「ななぁかぁいそぉ~?」
「ご、ごめんなさいっ!?」
サポーターであるリリを地上まで送り届けた後、ベルは戦利品の換金を行うためにギルド本部へ向かった。その際にアドバイザーであるエイナに顔を見せたのだが馬鹿正直に到達階層を増やしたことを報告し、鬼の形相になったエイナに相談室に叩き込まれたのである。
「ちょっと前に5階層で死にかけたことを忘れたの!?
「ひぃぃ……」
涙目になっているベルを見ると心が痛むが、ここでなぁなぁにして流してしまうとそれこそベルのためにならない。
冒険者になって半月程度の新米が5階層以上にソロで足を踏み入れるなど自殺行為だ。
5階層より先はまずモンスターの出現頻度が増す。
難易度の低い階層は退屈だろうが、まだ得物に馴染んでいないであろうベルは今は簡単な階層でダンジョンでの動きを体にしみこませる段階なのだ。
おまけにモンスターの質も段違い。
コボルトの群れと一匹のキラーアント。どちらが恐ろしいかと問えば冒険者は誰もが鋭い牙と固い防御力を持つキラーアントを選ぶ。
(そんな所でミスをサポートしてくれる仲間もなしに探索!?自殺願望でもあるの!?)
冒険者は冒険してはいけない。
矛盾しているようだがこれがエイナの持論だ。
ダンジョンと言う次から次へと状況が変化する魔境で自ら
無論、命を懸けるからこそリスクを負わなければならないこともあるだろう。
だがそれは慎重に状況を分析し、優先順位つけた上でのことだ。
今回のベルのようにその階層に関する勉強が不十分なうちに行うことではない。
「君には危機感が足りない!今日と言う今日はその心構えを矯正して、徹底的にダンジョンの恐怖をたたき込んであげる!!」
現在進行形でアドバイザーの恐怖をたたき込みながら分厚い本の山を取り出したエイナにベルは情けない悲鳴を上げる。
エイナの教えはベルの中で大きな武器だ。
しかしスパルタ的教育にハイヨロコンデーと快諾できるかは別。
最近は覚える量が増えてきて日をまたぐことも多いのだ。
怒り心頭の妖精の試練など絶対に耐えきれない。
慌ててベルは言い訳を始める。
「で、でもっ、僕っ、あれから結構成長して……っ、アビリティがいくつかEに上がったんですよ!?」
「アビリティ評価E~?嘘をつくならもっとましな……」
「ホントなんです!最近成長期らしくて伸びがすごいんです!」
「……本当に?」
ベルは嘘が苦手なヒューマンだ。
知り合って日は浅いが、そんなエイナでも少年の嘘をついている時とそうでない時の見分けは簡単につく位には分かりやすい。
その経験則から判断するに、恐らく今の少年は嘘を言ってない。
聞き間違いだろうかと聞き返してみても結果は変わらず。エイナは混乱してしまう。
ステイタスのアビリティ評価が上がりやすいのは最初だけ。
その後は成長するにつれ緩やかな上昇になっていく。
それがエイナの知る常識だ。
半月程度の経験ならば相当才能がなければ得意不得意関係なくHにすらいかない。
一つでもGに到達していたらもう天才だ。
Eなどそれこそありえない。
「ベル君。冒険者になる前は何をやっていたっけ?」
「は、はい?ただの農民ですけど……」
「うん。そうだったよねぇ……」
これが戦闘に関する職種なら多少は説得力もあったのだが、そうでないことはよく知っている。
これでベルが嘘を言ってないとなると考えられるのはベル自身が勘違いしているのではないか。
神ヘスティアの間違った情報を鵜呑みにしている可能性をエイナは考えた。
「ねぇ、ベル君。君のステイタスを私にも見せてくれないかな。」
「えっ!?」
「あまり良くないことだけどちゃんと確かめたいの。半月程度でHやGならともかくEは間違いでしたじゃすまされないから。」
エイナの言葉にベルは葛藤する。
当然の反応だ。冒険者にとってステイタスの中身は
レベルならともかく細かいアビリティやスキル、魔法は彼らの生命線なのだから。
「今から見るものは誰にも話さないよ。もしベル君の【ステイタス】が明るみになったら私は相応の対価を支払うよ。……奴隷はオラリオだと認められてないけど、その時はキミに絶対服従を誓う。約束する。」
「奴…っ!?……そ、そもそもエイナさん【
「うん。アビリティを読むくらいならできるよ。」
これでもエイナは学区に通った秀才だ。
その際に専攻が総合神学だったこともあり、下界の住民の中では珍しい神々の言葉を読み書きできる優秀な人材である。
「……分かりました。お願いします。」
「……言い出しっぺの私が言うのもなんだけど、いいの?」
「はい。元々エイナさんには僕のスキルについて相談しようと思っていましたから。」
ベルのスキルと言うとこの前にポロリと漏らしていたあれだろうか。
ヘスティアと相談した結果、スキルに関する情報が集まるギルドの職員であるエイナの意見を聞きたいとの事だった。
(ギルド側の私に伝えたらそのまま公表されてしまう可能性もあるのに……それだけ厄介なスキルってこと?)
下界の可能性であるスキルには時折持ち主のデメリットになるものもある。
ベルにもそうしたスキルが発現してしまったのだろうか。
ベルが部屋の隅で服を脱ぐ中、エイナはそう考えて身構えた。
呪いじみたスキルで破滅した人物と言うのは決して少なくない。
少年がそうならないようにしっかりと力にならなければと決意する。
すっかり
意外と鍛えられている上半身に長耳を赤くするが、そんな羞恥心はベルのステイタスの中身を見た途端に吹き飛んだ。
ベル・クラネル
Lv.1
力:E438 耐久:F316 器用:E443 敏捷:D557 魔力:I0
《魔法》【 】
《スキル》【四ー◇※(】
・ひ:つy具〇cy^f樹g。
・使用+p道ゥ、一’*u。
・¥日#fz内\はvbhる。
・g$使?i能>;みyhc。
【%〔破壊/‐】【未り〈⊛’】【♯}ック~ス@ー】
【憧¦¿途】
・早0⃣gる。
・:@が続∤rp効n{«。
・懸_の)4より♯₃ィ上。
(信じられない……)
こうなる可能性も頭の片隅にはあったが、いざ見せつけられると呆然としてしまう。
魔法がないゆえに魔力が0なのは当然だ。
しかしそれ以外が高すぎる。
特にベルの
先日の戦闘で死にかけたことを加味しても異常だ。
この速度で成長するならば都市の大半の冒険者は数か月でランクアップを果たせるだろう。
少年の憧れる冒険者がヒューマンと言う凡庸な種族でありながら、身の程をわきまえない速度で世界最速記録……1年でのランクアップを果たしていると言えばこの異常性が伝わるだろうか。
(……十中八九発現しているスキルが関係している。)
アビリティ評価とは違い、妙に読みづらいスキルの項目にその答えがあるとエイナは確信する。
高度な【
「……確かにこのステイタスだと7階層進出を許可しないわけにはいかないか……」
「ホントですか!?」
エイナの言葉に勢いよく振り向いたベルだったが、すぐに自分の格好に気づき恥ずかし気に目を背けた。衝撃のあまりベルを半裸のままにしていたエイナは慌てて謝罪し、服を着させる。
いそいそと着替えだすベルにエイナは再度心の中でごめんねと呟いた。
(よく考えたらこの光景ってかなり不味いんじゃ……)
突然担当の冒険者を密室に連れ込み服を脱がせるハーフエルフ。
一歩間違えれば事案である。
そう考えるとかなり恥ずかしくなり、ベルから目を背けてしまう。
「お、終わりました。」
「う、うん……」
お互いに頬を染めながらぎこちなく会話する。
「そ、そうだ!スキルについて相談が……」
この空気に耐えられなかったのかベルがスキルの話を切り出した。
エイナもフルフルと頭を振って切り替える。
「僕のスキル……【
「どんなスキルなの?」
「えっと、なんていえばいいのかな……ひみつ道具っていうアイテムを生み出せるんです。」
「んん?」
早速とんでもないことを言い出した。
無から物を出すスキル?
世界の色々な法則に喧嘩を売ってないだろうか。
「このスキルは絵本になっている僕たちの物語に入ってきたドラえもんさんっていう猫型ろぼっと?とのび太君っていう子に出会ったことが多分原因で」
「うんうん」
「こう、ピカーッと手が光るとドラえもんさんが22世紀から持ってきたって言うひみつ道具によく似たアイテムが作られて」
「うんうん」
「ひみつ道具は3つだけ使えて……毎日内容が変わるんです」
「わけがわからないよ」
頑張って最後まで聞いてみたけど情報量が多すぎる。
知らない単語だらけでついていけないのだ。
まずドラえもんさんとのび太君で誰だとか。
猫型ろぼっとって何とか。
22世紀って何とか。
この世界って物語だったのとか。
物語にドラえもんさんやのび太君はどうやって入ってきたのとか。
突っ込みどころが多すぎる。
(そもそもなんで二人(?)に会うだけでその世界のアイテムが使えるの?)
ベルが余りにも説明下手過ぎるのでステイタスの説明文を教えてもらう。
そうすることでまだ色々と疑問は残るが効果は理解できた。
しかし肝心のひみつ道具と言うものが良く分からない。
「えっと。今日のひみつ道具はこれでした。」
バッグパックから取り出したのは二種類の瓶と先端に丸いものが付いている棒だった。
「この3つがそうなの?」
「正確にはこの瓶はクイック&スローっていう一つのアイテムとして項目にありました。もう一つはちょっと危なそうな爆弾だったのでその場で消しました。」
「ば、爆弾……?」
「はい……両手で抱えるほど大きくて、これは消したほうがいいなって」
ひみつ道具の中にはかなり危ないものもあるらしい。
恐る恐るエイナは棒型のアイテムを手に取った。
「これはどう使うの?」
「【もどりライト】って言うらしいです。効果は丸い部分から出る光を当てると当てたものが分解されるんです。」
「ちょ……!?危ないよコレ!?」
「生き物には効果ないみたいなんです。ゴブリンにも効きませんでしたし。」
(本当に名前だけだと効果が分からないなぁ……)
確かにこれは大変だ。
ベルの話だと出せるひみつ道具の種類は毎日変化するのだし、いつ危険なひみつ道具が紛れ込むか分かったものではない。
「あれ?ゴブリンに効かなかったなら何で効果が分かるの?」
「……バックパックに当たっちゃって」
「うわぁ……」
皮の材料であろう牛や金具の金属が散乱して大変だったらしい。
中に入れていた魔石もばら撒かれて慌てて回収したんだとか。
「少し経ったら元のバックパックに戻ったんですけど。何だか脱力してしまって……次のひみつ道具を試すときに集中が切れていたんです。それで、油断した隙にクイックを飲んだゴブリンがすごい勢いで走り出して……」
「ちょっと?」
さっきまで受付を騒がせていたゴブリンの強化種騒動の元凶がここにいた。
あれのせいでエイナたちは騒ぎ立てる冒険者たちを宥めたり、調査のために有力なファミリアに依頼を出したりと大変だったのだが。
「ベル君……仕方ないけどもうあんな騒ぎ起こさないでね?」
「……えぇっと」
「ベ・ル・君?嫌な予感がするんだけど君、初犯だよね?」
ベルの妙な様子に突っ込むと出るわ出るわ。
巨大化したベッドによるホーム倒壊。
性格が変わって神ヘスティアをダンジョンでこき使ったり。
しまいには……
「ま、魔石の大量発生……」
オラリオを騒がせたあの事件すらこの少年の仕業だったのだ。
(じゃあ、あの事件と
そして気が付いてしまった真実に顔を青くする。
つまりベルがあの騒動を起こさなかったら、ギルドも【ガネーシャ・ファミリア】も
ならあのモンスターたちは碌に警戒態勢が整ってないオラリオで暴れまわれていたのだ。
(ギルドも【ガネーシャ・ファミリア】も、あのフィン・ディムナを有する【ロキ・ファミリア】すら気が付かずにあれほどの戦力を?)
そんなのまるで暗黒期の
ベルがうっかり魔石を作っていなければ今頃どうなっていた?
(ああ、もう!それを今は考えている時じゃない。)
良くない考えを強引に打ち消す。
それはエイナの考えることではない。
オラリオのトップは誰もが優秀だ。
今回の勝利に浮かれて足元をすくわれることはないだろう。
そう自分に言い聞かせ、握っているひみつ道具に目を向けた。
「……えっと、これはどう使うの?」
「え?あ、はい。それはここのスイッチを……」
魔石の大量発生についてもっと追及されると思っていたベルは少し面喰ったが、自分の失敗談などあまり触れられたくないのでこれ幸いと説明を始める。
使い方はどうやら簡単なようだ。
試しに本に光を当ててみる。
「うわっ」
すると本がいきなり木に変化した。
幸いそこまで大きくないので個室の中でベルとエイナが生き埋めになることはなかったがかなり窮屈だ。
「ご、ごめんねベル君!」
「い、いえ!」
ベルがアクシデントを起こしたのを注意しておいて自分もこれとは情けない。
「確かに扱いが難しいスキルだね……上手く使えれば強力だろうけど……」
正直、劇的な解決策は思いつかない。
月並みな考えだが、数をこなして慣れるしかないと思う。
(データをまとめることとかなら力になれるから……でも毎日ひみつ道具を聞くのはちょっと現実的じゃないし)
エイナとて一人の人間。
いつもギルドにいるわけではない。
休暇や出張などもある以上、アドバイザーとは言えスキルの状況を毎日チェックするのは大変だ。やっても不自然過ぎて注目されてしまう。
報告書を書いてもらって後でまとめて読むことも考えたが、デスクにでも置いたままにして万が一にでもこれが他者の目に留まったら不味い。
ベルの話では失敗談が多いが、どれも強力すぎる効果を持っている。
(できるだけ情報は口頭で……でもアドバイザーであってもあまり頻繁に会うのは怪しまれる。)
少し強引なやり方だが方針は決まった。
「ベル君。明日、予定空いている?」
「はい……何でですか?」
「アドバイザーはあくまでも困った時のサポートが役割だからね。毎日会ってひみつ道具を聞いていたら流石に怪しまれちゃうと思うんだ。」
「確かにそうですね。」
「だから、私とベル君が普段からちょくちょく会う関係だってことにしちゃえば怪しまれないんじゃないかな?」
「えぇ!?」
ベルの仰天は当然の反応だろう。
冒険者とアドバイザーが私的に付き合うのはあまり良いことではない。
優等生然としたエイナからの提案にしてはかなり意外な提案だ。
「大丈夫。君がヴァレンシュタイン氏のことが好きなのはわかっているから。あくまでも友人関係だよ。キミの恋路を邪魔する気はないから。」
「ファ!?ええっと……」
「ふふっ、今更照れなくてもいいんじゃない?」
顔を真っ赤にする少年に思わず笑ってしまう。
恋人関係だとそう言った経験が皆無なベルとエイナには荷が重いが友人関係なら問題ない。
今でも気安い関係を築けているし、自然体のままその関係でいられるはずだ。
……外野に二人ほど騒ぎそうな冒険者がいる気がしなくもないがあえて無視する。
「それに7階層に進出するなら君の装備をそろそろ買い替えたほうがいいと思う。私なら色々アドバイスあげられるけど、どうかな?」
「……すいません。よろしくお願いします。」
そうと決まれば明日の予定だと打ち合わせるエイナとベル。
北側のメインストリートに面する広場の銅像前に朝十時で集合することを決めた。
「さあ、明日の予定も決まったから後は思う存分勉強」
「ヒェッ」
「……と思ったけど、さっき本を木に変えちゃったから勉強できないし、今日は上がっていいよ。」
「あ、ありがとうございます……」
あからさまにほっとするベル。
現在、エイナの脳内では急成長に合わせてスパルタ度が5割ほど上がったスケジュールが組まれているのだが、知らないとは幸せである。
そのままベルをエントランスまで見送るとエイナは自身の
(あっひみつ道具返し忘れてた。)
普段はしないミスに思わず苦笑する。
自分で考えていた以上に動揺していたらしい。
だからあんな約束をしてしまったのだろうか。
すると妙にニヤニヤした同僚……ミィシャが休憩時間中に買って来たであろうチョコレートを持って近づいてきた。
「やるじゃんエイナ~」
もぐもぐとチョコレートを頬張りながら絡みつくミィシャ。
この状態のミィシャは面倒くさい。
何でもかんでも恋愛に関連させるのだ。
「エイナの好みはああいう子なんだ~。一時期はどうなるかと思ったけど5階層まで行っているらしいし、超有望なんじゃない?」
「そんなじゃないよ。ただ防具とかを初めて買うからアドバイスするだけ」
そう、本当にエイナはそんなつもりはない。
ベルとの関係は
そこに恋愛感情が存在する余地はない、はずだ。
あまり考えたことはないが自分の好みは冒険者とは真逆の性質の人だろう。
世話焼きな性質だし、ぐいぐい引っ張るような精悍な人よりはちょっと頼りないくらいがいい。
困った時はまず一人で頑張って、でもギリギリになっても出来なくて、最後の最後にトボトボと自分の下にやってくるような、兎みたいな人物。
二人で協力し合いながら一つ一つ進んでいく関係が理想だ。
(そうだよ。あくまでも私の好みはベル君みたいな……)
そこまで考えてエイナは顔を赤らめた。
勝手に自爆したハーフエルフの表情をミィシャは見逃さなかった。
「わー赤くなった~。可愛い~」
ケラケラと笑う同僚を拗ねるように睨みつけるエイナ。
ちょっとはやり返しても許されるのではないだろうか。
(よし……ちょっと悪戯しよう)
顔の火照りをごまかすようにエイナは悪巧みし、眼鏡を光らせた。
一頻りからかって満足したミィシャはそのまま自分のデスクに座り、残していた事務作業を再開しだす。持っていたチョコレートを脇に置いた瞬間、エイナは密かにもどりライトを照射する。
(えい)
光はチョコレートを照らし、その原材料に変換してしまう。
そして現れたカカオと砂糖がミィシャの机に盛大に散らばった。
「えぇ~!?なんで~!?」
「フロット!今度は何をやらかした!?」
「わ、私じゃないですよ~」
怪現象にちょっとした騒ぎになり、犯人探しが始まる。
一時の気の迷いで大ごとになってしまったことにエイナは少し罪悪感を覚えて自白しようとしたが、ここからさらに事態は混沌となった。
「お、おい!木の実と砂糖が合体してチョコレートになったぞ!」
いよいよ説明が付かない怪現象に阿鼻叫喚となるギルド職員たち。
タネを知っているエイナも説明するとなるとベルのスキルの情報を開示しなければならないので沈黙するしかない。
「きっと
噂好きのミィシャはギルドに長く伝わるうわさ話と関連付けてとんでもない仮説を言い出した。
いつもなら鼻で笑われる与太話も今は皆冷静さを失っているのか、「まさか……」「いや、本当に?」とぽつりぽつりと信じるものが出る始末。
集団パニックってこうやって起きるんだーと軽く現実逃避するエイナを置いて混乱は加速していった。
結局その日は皆怖がって仕事にならず、『ギルドの怪奇チョコレート』はオラリオの新たな都市伝説として市民に広まった。
そして唯一答えが分かってしまったベルの前でエイナは謝り倒したという。
????「……何百年と生きていると退屈なのは分かるが程々にな」
????「違うっ!」
ひみつ道具のご利用は計画的に。
作者が思うにエイナさんは普段真面目な分、仲のいい人には悪戯したりからかったりする茶目っ気のあるお姉さん。
今回はそれが少し悪く作用してしまいました。