あつもり日記   作:syumasyuma

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○☆月×●日

 

竹林でのことを神様に報告しつつ、

作業台に竹を転がし、竹のかごを作成する。

 

【なるほどのう、竹林の兎の妖怪か。まあそれほど怯えることも無いじゃろう。】

 

神様から妖怪の生態について教えられる。

妖怪は人間の恐れから生まれ、恐怖を糧に生きている。

俺のあまりのビビリっぷりがその妖怪を満腹にさせたのだろう。

光弾も当てるつもりはなく、効率よく恐怖させるための手段に過ぎないと。

 

あの妖怪が満腹になった理由に納得したが、

俺はビビリではないことを明言しよう。

 

【無論恐れが足りなければ脅しはエスカレートするのじゃ。】

 

・・・ビビリで良かった。

 

そんなことよりも竹籠に加護を与えて貰うと、

やはりより多くの加護を付与することができるそうだ。

 

効率にして10倍!

 

よく分からんが完成した竹籠には、10枠のアイテム欄があり、

アイテムを30個ずつスタックして収納できるようになった。

アイテムの判定は俺がDIYで作成した石斧及び釣竿、スコップ、虫網で獲得したものになる。

 

やったぜ!インベントリ実装だ!サンキュー神様!

 

【ああ信仰の高まりを感じるのじゃ】

 

早速日課に行かなくちゃな!

 

 

○◎月○○日

 

竹籠には生き物はスタックできなかったぜ。

ゲーム通りであるがちと残念だな。

ちゃんと魚篭も持ってかないとな。

 

それ以外は竹籠に入っているものの重量を感じないので、

実に良好である。

そのうち竹林に行って二つ目の竹籠を作ってもいいかもな。

 

そんなことを神様に言うと、生物がスタックできないことの調整は難しいが、

10枠からさらに増やすことなら信仰が高まれば直ぐにでも可能らしい。

 

マジか、神なのか?と言ったら、

マジで、神じゃぞと返された。

 

 

○◎月○×日

 

今日も日課の釣りをしていると

すごい大きな魚影を発見した。

ブラックバスよりもめちゃくちゃデッケー!

 

興奮して逸る気持ちを抑えつつ魚影に狙い釣り上げる。

なんという強い引き!

かつて無いほど釣竿がしなっている!

 

デヤーと気合を入れて釣り上げると、

全体的に青っぽい格好をした少女だった。

 

混乱している俺の脳を他所に俺の体は、

その少女の奥襟を持ってなんか釣ったぜポーズをしたあと

そのまま竹籠の中にいれてしまった。

 

体に染み付いていた行動をとってしまい暫し硬直したが、

おっかなびっくり竹篭から先ほど釣り上げた少女を取り出してみる。

 

なぜか大きな水槽が出てきた。

 

その水槽の中に少女が浮かんでおり、

やべえ水死体かと思ったが、目が合い甲高い悲鳴を出して驚いてしまう。

少女は困惑し水槽からでようとしても出られないようだ。

 

「えっ!何っ!嘘!」

 

他人が焦っていると見る見るうちに落ち着いてくる。

気絶するところだったな。

 

その少女は人間ではなく河童らしい、

まあ水中で話せる人間はいないよなと思い、

とりあえず水槽から少女を川へ逃がす

 

「すごい人間もいたもんだ。私はにとり宜しくね!」

 

釣られたのなんて初めてだよと照れくさそうにしている河童は、

にとりと名乗り、色々喋り、俺の釣竿や竹籠を弄り始める。

こちらに害意はないが非常に好奇心旺盛なようだ。

 

ああ、うんよろしく

 

 

○◎月○□日

 

「やあ、盟友!釣れてるかい!」

 

日課の釣りを行っていると、川から昨日の河童が出てきた。

河童はひとしきり喋り倒した後、

釣った魚には餌をやるべきなんじゃないかな盟友といってきた。

 

盟友になったつもりはないが襟首捕まえて竹籠に放り込んだ、

というちょっとした罪悪感があるので話を聞くことにした。

 

河童が言うには俺が今座っている黒い物体ことタイヤが欲しいそうだ。

竹籠が出来ていらい釣ったごみも一応回収してはいたが、

特に必要なものではないので了承することにした。

 

とはいえそんなに釣れるものではないので、

釣れた時だけでいいかと聞くとそれでもいいそうだ。

幻想郷には無い素材はそれだけで価値があると言っている。

 

 

○◎月○☆日

 

 

なんとなく釣竿で魚や河童以外にアイテム扱いされるのかと思い里で色々なものを釣ってみた。

 

先生のスカートを釣ったり、ゲンさんのカツラを釣ったり、

ご近所さんを釣ったりしたが、どれも釣ったことにはならなかった。

 

河童以外の妖怪や人間、その辺の雑貨ではダメらしい。

魚影のみに対応しているようだ。

 

 

○◎月○◎日

 

町をぶらついていると貸し本屋の店番に貸している本の貸し出し期限が近いと言われたので、

借りていた本を返すことにする。

ついでに古道具屋で買った古本を貸し本屋に持っていった。

あそこには外から入ってくる本や物など、掘り出し物があるのだが、

あんな僻地にある場所なんぞには誰も行かないので、

小金稼ぎになるのだ。

 

 

○◎月○★日

 

 

日課を行っているとダラダラと汗が流れる季節になった。

もうすっかり夏である。

 

夏にはきゅうりだよ盟友といってくる河童に同調し、

河童が持ってきたきゅうりを貪る。

 

 

○◎月○●日

 

 

日課を終えて巫女さんタクシーを堪能していると、

妖怪の山に日が沈んでいく。

今日の夕日はやけに赤いなと思っていると、

日が沈みきっても微かに赤い。

あれはなんだろうか、

河童が何かやったのだろうか。

 

「忙しくなりそうね」

 

巫女さんが意味深なことを言ってる。

 

 

○◎月×○日

 

【我が信徒よ。妖気を含んだ霧が満ちておる。気をつけよ。】

 

神様が言うに赤い霧が平地を満たしていて、

吸うと体内の霊力が乱れて体調を崩すらしい。

 

簡易的に盛塩で軽減することができるので、

東西南北に鬼門、裏鬼門においておき、

もし盛塩が崩れたなら直ぐに作り直せと言われた。

 

可能なら里の要所に盛塩することもお願いされたが、

それは余裕のある人間に任せるように言いつけられた。

 

起きてみると外が真っ赤に曇って全然見えん。

しかもちょっと体がだるい気がする。

早速盛り塩を作ろうと思ったが、塩を湿らせる水がないな。

まあ能力で出した水でいいかな。

 

塩を円錐状に整え指示のあった場所に置く。

するとなんかちょっと気分が良くなった気がする。

ふむ、効果があったのか、プラシーボ効果なのか分からないが、

ちょっと里の中に設置してくるか。

 

家にあった塩を盛り塩に作り直して配置する。

途中で知り合いとあったので、盛塩の件を伝えて拡散して貰うことにした。

これで多少はマシになったかな。

 

少し霧が薄くなったような、なってないような微妙な感じだ。

 

里の人とこの霧について話していると、

赤い霧をふっ飛ばしながら巫女さんがやってきた。

 

「あら意外に平気そうね。」

 

赤い霧が人里を覆うのを見て急いで来たのか、

巫女さんの声がちょっと上擦っている。

 

巫女さんはこの異変を解決して来るそうで、

体調を崩した里の人がいたらこの札を貼っとけと、

なんか書かれた札を束で渡された。

 

なんでも体内に溜まった妖気を吸い出す札らしい。

急造品で枚数もそれほどないから、今日明日は家から出ないようにと、

強く言った後、霧を吹き飛ばして空に飛んでいった。

 

里の人が巫女さんを拝んでいるのを尻目に、

先生の下へ向かう。

なんかあったら先生に相談、これ里の暗黙のルールね。

 

「おお、お前か。体調は大丈夫か?」

 

寺子屋に行くと先生が老人や子供を集めて匿っていた。

体調を崩している子などもいたので、

これまでの経緯を話しながら札を押し付ける。

 

なにやら巫女さんがこういうことをするのは珍しいらしく少々驚いていた。

 

とりあえず渡すものを渡したので、寺子屋を後にしようと思ったら、

この前俺にイタズラしてきたクソガキが走り回っていた。

 

どうやら先生の手伝いをしていたようだ。

クソガキを呼び止めると、俺だと気づいて慌てていたが、

怒っていないことを伝えて落ち着かせる。

 

俺は懐からあるものを取り出し、クソガキに手渡す。

これは古道具屋で仕入れてきた悪戯用の道具で、

これに座ると屁の音がなる優れものだぞ。

 

クソガキと握手して寺子屋を後にした。

 

 

○◎月××日

 

 

翌朝、外に出てみると赤い霧は晴れており、

青空が広がっていた。

どうやら異変とやらは巫女さんが解決したらしい。

 

里の人が今日は巫女さんのところで宴会だと息巻いていたので、

今日は日課を休んで神社で宴会の準備をすることにした。

 

神社に行くと巫女さんは先ほどまで寝ていたようで、襦袢で出てきた。

寝たりなさそうだったので、まだ寝とけといって布団へ追い返す。

 

境内や本殿の掃除を済ませて、

昼食を作っていると巫女さんが起きてきたので

もう昼食ができるから座敷で待って貰う。

 

昼食を摂りながら昨日の異変について聞く。

へえー霧の湖の先に吸血鬼の館があるんだ。

道中蹴散らした妖精やら妖怪、門番、時を止めるメイド、吸血鬼など、

巫女さんの話はぶっ飛んでいる。

 

途中でマリちゃんにも言及していたがどっか行ったらしい。

あの子は一体何してるんだろうか?

 

こちらからは里には特に大きな被害は出ておらず、

今日の夕暮れから宴会があることを伝える。

目を丸くして驚く巫女さんという珍しいものを見た。

 

 

その後里のご婦人方が続々と神社にやって来て、

炊事場を占拠し色々な料理を作り始める。

男衆も後に続いて神社にやって来て奉納品をどさどさと置いていく、

俵とか樽で置かれる食べ物や酒を見て興味深そうにしている巫女さん。

・・・消費できるのだろうか?

 

宴会は非常に盛り上がった。

俺は巫女さんから聞いた話を爆盛し、

里の人が引いていた二胡とかいう楽器に合わせて歌う。

巫女さんは呆れていたが、里の人は大盛り上がりだ。

 

 

「ちょっとそこの吸血鬼のところを詳しくお願いします!」

 

やたら食いついてきた稗田の嬢ちゃんを、

巫女さんに任せて更に爆盛話を続ける。

 

 

「おいおい!私の活躍が一個も無いぜ!どうなってんだ!」

 

途中参加のマリちゃんが抗議してきたが、

これまた巫女さんに任せて、もう異変関係ない話を語る。

やたらドラマチックに脚色した幻想郷縁起は、

里のちびっ子どもにとても人気がでてしまい、

先生が落ち込んでしまった。

 

とても楽しい宴会だったが、巫女さんの何気ない一言で、

俺の酔いは一気に醒めてしまった。

 

「今度異変の関係者の宴会があるからアンタも出なさいよ」

 

嘘だろ巫女さん


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