ベルがひみつ道具を使うのは多分間違ってる   作:逢奇流

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水面下で動き出した勢力たち

 【猛者(おうじゃ)】の奇妙な行動。

 数多流れるダンジョンの噂の中で、中層に留まるオッタルは怪訝に思われていても、実害が無い以上、冒険者たちの記憶から漂白されていった。

 

「オッタルの下準備が終わったらしい。そろそろベル・クラネルに接触するはずだ」

 

 【ロキ・ファミリア】以外には、と但し書きが付くが。

 【フレイヤ・ファミリア】によるベル・クラネルへの監視に気が付いたフィンは、女神フレイヤの次なる標的(ターゲット)が件の少年になったと理解し、オッタルの行動の理由にも気が付いていた。

 

 恐らく目的は試練。

 戦士を心から愛する女神フレイヤにとって、冒険者が偉業に挑む瞬間は至上の喜びだろう。

 女神フレイヤの命令か、独断かは分からないが、オッタルはフレイヤの敬虔な眷属だ。

 大方、ベル・クラネルに相応しい試練としてモンスターを宛てがうという腹積もりに違いない。

 真面目な性根をよく理解しているフィンは、傍から見れば割に合ってないオッタルの動きを正確に看破する。

 

「僕たちはオッタルの行動を阻害し、ベル・クラネルを保護する」

「……オッタルの動きが分かっているのならば、ベル・クラネルに予め忠告するか、【ガネーシャ・ファミリア】に伝えればいいのではないか?」

「そっちの方がベル・クラネルを守るには確実だけど……現行犯でないとオッタルを追及できないからね」

 

 フィンの言葉にリヴェリアは眉をひそめた。

 何故、オッタルを追求しなければならないのか。

 フィンが単純な正義感で物事を決める人間でないことは、長い付き合いのリヴェリアには理解できている。

 つまり、これは悪巧みだ。

 少年の安全よりも、こちらの利を優先する判断。それは高潔なハイエルフであるリヴェリアにとってあまり気分のいい話ではない。

 

「弱小ファミリアにモンスターを嗾けるなんてスキャンダル、【フレイヤ・ファミリア】の弱みになるからね」

 

 勿論、ベル・クラネルが負傷することが無いように手を尽くすつもりだが。

 こんな時にも足の引っ張り合いをしていることは、フィンにとっても愚かな話だという自覚はあるが、【フレイヤ・ファミリア】は潜在的な敵のようなものだ。

 中途半端に邪魔をして敵対心(ヘイト)を煽っただけで終わるならば、リターンも無くては。

 

黒幕(エニュオ)が健在である以上、いつか【フレイヤ・ファミリア】と肩を並べることもあるだろうけど、その時向こうがこちらの指示を素直に聞くと思うかい?」

「あり得んな」

 

 仲間内ですら険悪な【フレイヤ・ファミリア】が外のファミリアと仲良しこよしなどできるはずもない。

 ダンジョンで度々小競り合いを行ってきた実績もあるのだ。

 そう、協調できないなら、コントロールする術があればいい。

 

「【ガネーシャ・ファミリア】にはちょっと悪いけど、いい加減【フレイヤ・ファミリア】には大人しくしてもらわないとね」

「……」

 

 リヴェリアはフィンに反対することも賛同することもなかった。

 目を瞑り、腕を組んで椅子に座り込むだけだ。

 

(オッタルも冷静な男だから大事にはならないだろうけど、万が一がある。幹部と準幹部だけでパーティーを固めるか)

 

 都市最強を封じ込めるために戦力を厭いたくはないが、遠征の準備を進めるためにも戦力を動員しすぎるわけにもいかない。

 フィンは【フレイヤ・ファミリア】が見せた隙を最大限活用するために思考を回した。

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

「いよいよロキとフレイヤがぶつかるなァ」

 

 【勇者(ブレイバー)】の考えを読む【殺帝(アラクニア)】は底冷えするような笑みを浮かべる。

 フィンの頭脳は複雑怪奇で全てを読み切ることは不可能だが、彼自身の行動指針は単純明快だ。

 小人族(パルゥム)の希望であれ。その大前提に行動を縛られている。

 ならば、そこから逆算すれば、フィンがとる選択を予想することは容易い。

 

「【猛者(おうじゃ)】と小競り合いをするしかないよなァ? 二大都市最強派閥だもんなァ? 相手より自分が上だって主張しねェと収まりがつかないんだろォさ」

 

 仮にフィンが名誉など知ったことではないと言い切れる合理主義者ならば別の道もあった。

 だが、フィンは一族の勇者。

 追い込まれているならばともかく、そうではない平時に譲歩することなど有り得ない。

 顔色を窺ってヘコへコする英雄など、小人族(パルゥム)は望むはずがないのだから。

 

「しかし、奴らが協調できないとしてもその力は圧倒的です。奴らの小競り合いも大事にはならないでしょうし、どうするのですか?」

 

 白装束を纏った部下が尤もな疑問を投げかけた。

 二大派閥の小競り合いなどよくあることでしかないはずだが、なぜヴァレッタは舌なめずりしそうなほどに喜んでいるのかと。

 それに対しヴァレッタは唇を吊り上げる。

 

「予定調和を混沌に塗り替えるのがアタシらのやり口だ。後に引けなくしちまえばいいのさ。場をひっかきまわしてなァ……」

 

 【ロキ・ファミリア】と【フレイヤ・ファミリア】の小競り合いならば結末(こたえ)は見えているが、そこに異物が入り込めばどうなるか。

 決まっている。ぐちゃぐちゃの混沌の出来上がりだ。

 そのどさくさに紛れて首の一つでも取れればいい。

 

 このために自分たちは沈黙を貫いた。

 これまでの戦いで疲労してきた闇派閥(イヴィルス)に初めの勢いはない。

 それは正しい。だが、何も動けなくなるほど疲弊したわけではなかった。

 フィンやオッタルの目を自分たちから外し、知覚外からの一撃を加えるための布石。

 それが実を結ぼうとしている。

 

(あの勇者の勘は厄介だがなァ、指の疼きはオッタルのせいだと錯覚させればいい。すまし顔の小人族(パルゥム)にだって出し抜き方の一つや二つはあるんだよ)

 

 【ガネーシャ・ファミリア】との小競り合いは予定外のことだったが、フィンは知らされていないだろう。

 所詮、他ファミリアなのだから、連絡などしているはずがない。

 

「自爆兵どもの数は揃えたんだろうなァ?」

「はっ、既に先の戦いでの補充は万全です」

「キヒッ、タナトス様も随分と働き者だ」

 

 烏合の衆だろうが上級冒険者すら殺しうる自爆兵は使い勝手がいい。

 夢破れて生きる気力をなくした者が毎日作られるオラリオには、その代わりもいくらだって存在する。神流に言うならばコスパが最強といったところか。

 

「妙なマジックアイテムを持つガキを引き込めていれば、もっと混沌としていたんだろうが……贅沢は言わねェさ」

「エイン様の横やりがなければ上手く行っていたのでしょうが、何が目的だったのでしょう?」

「顔も見せねぇエニュオの狗の考えなんざ分かる訳ねぇだろ」

 

 そこまで言って、ヴァレッタはまたエインが余計なちょっかいを賭けてくる可能性があると思考する。怪人(クリーチャー)の中では最低格だが、能ある鷹は爪を隠すのがこの業界だ。警戒しておくに越したことは無い。

 

「……あれも用意しておくか」

「ヴァレッタ様?」

「テメェらはロキの動きを監視し続けてろ、アタシはやることがあるからなァ」

 

 ヴァレッタは肉果実(ミルーツ)を噛みちぎりながら部屋を後にし、薄暗い通路を進む。

 何処までも計算深く、用心深く。それが今日まで悪党が生き続けた秘訣だ。

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 ピチャン、と滴が水に落ちた音がする。

 地下水路で蹲るフィルヴィスはその音を無感動に聞き届けた。

 

「私は……」

 

 山吹色の髪をした少女と別れてから、フィルヴィスは一度もあの娼館を訪れていない。

 動けないのだ。

 彼女は受け入れるだろう。全ての罪過を話しても、共に罪を償おうとしてくれるだろう。

 誰よりも誇り高い妖精(エルフ)の少女ならば。

 

 それがフィルヴィスには怖かった。

 こんな汚れてしまった自分が受け入れられたら、あの方しかいないと思い込んでいた夢が覚めてしまったら。

 フィルヴィスは自分の手を染める朱色の幻覚と向き合わなければならなくなる。

 これまでの過ちを、過ちと認めなければならなくなる。

 それはこれまでのフィルヴィスを否定することだ。

 

「……」

 

 分かっている。

 レフィーヤの手を取ることが正しい。

 過ちを犯したから、過ちを許容することの何処に正義があるのか。

 穢れを知らないかつての自分はきっとそう言うだろう。

 

 それでもフィルヴィスはその道を選べなかった。

 彼女は弱いエルフだったから。

 

 しかしその道を捨てることもできなかった。

 可能性を手放すことも恐ろしかったのだ。

 

 故に停滞。

 この静寂を永遠と錯覚して、答えを出すことを拒否した。

 そんなことが長続きするはずがないのに。

 

──フィルヴィス。

 

 声が響く。

 聞き覚えのある男の声だ。

 彫像のように固まっていたその身を震わせる、甘い誘惑だ。

 

──探したぞ。あの子供の始末は失敗したようだな。

 

「も、申し訳ありませんっ、■■■■■■■様っ」

 

──全く、お前は何処まで愚図なのだ? エインであってもあの程度の子供ならば簡単に殺せただろうに。

 

 死体のように青白かった肌が更に蒼白になる。

 侮蔑の言葉に胸がひび割れていくのを感じた。

 呼吸が不規則に乱れ、大粒の汗が浮かび上がっていく。

 

──そしてなぜ帰ってこない? 使いも満足にできなければ逃げ出す子供か? 最早呆れ果てて言葉もないとはこのことだな。

 

 ぐにゃりと視界がゆがむ。

 使える使徒でなければならない。そうでなければあの方の望みを……

 

「私、は……」

 

 強迫観念が思考を乱す。

 ぐちゃぐちゃの継ぎ接ぎだらけなココロが砕けてしまう。

 肺に上手く入ってくれない酸素が、まるで自分を拒絶しているようで……

 

──だが許そう。

 

「──ぇ」

 

──愚かなフィルヴィス。哀れなフィルヴィス。お前はいつも役に立たない。無様に、滑稽に、這いつくばって愛を乞うだけ。……嗚呼、だからこそ、お前がこんなにも愛おしい。

 

 ひび割れた心に、言葉は簡単にしみ込んだ。

 陶酔する。ひんやりと肌に伝わる冷気をものともしない胸の高鳴り。

 与えられる愛が、フィルヴィスに確かな肯定をもたらした。

 

──私は忘れてなどいない。忘れようがないとも。その慟哭が、その悲哀が、私の心をかき乱す。お前は私を悦ばせるためだけに生まれてきたのだと、そう確信したのはいつのことだったか。

 

 酔っていた。

 酒に溺れるように。

 情欲の虜となるように。

 

──お前の狂乱(オルギア)こそ、私の何よりも愛しき眷属の証左だとも。

 

 フィルヴィスは狂信に酔っていた。

 神の前では人の道理など無意味だ。

 そんな小さなものに囚われるくらいならば、神の愛を享受することこそ幸福だ。

 神の愛に包まれる限り、フィルヴィスは何処までも自分を肯定してもらえる。

 

「あぁ……■■■■■■■様」

 

──全く、私の手を煩わせるなよフィルヴィス。これ以上お前をみていると、時間を忘れてお前を愛でていたくなる。

 

 捨てられない。

 フィルヴィスにこの幸福は捨てられない。

 可能性を閉じてでも、至福の愛は齎されるのだ。

 

──さあ、あの鬱陶しい女神の眷属を殺せ。フィルヴィス。

 

 今までのように、仮面を被って(エインとなって)

 地下水路に佇むシルエットはそう言い残すと姿を闇の中に消した。

 そんなことなど気にも留めないように陶酔するフィルヴィスは夢見心地に呟く。

 

「そうだ……私はエイン。あの方の、冷酷な使徒」

 

 突風が通路に流れた。

 あの方が地上への扉を開けたからだろうか。

 

「──」

 

 その風に紛れてフィルヴィスの唇が呪文を紡ぐ。

 エニュオの忠実な使徒であれと、己に課す特大の呪い。

 規格外の魔法は紡がれた。

 

(……すまない)

 

 狂信に酔う思考の片隅に浮かんだ、泡沫の正気。

 夕日を背に浮かべられる少女の力強い笑み。

 あの日の言葉が何故か思い出された。

 

『……絶対、助けますからね!』

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 ガラガラと崩れる瓦礫。

 時折聞こえるうめき声はそこに人がいる証拠だ。

 

「……なるほど、上位精霊がオラリオに現れているのか」

 

 倒れ伏す闇派閥(イヴィルス)の構成員が持っていた資料を読み終えたフェルズは、闇派閥(イヴィルス)の動きを察知できた幸運に感謝した。

 精霊は、エルフ以上の魔法種族(マジックユーザー)

 何が出来てもおかしくない存在だ。そんな精霊を闇派閥(イヴィルス)が確保するなど冗談ではない。

 

「しかし妙だな……精霊を統べる気ならばそれに即したマジックアイテムなり、アーティファクトなりを用意しているはずだが、そんな痕跡はない」

 

 深層域のモンスターすらテイムするマジックアイテムを有する闇派閥(イヴィルス)ならば、精霊を操る方法もあるのだろうかと思えば、全くそれらしきものが無いのは妙だ。

 

「……何かを見落としている。闇派閥(イヴィルス)の目的は捕獲した精霊の制御ではないのか?」

 

 フェルズは精霊を追っていた派閥のアジトを隅々まで調べたが、答えは見つからなかった。

 見つからないものは仕方ないと、縛り上げた闇派閥(イヴィルス)たちを連れて帰還しようとした時。

 

「……あれは、伝書鳩か?」

 

 ランクアップを果たしている感覚が上空の存在を探知する。

 そこに存在しているのは一匹の鳩だ。

 足に括りつけられた筒は人に躾けられたことを示している。

 

「逃がさん」

 

 戦闘の跡を確認して慌てて逃げ帰る鳩に腕を伸ばし、標準を定める。

 自作のマジックアイテム【魔咆手(マジック・イーター)】に魔力を装填し、無色の衝撃波を放った。

 モンスターでもない鳩にオーバーキルな一撃は、あっけなく鳩を吹き飛ばし、筒を地面に転がす。

 

「……やはり要改良だな。魔力を食いすぎる」

 

 鳩一羽を仕留めるだけのためにこれほど魔力を使っていては割に合わない。

 最近まで近くで観察と悪戯をしていた少年の速攻魔法程でないにしても、牽制用に省エネ化しようかと考えながら筒を回収したフェルズは、その中身を確認した。

 

「思った通り闇派閥(イヴィルス)間の連絡だな。これは……【ロキ・ファミリア】と【フレイヤ・ファミリア】にちょっかいを出す気か? 自殺行為もいいところだな。……自爆しているし、今更か」

 

 フム、とフェルズは考え込んだ。

 恐らく自分が探っている一件とは無関係。

 かと言って放置もできない。

 

(ギルドを通じて【ガネーシャ・ファミリア】に伝えるか)

 

 対象である両派閥はギルドの忠告だろうと聞く耳を持たないだろう。

 ならば、両派閥に怯まずものを言える【ガネーシャ・ファミリア】に任せたほうがいい。

 

「しかし、この周到な手回し……凡百の指揮官ではないな。異名付き(ネームド)か?」

 

 暗黒期から根強く残り続けている幹部格。

 と言うと【殺帝(アラクニア)】が思い浮かべられるが……

 

(もしそうであれば、精霊について何か知っているかもしれん)

 

 闇派閥(イヴィルス)の幹部級ならば、自分の担当する以外の作戦の情報も入ってくるだろう。

 【殺帝(アラクニア)】本人でなくても、その側近でも捕まえて情報を絞り出せば、フェルズの調査は大きく前進する。

 

 姿を見せるわけには行かないが、自分には()()がある。

 【ガネーシャ・ファミリア】の援護ついでに、情報を持っていそうな人間を捕まえるのも悪くない。幽霊らしく、誰にも気付かれることなく目的を達して見せよう。

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 ポーンポーンと飛び跳ねる石が人懐っこくモダーカにじゃれつく。

 石のペットと言う斬新すぎる存在に初めは戸惑っていた【ガネーシャ・ファミリア】の団員たちも、いつしか猫かわいがりするようになる。

 強面が多い冒険者には通常の動物は怯えまくるので、警戒心の薄い石たちは心の癒しなのだ。

 

「今団長に呼ばれているから、また後でな」

 

 そう言うと石たちはわかったよー、とでもいうように飛び跳ねて去って行った。

 頭のいいことである。

 

「団長」

「モンタラシアンか」

「違います。自分はモダーカです」

「モンモンシアン。先ほどギルドから冒険者依頼(クエスト)が届いた」

「ちょっと名前弄ってますけど、大本が違うので意味ないですよ……ギルドから?」

 

 ギルドと【ガネーシャ・ファミリア】は仲がいい。

 共に都市を第一に考える組織であることから当然だが、有事の際はギルドが頼るのは【ガネーシャ・ファミリア】だ。

 そして、そのような場合は大抵この様にしてギルドから直接依頼されるわけだが……

 

「【ロキ・ファミリア】と【フレイヤ・ファミリア】が近々小競り合いをしようとしているらしいが、そこに闇派閥(イヴィルス)が介入しようとしていると情報が入った」

「ギルドはよくそんなことを知ってましたね」

「あの組織の地獄耳は今更だろう。我々にはその対処をして欲しいとのことだ」

 

 なんて面倒な、とモダーカは内心毒づいた。

 

「両派閥には伝えたんですか」

「伝えるどころか門前払いだ」

「デスヨネー」

 

 流石は最強派閥。

 協調性ゼロである。

 フレイヤはともかく、ロキはそこそこ話を聞いてくれそうだとも思ったが。

 

「【ロキ・ファミリア】の緊張感から言って、戦いがあるのは間違いない」

「遠征と言う可能性は?」

「そうであって欲しいがな」

 

 【勇者(ブレイバー)】とも、【猛者(おうじゃ)】とも付き合いの長いシャクティは、それが叶わぬ願いだと理解していた。

 両派閥は間違いなくぶつかり合うだろう。

 そして、そこに闇派閥(イヴィルス)も関わるとなると、無視はできない。

 

「ファミリア間の争いに口を出す気はないが、闇派閥(イヴィルス)がいるならば話は別だ。モカンス、お前には当日の討伐隊に入ってもらう」

「了解。……後自分はモダーカです」

 

 色々と面倒なことになっているらしいとモダーカは内心ため息をつき、またあれこれ忙しくなるであろう団長に心の中で合唱した。




キャラ多すぎじゃない?(今更)
色んな派閥や思惑が入り乱れてるけど、その中でベルに注目してるのは今の所【フレイヤ・ファミリア】だけです。
 他は重要なピースになり得ても、今回の中心になるとは思ってません。

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