「ゴメン!」
例によって新館近くの木陰にて材木座が昼食を取ろうとしたところ相模がやってきて頭を下げてきた。
「いかがいたした?藪からスティックに」
突然の謝罪に戸惑う材木座
「実は文化祭の実績があるから体育祭も委員長にならないかってオファーがあって・・・」
理由を説明する相模、生徒会長から奉仕部に依頼があり、奉仕部から相模に実行委員長にならないかとオファーがあったとのこと。
正直悩んでいたが先日承諾したとのことだったが
「ほう、委員長に返り咲いたか、流石相模殿、してなぜ謝るのだ?」
「この間言ったじゃん、比企谷と話す機会作ってあげるって、文化祭みたく比企谷や雪ノ下さんにサポートをお願いして、材木座君にも有志って形で参加してもらえれば比企谷と一緒にいられるでしょ?でも・・・」
と奉仕部へサポートをお願いしたところ
『文化祭実行委員会は相模さんの活躍でかなりスムーズに進んだし、今回は一人でやってみてはどうかしら?大丈夫よ、困ったら相談にきなさい』
と言われ、同席していた生徒会長からも相模さんだったら大丈夫と言われてしまったとのことだった。
「あそこまで信頼されてたら頑張るとしか言えないじゃん、計画が狂っちゃった・・・」
「良いではないか、我のことは気に病むでない、頑張られよ」
「ありがとう・・・って材木座君って前から思ってたけどなんか妙に尊大じゃない?」
「癖だ、ほっとくがよい」
「フフフ、んじゃあね」
体育祭実行委員長となった相模、ただ早速目玉競技の選定で詰まってしまっていた。
その為奉仕部へ相談したところ比企谷の提案で海老名をアドバイザーに呼ぶことになった。
「なんで海老名さん?」
「文化祭の演劇大盛況だっただろ、ああいう奇抜なアイディアを活用したい、適材適所といったところか」
「ふーん、そういえば海老名さんってオタクな趣味あるんだっけ?」
「オタク趣味をバカにするなよ?ああいうのは創作活動においてだな・・・」
と力説しようとする比企谷だったが相模に止められる
「わかったから、力説しなくていいから、ほらそこの二人も呆れてるじゃん」
シラーとした目で比企谷を見る雪ノ下と由比ヶ浜
「えーあーゴホン、まあつまりオタクだからと言ってバカにするのはやめろと、そういうことだ」
「別にバカにしてるわけじゃ・・・あ!じゃあさウチが知ってる人呼んでもいいかな?」
「いいんじゃね?ってかオタクの知り合いなんているのか?」
「まぁね、んじゃ海老名さんの方は任せるね?」
相模は早速LINEで材木座を呼び出す。
「という訳で目玉競技の提案をお願いしたいんだけど?」
「う・・・メンドクサイ・・・」
まさか本当に参加させるつもりだったとはと唖然とする材木座
「いいじゃん、採用されたらそのまま有志ってことで手伝ってもらうから比企谷とも話す機会出来るよ」
「うーむ、そういうことか・・・最近八幡とまともに話しておらぬしなぁ・・・」
「んじゃ決まりだね!でも期限は短いからウチも手伝うから!早速考えよ!」
そう言うと相模と材木座は図書室へ行くことになった。
「あの、なんか近くないですか?」
相模がやけに近いので挙動不審になる材木座
「そっかなーそれよりほら、早く考えよ?」
と相模は余計にくっついてくる
「う、うむ・・・運動会といえば騎馬戦・・・」
と一緒に考える訳だが上手くまとまらず、家に帰ってからもLINEでやり取りをする羽目になってしまった。
その後、海老名、材木座による目玉競技のプレゼン会が開始される。
海老名は大将を設定した棒倒し、対して材木座はコスプレをして騎馬戦をする通称チバセン、プレゼンが終了し相模からねぎらいの言葉を受ける
「二人ともありがとう、あとはこの資料を元に検討してみるから」
と相模に言われ廊下に出た二人
「えーっとザザ虫くん?ってさきさきや相模さんの仲いいの?」
「え?」
「新館の人気の無いところで一緒にいたの見たよ?」
「ちょっとおぬし!」
「んー実は私もあの辺たまに行くんだけど最近先客が多くてさ?大丈夫、さきさきにセクハラしてたのは相模さん以外には言ってないから」
と海老名は言うと手をひらひらさせて海老名は姿を消す
「っく!あのエビが元凶か!余計なことを吹き込みおって!」
と嘆く材木座であったが今更どうしようもない為諦めてそのまま家に帰るのだった。
帰宅途中に相模からLINEが入る
『案は両方採用するつもりだけどちょっと揉めてる、でもウチ頑張るから!体育祭一緒に頑張ろう!』
「うーむ、自分で言うのもなんだがいろいろめんどくさいしのう」
と材木座は相模に無理せず頑張れと送っておく
『今度は一人で頑張るつもりだから!応援ヨロシク!』
無駄に明るい感じのメッセージである
この日これ以上相模からのLINEはめずらしくこなかった。
「まあ流石にやばくなったら八幡達の所に行くだろう」
と材木座はそのメッセージを軽く捕えていたのだがそれが良くなかった。
次の日
「さがみん顔色悪いよ」
教室で由比ヶ浜が相模に話しかける
「う、うんちょっと委員会で疲れてて・・・」
「無理しないで困ったら相談してね」
「ありがとう、そうさせてもらうね」
ニコッと笑う相模を見て安心したのか由比ヶ浜は自分の席に戻る
しかし由比ヶ浜の後ろ姿を見て相模はつぶやく
「こんなの相談できないよ・・・」
その日の昼、材木座は屋上へ向かっていた。
新館付近は海老名が出没する可能性があるということが分かったためである
閉鎖されてるせいもあって屋上方面には完全に誰も来ない状態になっているからだ。
「屋上に出れずとも階段の踊り場で食すればよいのでな」
とまたも購買で買ったパンとコーヒー牛乳を手に腰を下ろすとすすり泣く声が聞こえる、そして周りを見渡すとまたも扉付近にだれかが座っているのが見えた、よく見ると相模であった。
「もしかして友人とトラブルにでも?いやもしや男に振られたとかなのか?ここは一時離脱した方が・・・」
と腰を上げるが
「あ・・・」
相模が気づいてこちらと目が合う、さすがにこの状態で無視はできない
「委員長殿どうされた?」
と相模の方へ近づきながら聞くが
「ご、ゴメン・・・ウチの問題だから・・・」
目をそらして俯く相模
「うーむ成程!察するに恋愛的な物であるか?彼氏がどうこうとか?そういうことなら全くアドバイス出来ぬな、スマヌ」
と材木座は立ち去ろうとする
「違う!ウチ彼氏いないし!・・・ってそうじゃなくって!」
突然大きい声で怒鳴られたのでびくっとする材木座
「ヒッ!い、いやスマヌ、てっきりいるのかと・・・ってそれなら一体?」
「・・・本当にゴメン・・・迷惑かけたくないし・・・」
またも黙り込む相模に材木座はまたも思いついたセリフを言う
「我は無能だが卑怯者ではない」
「は?」
「某吸血鬼漫画に出てくる大英帝国の将軍が最後に言ったセリフよ、我も無能であるが知り合いが困っているのを知って立ち去るのは卑怯者ではないか?もっともこれが八幡だった場合にはその限りではないがな!」
「・・・比企谷の扱いぞんざいじゃない?」
「ふん、奴がマジ泣きしてるところなんぞ見たくはないわ、泣いたふりして縋り付くことはよくあるがな!」
「それ結構卑怯だと思うけど・・・本当に君たちは面白いね・・・」
相模は少し元気を取り戻したようだ。
「でも・・・大丈夫、ウチが悪いんだから・・・」
と言い淀む相模に材木座は一喝
「嫌だ!そんな頼み事は聞けないね!」
それを聞くと相模は目を丸くする
「あ・・・いや・・・これもその将軍が最後に言った言葉でな・・・一度言って見たかったのだ、スマヌ」
と材木座は頭を下げる
「う・・・うううん・・・怒ってない、ちょっと驚いただけ・・・」
その言葉ほっとする材木座
「・・・おぬし、いつもLINEで我に愚痴を並べ立ててるではないか、この件もどの道後から愚痴を送ってくるのであろう?返信するときの名言を探すのもなかなかめんどくさい、今話していただけると大変助かる」
「理由が君らしいというか・・・そういうことなら仕方ないね、うん、実はね・・・」
ようやく重い口を開く相模、その話す内容は委員会のことだった。
プレゼンの後多数決を取ったら同数であり、ならば両方やってみようと提案したところ運動部勢に反発されたという、しかも自分は友達だと思っていた二人の女子が中心になって反発しているということだった。
「ウチ、友達だと思ってたのに・・・それに材木座君の事も悪く言われて、つい感情的になっちゃって・・・」
相模が感情的になって怒鳴ってしまった為、委員会はかなりむちゃくちゃな状態になってしまったとのこと
「ウチじゃやっぱ無理なのかな・・・結局ウチ誰かに頼らないと何にもできないし・・・」
落ち込む相模に材木座が一喝する
「よいか相模殿!貴女にいい言葉を教えてやる!人の足を止めるのは絶望ではなく“諦観”、人の足を進めるのは希望ではなく“意志”だと!」
「それもまた漫画の名言ってやつ?で諦観って?」
「左様、また漫画だ、我はこれぐらいしか知らぬからな、んで諦観とは悟って諦めることだそうだ、漫画では”あきらめ”とルビがふっておった」
「そっか・・・でも諦めず頑張ろうと思っていても・・・遥にもゆっこにも裏切られて・・・ウチ、力が欲しい・・・」
「フム・・・今力が欲しいといったな?」
「・・・・うん」
「力が欲しいか!ならばくれてやる!しばし待たれよ!」
と材木座は叫ぶと奉仕部へと向かう
「たのもう!」
とノックもせず扉を開ける、中では雪ノ下と由比ヶ浜が一緒に食事をしていた。
「うわっ!びっくりした。中二?どうしたの?」
「ざ、財津君、ノックをしなさい」
「八幡は何処だぁ!!!!」
「ひぇぇぇ呼ぶ!今呼ぶから~」
と驚いた由比ヶ浜は比企谷へ連絡する、しばらくするとだるそうな足取りで比企谷がやってきた。
「なんだ材木座、ラノベの感想は放課後にしてやるから昼に呼び出すなよ、大体昼休みなんだから休ませろ」
といつもの調子の比企谷に食ってかかる材木座
「違うわ!目玉競技の為に我が徹夜して考案したチバセンがぽしゃるそうではないか!あのエビが考えた棒倒しも無くなるそうだぞ!貴様一体どういうことだ?」
「え?俺何も聞いてないんだが?」
「ちょっとその話詳しく聞かせてくれないかしら?」
「さがみん大丈夫って言ってたけどやっぱりなんかあったんだ・・・」
「八幡!委員長殿を立候補させておいてフォロー無しとは無責任にもほどがある!」
いつもと違う剣幕に比企谷は唖然として見ているだけだ、それを見かねて雪ノ下が代わりに返答をする
「財津君?それは心外ね、私たちは困った時には相談に来てといったわ、現に目玉競技の提案に・・・」
と雪ノ下が言うが材木座はこれに猛反発
「ちっがーう!その後のフォローだ!相模殿は今、孤軍奮闘孤立無援四面楚歌僑軍孤進状態なのだぞ!!!」
その返答に雪ノ下は表情を変える
「!!その話詳しく聞かせなさい!あと由比ヶ浜さん?相模さんと城廻先輩を呼んで!今すぐ!」
「・・・相模殿は我が呼んでくる、待たれよ」
そう言うと材木座は相模の所にダッシュで戻る
「奉仕部の協力を取り付ける!急いで来るのだ!」
「そんな・・・また雪ノ下さん達に頼るなんて・・・ウチが悪いのに・・・」
とうつむく相模に材木座はまたも一喝
「よいか相模殿!以前ARMSのリーダーに関する名言を教えたはずだ!あの名言は実は一番大事なあるものを持っていないといけないと締めくくれらておる」
「大事なものって?」
「それは”信頼”である!既に相模殿は生徒会長殿や八幡達の信頼を勝ち取っておる!故に奴らをバンバンこき使っても文句は言われん!奴らの力はおぬしの力、おぬしの力はおぬしの力だ!」
「あははは、何言ってるかわかんないよ・・・」
「四の五の言わず来るのだ!」
相模の手を握るとぐっと引っ張る材木座、そのまま奉仕部へ
「連れてきたぞ!」
とまたノックもせずに部室へ入る
「え?中二、なんでさがみんの手を握ってるの・・・・?」
由比ヶ浜は唖然としている
「え?材木座?マジで?」
比企谷も驚いている
「い、いやこれは・・・ええい!今はそんなことはどうでも良かろう!」
と材木座は相模の手をぱっと離すとそのまま相模を部室の中央へ押し出す。
「我もいた方がよいか?」
相模は首を振る
「大丈夫、ありがとう」
「相模殿、幸運を祈る」
材木座はビシッとサムズアップするとそのままコートを翻し立ち去るのだった。