後頭部に走る痛みで再び現実に引き戻された。
何度繰り返したか、もう自分では判別できない強制覚醒。朦朧とした意識の断片が、続く攻撃の迎撃を辛うじて行う。
無我夢中で盾にした右腕が血飛沫を飛ばしながらヴィトーの拳打を防御する。
ヴィトーの持つ
もしも、強いイシで予め自分の意識を保つための細工をしていなければ、自分はあっけなく倒れ伏していただろうとベルは思う。
「諦めない。希望を信じる。……なるほど? 実に主人公的だ。しかし、嗚呼、嗚呼! それは無意味なのですよ!」
哄笑が止まない。
ぼやけた視界に映り込む昏い緋色の髪の男は身を捩って笑っている。
彼が作った箱庭も彼と一緒に笑っている。そんな妄想を抱いた。
「貴方は美しい! 『英雄』とは、正しく貴方の別名だ! そんな愚かな足掻きはきっとこの先多くの者を救うはずだったのでしょう。この物語はそうであれと綴られたのだから‼」
鳩尾に突き刺さる痛み。
頭を守るのに必死でその下はガラ空きだったのだろう。全くの無警戒で受けてしまった一撃に再び意識が飛びかけて、強いイシによってまた現実に引き戻される。
「だからこそ……貴方には汚す価値がある!」
足に力が入らない。
重心はブレにブレて紙風船になったよう。
それでも倒れ込むようにヴィトーにナイフを持った左手を叩きつけようとした。
「ああああああぁぁぁっっ‼」
「弱者の咆哮ですか? 知ってますとも。それも小説の重要な要素だ」
しかし、不安定な足元をヴィトーは簡単に引っ掛けて見せた。
踏ん張りなど効くはずもなく音を立ててベルは倒れ込む。
中の骨子を抜かれた人形のようにだらんと力の入らない腕を懸命に動かし、立ち上がろうとする。それをヴィトーは上から足蹴にした。
「所詮この世は作り物! 一人の作家が生み出した頭の中の妄想に過ぎない!」
「あ、が……っ!」
頭を踏みつけるヴィトーの足の感触。
勝利を完全に確信した動きだ。しかし、それを隙と思うことは出来ない。
しあわせトランプの罠が、絶好の機会すら奪う。
「しかし、それはどうでもいいことです」
「……?」
「この世界が大いなる創造主によってできたこと等、既に誰であっても知っている。その対象が神々から人間になっただけだ。今更動じなどしませんとも」
思考が鈍い。血を流し過ぎたようだ。
要するに、依然ピンチと言うワケだ。
「何故、私がこうも憤りを覚えるか。分かりますか? 【
相手はレベル4で自分はレベル2。尚且つ満身創痍。
こんな状態でもまだ戦えているのは強いイシのおかげか、それとも目の前の男が今もまき散らしている異常な執着によるものなのか。
聞き覚えのない名前で自分を呼ぶヴィトーに恐怖を感じながら、ベルは踏みつける足を振り払おうと弱弱しい声で魔法を放つ。
「はぁ、はっ……【ファイアボルト】!」
「くっ!?」
至近距離からの速攻魔法。
レベル差が開いていようとここまで隙だらけならば直撃させることは出来る。
一発逆転は期待できなくても、その布石としての効果は十分。
力を振り絞ってナイフを振るうベルは、しかし、予定調和のように組み敷かれた。
「う……っ!?」
「厄介な魔法だ。作中で散々対人に効果があると言われただけはある。しかし、無意味です。貴方をこれまで守って来た
「なにを、言って……?」
「貴方と言う主人公の物語を描くためにこの世界はあるという事ですよ。【
そう言ってヴィトーはベルの首を絞めつけながら耳元で囁いた。
「先日ミノタウロスとの戦いが話題になったばかり……と、いう事は今は鍛冶師と出会った頃合いでしょうか? それとももう中層で【タケミカヅチ・ファミリア】に
「……」
息を切らしながら、ベルはヴィトーがまき散らす情報に眩暈を感じる。
この人が何を言っているのかまるで分らない。
「分かりませんか? 貴方が、この世界が今後歩む物語ですよ。娼婦を救った後は
【
どうやら物語としてのこの世界を読んでいるらしきヴィトーにはこのスキルのことも当然バレているだろうが、
組み伏せられていてもほんの少し手を動かすくらいはできる。
自分に照準を向けさせるようなヘマはヴィトーはしなくても、地面に向かって魔法を撃つのは可能だ。
強化された炎雷が発射される直前、ヴィトーは話を打ち切って飛び退いた。
遅れて紅蓮の華が咲く。手を焦がされる熱を感じながら、衝撃で吹き飛んだベルは薄れゆく意識を何度も頭を叩く強いイシによって保ちながら、ヴィトーとの距離が開けたことを確認する。
(こんなに石に頭を叩かれて後遺症とかは大丈夫かな……)
負けないための手段とは言え、そこは気になった。
「……っ成程、自爆ならば自分が負けつつ私を倒せるという事ですか。土壇場では頭が回る様ですね。【
「……っ」
あの言い様。やはり相手は『必ず勝てる』ひみつ道具を使っているらしい。
あっさりとバラしたのは分かったところで攻略法などないという自信か。
「ああ、やはりあなたには可能性がこれでもかと秘められている……! 貴方と言う人間の価値がこの世界の価値なのですよ」
「そんな、こと……っ」
「そんなことありますとも! これは貴方の
この世界はベル・クラネルを主人公とした物語だ。
そうドラえもんやのび太はかつて言った。
(この人はそれが許せないから、だから僕にこんなに執着するのか……?)
さきほどから彼が発する言葉はこの世界が物語であると揶揄するもの。
彼の怒りもそこに起因するのか。そんな考えを目の前の人物自身が否定した。
「ああ、勘違いしないでいただきたい。先ほども言ったでしょう? この世界が作り物であること自体はどうでもいいと。私が怒っているのはこの世界に私と言う存在が生まれた理由ですっ!」
「あぐっ!?」
血飛沫が舞う。
一体自分の何処からそれが出たのか、ダメージを受けすぎて感覚が鈍感になったベルには判断できなかったが、それを見てヴィトーが愛おし気に頬を緩めていることははっきりと分かった。
「いい加減勘づいているのではないですか? 私と言う人間が人の血や苦しみに悦を見出すと」
それは何となく気が付いた。
瞬殺できるはずの自分を嬲る理由など、それ以外には考えられない。
「正確には、私にはそれしか美しいと感じられないのです。どうも感覚に異常がある様でして、視界に映る者は全て灰に見え、耳に入る全ての音は耳障りな
今まで感情を込めて発せられたヴィトーの言葉は、この時ばかりは淡々としていた。
明かされたのは地獄の様な男の異常、しかし、それだけならばまだ『マシ』だったとヴィトーは言う。
「私が唯一美しいと感じたのは他者の傷と血なのです。自分のものではだめでしたが……これを『欠陥』と言わず何と言いましょうか。私は神を、世界を恨みました。こんな世界の『瑕疵』でしかない私を生み出したそれらに、自分の生まれた意味を問い続けられました」
そんな時に彼は唐突に世界の真実を知らされた。
物語の外側から来たという異世界人たちによって。
「この世界は英雄譚。貴方と言う主人公のためのもの。それを知った時、私はどう思ったか分かりますか?」
「……憎みましたか?」
「いいえ、
英雄らしい主人公の成長物語。
ならば自分はその前に立ち塞がる悪役で、救世の英雄の糧になる存在なのだと。
世界に愚かにも抗い続ける『英雄』を信仰してきた(自称)ヴィトーにとって、それは福音ですらあったのかもしれない。
自分の『欠陥』には意味があった。
自分の様な世界の『瑕疵』はそのために生まれてきたのだと。
「しかし、結論から言えばそんなものは勘違いでしたよ。『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』、その物語の中に私の名は何処にもなかった」
その絶望は如何ほどのものだっただろう。
生涯悩み続けてきた『欠陥』、それに何の意味もないのだと突き付けられたのだから。
或いは作者の中だけに存在する設定がヴィトーなのかもしれない。
兎に角、ヴィトーの『欠陥』は、間違いなく世界に必要のないものだったのだ。
「それこそが私の怒り。私と言う世界の『瑕疵』は無意味な苦しみだったのです。異世界の方々からは【名無し】、などと言う仇名を付けられた時には本当に怒りで頭がどうにかなってしまった」
絶望に打ち震えるヴィトーはしかし辿り着いた。
自分が本当に為すべきことを。
「世界是正……結局やることは変わらない。しかし、そのための大切な要素を見つけられた。それが、貴方だ」
この世界の価値がベル・クラネルと言う主人公によって決まるのならば。
ベル・クラネルを残酷に、惨たらしく殺すことこそヴィトーの取るべき是正なのだと。
「そのために今日この日まで準備しました。英雄的な死など与えません。貴方はここで無残な最期を遂げ、下界は穢れた精霊などよりも悍ましき怪物によって蹂躙される! そのためだけに、私はあらゆる屈辱を飲み込んだのです!」
感極まって再び攻撃を始めるヴィトーを躱しながら、ベルは目の前の人物を理解した。
そして、出会ったときからずっと感じていた違和感の正体も。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「……どんな相手でも絶対に勝てるひみつ道具か。敵として戦うには最悪すぎる能力だな」
ドラえもんからカチカチカメラの説明を受けたモダーカが唸る。
使いようによってはオラリオから全ての第一級冒険者を消すこともできる。
恐ろしいひみつ道具だ。
「だけどカメラに写ってなければ効果はないし、足の速いベルに教えれば……」
「そうやって逃がさないためにあのジオラマの街に閉じ込めているんだ」
のび太の提案を出木杉は否定する。
悪趣味なジオラマはフェイク。本命はベルをカメラのレンズから逃がさない箱庭を作ることだったのだ。そのためだけにオラリオを再現する執念には脱帽するしかない。
「坊主はしあわせトランプの
憎々し気にヴィトーを睨みつけるハシャーナ。
そのまま衝動的に殴り掛かりそうになる己を必死に抑えた。
「まず、カチカチカメラは破壊しよう。これがある限りベルさんは絶対に勝てない」
「僕、デンジャにくうき砲貰ってるから、それでなんとかなるよね? ドラえもん?」
「うん、カチカチカメラ自体には戦うことは出来ないはずだから」
のび太は早速くうき砲を腕に取り付ける。
基本的に出来ない子なのび太だが、射撃の腕ならば自信があるのだ。
「……」
「出木杉君?」
意気揚々とするのび太だが、出木杉の表情は険しかった。
「ドラえもん、本当にこのままカチカチカメラを破壊できると思うかい?」
「カチカチカメラにくうき砲の威力を耐えきる硬さは無いと思うけど……」
「だからこそ、こんな貴重なひみつ道具を放置するかな?」
幹部の私室にあるから安心、そう思ってくれればいいが出木杉は楽観できなかった。
「なにより……」
出木杉はカチカチカメラに近づいた。
四次元空間の中ならば現実世界から感知される心配はない。
ヴィトーとベルが戦っているそばを通り過ぎ、出木杉は脚立に取り付けられたカメラを見てあることを確信する。
「見て、ドラえもん」
「これは……」
「脚立に埃が付いている。この脚立はだいぶ前からここに取り付けられていたみたいだ。だけど、
「つまり、これは最近取り付けられたものってことだね」
「それを取り付けた人はこの幹部の人かな? それとも……」
出木杉の言葉に周囲を強く警戒するモダーカとハシャーナ。
気配を感じ取ることは出来ないがひみつ道具を知っている以上、油断はできない。
「
「俺もひみつ道具を使った隠密は見破れません。それで一度痛い眼見てますし」
ベルが石ころ帽子を使った一件を思い出すモダーカ。
「……もし、敵が姿を隠すひみつ道具があっても大丈夫」
「何か作戦があるの?」
「うん、のび太君の負担が大きくなるかもしれないけど」
「……っ、何でも言って。ベルを助けたいんだ!」
出木杉は竦みながらも真っ直ぐと己を見るのび太の言葉に頷く。
「君のくうき砲、デンジャさんが改造してるんだろう? だったら……」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
変わらぬ光景。
変わらぬ結末。
ズタボロなベルがヴィトーに向かい、そして敗れる。
飽きてしまうような繰り返し。
だが、その中で細やかな、しかし確かな違いが生まれていた。
「……?」
気絶しない。
少年を強制的に覚醒させる大石が飛んでこない。
相変わらず息は絶え絶えで、少し押してしまえば簡単に倒れてしまうことが予想できるほどにその足下は頼りなかった。
しかし、その
歯を食い縛ってもたれかかるようにベルは挑み続けた。
(このしぶとさは一体、どこから……?)
その本性ゆえ、ヴィトーは数えきれない程の人間を壊してきた。
だからこそ、どの程度突けば限界が来るかは分かるのだ。
ベル・クラネルは当に限界を超えている。
脆いレベル2を壊し続ければ、ヴィトーの『欠陥』が満足する前に再起不能になるものだ。
途中まではいかに壊さないかにヴィトーの思考の大半を割くことになっていた位である。
(だが、壊れない。確実に傷は増え、その体はガタが出始めるはず……なのに、何故立ち続けられる!?)
カチカチカメラで勝利は確実。
しあわせトランプの
そもそも素の力の差が開きすぎている。
(動ずることなどないはず……これで終わりですっ!)
芽生え始めた悪寒を振り払うように蹴りを叩き込む。
少年の脇腹に深々と刺さった脚部は、度重なるダメージによって酸化したように脆くひび割れていた肋骨を粉砕した感触を感じ取った。
終幕を確信し、弧を描くヴィトーの唇は、ピクリと動く白い手を前にひきつった。
「……っ!」
「馬鹿な……これで動けるわけが……」
立ち上がる。
崩れかけた蝋の上に辛うじて灯る焔のように。
今にも倒れてしまいそうによろめきながら、ベルは立ち上がる。
(そうか! ひみつ道具! こんな不可思議な現象はそれしかあり得ない‼ どんな効果だ? カチカチカメラとは真逆の絶対に負けない効果なのだとすれば……)
ゾンビのように立ち上がり続けるベルの様子を、ひみつ道具の力に違いないと思ったヴィトーが考えを張り巡らす。
そんな男に対し、少年は問いを投げ掛けた。
睨み付けるように相手を凝視しながら。
「どこを、視ているんですか」
「……はい?」
「っっ! 貴方はっ! どこを視ているんだって、そう言ってるんだ!」
激しく叫ぶベルに、ヴィトーは珍しく困惑した様子だ。
質問の意図が解らない。何故、ベルがこうも怒っているのか。
その理由が欠片も思い至らなかった。
それがベルの思考を白熱させ、意識を保たせ続ける。
「最初に会った時からずっとそうだ。貴方は僕を通して違う人を……いいや、ありもしない幻を睨み付けていた!」
「何を的外れな。私はずっと貴方を……」
「僕は【
ヴィトーはいよいよベルを不可解なものを見る目で見た。
殴りすぎて頭がやられてしまったのだろうか、とすら考えた。
「貴方が読んだ小説の僕の二つ名がきっとそうなんでしょう。でも、それは僕じゃない」
「何を……貴方は【
「……そんなまともな二つ名ならどんなに良かったか」
掠れるように笑う。
そして、やはりヴィトーは自分を見ていなかったのだな、と再確認した。
「……フゥー」
正直この二つ名は言いたくない。
授けてくれた神々には申し訳ないが、完全な黒歴史なのだから。
だけど、ベルの考えが正しければ、これがヴィトーの隙を作り出す。
彼は断腸の思いでその忌々しい二つ名を絞り出した。
「ロ、【
「は………………?」
完全に虚を突かれ、間の抜けた声を零すヴィトー。
その様子が癇に障ったベルはやけくそのように叫んだ。
「だからっ、【
リリを助けた時の噂を放置していたツケがこんな形で降りかかるとは。
いっそ原作の自分の二つ名らしい【
「……」
ヴィトーは絶句していた。
無理もない。余りにも馬鹿らしい二つ名だ。悪乗りここに極まれりである。
しかし、どんなに馬鹿らしい理由であっても隙は隙。ベルが躊躇する理由はなかった。
「っ!」
「……!? クッ!?」
左腕を突き出し、ヴィトーに掴み掛るベル。
呆然としていたヴィトーもベルの闘志を受けて我に帰り、迎え撃つ。
(虚を突かれたところでカチカチカメラによる運命からは逃れられない! 無駄なこと……!?)
「うわあああああっ!?」
カチカチカメラによる因果の操作が行われ、再びベルに予定調和の敗北が課されようとした時、この場に似合わぬ子どもの声がヴィトーの私室に響いた。
ヴィトーの視界には、偽りのオラリオの向こう側に突如現れた巨人。のび太の姿があった。
(何時からこの部屋に……? しかし無駄です。潜ませた私の部下がすぐに対処する!)
カチカチカメラの弱点はこのひみつ道具事態に防衛能力がないことだ。
万が一ベルがそれに気付いてカメラを直接攻撃する可能性が残っていた以上、その弱点を放置するはずがない。
カチカチカメラの傍には、石ころ帽子で気配を隠した部下護衛として潜んでいる。
器の昇華も果たしている狂信者を、あの子供が持つくうき砲では倒せるはずがないのだ。
(そもそも私の部下が何処にいるのかも分からないはず。気にすることは……)
「ドカンッ‼」
のび太がくうき砲を放つ瞬間、姿なき狂信者はその息の根を止めるため刃を走らせる。
戦闘の心得もなく、超人的な索敵能力もないのび太にその刃から逃れるすべはなく、刃は空気砲の攻撃を弾き、続けてのび太の喉元を刈り取ろうと唸る。
しかし、それを遮ったのは二つの影。
「「うおおおおおおおっ‼」」
モダーカとハシャーナである。
姿の見えない敵の攻撃を二人掛かりで凌いだ二人の脳裏には、出木杉の作戦説明が蘇っていた。
『カチカチカメラの護衛がいないならのび太君がそのままくうき砲で破壊する。もしも姿を隠しているなら、必ずのび太君を始末しようとするはずだ』
『それ僕死んじゃうじゃん!?』
『そうはさせないためにお二人には野比君を守って欲しいんです』
『……しかしだな、今もまるで気配を感じられないんだぞ? 襲い掛かられても居場所が分からなければ対応できない。3人まとめて搔っ捌かれて終わりだ』
『ヒイイイイッッ!?』
『ハシャーナさん、子どもを怖がらせてどうするんですか』
『それに関しては僕にも考えがあります』
出木杉の考えた作戦は至極単純。
まず、のび太は壁際に出現し、背中をぴったりと壁につける。
これで背後からの奇襲は避けることが可能。
続いて、くうき砲を発射。
一撃で破壊できるなら良し。だが、護衛がいるのであれば、それは防がれるだろう。
(だが、防がれれば、防がれた位置から逆算して隠れている護衛の位置を計算できる)
そうすればのび太を襲おうとする護衛の攻撃を防ぐこともできる。
念のためにモダーカとハシャーナの二人掛かりで防御し、デンジャ特製のくうき砲で護衛の注意を奪う。
「っ!?」
何もない筈の前方から困惑した雰囲気が伝わる。
それもそのはずだ。のび太のくうき砲から早すぎる次弾が発射されたのだから。
くうき砲は22世紀ではメジャーなひみつ道具だ。異世界人からひみつ道具を仕入れている
そう、こんなにも早く次弾が撃てるはずがないと知られているからこそ、デンジャの改造というイレギュラーが効果を発揮し、奇襲は成り立った。
誰にも邪魔されない空気の砲撃は、無防備なカチカチカメラを粉砕した。
「なっ、馬鹿な!?」
(今だっ!)
ヴィトーが驚愕し、護衛が任務の失敗に硬直する中、出木杉は動く。
その手に【スーパー手ぶくろ】を纏った彼は、モダーカとハシャーナに攻撃が阻まれている人物がいるであろう空間に渾身の打撃を放つ。
カチカチカメラの破片が散らばる音と共に、気絶した男が虚空から現れる。
その頭から石の様な帽子が零れたのを確認した出木杉は、それを遠くに蹴飛ばしつつ、叫んだ。
「教会の崩壊を思い出してっ!」
それはベルに教えてもらった最初の失敗談。
彼に近しい人しか知らない事件を起こしたひみつ道具がここにあると言うメッセージだ。
「……ッ! あああああぁぁぁぁぁっっ‼」
その意図を正しく理解したベルは吠える。
カチカチカメラの破壊に気を取られるヴィトーの後頭部を掴み、右手のヘスティア・ナイフを勢いよく納刀する。
(お願いっ、ヴェルフ!)
勢いよく放たれた神の刃の勢いに任せて、弾かれるように逆刃に構えたことで柄がヴィトーの顔面に減り込んだ。
「【ファイアボルト】ッ‼」
「があああああっっ!?」
ヴィトーの後頭部を掴み、固定していた手から突如放たれた魔法に流石のレベル4も初めて絶叫した。
ベルは今出せる最高の
「くっ……舐めるなっ‼」
しかし、ヴィトーは倒れない。
常人ならば頭蓋を粉砕される連撃を受け、一瞬意識を遠くに飛ばしていても。
即座に立て直して、ベルの顎を蹴り上げた。
(……? 手応えが軽い? 予め蹴り飛ばされる方向に飛んで衝撃を和らげた……いや、違う! これは元からそう言う作戦!?)
ヴィトーはベルの右足に収斂する光の粒子を見て、ベルの意図に気付く。
ベルは敢えて隙を晒し、蹴り上げと言う選択肢を誘導したのだ。
それはヴィトーが連撃を耐えきると予想した上で、ヴィトーの次の行動を限定し、ベルに襲い掛かるダメージを軽減。尚且つ、ヴィトーをその場に留まらせるための罠。ベルが仕掛けた『駆け引き』だ。
ベルは右足を振り上げてヴィトーを睨む。
(しかし、この短時間の
小説を読み込んでいるヴィトーはベルのスキルの特性を本人以上に理解している。
その情報を基に耐えられる、と結論付けた。
これこそがレベル差の理不尽。圧倒的スペックの違いには何人たりとも抗えない。
(なのに、この予感は何だ!?)
絶対に勝てるという確信。
しかしヴィトーの胸にはそれ以上の感情が渦巻いていた。
負けてしまうかもしれない、と言う恐怖が。
それを振り払おうとヴィトーはベルを睨み、ベルもヴィトーを負けじと見返し、血反吐と共に声を発した。
「ドラ、えもんさ゛んっ‼」
「ビッグライト~」
その声と呼応するように、光がベルを包んだ。
ガリバートンネルによって体が小さくなっていたベルは、身体を大きくするひみつ道具によって元の大きさを取り戻していく。
小さな箱庭を空中から見下ろし、少年は必勝を期す。
そして、小さくなったままのヴィトーにその一撃は振り下ろされた。
鈴の音と共に。
5秒の
ビッグライトは目路輪様からのリクエストです。
コメントありがとうございます。
現在も活動報告でリクエストを募集していますので、気軽にコメントしてください。
ヘスティア「マモレナカッタ……」
はい。と言うワケで決まりましたよベルの二つ名(やけくそ)‼
応募していただいた9名の皆様と、投票して下さった347名の皆様。本当にありがとうございました(約1+98名を凝視しながら)。
チクショオオオオオオォォォォォォォッッ!?
明確に投票期間出さなかったから粘ってみたのに、日に日に票差が突き放されていったよ!? 皆さん意外とノリいいんですね!?
では結果発表オオオォォォッ‼(浜田風
栄えある(?)第一位は【幼女好兎】と書いて【ロリコン・アナウサギ】でした!
黒龍なにがし様、おめでとうございます!
見事一位を獲得した景品として、後日【
原作七巻の444ページを予習しながら待ってて下さいネ!
まあ、でもなんやかんや楽しかったです。
次の
神会開催! ベルの二つ名!
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秘奥の少年《ワンダー・ルーキー》
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千の小道具《サウザンド・ガジェット》
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狂乱野兎《フレイジー・ヘイヤ》
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魅成年《ネバー・ボーイ》
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不思議玩具箱《ワンダーボックス》
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超耳兎《エスパル》
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奇妙な兎兄《ストレンジ・ラビッツ》
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開封兎《エルピス》
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幼女好兎《ロリコン・アナウサギ》