次の日の放課後、新館近くに相模と川崎に呼び出される材木座
「どうするか決めた?ウチたちは材木座君の判断に任せるよ?」
人気の無い場所であり、立ち位置も材木座の向かいに少し離れて相模と川崎が並んで立っているのだ。
知らない人から見たらどっちに告白するとか彼女にするかとかそういうように見えるレベルである。
「何を?」
「お礼の話なんだけど?」
「う、うむそれか・・・実は池袋に美味いラーメン屋があってだな、そこでラーメンをおごってもらうかと」
その答えにちょっと残念そうな表情をする相模だったが
「そっか、ウチはいいよ?川崎さんはどう?」
と隣にいた川崎も誘う
「あんた達がそれでいいならいいよ」
川崎もそれならと頷く
「左様か、後だな、親父殿からとある施設の無料チケットを三枚もらってだな、池袋を選んだのもそれが理由で・・・そのだな?我も我の家族も結構好きなとこなので変なところではない、嫌ならかまわんがせっかくなので一緒にいかがか?」
それの言葉に目を輝かせる相模
「もしかしてサンシャイン水族館?ナンジャタウンとか?」
「いやその手のハイカラなものではない、当日のお楽しみということで、あと朝食は抜いておいていただけると助かる、何しろそのラーメン屋は人気店なのでな」
数日後、修学旅行も目前に控えた週末、ようやく三人の予定がついた三人は池袋駅に降り立つ。
材木座は駅から出るとそのままラーメン屋へと向かった。
「え?もういくの?」
「うむ、人気がありすぎるので早くいかんと並ばないといけなくてのう」
東口から出ると南の方へ歩き、程なくして目当ての店にたどり着く
「無敵家・・・このラーメン屋?って材木座君が好きそうな名前だね」
「ウム!無敵にチートは我の夢!異世界に行きたい!」
「あんたは相変わらずだね」
ため息をつく川崎
「よいではないか、それに予想通りこれは好機!まだ人はほとんど来ておらぬ!いざゆかん!」
無敵家は開店直後の為か人は並んでおらず、すぐに店内に入れる状態のようだった。
店に入り注文をする、出てきたラーメンを食べた二人は
「うわ!凄!」
「ちょっと味が濃すぎない?」
食感と味に驚く二人
「ほむん、これが良いのよ!」
と言いながらズズズとラーメンをすする材木座
「材木座君ってラーメン似合うね・・・」
隣に座った相模は材木座の喰いっぷりに半ば呆れ気味である
「ちょっと食べきれないからウチの分食べてよ」
と相模は店員から小鉢をもらうとそこへ食べかけの麺や具を入れて材木座へ渡す
「へ?でもこれ・・・」
さすがに躊躇する材木座、これでは間接キスのようなものである
「あんた体でかい癖に細かいこと気にしすぎ、あたしだって弟に食べてもらうことあるよ?」
その様子を川崎はニヤニヤしながら眺めている
「そうそう、気にしすぎだって!」
「い、いや・・・まあそっちがいいと言うなら・・・」
渋々小鉢に口をつけて中身を一気に飲むように食べる
「どう?おいしい?って早!」
「味は変わらんであろう、それにラーメンは飲み物!喉で味わうのよ!」
「あーもっと味わって食べてほしかったかなーでも材木座君が満足したならいいか」
と相模は若干残念そうである
「あんた落ち着いて食わないとそのうち死ぬよ?」
と川崎は呆れた表情である
約束通りおごってもらう材木座
「うむ、人の金で食う飯は美味いな!」
「結構な値段だよ・・・」
材木座はラーメン以外に丼物や餃子まで頼んでいたためかなりの金額だ
相模と川崎で折半したがそれでも痛い出費
「あんた食いすぎだよ、本当にそのうち死ぬよ?」
と川崎は呆れた表情
「美味いもん食って死ぬなら本望であろう!」
「ちょっとこれは考えないとね・・・」
「そうだね・・・」
満足げに宣言している材木座を見て二人は心配そうになりながらつぶやくのだった。
そんな二人を今度は西口に連れて行く
「ここが親父殿から授かりし無料チケットの場所!」
「なにこれ?」
「・・・?」
相模も川崎も唖然としている、看板には『池袋演芸場』と書いてある
「うむ、池袋演芸場であるな」
「・・・あたし、こんなところ初めて来たんだけど」
「ウチも、友達の話で遊びに行ったりデートした話聞いてもこんなところに行ったとか聞いたことなんだけど?これなんなの?」
「落語とか漫才とかが見れるのだ、我の両親も大好きなのだが・・・やっぱ嫌であるか?」
と予想以上にドン引きしている二人に焦る材木座
「う、うんまあ材木座君のご両親も好きならウチはまあいいかな?」
「そ、そうだね、何事も経験っていうし、意外と面白いのかも」
「よかった・・・」
と恐る恐る中に入る二人を見てホッとする材木座であった。
「なんか映画館みたいだね」
「日曜なのに人がほとんどいないんだけど・・・」
「それも演芸場の醍醐味よ、さあさあ座って」
しばらくすると演目が開始される
「あ!あれテレビに出てくる芸人じゃない?」
「ほんとだ・・・」
「興奮するのは分かるのだがもうちょっと静かにだな・・・」
二人ともワイワイ騒ぐのでひな壇の芸人から客いじりが飛んでくる
「ほら!そこの色男!美人を侍らしちゃって!うらやましいねぇ」
「え?我?」
「そうそうあなただよ」
自分がいじられるとは思ってなかった材木座はあわあわとする
「ウチら美人だって、川崎さん」
と照れる相模
「・・・」
赤くなり無言で俯く川崎である。
その後も演目は続くが、予想以上に面白いのか相模も川崎も肩をふるわせて笑いをこらえている
そしてたまに材木座に飛んでくる客いじりである。
客が少ない為3人並んでいるはとても目立つのだ。
出てくる芸人は毎度材木座をからかうのでその度に慌てる材木座と笑いをこらえるので大変な相模と川崎であった。
数時間が立ちそこそこの時間になったので出ることにした。
「えーまだ見たいんだけど」
「これ面白い、今度大志や京華も連れてこようかな?」
二人とも大満足である
その後西武池袋の屋上へと二人を連れてくる
「へーこんなところあったんだ・・・」
「京華連れてきたら喜びそう・・・」
「知っておるか?ここは池袋の東側にあるが西武デパート、西にあるのが東武デパートとなっておる、ビッグカメラに入ると延々とCMソングが流れておるのだ『不思議な不思議な池袋~東は西武で西東武~』ってな」
「へー詳しいね」
「ウム、ここ池袋は我にとって特別に思い出があるところでな、幼少の時、両親と駅前のビックカメラは元より先ほどの演芸場に行ったり、サンシャイン60に行ったりな・・・あっち方面には親父殿ご用達のレコードショップがあるのだ・・・我にとっては特別な思い出がある場所よ・・・」
「・・・材木座君にもやっぱ特別な場所ってあるんだ・・・」
「酷いのう、普通あるのでは?川崎殿もあるのでは?」
「そうだね、京華とよく出かける公園とかは特別な場所かな?あと家族で行くところとか・・・」
と川崎は家族がらみで色々あるようだった、しかし
「・・・ウチはないかな・・・」
と悲しそうな顔になる相模
「ま、まあ相模殿は我と違ってリア充だし?作ればよいではないか!大丈夫!多分できる!我が保証する!というわけでそこの売店で何か買って来るがお主等はどうだ?」
「特別な場所・・・そうだね、できるといいな、あとウチはもういらないから」
「あのラーメンだけでおなか一杯、あんた食いすぎだって」
と呆れ半分で椅子に座る二人
そこに聞き覚えのある声がする
「あれー?相模さん?さきさき?あとざ、ザザ虫くん?だっけ」
振り返ると大量の紙袋を抱えた海老名が立っていた。
演芸場って男女誰を連れて行っても受けはいいです。
常に人が少ないのですがこんな客いじりはめったにないのでお勧めです。