目の前の出来事が急展開すぎてただ流されるがままにしていた材木座は家に帰って布団に入った後ハッと気づく。
「アレ?なんか今日の我リア充だったんじゃね?」
文化祭で自分のクラスの店番、その後に女子と一緒に文化祭を回るとか何処の世界のリア充なんだろうか、しかも普通の女子ではなく委員長である。
本来なら一人で適当に回った後さっさと帰って家でアニメを見るかゲームをしていたはずだ。
「おかしい」
そう言ってスマホを取り出す、スマホには相模南のLINEが登録されている
一緒に回った時にせっかくだからと強引に登録されたのだ。
「なんでだ?」
『仕事も兼ねてたからゆっくり回れなくてマジゴメン!明日も忙しくて一緒に回るのは多分無理、だからあの時のお礼はまた今度ね』
「本当になんだこれ?それにあの時ってなんだっけ?」
相模としては階段から落ちた時庇ってくれた時の話をしているつもりなのだろうが当の材木座はそんなことをすっかり忘れていた。
「我が三次元の女子とLINE?明日には隕石でも振ってくるのではないか?」
頭に疑問符を浮かべつつ材木座は次の日を迎えることにした。
文化祭二日目、今日は一般参加の日でもある。
そのせいもあって委員会の人たちは昨日以上に走り回っていた。
材木座は一人でふらふらと校内を歩く、2-Fの演劇は先日相模と見に行っており、一度見ればおなかいっぱいなので本日はスルーである。
歩いていると目の前に比企谷が見えた、カメラをぶら下げてるので文化祭の様子を撮影しているようだ。
「ふうむ、八幡め寂しそうではないか、我も被写体探しを手伝ってやらぬとなぁ」
と近づくが隣に雪ノ下がいるのに気が付く
「クソ!リア充め!」
悪態をつくとその場を離れ、体育館でライブを見学したり各クラスの出し物をひやかしに行ったり、昨日見れなかった文科系の部活の見世物を見に行ったりとそこそこ充実した一日を過ごすことが出来た。
あちこち回って疲れてしまい、休憩をしたかったのだが図書室は閉鎖されてるし体育館はうるさいし、自分の教室は先日のこともあるので休憩の為には入りにくい。
その為屋上へ来ていた。
せっかくだからと給水塔の所まで上り下を見下ろす
「フム、ここから見ると人がごみの様だ」
構内には沢山の人が見え、あちらこちらで何かのイベントをやっているようだった。
「すこし昼寝をするか」
材木座はそのまま横になり昼寝をすることにした。
「・・・めてください!」
「・・・っつせーぞ!」
なにやら揉めている声で目が覚める、と同時にスマホに着信が来た。
横になりながら出ると相手は比企谷
『材木座、おまえ一人になりたい時どこにいる?』
「なんだ藪からスティックに・・・」
と会話を続けるが下の方ではまだ誰かが騒いでいるようだ。
「てめぇのせいで俺のダチが迷惑してるって言うじゃねーかよ!」
「クラスの出し物を投げっぱなしにするのがいけないんでしょ!」
「うっせーぞ!」
揉めている声が聞こえる、うるさいなと思いつつ比企谷との会話を続ける
『人を探しているが見つからん、あとは人目につかんような所ぐらいしかない』
「誰を探してるのだ?」
『文化祭実行委員長を探している、何処にもいないんだ!』
「なんと!」
材木座は上半身をおこして何気なく騒いでいる男女を見ると
「本当にやめてください!先生を呼びますよ!」
相模が他校の不良数名から絡まれている所が見えた。
「呼べばいいだろ!」
「キャ!」
不良の一人が怒鳴り散らし相模にビンタをしたようだ、バシツという音とともに相模が屋上に転がる
「・・・屋上だ八幡・・・委員長殿はそこにおる・・・至急援軍を頼む」
『屋上?どういうことだ?おまえ今どこにいるんだ!援軍って!おい!』
「ちと怖いがこれを見過ごすのは出来ぬよなぁ」
材木座はスマホを懐に入れそのまま立ち上がった。
材木座は不良たちへ向き直ると大声で叫ぶ
「て、て天が呼ぶ、ち地が呼ぶ、ひひひ人が呼ぶ!悪を倒せと、俺を呼ぶ!聞け!あああ悪人ども!!わ、我は正義の戦士! 仮面ライダー・・・じゃなくて剣豪将軍材木座義輝!!」
大見得を切ったが足は恐怖でがくがくに震えている。
大声で某ライダーの決め台詞を叫ぶ材木座に不良達は気が付き振り向く
「はぁ!?んだてめぇ!」
「きききき貴様ら!い、委員長殿に狼藉を働くのを今すぐ止めるのだ!」
「うるせぇ!全部こいつが悪いんだよ!」
とヤンキーは倒れている相模の髪の毛を掴んで引き起こす
「いったーい!!!やめてよ!」
「や、止めぬか貴様ら!わ我が相手になる!委員長殿を離すのだ!」
「材木座君、だめだよ!」
「委員長殿!『に、人間は、負けるとわかっていても、戦わねばならない時がある。だから、たとえ負けても勝っても、男子は男子なり。勝負をもって人物を評することなかれ。』お、お札にもなっている有名な人が残した我の好きな言葉でな、ももももっとも、そ、そこの暴力でしかじじ自分を表現できぬ、サ、サル共は知らぬだろうが!」
「んだてめぇ!降りてこい!」
「ぜ、ぜ是非もない!しばし待たれよ!」
材木座はそう言うと給水塔からはしごをゆっくり降りてくる、傍から見ると落ち着いているように見えるが実際は緊張で足に力が入らず手も汗でぬるぬるである。
「八幡、早く来てくれ・・・」
比企谷がくるまで時間稼ぎをしているつもりだったが、材木座の願いもむなしく煽られた不良達は当然激高し、降りてくる材木座の足を引っ張るとそのまま屋上の床に叩きつけた。
「ゲフゥ」
床にたたきつけられるとそのまま不良に囲まれる
「誰がサルだって?ああ?このブタが!」
不良たちは材木座に蹴りを入れ始める
「ひぃぃぃ!」
材木座は悲鳴を上げて頭を抱えて丸くなる
「悪を倒すんだろ?おい!なんか言ってみろ!」
不良たちが材木座にさらなる攻撃を加える
「ちょっとやめなさいよ!」
相模が悲鳴を上げる
「委員長殿こそ早く逃げ・・・ぐはぁ!」
材木座の腹に鋭い蹴りが入る
「逃げんじゃねーぞ!」
「せっかく遊びに来たのに俺のダチはクラスから抜けられなくなってるし!売り上げも山分けのはずが委員会に売り上げを管理されて全額学校に寄付することになってるとか言ってるしよ!この女に後で責任とってもらうからな!」
と不良が怒鳴り丸まっている材木座を囲んで蹴りを入れる。
痛みに耐えつつしばらくすると
「お前たち何やってんの?」
聞き覚えのある声がする、材木座が顔を上げると比企谷が屋上の扉を少し開いて顔だけ出していた。
「なんだおまえ?ここは立ち入り禁止だからとっとと帰れ?なぁ?」
不良の一人が比企谷へと近づくとさらに声がする
「確かにここは立ち入り禁止だ!貴様ら何をやっている!」
バーンと扉が開かれるとそこには体育教師の厚木先生がいた。
「お前ら他校の生徒か!どこの学校だ!」
「い、いや俺達は・・・」
「貴様ら!今更ごまかしても無駄だからな!ただでは済まさん!こっちにこい!それとお前ら大丈夫か?話は後で聞く、鍵が壊れていたのは俺も知らなかったしな」
厚木は材木座と相模を一瞥すると不良たちをどこかへ連れていった。
「助かった・・・スマヌな八幡」
「俺の方こそ遅くなってすまん」
「材木座君大丈夫?って比企谷なんでそんなに手回しよかったの?」
相模が材木座のところへ駆け寄る。
「こいつがスマホを通話のままスピーカーにしてたからな、俺は運よくうろついていた厚木にそのまま聞かせて屋上に連れてきたわけだ、しかし材木座よく耐えたな」
「貴様らに小説を見せる度に『耐える』のコマンドは鍛えられておるからな」
「なんだ、んじゃそんだけ耐えられるんだったら小説はネットに晒せ、もう俺達の感想は必要ないな」
「我をハブらないでよ!はちえもーん」
「ふふふ、君たちって本当に面白いね」
「面白いのはこいつの顔だけで・・・って相模!早く戻らないとエンディングセレモニーがはじまっちまう、今雪ノ下と由比ヶ浜達が即興ライブで時間を稼いでるんだ」
「え!本当!材木座君ゴメン、ウチ急いで戻らないといけないから!」
「我は大丈夫だ!この場は任せて行くのだ!」
不良たちに蹴られたところが痛むのでそのまま横になりながらサムズアップをする材木座
「そのセリフ言いたかっただけだろうが」
比企谷は突っ込みを入れつつ扉の奥に相模と消えていった。
「フヒーなんだかとんでもないことになったのう・・・」
仰向けになる材木座、しばらくぼーっと空を眺める、時刻はそろそろ夕方にさしかかろうとしていた。
ピロリンとLINEの着信音が聞こえる
相模から感謝のスタンプが届いていた。
「間に合ったようだの」
しばらくすると体育館から歓声が聞こえてくる、その歓声を聞きつつ材木座は思う
「やっぱりなんか青春してないか?おかしいなぁ・・・現実はクソゲーのはずなのに・・・」
厚木が呼びに来るまで材木座はそのまま空を見上げているのだった。