あつもり日記   作:syumasyuma

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#1

 

○○月××日

 

子供の頃の日記を見つけた。

 

日記のはじめに、この幻想郷で起こるであろう原作知識が書かれていた。

それを見て久しぶりに日記を書いてみようと思う。

 

俺の仕事は決まっておらず、天気が良ければ農家の畑を耕したり、

川で魚釣りをしたり、市場で物を買って売り歩く。

 

雨が降っていれば傘を作ったり、繕い物をするが、

近所の人や知り合いに仕事を頼まれることもよくある。

 

今日は雲ひとつ無い青空、こんな気持ちよい日は魚釣りに限る。

 

魚釣りはいい。

 

なんといっても里で高値で売れるからだ。

 

理由は色々あるが、大きいのは里の外は妖怪がウロウロしており、外を出歩くと襲われる危険があり、魚を釣りに行く人間が少なく、取れる魚の量に限界があることだ。

 

折角、釣れても魚ごと食べられてしまっては意味がない。

 

里の外に行くのは命がけ、これは幻想郷において人間の共通認識なのだ。

 

じゃあなんで俺は魚を釣りにいっているのか?

 

それは気絶すると家の前に戻ってくる妙な能力を持っているからである。

 

持ち物は無くなってしまうものの生きて帰ってこれるというのは、

非常に有用な能力だと思う。

 

この能力を活かすために咄嗟に気絶する技術を会得しているが、

びっくりすると気絶してしまう癖がついてしまった。

 

そのせいで知り合いからはチキン扱いだ。全く遺憾である。

 

さらに俺は魚影を見ることができる。

 

その魚影がどれくらいの大きさで、何処を向いているのか、

釣り餌に惹かれているのかが分かるのだ。

 

だから短時間で多くの魚を釣ることが出来る。

 

欲を言えばもっとカッコイイ能力が欲しかったがしょうがない。

 

これらの能力で魚篭いっぱいに魚を釣った俺は足早に、里へ帰るのであった。

 

 

○○月×△日

 

今日は知り合いに頼まれて里の外へ手紙の配達だ。

 

配達先は魔法の森の近くに古道具屋を開いている森近霖之助という男だ。

 

俺は林を掻き分け、獣道を通り、大変不便な場所にある古道具屋に辿り着いた。

 

古道具屋の入り口をガラガラと開けて中を覗きこむが、

店の中は閑古鳥が鳴いており、店主の姿も見えない。

 

店の中に入り、店主を呼ぶと奥からキシキシと木の軋む音が聞こえる。

 

その音が大きくなると、白髪の男が現れる。

 

「やあ、遅くなって悪いね。誰からかな?」

 

森近さんに手紙を渡すと彼はお礼を言ってから、手紙を読み始めた。

 

俺はその姿を見ながら近くにあった切り株に座る。

 

ふむふむと言いながら手紙を読んでいた森近さんはふと顔を上げると、

眉を潜めてこちらを見た。

 

「おいおい、一応商品だから上に座らないでくれ。今返信を書くからこっちの椅子に座ってくれないか。」

 

森近さんに平謝りをしてから切り株から立ち上がり、

まじまじと切り株を見る。

 

何の変哲も無い切り株に見える。

 

森近さんにこれはどのような道具か聞いてみる。

 

「ああ、そぼくなDIY作業台というもので、道具を作る道具らしいね。」

 

その言葉に驚いた。

 

記憶の片隅に引っかかるものがある。

 

それは前世でやっていたゲームに出てくる道具だったからだ。

 

そのゲーム・・・あつまれどうぶつの森で、

釣竿やスコップ、家具などを作るために必須の道具であり、

俺の能力にまつわる物だと直感的に理解したからだ。

 

森近さんから返信の手紙を預かった後、縁があるなどと適当に言って作業台を二束三文で購入し、足早に人里に戻った。

 

・・・森近さんには扱えなかったようでほぼゴミあつかいだったらしい。

 

俺は久々に、本当に久しぶりに胸を高鳴らせながら、切り株を背負って帰った。

 

里の皆にはアホを見る目で見られたのは、遺憾である。

 

 

○○月×□日

 

なんてことだ。

 

この作業台、全然使えない。

 

・・・いや正確には使えるのだが、道具を作るための材料が無いのである。

 

木の枝を持っても、石ころを持っても、材料としては認識されず、唯一認識されたのは雑草だけだ。

 

雑草を使ってはっぱの傘を作ってみたものの、ショックは計り知れない。

 

作業台に触れれば、作れるものが思い浮かび、材料があれば作ることができる。

 

そこまではいい、しかしだ。

 

雑草だけっ、雑草だけしか!材料と認識されなかったのだ!

 

あまりのショックに家を飛び出し、里を走り、寺子屋に駆け込んだ。

 

そして慧音先生の胸に飛び込み、頭頂部に頭突きを喰らった。

 

その一撃で俺の意識は飛び、強制的に能力で帰宅したのであった。

 

「起きろ!起きて昼間の説明をしろ!」

 

慧音先生の怒声で目を覚ます。

 

板の間で起き上がると、土間に慧音先生がいた。

 

私怒っていますと言わんばかりに仁王立ちしている慧音先生に、事情を話す。

 

俺の能力に進展があったこと、盛大に肩透かししたこと、慧音先生に慰めて貰いたかったこと。

 

もう一度俺に頭突きした後、慧音先生はいくつか助言して帰っていった。

 

俺は慧音先生の背にお礼を言って、助言を元に考えてみることにした。

 

 

○○月×☆日

 

単純な話であった。

 

雑草が地面から取れるから、木の枝も地面に落ちているものを取るとばかりに思っていた。

 

山に芝刈りにいって、拾った木の枝はすべて材料ではなかった。

 

その憤りを近くにあった木にぶつけるように、蹴りつけると蜂の巣が落ちてきた。

 

ハチの羽の音など全く聞こえなかったのに、木がゆれると突然落ちてきたのだ。

 

驚いた俺は硬直し、すぐさま襲い掛かってきたハチに刺されて気絶した。

 

家の前で、近所の人に揺り起こされると、凄い驚かれた。

 

なんと顔が腫れ上がっていたのである。

 

いつも怪我を負っても能力で帰宅すると治っていたのに・・・。

 

はて?と考えると一つ思い当たることがあった。

 

どうぶつの森でハチに刺されたとき、顔が腫れ上がることをだ。

 

ゲームでは一回刺されただけでは気絶しなかったが、多分これは俺の気絶癖のせいだろう。

 

能力が利かなかったのではない。ゲームどおりの効果があったのだ。

 

つまりハチの巣は俺が木を揺らしたから落ちてきたのではないだろうかと。

 

その仮説を確かめるべく、蜂の巣が落ちてきた木にいくと。

 

まだ蜂の巣が落ちていた。

 

周囲にハチはいない。

 

蜂の巣を家に持って帰り、作業台に置いてレシピを確認すると、

 

材料として認識された。

 

蜂の巣と雑草を使い、おくすりを作成すると、震える手で顔に塗る。

 

すると瞬く間に腫れが引いて、治ってしまったのだ。

 

無言になった俺は家の近くの木を揺すり、木の枝が落ちてくる。

 

揺すれば揺するほど木の枝が降ってくる。

 

それらを拾い集めて作業台の上にごろごろと転がし、

 

レシピを確認する。

 

釣竿OK!虫網OK!

 

確認ヨシ!

 

 

○○月×●日

 

今日は昨日作成したしょぼい釣竿を持って、川に繰り出した。

 

今まで見たことも無い大きな魚影を発見した。

 

ドキドキを抑えきれず、魚影の少し前に静かに糸をたらす。

 

するといきなり魚が食いついてきた!

 

餌は同じはずなのにこの食いつき!圧倒的早さ!

 

そして釣竿のすごいしなり!

 

前まで使っていた釣竿ならとっくに折れていただろう大物を、

 

そのまま一本釣りしてしまった。

 

釣り上げた魚をパシリと掴むと、その姿に驚いた。

 

これは・・・・・・。

 

ブラックバス!

 

この川で十年以上釣りをしていたが、

 

ブラックバスを釣ったのは初めてだ。

 

50cmは間違いなくある。

 

生態系は大丈夫なのかと思ったが、

 

しょぼい釣竿を置いて川を見て回ると、大きい魚影は見つからず、

 

逆にしょぼい釣竿をもっていると三割がた大きな魚影を発見するようになった。

 

そして大きい魚影はブラックバスしかでない。

 

とりあえず釣ったブラックバスを逃がさなければ、生態系に影響は無いんじゃないだろうか。

 

そう楽観的に考えるしかなかった。

 

いつも10匹以上の魚をいれている魚篭は、ブラックバス3匹でいっぱいになったため、

今日はこれで帰宅することにした。

 

ご近所さんにブラックバスをおすそ分けしてみたら、異変扱いされてしまった。

 

あとブラックバスはかなり美味しかったです。

 

また釣ろう。

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