今日はギルドの資料室で勉強をしていた。
内容は現在の到達階層である3階層の復習と少し上の階層から現れる毒をもつモンスターの確認。
このあとに出題されるテストを何とかクリアしなければ、また帰る時には外は真っ暗だろう。
死に物狂いで参考書を読んでいるとエイナさんが山ほどの羊皮紙を持ってきた。
「ヒェッ」
思わず変な声が出てしまう。
テスト多すぎじゃないだろうか。
しかも単語を埋めるタイプじゃなくて文章を書く本格的なやつだ。
山ほどある紙の殆どは参考資料らしいが制限時間ないに纏められるのだろうか、僕。
お伽噺以外の活字なんて読んでこなかった僕には、あのびっしりと詰められた
うー、うー、と唸りながら何とかペンを動かす僕を時折資料室に訪れる職員たちは「またチュールに捕まった冒険者か」と苦笑した。
やがて精魂尽きながらもなんとか答え終えたテストを採点しながら、エイナはベルに尋ねた。
「ねぇ、ベル君。サポーターは雇えそうにないかな?」
「サポーターですか?ちょっと難しいです……」
サポーターは魔石やタンジョンを冒険者の代わりに回収してくれる非戦闘員だ。
ソロでやっているとそういった作業に時間をとられて満足な収穫を得にくいから最低でも一人欲しいのが現実。
しかしサポーターを雇うためには無視できない問題がある。
「サポーターとの契約の相場っておいくらですか?」
「うーん。契約内容にもよるけど前金1000ヴァリスは必要かな。」
「前金はってことは仕事の後でまたお金がいるんですよね。やっぱり無理です……」
前金の時点で今の僕の収入の大半が吹っ飛ぶ。
収入の中から自分の装備やアイテムを補充する余裕すらなくなるのは論外だ。
それならソロの方が稼げる。
「そっか。今は仕方ないけど、いずれさらに下層を目指すならサポーターの力は必要だよ。覚えておいて。」
「そうですよね……神様と相談してみます。」
一度話を中断し、テストに集中する。
確かにこの先もソロを貫くのはキツイ。
どこかでパーティーに入れてもらうなりサポーターを雇うなりする必要があるだろう。
それなりに顔が広い神様なら、紹介してくれるかもしれない。
帰ったら聞いてみようと頭のメモに刻んだ。
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「サポーターかぁ……確かにヘファイストスのとこの冒険者もサポーターに色んなドロップアイテムを持たせていたな~」
悲しくなるくらい綺麗に輝く星空を見ながら帰った僕は、夕飯後に寛ぐ神様にサポーターの件を切り出した。
予想通り神様の反応は渋い。
「ベル君の安全を考えるなら是非とも雇ってほしいけど、ボクたちじゃ難しいよ。」
「ですよね……」
申し訳なさそうに僕を見る神様にこっちの胸が痛くなる。
無理をいっているのはこっちなんだから仕方ない。
やっぱり当分はソロでやっていくべきだろう。
少なくとも前金文は確実に稼げるようになるまで。
そう自分に言い聞かせる僕をじっと見つめていた神様は、一つ頷くと満面の笑みを向けてきた。
「よし、ボクが一肌脱ごうじゃないか。」
「神様?」
「丁度休みだし、明日はボクがサポーターとして君の探索に着いていくよ!」
「な、何をいってるんですか!?ダンジョンは危険な場所なんですよ!それに、神様たちはダンジョンに入っちゃいけないんじゃ……」
勢いよく立ち上がり声を荒げる僕を見ても神様は得意気な顔を崩さない。
「大丈夫大丈夫。一階層位ならバレないし、危険もないだろう?」
そうと決まれば明日に向けて早寝しよう!といって歯磨きを始める神様。
なんだかピクニック気分の神様に頭が痛くなってきた。
結局、何故か乗り気な神様を止めることはできずに、翌日に神様のサポーター体験が決定してしまった。
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「ほほぅ、ここがダンジョンの中か……」
階段を下りてダンジョン一階層に到着した【ヘスティア・ファミリア】一行。
ヘルメットを被り、いかにも探検家!っといった様子のヘスティア。
なんでこんな衣装を極貧
「せっかくダンジョンに行くならそれらしい格好をしたい」というヘスティアの要望により、動きやすい服を作ったのだ。
最も名前のおかげで効果はわかっても使い方がわからず、最初は着る服を決めずにひみつ道具の効果が発動してしまい、大変なことになった。
具体的なことは思い返すとベルは探索どころではなくなるので省かせてもらう。
敢えて一つだけ言うなら祖父の「覗きは男のロマン」と言うセリフが頭のなかでグワングワンとリフレインしたと言うことだ。
そんな訳でダンジョンに行く前から疲れはてていたベルは、結局ピクニック気分のまま来てしまったヘスティアに気を配る。
(まだ出会って一ヶ月も経ってなくても分かる。こんな時の神様は必ず何かをやらかす。いざとなったら僕が神様を守るんだ。)
可愛らしいリュックを背負い、ほへ~と警戒心ゼロで通路を進むヘスティアをハラハラしながら見守る。
「神様、ダンジョンでは警戒を……」
「あ、ゴブリンはっけーん。イエーイ。」
「いってるそばからなんて無警戒な!?危ないから離れてください。」
「おいおいベル君。ゴブリンだぜ?最弱のモンスターなんてーーぐはあああああああああ!!!!」
「神様あああああああ!?」
嘗め腐った態度に腹をたてたのか、ゴブリンが放った大振りのビンタをまともに食らうヘスティア。
ゴブリンを大慌てで倒したベルは地面に転がるヘスティアに駆け寄った。
「な、なんて凶悪なんだゴブリン……!ベル君はこんな危険地帯にいつも潜っていたのか……?」
何やらワナワナしながら言っている神様の姿に脱力する。
生きた心地がしなかった。
その後も神様は凄まじい無警戒ぶりでアクシデントを呼び寄せる。
通路の曲がり角を無警戒で突き進みゴブリンと鉢合わせたり。
僕がモンスターと戦っている間に魔石を見つけたとかで勝手に動き、モンスターの群れを引き寄せたり。
その際に魔石を入れた袋を落としてきた道を逆戻りしたり。
なんていうかここまで無警戒になれるのはある意味才能だ。
神様ののんびりとした気性とダンジョンが致命的に噛み合わない。
まだ潜って一時間も経たないのにもうフラフラになっている神様を見かねて、ベルは
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ダンジョンの通路の先にいくつか存在する広い空間である
そこに荷物を置き、僕たちは休憩を取る。
「ごめんねベル君。足を引っ張っちゃって」
「仕方ないですよ。慣れない場所では誰だって苦労します。」
「荷物持ち何て呼ばれるサポーターだから簡単なものだと思っていたけど、仕事量凄い多いんだね。前金1000ヴァリスも納得だ。」
今回のことで分かったけどサポーターはとにかくやることが多い。
神様だとその効果を実感しにくいけど、もし熟練したサポーターがいてくれたら探索は楽になると確信できる。
そんなことを考えている間に神様は呼吸を整えられたらしい。
余裕ができるとまたダンジョンへの興味が復活したらしく、キョロキョロとあたりを見渡した。
「しかし不思議なとこだねダンジョンは。まるで人口の迷宮みたいに道が整っているじゃないか。」
「一階層は特にその性質が強いみたいですね。上級冒険者の人たちもしたの階層に行くほどに巨大な存在の意思を感じるようになるみたいです。……時々怖くなることがあります。ダンジョンってなんだろうって。」
オラリオに来てから毎日のように潜っているダンジョンだけど、その実態は謎に包まれている。
偉い学者の人たちがあれこれ説を考えているけどはっきりとした答えはない。
そして、全てを知っている神様たちはそんな僕たちの疑問にこう答えてきた。
「ダンジョンはダンジョンだよ」
神々が降臨されてから千年近く繰り返されてきたやり取り。
答えは自分たちで探せということなのだろうか。
神様はそれ以上の問答は望まず、持ってきたリュックの中をゴソゴソとあさり、いつの間にか入れていたジャガ丸くんを取り出した。
「もうすぐお昼だし、腹ごしらえしようぜ。昨日おばちゃんから貰った賄いが残っていたんだ。」
差出されたジャガ丸くんを受け取り、少しかじった。
屋台で出された時のようなホクホクとした温かさはないけれど、しみ込んだソースの濃厚な味わいが口の中に充満する。
こうやって休憩時間に食べる弁当は格別だ。
「これを食べたらまた出発するかい?」
「いえ、今日は魔石の収集以外にもやりたいことがあるんです。」
「やりたいこと?」
神様の問いに持ってきていたメモを差し出す。
そこにはいままで使ってきていたひみつ道具の名前と能力がイラスト付きで記入されていた。
「ボクのスキル【
ベルの言葉にヘスティアはなるほど、と頷く。
ぶっつけ本番で使って思い通りの効果が出なかったとなったら悲惨だ。
ビッグライト事件のように取り返しのつかない事故につながることもあるのだから、ひみつ道具の確認は急務だろう。
しかしここでヘスティアの神としての勘が警鐘を鳴らす。
「ベル君。その作業は必要だと思うけど、かなり危険かもしれない。ひみつ道具の中にはボクたちでは手に負えないものもある……と思う。勘だけどね。」
神の勘は理屈こそないがかなりの確率で真実をついていることが多い。
ヘスティアは神託を司っているわけではないが、勘の精度はかなりのものと自負している。
その彼女がひみつ道具を無暗に試す危険性を説いた。
「そう、ですね。前に使ったくうき砲も充分危険なものでしたし、それ以上がないとも限りません。だから、一般人のいないダンジョンで試そうと思ったんですが……」
難しい話だ。
ベルも間違ったことは言っていない。
自分の手札を理解しないままでいていいはずがない。
しかしヘスティアの言う通り、そのための実験でリスクを負うのも避けたい。
「まあ名前だけでも効果が分かりそうなものもあるし、ある程度データが集まれば効果も推測しやすくなるさ!気にしすぎても仕方ない。」
ヘスティアはそう切り替えるとリュックの中にしまったひみつ道具を書いたメモを取り出す。
今日のひみつ道具は【きせかえカメラ】【カドバール】【くうきクレヨン】。
きせかえカメラは先ほど使い、効果も分かっているから他の二つの検証をしよう。
「どれからにする?」
「まずは二つ出してから決めましょう。」
周りを確認する。
冒険者のスキルは秘匿事項だ。
できるだけその存在は知られないほうがいい。
……そうでなくともあの副作用を他の人に見せたくはない。
まだそこまで吹っ切れていないんだ。
「それじゃぁ……コホン、カドバール~」
手の中に四角いガラス瓶が現れる。
中には緑色の液体だ。
おそらくは薬のような液体であろうそのひみつ道具。
ラベルには効能や使用法が書いてあるようだが、異世界の文字なので解読はできない。
(こういう異世界の言葉の解析もやるべきなのかな……)
こんな風に使い方が書いてありそうなものもあるのなら異世界の文字も使えるようになった方がいいのかもしれない。
でも翻訳の仕方なんて分からない。
一応、ラベルに書いてある文字を後で写しておこう。
「カドバールか。これは名前の通りものを角張らせる道具かな?」
「もしそうなら即席の武器を作るにはいいかもしれませんね。」
本当にそういう効果なのかは分からないが、もし想像通りに使えるなら応用次第では強力なひみつ道具かもしれない。
カドバールを神様に預けて再び【
「空気クレヨン~」
現れたのは一見普通のクレヨン一式。
どんな能力かは分からないが、あまり危険そうな名前ではないから大丈夫だろう。
「謎の液体とクレヨンか。どっちからにする?」
「危険はなさそうなクレヨンからにしましょうか。」
とは言ってみたものの、本当にただのクレヨンにしか見えない。
何が空気なのだろうか。
ひょっとして空気に描けるとか?
試しに赤いクレヨンで空中に線を引くと、クレヨンの先から赤い線が引かれる。
「おお、面白そう!ボクにも使わせておくれよ!」
興奮した様子で空中の線を見たヘスティアは空気クレヨンをベルにせがむ。
いくつかクレヨンを渡すとヘスティアは空中に絵を描き始めた。
絵と言っても棒人間だが。
3体ほど色違いの棒人間を掻いた時、変化が起きた。
初めに描いた黒の棒人間が動き出したのだ。
続いてピンク、黄色の棒人間も動き出す。
「す、スゲー‼空気クレヨンで描いた絵は動き出すのか!」
喜んで棒人間以外の絵を描き始める。
鳥、魚、花と思い思いに絵を描き始めるヘスティア。
これ他の冒険者が見つけたら大変だろうな、と苦笑しながらベルはもう一つのひみつ道具を見る。
「次はカドバール。……とりあえず何かにかけてみようかな?」
何かあっても大丈夫なように無害そうで使わないもの……ジャガ丸くんの紙袋で試してみよう。
まずは数滴、油が付いた白い包み紙に緑の液体を垂らしてみた。
しかし何の変化もない。
量が足りないのかと少し多めに試しても結果は変わらず。
「物に使うものじゃないのかな?」
となると他にはどんな使い方が考えられるだろうか。
長時間液体につける?
もしくは他の道具と併用とか?
(いや、それ以外にも人間に使うものとか?)
人間が角ばったところで何の意味があるのか分からないが、そういう使い方なのかもしれない。
でも液体をかけるやり方の可能性は低い気がする。
もしかしたらアンキパンは食べられたし、飲み薬として使うのかも。
(ちょっと怖いけど、
幸いにも神様もいるし、致命的な毒じゃなければ大丈夫……だろうか。
ちょっと怖くなってきた。
お爺ちゃんは昔の人たちは味で毒の有無を確認してたって言っていたけど、何の訓練もしていないボクにできるものなのだろうか。
しばらく蓋の空いた瓶を眺めるベル。
好奇心と不安に揺れていたが、ここでエイナの「冒険者は冒険しちゃいけない」と言う言葉が思い出された。
(やめておこう。ここは冒険すべき場面じゃない。)
好奇心で身を滅ぼした冒険者は多い。
必要のないリスクは避けるのが賢明な判断と言うものなのだろう。
そう結論づけたベルはカドバールをしまおうとするが、その瞬間ヘスティアの書いた魚が空中を泳いできた。
完全に油断していたベルは、目の前に飛び込んできた真っ平らな魚に動揺してバランスを崩してしまう。
その拍子にカドバールは宙に浮かび、中身の液体が零れた。
バシャ、と正面から緑の液体を被ってしまったベルに、ヘスティアは仰天して慌てて
「だ、大丈夫かいベル君!?」
「……はい」
「本当かい?今カドバールが口に入った……よう…な…?」
手で顔の液体を拭うベル。
そんな彼にヘスティアは違和感を抱く。
何だか妙に目が据わっているような気がする。
(これはあれだ。仕事中に殺気立つヘファイストスやバイトリーダーたちと同じ目だ。)
ベルらしかなぬ表情に戸惑うヘスティア。
そんな女神をよそにベルは鋭い視線のまま口を開く。
「もう予定より長い時間休憩してしまいましたね。遅れを取り戻しますよ。」
「あ、うん……」
「さぁ‼早くいきましょう。時間は有限なんです。」
「は、はい……」
どう考えても普通じゃないベルに彼が握る空の瓶をちらりと見る。
ひょっとしなくともこれの影響なのだろうが今のベルは怖くて口をはさめない。
ヘスティアはあわあわと探索の支度を始める。
そこからのベルは凄まじかった。
どこかの軍人みたいにきびきび動き、まったく無駄のない作業で次々とモンスターを屠っていく。
「倒したモンスターは通路の隅に避けてください。戦闘の邪魔です。」
「魔石袋はしっかり口を締めてください。」
「僕がモンスターと戦っている間もボーッとしてないで、周囲の敵の確認と投石などによる援護をしてください。」
「というかなんでその紐ダンジョンでもつけているんですか。外してください。」
「言われたことや気が付いたことはメモしてください。忘れます。」
ヘスティアに対する態度も軍人みたいに厳しくなったが。
先ほどまでののんびりした空気が吹き飛び、もはやダンジョンを楽しむ余裕もないヘスティア。
「な、なあベル君?もうちょっと緩くやってもいいんじゃないかな?」
「何をいってるんですか。時間を正確に予定通り行動するのが労働というものです。」
「いやいや、このままだと体が持たないよ……」
「大丈夫です、しばらくしたら頭が温かくなって気になりません。現に僕はさっきから……」
「それダメなやつだから!まずは君が休めよ!!」
ヒィヒィ言いながらもなんとかベルのハイペースな狩りについていく。
やがてリュックがどっさりとなった時、ようやくベルは地上に戻るという決断をした。
(し、死ぬかと思った……)
重くなったリュクにふらつきながらもヘスティアは何とか足を進める。
ベルの性格が急変したあの薬。
カドバールってもしかして人の性格を
お願いだから時間制限があってくれ、このままだと本気で持たないかもしれない。
「あれ?」
その時ヘスティアは黄緑色の
随分変わったモンスターだな~と呑気に見ていたヘスティアだったが、ベルはそのモンスターに目の色を変える。
「神様。あのモンスターを仕留めます。」
「え?あれってそんなにいいモンスターなのかい?」
「ジャック・バードと言って最低100万ヴァリスのドロップアイテムを持つ
そう言うや否やベルは走りだす。
一方、完全に終了ムードだったヘスティアはまだこの流れについていけていなかった。
「塞ぐって……空気クレヨンで?」
ヘスティアの持っているアイテムで広い通路を塞げそうなものなどそれしかない。
しかし、先ほどまでのハイペースな労働に体の節々が悲鳴を上げているヘスティアに通路一杯の絵を描く元気など残されていなかった。
(そうだ!さっきいっぱい書いた動物の絵たちをここに配置すればいいんだ!)
先ほどの休憩地点はすぐそこだ。
急いでヘスティアは記憶している地点に走り、自由に動き回る絵の動物たちを集めた。
心なしか数が減っている気がするが、気にする余裕はない。
「さあ皆‼ここに一列に並んでくれ‼」
ベルが現れる前に大慌てで動物たちの壁を作る。
反対の通路からベルが現れた。
ベルは通路を埋め尽くすヘスティアの絵に一瞬驚いたようだが、すぐに視線を鋭くしてジャック・バードを確認した。
その殺気に驚き逃げ出すジャック・バード。
1階層とは思えない足の速さだが、その先にはヘスティアの作った動物たちが待ち受けていて逃げ場はない。
そう、ないはず
「やったか!?」
ヘスティアが喝采を上げた瞬間、絵の動物たちが一斉に姿を消した。
え、とヘスティアは間抜けな声を出すがジャック・バードはその隙に通路の奥に逃げ込んでしまう。
(そ、そっかー。空気クレヨンは時間制限があったのかー……)
「…………………………………」
怖くてベルの方を振り向けない。
角張った性格となったベルはヘスティアの怠慢に無言の怒気を発する。
しばらくダンジョンでは痛いくらいの沈黙が支配した。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
この後、時間経過とともにベルが元の性格に戻った際にはヘスティアは泣いて喜んだ。
ベルもその時のことはしっかりと覚えていてかなり気まずそうだったが。
この日の収入は1階層と思えないほどに多かったが、今回のことがトラウマになったのかヘスティアがサポーターとしてダンジョンに潜ることは二度となかった。
そしてこの事件に懲りたベルは薬系のひみつ道具は自分ではなくゴブリンを使って実験するようになるが、クイックと言う名の錠剤を食べさせた高速のゴブリンで冒険者たちが大騒ぎになるのは別の話。
きせかえカメラで作ったヘスティアの衣装のイメージはダンメモの探検日和。
人物やひみつ道具ばかり描写すると戦闘シーンが書けないのは悩みものですね。