特典でドラクエ魔法貰ったけど回復しか出来ません   作:アナタ

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お前に分かるのか、この絶望が

 

 

 

 

 

 

「俺は思うんだ、世の中不公平だって」

「い、いきなりどうしたの?」

 

突然だが俺は転生者だ。

前世は平凡なサラリーマンで特に尖った何かがあるわけでもなく、流行病でコロッと死んじまった運がない冴えない男だった。

それが死んで目が覚めると何か「転生してみよっか、特典はドラクエ魔法でいいよね」とか髭が長いおじさんにあれよあれよと決められ、こうして転生して今に至る。

 

ドラクエ魔法。

前世でも日本で大人気だったRPGゲームの魔法。

誰もが1度は憧れる、あの画面の向こう側でしか見ることが出来なかった魔法が使えるのだ。

俺は柄にもなくワクワクしていたと思う。

代表的なメラ系に回復魔法であるホイミや、補助魔法であるスカラやバイシオン、これ俺TUEEEE系まっしぐらじゃね?

そう思えて仕方がなかった。

 

産まれて数ヶ月でホイミが使えた。

1年も経てばベホイミが使えた。

3年も経てばリホイミも使えるようになった。

6年も経てばキアリーやザメハ何かも使えるようになった。

来る日も来る日も俺は様々な魔法口ずさみながらも、色々なドラクエ魔法が発動出来るのをわくわくドキドキしていたんだ。

バイキルトが使えたのなら重いのだって軽々持てそうだし、スカラを使えたなら銃弾だって弾きそうだし、ルーラが使えるのなら長年の夢を叶える事だって出来る。

そんな風に毎日が楽しかった。

 

そして現在中学3年生。

 

 

 

 

 

「うぉぉぉぉ!メラゾーマ!」

 

 

 

 

 

天に高く掲げた手を一気に振り下ろす。

 

俺はメラゾーマを唱えた!

しかし覚えていなかった!

 

 

 

 

 

 

 

 

なんでや!なんでなんや!

そう、何故か俺は回復魔法しか覚えれなかったのだ。

最初ホイミを覚えた時なんてくっそ嬉しかって、その後回復系しか覚えなくて嫌な予感がひしひしと現実になりつつあるのを感じていたが今になって確信した。

俺、回復しか出来へんやん。

なんでや!ドラクエって言ったらメラゾーマとかバギクロスとか派手な攻撃魔法にバイキルトとかスクルトとか便利な補助魔法だろ!

バギムーチョ?そんなダサい魔法知りませんねぇ。

 

いや回復もすげぇ便利だけど、お前これただ便利ですげぇだけじゃん!

何も珍しくないよ!ありきたりだよ!

何より目立たないじゃん.......

 

こうして俺TUEEEEムーブは儚い夢として散っていったのだった。

 

「僕は凄いと思うけどなぁ、束紗(たばさ)ちゃんの個性」

「あぁ?」

「え、なんで僕キレられてるの?」

 

束紗ちゃん。

それが俺の名前だ。

そう、俺の前世はしがない男でサラリーマン。

そう男。

でも束紗って女の名前じゃないかって?

その通りだよ(キレ)

意味わかんないっすよ、束紗ってなんすかてかTSとか流行んないっすよナンバリング的に5ってことですかね?

いや好きだけど俺、依然として心は男なんだけど。

 

閑話休題

 

さて、話は変わるが俺の転生した世界は普通の日本じゃない。

個性と呼ばれる超能力が当たり前のように認知されている世界。

そしてその個性をいい事に犯罪行為に及ぶ者をヴィランと呼び、そしてそれを取り締まり力なき人々を守るヒーローという役職がこの世界には存在している。

そんな馬鹿な、と最初はそう思ったがこの世界ではこれが現実なのだ。

 

びっくり人間宜しく火を吹いたり巨大人間がいたり。

そんな非日常が当たり前の世界、それが俺の第2の人生を送ることになった日本だ。

 

残念ながら俺は前世でこの世界の事を知っていないので原作知識によるアドバンテージもない訳だが、もう回復しか出来ない時点で夢を見るのは諦めているのでその辺は割とどうでもいい。

要するに第2の人生として楽しもうかなぁと結構気楽な気持ちでいたりする。

 

だって回復魔法じゃどう足掻いても俺TUEEEE出来ないしね。仕方がないね。

 

 

 

「まぁ俺の事はいいよ、それよか出久。お前本当に雄英受けんのか?」

「うん。それが僕の夢だから」

 

 

 

そう力強く頷く親友に俺は溜め息を吐いた。

俺達は中学3年生で受験生として高校を受験する。

何やかんやで小さい頃からずっと一緒にいたコイツは親友と言っても過言じゃないだろう。

馬鹿みたいに真っ直ぐで、その癖変なとこで臆病だったり自信がなかったり。

でも誰よりも困った人や助けを求めている人を見ると手を差し伸べずには居られない、そんな絵に書いたような良い奴で。

きっとこういう奴が世界に名を残すヒーローになるんだろうなと俺は思う。

 

でもそんなヒーローのお手本のような奴だが出久には個性がない。

ヒーローになるんだとずっと言っていた出久が個性検査に行って、個性がないと言われた時の衝撃はどれ程のものだったのか。

きっとヒーローという物自体にさほど執着もない俺には、まして転生者として「個性」を特典として貰った俺には絶対に分からないだろう。

でも出久は諦めていない。

無個性だと馬鹿にされても、周りに止めておけと言われても。

コイツはずっと前だけを見続けている。

 

俺だって現実的でない、絶対無理だとコイツに言ったことがある。

それでも出久は折れなかった。

なんか久しぶりに胸にきたっつーか.......まぁそれで応援しないなんて選択肢は俺にはなかった訳で。

柄じゃねぇってのは俺でも分かってるけど、決意固めた男の決意を前に、ましてやダチの背中を押しやらないのは余りにも人もして終わってるだろ。

だからこそ俺はコイツの背中を押してやろうと思ったんだ。

 

 

「あぁ?まだいやがったのか束紗.......それにデク」

「かっちゃん.......」

 

 

教室に入ってきたのはかっちゃん、俺の親友その2である。

不機嫌そうに眉をピクピクさせながら此方に歩み寄る姿はチンピラのそれ。

まぁ悪いヤツじゃないんだが.......なんというか一言で表すならツンデレ?

うん、それだな。

 

 

「束紗、てめぇ.......」

 

 

人を殺せそうな目線で俺を射抜くかっちゃん。

あらやだ思考が筒抜けだわ。

ちょっと鋭過ぎない?この才能マン。

ちっ、と舌打ちして目線を外しズカズカとした足取りで近付いてきたかっちゃんは俺達の目の前で足を止めた。

 

 

「デク、てめぇみたいなクソナードがまだ雄英受けるとか戯れ言言ってんのかよ」

「うん、僕は誰になんと言われようとも雄英を受ける。これだけは譲れないんだ」

 

 

その人を殺せそうな目線で、それこそ少し背中を押せば顔をぶつけてしまいそうな距離で睨み付けるかっちゃん相手に出久は淀みなくそう言いきった。

こうなった出久はテコでも折れない、それをかっちゃんも俺も昔から知っている事だ。

 

 

「.......俺ァ、お前が受かろうが落ちようがどうでもいい。でもデク、ぜってぇテメェにだけは負けねぇからな」

「.......僕もだよ、かっちゃん」

 

今チラッと2人こっち見なかった?気の所為か?

まぁなんというか熱い友情だねぇ。

何やかんやでツンデレなかっちゃんはあれでも心配してんだよなぁ。

言葉はあれだけどもな。

少しギクシャクした頃もあったけど、今はこんな感じで3人仲良くやっている。

俺もその輪の中に入れて欲しいが悲しいかな今の俺は女、ちょっぴり疎外感。

でも忘れてはいけない、こう見えて中身はバリバリの男だ俺は。

言葉遣いだってはしたないだとか良く怒られるが、男時代のままだし服装だって制服以外は殆ど男物ばかり。

.......まぁ多少そういうものも有りはするがクラスメイトに半ば無理やり押し付けられたもので自分で買ったものはない。

 

それはそうと

 

 

「お前ら俺をのけもんにすんじゃねぇよ!このぉー、こうしてやるっ!」

「お、おまっ何しやがるっ!?」

「ちょ、束紗ちゃんっ!?」

 

 

 

ダイナミック飛び付きアタック。

相手は死ぬ。

嘘です、ただ除け者感があって寂しかっただけだ。

俺はコイツらと雄英に行く。

不安な事は沢山あるけれど、3人なら何とかなるだろう。

真っ直ぐにヒーロー目指すコイツらとは違って親友の手助けを、コイツらと一緒にいたいから雄英に行く俺は無粋かもしれない。

でもやっぱ心配なんだよな、この2人だけを一緒にしておくの。

俺は何故か前屈みになり顔を赤くした出久と、バンバン手のひらを爆破しまくり吼えているかっちゃんを見て根拠もなくそう思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――

 

 

 

 

 

 

 

僕の名前は緑谷 出久。

将来の夢はオールマイトのようなヒーローになる事。

 

でも僕には個性がない。

この個性社会において無個性というのはとてつもなく大きなハンデキャップとなる。

皆、当たり前のように個性を持っている。

僕のなりたいヒーローもその個性を使い自分の強みを活かし、個性を使って暴れるヴィランを捕まえたり災害の被害を抑えたり様々なな活躍をしている訳だ。

 

そんな無個性でもヒーローになりたいという僕を皆声を揃えて無理だと言う。

実際それは正しい。

僕だってもうそんな物事が分からない程子供じゃない。

でもこれは理屈じゃないんだ。

どうしようもなく憧れた、その姿に、その勇姿に。

カッコよくて強くて、どんな無茶でも押し通して最後は笑って助けてくれる。

脳に、心にこびりついて離れない。

この胸の奥を熱くしてくれるこの感情は今もずっと僕の中で燃え続けている。

 

 

「テメェ!女のくせに男に抱き着くなって言ってんだろっ!ぶっ殺すぞ!」

「またまたー、嬉しいくせにー」

「ぜってぇぶっ殺すっ!」

 

わきゃー、と楽しそうな声を上げながら教室の机の上をぴょんぴょん飛び回る束紗ちゃんに、それを机と椅子を吹き飛ばしながら追い掛けるかっちゃん。

ずっと昔から見慣れた光景だ。

 

 

 

 

だからこそ、守りたいと思う。

 

 

『だい.......じょうぶ。俺が、守るから』

 

 

 

日常は簡単に崩れていく。

未来は不確かなもので、約束されたものなんて何一つなくこの瞬間にも幾度となく変わっているのだと思う。

 

だから僕は変わる。

もしその時、またそんな時があった時後悔しないように。

僕もかっちゃんも痛いほどそれは噛み締めた。

だから今はできる事を全力で。

 

 

「オラァ!やっと捕まえたァ.......」

「ちょ、痛い痛い痛い痛いっ!?やべぇって頭砕けるから!メシメシ言ってるから!アイアンクローはやめてぇー!?」

「てめぇは死んでも死なねぇだろ!個性でも使ってろ!」

「あ、そっか。ホイミ.......ってかっちゃんが掴んでる限り生き地獄じゃん!ホイミ!かっちゃんアホ!ホイミ!馬鹿!ホイミ!チンピラ!」

「.......やっぱ死ねぇ!このクソチビ男女がぁ!」

「あー!お前っ、今言ってはならないことをぉぉ.......って痛い痛い!?」

 

 

出久助けてー、と涙目で助けを呼ぶ友達の為にとりあえず最初にかっちゃんの怒りを鎮めないとな。

 

 

 




龍野 束紗
本作のオリ主。
ドラクエ魔法を特典として「僕のヒーローアカデミア」の世界に転生させられた。しかし回復しか出来ない。
前世は男で今は女。
身長は140cm程しかなく良く小学生に間違われるのが最近の悩み。
髪の色は栗色の髪をセミロング適度の長さで下ろしている。
胸は触って確かめてくれよな!
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