プロジェクト材木座with相模   作:もよぶ

2 / 12
第二話

時期は文化祭の準備期間に突入する、無論材木座は実行委員なんて面倒なものに立候補するわけもなく、クラスの催し物も陽キャ達が中心になり喫茶店をやるらしいがそこは材木座、見事にハブられており大してやることもない状態、やはりぶらぶらとする毎日であった。

 

「まったく、八幡が実行委員になっているとは知らなんだ、奴がやる気を出すとか槍でも降らなければよいが、そして我は暇だ」

 

教室では陽キャやその取り巻きを囲んで女子たちが喫茶店の打ち合わせという名のおしゃべり大会なので材木座は居場所がない状態であった。

そんな中、文化祭実行委員会がちょっと揉めているという噂を耳にした。

 

なんでも委員長より副委員長の雪ノ下雪乃の方が働いているとかなんとかという話だそうだ。

「ふむ、八幡のみならずあの氷の女王もいたのか、委員長も大変だのう、全くあやつらは揉め事が大好きなようだの、我にはその神経がわからん」

 

事情なんぞ全く知らないので材木座は気楽なもんである。

廊下を歩いているとこの間屋上で会った相模ら三人が話しているのに遭遇した。

また何か言われるかもと思うやり過ごそうとさっと廊下の角に身を隠す。

 

「ねぇー南、さすがに委員会行かないとやばいんじゃない?」

「えー大丈夫だよ、雪ノ下さんが全部やってるし」

「でも南は委員長じゃん、やっぱり南だけでも委員会に顔出した方がいいと思うけど・・・」

「大丈夫だって!ほら早くいこ!」

 

あの時自分をコケにした三人娘である

「フム、やはりあれはこの間我をバカにしくさった連中のようだな、察するにあの南という女子が委員長なのか?氷の女王は恐ろしいからのう、行きたくなくなるのも分るワイ」

 

三人は若干揉めているようだったが結局相模が折れる感じになったようだ。

相模は足早にその場から去っていった。

 

「心中お察ししますぞ、ま、我をバカにした罰だ、氷の女王にこってり絞られるとよいわ」

そんなことをブツブツといいつつ購買に寄る

「くーちびる~ふ~んふ~ん、やはり久米田先生のかくしごとは面白いのう、エンディングテーマに君は天然色をチョイスするあたりがすごく久米田作品っぽい、今期のアニメは絶望的だがこれが生き残ってて助かったわい」

 

と材木座は売店でパックのコーヒー牛乳と菓子パンを買うと屋上へと向かう、文化祭の準備期間中に早く帰ると両親から

『あんた文化祭近いんじゃなかったっけ?準備とか手伝いはいいの?』

と余計なことを言われるので屋上でおやつをとりつつ時間を潰してから帰るのがここしばらくの日課となっていたのだ。

 

ただ今日は天候が悪く外に出るのは難しそうだった為階段の踊り場で時間をつぶすことにしたのだ、腰を下ろそうとしてふと上の方からすすり泣くような声が聞こえる事に気が付いた。

見上げると屋上の扉の前のところに誰かが座っている。

 

「委員会なんてもう行きたくない・・・もうウチいなくていいじゃん・・・雪ノ下さんだけでやってればいいんだよ・・・」

相模が一人座って泣いていた。

 

これはまずい、気づかれたら何を言われるかわからんぞと材木座はこっそりその場から立ち去ろうとしたがダメだった。

 

「だれ!」

「ひ!」

相模が顔を上げこちらを睨みつけたので反射的に悲鳴を上げる、やはり面と向かって睨まれると超怖い

 

「・・・なにしてんの」

「わ、わわわれは、な、なにも・・・そそそそそっちこそ」

「ウチは・・・別にいいじゃん!下行くからそこどいて!」

 

と相模は階段を降りてくるのだが足取りが若干ふらついているようだ、材木座は階段の端っこへと移動しようとする、しかし

 

「あっ!」

 

という声とともに目の前で相模が階段から足を踏み外した。

 

「いかん!」

 

材木座は菓子パンとコーヒー牛乳を投げ捨て相模に腕を伸ばすが当然というか相模は逃げるように体を捻る。

己の不細工さを呪い材木座は勢い余って相模の下の方へ滑り込む形になる。

 

「グボハァ!」

材木座は悲鳴とともにうつ伏せの状態で相模の下敷きに、そして菓子パンとコーヒー牛乳も材木座の下敷きとなってしまった。

 

 

保健室にて

「ごめんなさい」

制服が菓子パンとコーヒーでぐちゃぐちゃになった材木座へ相模が頭を下げる。

「い、いや我は、だ、大丈夫であるが、その、お主こそ大丈夫であるか?」

さっきとは打って変わって殊勝な態度に材木座はたじたじであった。

 

相模は足をひねって歩けなくなってしまったので材木座が肩を貸して連れてきたのだ。

始めは嫌がっていたが流石に一人では立てず不味いと思ったのか渋々材木座に連れてきて貰っていた。

 

保健室には養護教諭はいなかったので勝手に湿布を取り出し相模は足に貼っていた。

「ウチは大丈夫・・・ほんとゴメン・・・」

「左様であるか、なに、礼は不要!これから気を付けるのだぞ!では」

と材木座は立ち上がろうとするが

 

「ほんとウチってダメなんだ・・・文実の委員長に立候補したら何か変わるかなと思ったけど何やってもダメ・・・」

相模が話しかけてくる

「い、いや、ま、まあ今日は運が悪かったということで」

と材木座は会話をぶった切って保健室の扉に向かおうとするのだがそれに構わず相模は話し続ける

 

「ウチも一生懸命やろうとしているのに全部雪ノ下さんがやっちゃって・・・みんなも委員長のウチより雪ノ下さんのいうことばかり聞いてさ・・・ホントウチ何やってんだろ・・・」

材木座は思った、あ、これめんどくさい奴じゃね?

「もう委員会なんて行きたくない・・・教室にいてもなんか空気微妙だし・・・遥もゆっこも手伝ってくれないし・・・同じクラスの委員の比企谷なんか妙に雪ノ下さんと仲いいし、なんなのあいつ・・・」

 

誰もいない保健室に男女が二人っきり、しかも相模はそこそこのかわいい部類に入る、普通ならドキドキのシチュエーションであるが、三次元の女に絶望し二次元に命をかけている材木座にとってはただのめんどくさい事案でしかない。

 

「雪ノ下さんにはかなわないし、ウチも仕事出来ないし・・・本当にもう嫌・・・」

 

事実そろそろ家に帰ってNetflixの新作の攻殻機動隊が見たいなぁと思っていたり目の前の女子が新作の草薙素子にちょっと似てるなぁと思っている始末である。

時間をかなり潰せたので家に帰っても文句は言われまいと思うがどうにかここから脱出できないかと思い父親の愚痴を思い出す。

 

「フム、何故お主は雪ノ下殿に勝とうとしているのだ?その辺から間違っておらぬか?」

「何がよ!」

「ま、まあマテ・・・良いか?例えば普通会社のトップは社長であるな?」

「今そんな話をしていないでしょ!」

「ま、まあ落ち着いて、聞いてくださらぬか?んでだな、世の中の社長全てが会社で一番仕事が出来て一番頭がいいと思うか?」

 

「何が言いたいわけ?」

 

「我の親父殿がよく愚痴っているのだが『会社はナンバー2で持っている』という言葉だ、社長は無能でもナンバー2が的確に社長フォロー、社内管理していれば問題なく回る、これが逆だとワンマン経営になって破綻するということだ」

 

「無能って酷くない?・・・それにそれだったらナンバー2だけでいいじゃん!」

 

「まあ物のたとえだ、それとこれも親父殿がよく愚痴っているのだが『社長は社長業をやっていればいい』ということだ」

 

「・・・意味が分からないんだけど・・・」

 

「社長は最終的に全て責任を負う故、承認や決済をするのが仕事なんだそうだ、重要だったり即決が必要な案件は最終判断が出来る社長が出る、下々のことまで口を出す必要はない、むしろそれだと現場が回らなくなるんだと」

 

「・・・自分で判断なんて出来ないよ・・・」

 

「だからその為のアドバイスをするのがナンバー2の役目であろう、文化祭とて同じ事、常に副委員長の雪ノ下殿を同席させて意見を求めるのだ、雪ノ下殿で知恵が足りなかったら八幡を使え、奴は余計な知恵だけは回るからな、四の五の言ったら盟友である我が許可したと伝えれば泣いて喜ぶであろう!」

 

「・・・でもウチ、バカにした態度取っちゃってるし、そのせいか雪ノ下さんは言い方きついし、比企谷も何考えてるかわからないし・・・たぶん謝っても酷いこと言われそう・・・」

 

「安心めされい!我なんぞ自作の小説を常に持ち込んではいつも言葉の暴力で叩かれておる!でも文句は言っても奴らはきちんと読んで文句を言ってくるぞ!それが奴らの素である!だから全く気にする必要がない!」

 

「・・・そっかな」

 

「わだかまりがあるなら一言ごめんなさいとでも言っておけばよかろう、奴らはそれでチャラにしてくれる、何、我なんぞ何時もやらかしてる故、土下座を超えて奴らの目の前で奉仕部の部室をなんど転がりまくったかわからん」

 

相模はうつむいて黙り込んでしまった。

ここでダメ押しである

 

「こんな名言がある、『本当にいいリーダーってのは後ろでどっし構えているもの、もしミスがあっても決して慌てず動ずることなく』」

 

「なにそれ?」

 

「その人はこうも言っていた『リーダーというものは距離置いて物事見ることが大事』ともな、雪ノ下殿とあんま仲が良くない貴女ならぴったりであろう」

 

「・・・君って失礼だよね、それにそれ誰の名言なの?」

 

「ARMSという漫画に出てくる通りすがりのサラリーマンのセリフよ!最後にこうも書いておった『リーダーというものはね・・・他人をおだててこき使えばいいのさ!自分は安全な場所で!失敗してもあははと笑い!もし勝ったら目一杯いばりちらしてやるのさ!!みんなの前で!!そんなものさ、他人から見たらね。』我の親父殿はこれ聞いたとき感銘を受けておった、」

 

「漫画って・・・君面白いね・・・そっか・・・委員会行ってみようかな・・・ところで君の名前なんだっけ?」

 

材木座はコートをバサッと翻すと

「聞いて驚け!刮目せよ!我は2年C組出席番号12番!剣豪将軍材木座義輝!この名をしっかりと心に刻むがよい!」

と材木座は口上を述べると自分で考えたかっこいいポーズを決める

 

「ウチは2年F組の相模南、ってか材木座君、制服汚れてるのにそんなポーズ決めてもしまらないよ?ごめんね、今拭くから・・・」

 

「これはしたり!心配ご無用!母上殿に洗濯させるのでな!では我はこれから戦場に赴かなくてはならない忙しい身の上!止めてくれるな!サラダバー!」

 

と材木座は颯爽と保健室を立ち去るのだった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。