△★月△☆日
居酒屋で煮物をつつきながら飲んでいると、
最近の髪切り妖怪の話が聞こえてきた。
話では虹色の毛玉をぼうっと見ていると背後からチョキチョキと、
髪を切られてしまうそうだ。
△★月△●日
頭を剃りあげてから子供が寄ってくる。
クソガキはハゲだと馬鹿にしに、
普通の子供は妖怪にやられたのかと聞いてくる。
悪いことをしたから反省として髪を切ったんだよと言うと、
納得したのか帰っていった。
そういえば里に薄毛の人はいなくなり、
神社に参拝する人も減ってきたと巫女さんが言っていたな。
△★月△★日
噂が一人歩きしているようだ。
なんでも虹色の毛玉が髪切り妖怪になっていて、
悪いことをすると髪を食ってくるという話に変質していた。
△★月□○日
やらかしたかもしれない。
虹色の毛玉が里の人を襲い髪を食いちぎっていた。
襲われたのは乱暴者の三九郎という男で、
普段から素行の悪い奴であった。
直ぐに巫女さんが飛んできて、毛玉は退治されたが、
白昼堂々妖怪が里で人を襲うというのは生まれて初めてだ。
△★月□×日
『実に恐ろしきは人の想像といったところじゃのう。』
しばらく神様のお説教を喰らった後どうすればいいか聞くと、
これ以上噂話が変質してしまう前に、新たに噂話を流せば良いそうだ。
ということで巫女さんが毛難除符というお札を作り、
俺は髪を長く伸ばし、ちょいと布で顔を覆う。
俺が里でちょっと悪いことをして毛玉に襲われたところで、
巫女さんが退治した後、毛難除符入りのお守りを喧伝する。
それを里のあちこちで繰り返した。
□○月○○日
あれから虹毛玉は里で姿に見せなくなり、
神社でお守りを買う参拝客が増えたそうだ。
これで一安心といったところか。
『我から見ると一連の騒ぎはマッチポンプにしか見えんの』
俺はまた坊主にした。
□△月○△日
里を賑わせた毛玉騒動があった夏も過ぎ、
季節はとっくに秋に入った。
日課をしばし休み収穫の手伝いをする日々である。
そんな中長屋に慧音先生が姿を見せた。
頭を丸めてからイタズラをしなくなった俺を心配して見に来たのだという。
家に上がってもらって、ご心配をお掛けしましたと言うと、
先生に丸くなったなと言われる。
頭をつるりと撫でながら、へえ見ての通りでというと、
馬鹿者そっちじゃないと笑われる。
先生は部屋の中に並んだ木像をしげしげと眺めた後、
懐から一冊の本を取り出して、これの版木を作ってくれないかと言ってきた。
構いませんよというと、笑顔になって帰ろうとするので、そっと背中に貼紙をしてしまった。
あの隙だらけの背中を見て、癖とは恐ろしいものだ。
惜しむらくは咄嗟だったので貼紙が無地ということだろうか。
□○月○□日
先生の怒りの頭突きをお見舞いされてしまった。
版木はちゃんと作らなくては。
□○月○☆日
先生から渡された本を読んでいると寺子屋で学んでいた時のことが懐かしくなる。
この小難しくてお堅い文章は慧音先生のものだろう。
情報を出来るだけ詰め込もうとするからこんな名前だらけの本になるのだ。
折角なので推敲しておこう。
□○月×○日
稗田さんのところに言って、
幻想郷の歴史書を見せてもらう。
先生の教科書を推敲するに当たって、
稗田の歴代の本を読む必要が出てきたからだ。
□○月×●日
今日も稗田さんの書庫で本を読んでいると、嬢ちゃんが現れた。
わざわざここまで訪れて書を読む人は中々いないので興味が沸いたそうだ。
嬢ちゃんは先生の本を見て、ふーんとか言っている。
何となく嬢ちゃんが現れた理由が分かったので、歴代の縁起の印象の話をしてから、
嬢ちゃんの書いている新しい縁起の話をしたら、嬢ちゃんが本から顔を上げた。
先代の幻想郷縁起に追記された文は当世風で読みやすく、文字も楷書ですっきりとしている。
嬢ちゃんの書く、新しい縁起を読むのが楽しみだと言うと、
そうですかと言って本を置いてささっと書庫から出て行った。
貸本屋の嬢ちゃんが幻想郷縁起を良く借りていくのは稗田の嬢ちゃんだと言っていたことから、
薄々思ったがやはりあれは自分の文が受け入れられるか試していたのだろう。
□○月×★日
近々永遠亭で月都万象展覧会が開かれるそうだ。
月の都ゆかりの品々がみれるとあって里で噂になっている。
□○月△○日
版木を彫っていると兎さんが家を訪ねてきた。
どうやら姫さんが今度の展覧会を先行して鑑賞させてくれるそうだ。
急ではあったが喜んで見に行くと、廊下や室内にずらりと月に関するものが並んでいた。
空を飛ぶ牛車やら身に纏うと空を飛べる羽衣、玉兎の臼なんかの古そうなものから、
月面探査車や戦車、バルカン砲、なんて物騒なものまでところ狭しと並んでいる。
月都の歴史書などの資料は読めないが、立体映像で操作できるのでSF感を楽しめる。
途中で宇宙服を着せて貰ったが重すぎて全く動けなかった。
どうかしらと感想を求められたので、率直に面白かったと言うと喜んでいた。
□○月△☆日
展覧会は大盛況らしい。
姫さんの都合から人形劇も永遠亭を中心に行っているのも相まって、
今幻想郷では月がブームになっている。
貸本屋でも月関連の書籍が良く借りられているそうだ。
□○月□○日
性懲りもなくイタズラしてくるガキが逃走中に転んで泣いた。
ちゃんと前向いて走るんだなと注意しつつ、傷口を水で洗い、
袖を切って傷口に巻いて止血してやる。
女医さんの診療所に連れて行くと、いつかの逆子で苦労した奥さんが受付をやっていた。
女医さんにガキを任せて、奥さんの話を聞くといつも受付をやっている玉兎さんは、
展覧会で餅つきをやらされているので、その間は手伝いをしているそうだ。
奥さんは女医さんから手ほどきを受けつつ医者を目指しているらしい。
ガキの診療代を払いつつ、止まらない奥さんの自分語りを聞いていると、
奥からガキがこっちを見ている。
女医さんにお礼を言って、ガキにも頭を下げさせる。
黙りこくったガキの背中を押して診療所を出ると、日が傾いている。
日が暮れる前にちゃんと帰れよとガキの頭をぺしぺしと叩く、
さてととガキに背を向けて飲み屋に行こうとしたら尻を蹴られた。
後ろを向くとアホーと言いながらガキが走り去っていく、
ガキの顔は見えなかった。
□×月○□日
秋祭り。
もはや妹ちゃんの屋台の活況具合を見ながらお姉さんと話すのが、
恒例となっていたがなにやら見慣れないものがテーブルにある。
テーブルの上にある花柄のカバーが可愛らしいフリルの付いた黒電話について、
お姉さんに聞いてみると、受話器を取ってみたら分かるわと言われる。
とりあえず取ってみると、屋台の方からジリリリリと音が鳴る。
受話器からもしもしフランです今忙しいから掛けなおしてねと聞こえた後、
ツーツーと電話が切れる。
「良いでしょう?私とフランのホットラインよ。」
お姉さんはいつものように優雅に紅茶を飲みながら自慢気にそう言った。
電話線の繋がっていないのに何で繋がるかと聞いてみたら、
詳しいことはパチェに聞いてと返される。
紫魔女さんに聞いてみようと思ったが、彼女は一向に視線を合わせてくれない。
彼女の真ん前に躍り出たが、即座に顔を反らして逃げてしまう。
メイドさんは時折眉間に皺を寄せている。
先ほどまでアリスさんと笑い転げていたマリちゃんが、
ハンカチを取り出し油をつけて頭を磨いてきた。
マリちゃんのなすがままになっている俺を見てメイドさんが歯を食いしばっている。
すこし落ち着いたのかこちらを向いた紫魔女さんが崩れ落ちた。
お姉さんにまた今度聞くことにしますと言って立ち上がり、
それじゃあ失礼しますと頭を深々と下げる。
魔女はハゲに弱いのだろうか。
□×月○●日
近頃紙の供給が増えて、値段が暴落している。
そのせいか絵や本を書く人が増えているそうだ。
作った版木を先生に渡すとそんな話をされた。
来年からは授業内容を書き留めるノートを配布できるかもしれないと先生は喜んでいた。
□×月×☆日
先生に本を推敲したのがばれた。
ぷんぷんしている先生にとりあえず目を通してくれとお願いすると、
非常に複雑な顔をしていた。
いやでも・・・とブツブツ言いながら読んでいる先生に、
お茶を出して待っている。
読み終わった先生は腕を組んでどうするか悩んでいるようなので、
ドッキリ大成功と書いた紙と推敲していない版木を見せた。
当然頭突きされた。
小説内の時間軸は現在は120季秋になりますが、
122季夏の風神録まで特に何もイベントが無いため今後は足早に進んでしまうと思います。
何か思いつけば書くとは思いますがご容赦お願いします。
また来週よりしばらく休みが不定期になるため、更新も不定期になると思います。
なるべく更新ペースは落とさないようにします。