ベルがひみつ道具を使うのは多分間違ってる   作:逢奇流

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 予約投稿時間ミスった……


【延長戦】ベル・クラネル二つ名命名‼【遊び尽くせ】

「「「「ヒャッハー! 祭りの始まりだああああああ‼」」」」

「こ、この暇神どもが……」

 

 前回、神会(デナトゥス)における恒例行事であるランクアップした眷属への二つ名の命名が行われた。

 その際にメインディッシュになると思われたのが、新たなる世界最速兎(レコードホルダー)であるベル・クラネルの二つ名だ。

 レベル2昇格を僅か1ヶ月で達成するという前代未聞の偉業。

 その前の記録が一年であるという事を考えれば、その異常性も伝わるだろう。

 

 本来ならばまず不正が無かったのか徹底的に調べ上げるところだが……主神はあのヘスティアである。

 様々な顔を使い分ける神にしては珍しく、裏表のない誠実な神格(じんかく)……と言えば聞こえはいいが、実際の所、のんびりとし過ぎて致命的に謀に向かない性格なのだ。

 天界では最上級の栄誉であるオリュンポス十二神の座を、ギスギスしたのは嫌だという理由でディオニュソスにあっさり譲ったこの女神が、偽りの名誉のために不正をする等あり得ない。

 

 よって、少年の上級冒険者の仲間入りは速やかに認められた。

 ……とここまでは良かった。

 

(案の定、ベル君を玩具として目を付けたなこのロクデナシ共~)

 

 安牌と確定したのなら、遊びたくなるのが神と言うモノ。

 【ヘスティア・ファミリア】はつい最近興されたばかりの新米ファミリアだ。

 通常、世界最高峰の眷属が集まるオラリオでいきなり派閥を形成する神は少ない。

 勢力の強さ=ファミリアの権力となる迷宮都市で、ゼロから出発すれば、とんでもない困難が待ち受けているのは火を見るよりも明らかだから当然である。

 しかし、ヘスティアはその辺をまるで考えず、いきなりオラリオに直行したのであった。

 世間知らずここに極まれり。その代償が今である。

 

「一ヶ月だけじゃギルドもまともな資料作れなかったみたいだからな~」

「お楽しみをお預けされたときはムカついたけど……調べれば調べるほど、出るわ出るわおもしれー情報」

 

 ニヤニヤと神々が手元の資料を見る。

 因みに今回の資料はそれぞれが持参したものだ。

 嫌な笑いに囲まれるヘスティアはぶっちゃけもう帰りたかった。

 どいつもこいつも遊ぶことしか考えてない。ミアハやヘファイストスがいてくれるとは言え、数の暴力には逆らえない所が民主主義の悪い所である。

 

「そんじゃー始めるでー。司会は前回に引き続きロキや」

 

 その中でも特に禍々しい笑いをする一柱。

 アンチヘスティア派の筆頭であるロキが場のまとめ役と言うのがなお悪い。

 眷属(こども)たちが遠征中で暇を持て余すこの道化神がこの機を逃すはずがなかった。

 

「んじゃー手始めにぃ……こん餓鬼のやらかし発表会や‼」

「「「「イエエエエエエエイッ‼」」」」

 

 冒険者の二つ名を決めるためにその来歴を調べることは当然。

 僅か一ヶ月と言う所要期間でありながら……或いはだからこそ、ベルの冒険は濃い。

 おまけにランクアップ後も様々な騒動を引き起こしているのである。

 話題のタネには尽きないだろう。

 

「はいはーい! 恩恵(ファルナ)刻んで真っ先にホームぶっ壊された感想はいかがでしょーヘスティア様~」

「例の魔石大量発生の時さ、他の冒険者たちは魔石に弾き飛ばされたらしいけど、白髪のガキだけは魔石に埋まってたらしいよね。不思議だね。まるで溢れ出た場所にいたみたいだよね」

「クッソ速いゴブリンが現れたときに、後ろでシャカシャカキモイ動きで走る白髪頭をうちの眷属が見たってよ」

「そういやロリ巨乳たちが前に住んでた地下水路にレイダーフィッシュいたな。それはそうと5階層でレイダーフィッシュが泳ぎまくったことがあってな。いや、特につながりはないと思うけれど()」

「リヴィラの街がワケ分からん要塞になってたって噂もあるよな。……あれれ~? ベル・クラネルの到達階層って13階層までじゃないっけ~おかしぃぞぉ~?」

「やっぱギルド前でのロリコン宣言は外せねぇだろ。あれで餓鬼どもの中にもロリの素晴らしさを理解し始めたやつが現れている。人類が神々(オレら)に追いつく日も近いぞ」

「幻のじゃが丸君ってぶっちゃけこいつが原因だろ。正直、本気で味が気になるから食べさせてほしいんだが」

「【剣姫】が幽霊引き連れて【フレイヤ・ファミリア】と異能バトル繰り広げてたのもこいつ原因? おう、キリキリ吐けやコラ」

「この前の闘技場周りの騒動もお前らじゃね?」

「歓楽街の厄災……」

「「「「その話は止めよう」」」」

「アッハイ」

 

 マシンガンの如く次から次へと話題が振りかかてくる。

 畜生、やっぱりこいつら情報網はきっちり持っていやがる、と悔しがるヘスティア。もう誤魔化すのは無理だろう。

 いくつかはバレてないのか、ヤバすぎて触れないようにしているのかは分からないが、完全にベルは玩具認定を下されたと言える。

 

「はい、一旦ここまでー。随分と暴れたなァドチビィ~? 今から二つ名が楽しみや」

 

 蛇のように細長い舌をちろちろ見せて笑う一応女神(ロキ)を、ぐぬぬと震えながらヘスティアは睨みつける。

 他の神々も頭の中で用意してきた『あれ』な二つ名を出す機会を今か今かと待ちわびていた。

 司会権限で地獄の釜を開こうとロキが声を上げようとした瞬間、涼やかな美声が場の神々に染み渡った。

 

「ちょっと、いいかしら」

「……あぁん?」

 

 小さく手を上げたのはフレイヤだ。

 いい気分になっていた所に水を差されたロキは不機嫌そうにフレイヤを見下ろす。

 並の神ならば震えあがってしまうような剣呑な様子だが、流石は【ロキ・ファミリア】と互角の【フレイヤ・ファミリア】の主神と言うだけあって、全く動じた様子が無い。

 

「こんな可愛い子に酷い二つ名を付けるのは可哀そうだわ。確かに騒ぎを起こした回数は多いけれど、ちゃんと成し遂げた偉業も見てあげなくては不公平でなくて?」

「……」

「それとも、自分の眷属(こども)の記録を抜かれて嫉妬しちゃった?」

「……っち、色ボケが」

 

 フレイヤの挑発染みた発言にヒヤヒヤする面々だったが、当のロキは珍しく反発することもなく矛を下げた。

 都市最大派閥の喧嘩に幹込まれなくてよかったと、神々が胸を撫でおろす中、ヘスティアだけはフレイヤの顔を複雑そうに見ていた。

 

(多分、この段階でフレイヤはもう……)

 

 タイムテレビによる情報を想起するヘスティアの視線に気が付いたフレイヤは不思議そうに女神を見返す。

 自身の情報が今後の切り札であり、弱点(ウィークポイント)であると自覚するヘスティアはその視線から顔を背けた。あの女神相手に駆け引きなど望むべくもない。

 今回は助けられた形になるが、警戒を緩める理由にはならないだろう。

 

「俺はフレイヤ様を支持するよ!」

 

 そんなヘスティアの内心を知ってか知らずか、ヒューヒューと口笛を鳴らしながら親フレイヤ派として振舞う神物(じんぶつ)が一人。

 ヘスティアの同郷であるヘルメスだ。

 一見すると美の女神にのぼせる一般的な神だが、そうでないことはあのタイムテレビの映像で分かっている。

 

(ヘルメスは色々複雑なんだよな……敵じゃないんだろうけど、味方でもない)

 

 今のとぼけた発言も、ロキとフレイヤ間の険悪な空気を解消するために敢えて道化になったのだろう。

 二柱もそれが分かっているのか、ヘルメスの発言に特に反応することは無く、場は自然とベル・クラネルの二つ名で遊ばない、と言う空気が出来上がっていた。

 都市最強派閥の不興を遊びで買う馬鹿はそうそういないのだ。

 

「んじゃー真面目に考えてみるか」

「でも真面目な二つ名って考えてみるとなかなか出てこないよな」

「つーか、ギャグ抜きでコイツの来歴見るとヤベーわ。何で生きてんの」

 

 怪物祭(モンスターフィリア)激戦区における立ち回り。

 地下水路における闇派閥(イヴィルス)幹部級と思しき者との遭遇。

 謎の獣人(つーかコイツ【猛者(おうじゃ)】じゃ……と言いかけたおバカさんはフレイヤの絶対零度の笑みを向けられた)の強襲。

 白髪鬼(ヴェンデッタ)率いる狂信者たちによるリヴィラの街攻防戦。

 【ソーマ・ファミリア】との戦い。及び酒守(ガンダルヴァ)の単独撃破。

 仮面の人物・闇派閥(イヴィルス)との三つ巴。

 【フレイヤ・ファミリア】と【ロキ・ファミリア】の抗争の巻き添え。

 異常事態(イレギュラー)に次ぐ異常事態(イレギュラー)、そして隻角のミノタウロスとの死闘。

 

 これがオラリオに来て二カ月での出来事というのだから、なんとも騒がしい(面白そうな)ことだ。

 暇に殺されそうな神々からすれば、羨ましすぎる2カ月である。

 

「いやーこれを一言で纏めんの?」

「無理じゃね?」

「エピソード一つをピックアップするか……それともベル・クラネル個人の特徴を二つ名にするか」

「特徴って言うとやっぱマジックアイテムだよな~」

「あとはトラブルメーカーってことだな」

 

 うーむ、と腕を組んで考え込む神々。

 やったことは凄まじいが、何分活躍は2カ月しかないせいで、分からないことだらけ。

 ヘスティアから根掘り葉掘り聞こうにも、既にそう言った空気ではない。

 KYな言動は神々の得意とするところ……とは言え、一度決まった話を掘り返すのは粋ではない、と考えているのか、自重している神々にヘスティアは心の内で溜息をつく。

 

「はい考えタイムしゅーりょー。とっとと二つ名決めてお開きにするでー」

「ふふっ、悪戯できなくて不貞腐れているのかしら」

「やかましいわ」

 

 ロキの投げやりな司会によってベルの二つ名候補が発表されていく。

 

「はいじゃあまず俺から。王道にマジックアイテムの底知れなさから【秘奥の少年(ワンダー・ルーキー)】」

「やっぱマジックアイテムの数の多さがウリだよな。まずは【千の小道具(サウザンド・ガジェット)】にして、コイツの成長に応じて二つ名を変えていくのはどう?」

「いや、ベルきゅんは巻き込まれ体質な点にこそ注目すべき……!【狂乱野兎(フレイジー・ヘイヤ)】!」

「次のアポロンの標的になってしまったか……ドンマイ」

 

 次から次へと出てくる二つ名候補。

 最後のアポロンは真面目な二つ名なはずなのに、嫌な予感がするのは何故だろうとヘスティアは冷や汗を流す。

 

「はは……そうだな、【魅成年(ネバ―・ボーイ)】と言うのはどうだろう。これからも俺たちに楽しい物語を魅せてくれる少年であることを願って」

 

 帽子のツバをいじりながらヘルメスは提案する。

 その言葉の裏に、【最後の英雄】への神意(かつぼう)を宿して。

 

「【不思議玩具箱(ワンダーボックス)】」

「清々しいほどにベル君を玩具にする意思を隠さないなロキ!?」

「ドチビの眷属なら遠慮する理由はないわ~」

 

 円卓に足を乗せながら、ロキはケラケラと笑う。

 道化神らしく、細めた瞳の光にその心の内を見せず。

 

「……せっかくだし、私からも提案させて貰おうかしら? 【超兎耳(エスパル)】」

「……なあ、エスパルってなんだ?」

「フレイヤ様の権能に関わる概念なのか?」

「生と死、美と愛情、豊穣、黄金の力、魅了(セイズ)……そして、月だっけか」

 

 フレイヤは静かに、そして謡うように口にした。

 その由来は誰にも分からない。

 

「ミアハ、タケ、君たちからも何か案をおくれよ」

「ふむ……では、【奇妙な兎兄(ストレンジ・ラビッツ)】はどうだ? いつか、【ヘスティア・ファミリア】が大きくなり、ベルの弟や妹に当たる団員が現れることを祈って」

「なら俺からは【開封兎(エルピス)】で。その力を多くの人の希望となることを期待させてもらう」

 

 ヘスティアの友神(ゆうじん)は友の唯一の眷属に期待を託す。

 女神と紡ぐ、眷属の物語(ファミリア・ミィス)に。

 

「……おーし。じゃあここまでで締めk……」

「ヒャアッ‼ 我慢できネエエエエエエ‼」

 

 波乱が予想された神会(デナトゥス)は予想に反して話し合いは綺麗に終わる。

 筈だったが、ここでシリアスな空気に我慢できなかった神が現れた。

 

「どいつもこいつも二つ名無難過ぎてつまんねぇ‼ 【幼女好兎(ロリコン・アナウサギ)】‼」

((((や、やりやがった……!))))

 

 用意していた兎吉(ぴょん吉)がその後の調査で中古だったことが分かったことで、フラストレーションが溜まりまくっていた。

 そこにシリアスな流れ、彼は弾けた。

 由来は勿論愛の告白だ。

 

「……」

「フ、フレイヤ様がアイツのことめっちゃ見てるうううぅぅぅ!?」

「終わったな」

「完全にフレイヤ様の言葉無視しやがったからな」

「ぶはははっ!? ええでええで!? 良くやったモブ神‼ アホやけど」

(やっぱり最後まで持たなかったか)

 

 一柱の勇気ある行動により再燃する神会(デナトゥス)

 これは暫くかかりそうだな、とヘスティアはげんなりと円卓に突っ伏すのだった。




 原作で兎吉(ぴょんきち)に拘り続けたあの神様の献身に黙祷!
 ……と言うワケでベルの二つ名のリクエストを締め切らせていただきます。
 ご協力ありがとうございました。

 そして、ここで神会(デナトゥス)開催!
 アンケート機能を使って皆様から頂いた案の中から、本作のベルの二つ名を決定させていただきます。気軽にご投票ください。

神会開催! ベルの二つ名!

  • 秘奥の少年《ワンダー・ルーキー》
  • 千の小道具《サウザンド・ガジェット》
  • 狂乱野兎《フレイジー・ヘイヤ》
  • 魅成年《ネバー・ボーイ》
  • 不思議玩具箱《ワンダーボックス》
  • 超耳兎《エスパル》
  • 奇妙な兎兄《ストレンジ・ラビッツ》
  • 開封兎《エルピス》
  • 幼女好兎《ロリコン・アナウサギ》
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