言い、そのままの態勢で少女は静かにセシルを睨む。が、セシルが動じず、小さく安心させるかのように微笑をも浮かべる様をみると、軽く息を吐いてから剣を下した。

 背を向ける。

 

「ごめんなさい、いきなり剣を向けてしまって」

 

 そう言い、彼女の背中が遠ざかっていく。セシルはその背に声を掛けた。

 

「どこへ行くの?」

「……剣を向けたの悪かった。でも、その質問に答える義理はな……ぁぐ!?」

 

 突如、その少女から全身の力が抜け、こと切れたようにばったりと倒れる。倒れながらも苦しそうなうめき声をあげる。

 

「ちょ、大丈夫……!?」

 

 慌ててその少女を抱きかかえる。

 そこで初めて気づく。その少女の体のいたるところに、痛々しいほどの火傷や切り傷が刻まれているということに。

 全身を包む黒衣で気づかなかったが、こっちも血でぐっしょりと濡れていた。

 どれぐらい酷いのかと聞かれ答えるのならば。すこし医療に詳しいものならこう答えるだろう。

 

 普通の人間ならいつ死んでもおかしくないレベルの怪我だろう……と。

 

「大変……! 急いで治療しないとっ……」

 

 命を奪われかけたというのにそのようなことを言えるセシルと言う人物はかなりのお人好しなのだろう。

 一時的に睡眠欲が完全に吹き飛んだセシルは、いったん病院に運ぼうと判断を下し少女を抱きかかえて走り出す。

 

 

 

 

 

 

 

 意識が覚醒へと向かう。視界は瞼が閉じられているために真っ暗だ。頭を除いた全身を包んでいる温かく、いつまでもこうしていたいと思わせるような心地よい感触は布団だろうか。

 そんなことを思いながら目を開く。

 そんな彼女の視界に最初に映ったのは白だった。正確に言うとすれば真っ白な天井だ。

知らない場所だ。少女は何故こんな所にいるのかという疑問を解消すべく、記憶を遡りながら、状況確認のために上半身を起こす。

 

「ぐぁっ……」

 

 が、その途中でものすごい激痛が体中を奔り、体を起こす作業を中断。再びベッドに倒れ込む。しかし、そのショックのおかげなのか徐々に記憶が鮮明に蘇っていく。

 

─確か……タスケテって声が頭に響いて……

 

 ─気づいたら変なところにいて……いきなり近くにいた女に声かけられてびっくりして剣を突きつけて……

 

 ─悪いことした……かな

 

 そう思いながら次に自分の身体を見る。……いつも愛用している「ボロ布のローブ」は脱がされ、白く清潔な服に着替えさせられている。それと「薪の王グウィン」との戦いで負った傷の治療も施されていた。いたる所に包帯が巻かれている。

 そうやって自分の置かれている状況を確認していると、女性の声が響いた。

 

「あら……もう目が覚めたの?」

 

 声のした方へと身体を震わせながら顔を向ける。そこには先ほどの女性が立っていた。

 

「すごいのね……あれだけの怪我なのに一日で目が覚めるなんて……」

 

 何かつぶやいていたが関係ない。彼女は警戒のために、条件反射的に武器を手元に取り出そうとする。……が、その途端、体に奔った全身への激痛によってその行為は断念せざるをえなかった。

 

「いっつぅ……」

「あ、まだ動いちゃだめよ。酷い怪我なんだから」

 

 近づき、少女の事を寝かしつけようと体に触れてくる。

 少女はその行為に顔を強張らせたものの、少しでも体を動かすと体に激痛が走る。仕方なく抵抗することを諦め、びくびくしながらも再びベッドへと横になる。

 人は学ぶ生き物であり、彼女は動くと体に激痛が走ることを学んだので一旦、おとなしくベッドに寝転がる。そんな彼女にセシルが声をかける。

 

「あ、自己紹介がまだだったわね。私の名前はセシル。貴方の名前を聞いてもいい?」

「……サヤトレイ」

「ふふ、いい名前ね」

 

 と言ってセシルと名乗った女性はにっこりと笑う。

 セシルの浮かべる満面の笑みから、サヤトレイはなるべく自然な動作を装って顔をそむける。ロードランの変人、奇人とばかり関わってきたサヤトレイからすると、この純粋な笑みはどう対応するのが正解なのかが解らなかった。どう反応していいのかわからない。なに、笑えばいいの?笑顔を浮かべればいいの?……無理だ。と即座に判断する。サヤトレイにとって笑顔を浮かべるという行為は難易度が高すぎる。オーンスタインとスモウのコンビを一人で無傷で倒すぐらいには難易度が高い。要するに不可能に近い神の所業だ。

 

「ええと……それじゃあサヤトレイちゃん。あ、長いしサヤちゃんって呼んでいい?」

 

 何言ってんのこいつ? とか思いながらも比較的どうでもいい事だったので適当に相槌を打つ。

 

「……勝手にすればいい。ねぇ、貴女」

「なに? サヤちゃん」

 

 思った以上にちゃん付けがこそばゆく、呼び名にOKを出してしまった事に若干後悔を覚えたものの、それを内心に隠しながら問いかける。

 

「……ここはどこ?」

 

 ここは彼女の居た世界、ロードランじゃない。それはすぐに分かった。

 ロードランとは古き神々が眠る地ともよばれ、選ばれた不死のみが巡礼を許される。そこが彼女の居た場所だ。

 しかし、ここは明らかにロードランとは違う。そう思った要因の一つはこの場所だ。白くて清潔。無数の亡者や化け物が暴れまわっているあの地ではそれだけでも十分にありえないものだ。

 だからここはロードランではない別のどこか。たぶん人の世界のどこかだろうとは思う。アストラかヴァンハイムか。そのほかにも有名な国を脳裏にあげながら彼女の返答を待つ。

 

「ええと……聖ウルスラ医科大学って言って分かるかしら?」

「……? アストラ、ヴァンハイム、カタリナ、ソルロンド、カリム、ゼナ、大沼。その内のどこにある?」

「え、と……それは国の名前なのかしら?」

「な──っ!?」

 

 全く聞き覚えのない。そんな様子の彼女に内心でありえないと叫びを漏らす。今あげた国はどこも有名な大国だ。一つも知らないというのはおかしすぎる。

 嘘ついてないだろうな? そう思いながら彼女を睨む。が、数多の変人奇人と関わってきたがゆえに養われた観察眼を駆使しても嘘をついている様子はなかったので、自分の直感を信じたうえで自分の現在の状況を推理する。

 ここはロードランではない。さらには人の世でもない……そう考えるのが妥当だろうか。ならば今自分がいるここはどこなんだ? と脳味噌を働かせる。

 

 ─……そういえば。

 

 考え、ふと思い出す。

 ここに来る前、あの場所で脳内に響いた「タスケテ」と言う単語の次の文。

 召喚されています。という文の事だ。

 ロードランでは召喚と言うのは日常的に行われている物で、さして珍しい事ではない。ロードランは時空の流れがめちゃくちゃになっており、個人個人の世界が存在する。無数の平行世界が存在していると言えばわかりやすいだろうか。

その垣根を「霊体」と呼ばれる状態になって飛び越え、互いに助け合うのが召喚と呼ばれる物だ。だが……普通はその召喚も、別の平行世界の同じ場所に召喚される。例えばサヤトレイが召喚前にいた場所は最初の火の炉と呼ばれる場所だ。だから召喚されれば別の平行世界にある最初の火の炉にたどり着く。

 でも……と召喚直後のここに連れてこられる前の、目の前のセシルとかいう女に剣を突きつけた時の周りの風景を思い出す。どう考えてもあの殺風景な場所とは似ても似つかない。

そこからわかる事と言えば何らかの異常事態が発生したせいで、こんなところに召喚されしまったという事ぐらいの物だ。そう考え次に、どうして? という部分を考えるが、すぐにこのことに関しての思考を放棄せざるをえなかった。情報が少なすぎて何も浮かばない。

 何がどうなってる……そんなことを内心で呟き、ため息をつく。

 

「……大丈夫?」

「平気」

 

 適当に返答を返しながら、彼女は元の世界に戻る事が出来る道具、決別の水晶を取り出してみるものの、何の反応もない。その事実を確認した彼女は、やはりと言う思いと共にそれを仕舞う。

 

──とりあえず、帰れそうにはない……かな……。

 

 というより帰り方が解らない。召喚されたとき帰る方法の一つは決別の水晶を使うことなのだが、この方法はたった今使う事が出来ないと確認できた。

他には召喚された地の主を倒す、もしくは召喚主か自分が死ぬかの二つだ。前者はそもそもこの地の主が解らないので却下。そして死ぬのも却下だ。不死ゆえに死んでもどうせ復活するとはいえ死にたくなんかない。死ぬときの痛みは死に方にもよるが、どれもものすごく痛くて気持ち悪い。

 一番嫌だった死に方は最下層の最奥にいた貪食ドラゴンに丸呑みされたときだ。腹にあたる部分に存在した巨大な口で、何度も何度も入念に噛み砕かれて飲み込まれて消化された。心が折れそうだった。そして復活した後はどうやって生き返ったのかしばらくの間、頭を悩ませたものだ。

 まぁ、それは思い出しても気分はよくないので頭から追いやり、どうにかして帰る方法探さないと……と考え、ふと気づく。

 帰るあてがないという事実に対し、特に落ち込んだりしていない自分にだ。

 なぜだろう? 考えてみる。が、その結論は殆ど時間をかけることなく出た。考えれば簡単なこと。

 

──そもそも帰りたいなんて思ってない……か。

 

 そんなひどく単純な理由に思い至り、自分でもよく分からないぐちゃぐちゃな感情が芽生えた。

 


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