MH ~IF Another  World~   作:K/K

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超越するモノ(後編)

 生物の様子を確かめる為に背後へと顔を向けるディネブであったが、それを見たヴィヴィの鋭い声が飛ぶ。

 ヴィヴィの声の余韻を掻き消す破砕音。その音源の方を見ると氷が内側から外に向かって割れ始めている。すると氷の裂け目から見える鋸状の白い背鰭と頑強な甲殻が連なった白い背。

 氷中から露出する生物の一部分。それが氷を砕きながら走るディネブへと向かう。

 生物が氷中を掘り進む速度は地面を走っていた時と殆ど変らない。つまり走るディネブよりも生物の方が早い。

 次々と地表の氷を砕きながら徐々にその距離を縮めていく。

 ディネブは背後を気にしながら全力で走るが、そのとき前方に複数の兵士たちの姿を目にしてしまう。

 背後に気を取られ過ぎて兵士たちが固まっている方向へと意図せずに走っていたことに気付き、自分の失態を恥じる様にディネブは僅かに口の端を歪ませる。

 そこでディネブは兵士たちを巻き添えにしない為に九十度直角に方向転換し、兵士たちから生物を引き離そうとする。

 だがこのとき予想だにしないことが起きる。

 

「違う! お前たちは動くな! その場でじっとしていろ! 動くな! 動くなって言っているだろうが!」

 

 ヴィヴィの怒声にディネブの視線はまずヴィヴィへと向けられる。声を荒げながら何かに向かって叫ぶヴィヴィの姿を見て、ディネブの視線もヴィヴィが見ている方へと向けられた。

 そこでディネブが見たのは先程の兵士たちが一斉に走っていく姿と、その走っている兵士たちの方に方向転換する生物の背。

 狙いが自分から兵士たちに切り替わる瞬間であった。

 ディネブが兵士たちに近付いてしまった為、迫る生物の重圧に押し負けてしまったことによる精神的敗走。

 何故狙いを切り替えたのかは分からない。複数の足音をうるさく感じたのか、あるいはディネブよりも力が劣る兵士たちを先に潰しておく気になったのか、推測を上げればきりがないうえにこの場においては何の役にも立たない。

 ヴィヴィの制止も空しく兵士たちは散り散りになって走っていく。

 老体でありながらも常人を遥かに凌ぐ身体能力を持つディネブですら距離を詰められるほどの生物の掘削速度に、並よりもやや上といった程度の兵士たち。ましてや氷山の寒さと生物への恐怖によって体は十分な機能を発揮しない。

 追い付かれるのは時間の問題であった。

 

「ぐぅ!」

 

 そんな悪い予感を的中させるように、兵士の一人が足に足を当てて転倒してしまう。そこに迫る白い背。まるで氷の中を泳ぐように波打つ動きをしながら接近すると転倒した兵士を何故か背に乗せる。

 弾き飛ばすとも空高く突き上げることもせず、下から掬うようにして背に乗せた光景を見てヴィヴィたちは一瞬、訝しむ様な顔でそれを見ていたがすぐにそれがどういったことを齎すのかを知る。

 生物が兵士の一人を乗せたまま再び氷中へと潜る。その際に兵士の身体は氷と生物の背に挟まれ、その身を容赦無く押し潰されていく。

 兵士にとって不幸なのは、足から先に入って行ったことで身体の中心に至るまで意識が途絶えず、そして死に至ることも出来ない。

 時間にすればほんの数秒の出来事。しかし、それは見ている側にとっての数秒であり、当人である兵士にとってはその数秒の出来事は地獄にも勝る。

 肉が潰れ、骨も砕かれ、体が紙よりも薄く引き伸ばされていく。

 苦痛、恐怖、絶望。あらゆる感情が爆発し、それらが絶叫となって喉から出かかったとき、兵士の身体は完全に氷中に引き込まれていた。

 自分の身に起こった不幸を嘆く暇すら与えられず、次に生物が氷の中から姿を見せたときには背に残る僅かな赤い染みと化し、死に様すら奪われる。

 無慈悲としか言いようのない所業。だが、生物は兵士一人惨殺したところで何一つ感慨など抱かない。生物にとっては邪魔者を排除するという行為をしただけである。

 そして、それを見ていた兵士たちもまた、それを咎めることも罵声を浴びせることも出来なかった。生物が恐ろしい故に、生物があまりにも強いが故に。

 ある人物らを除いて。

 地表に姿を見せた生物の背に紅蓮の炎が上がる。

 炎の主はディネブであった。放った砲撃で焼き痕一つ付かなかったが、それに構う事無く何度も撃ち込む。

 生物の意識を兵士たちから自分に向ける為の挑発を目的としたものである。

 氷中を進む生物に並走し、ディネブは重い砲剣を体に押し当てるようにして固定し、体で反動を受け止めながら連射する。

 本来の砲剣は連発するような代物ではなく、並みの人間が魔法などの補助無しで使用した場合、反動で関節が外れる、骨に罅が入るなどの危険性があるが、それをディネブは強靭な肉体で押さえつけ本来以上の性能を発揮させる。

 

「ディネブ殿! そいつが潜っているのもあと僅かだ! 数秒後に氷の中から完全に姿を現す!」

 

 ヴィヴィも生物の強さに怯むことなく、自分が狙われる可能性を無視して声を張り上げてディネブへと指示を飛ばす。

 まるでこの先の展開が分かるかのような内容の指示。実際にヴィヴィはこの先の動きが視えていた。

 術式が描かれたヴィヴィの瞳。ヴィヴィ本人にしか分からないが、その瞳には今から数秒先の出来事が揺らめく蜃気楼のように映っていた。

 ヴィヴィの瞳にはある特殊な術式が施されている。一般の魔法使いたちの間で広まっているような術式では無く、魔法という概念が出来てそれが体系として形になって間も無い頃に編み出された古い術式である。

 世間に広まり、特異性が薄まることを嫌がった魔法使いが誰にも知らせずに秘匿し、心許した一部の者たちだけに教え、語り継がせたもの。

 ヴィヴィから言わせれば、人として器が人並み以下の割には才能が人一倍あった者たちの遺産。

 それが宿っているのがヴィヴィの瞳である。

 普段はこの特徴的な瞳を人目に晒すのを嫌がって仮面で隠しているが、完全に力を発揮するときのみ外す。尤も仮面自体に特別な術が施されている訳では無い。あくまで気持ちを切り替える為の儀式のようなものである。

 そして、今使用しているのが未来視であり、これを使用することによって十数秒先の未来を知ることが出来る。ディネブに警告して生物の尾の一撃を避けさせたのもこの力であり、白い猿の群れに襲われた時事前に察知したのもこの力である。

 数秒後、ヴィヴィの予言した通り生物が氷の中から一気に飛び出し、隠していた全体を晒す。氷の中で追うことよりも地表で追うことを選択したらしいが、その方がヴィヴィたちにとっても有り難かった。

 全体が硬い甲殻に覆われた生物に損傷を与えるとしたら、甲殻の無い目か口の中を狙うしかない。氷の中に潜られていたらそのどちらも狙えない。

 地表に出てきた生物は身体を震わせ、纏わりついていた氷を落とす。一つ一つが人の頭よりも大きなサイズの氷塊であるが、その生物はまるで水滴のように周りに散らす。

 そして、生物の眼がディネブや兵士たちの方に向けられる。その眼が何を意味するのかは分からないが、ディネブは自分に注意を引きつける為に砲口を生物に向けると火球を放つ。

 効果はさほど期待していないので、次なる一手を――と考えるディネブの思考は生物の行動によって軽々と打ち砕かれる。

 生物が四肢に力を込めたかと思った次の瞬間、その巨体が跳ねた。

 比喩でも何でも無く、本当に脚に力を込めて前方へと跳ぶ。まるで体の重さなど感じないように少なくとも自分の体長の倍の距離を跳んだ。

 呆気にとられそうになるが、その生物が跳んだ先にあるものに気付き無理矢理意識を正気にしてヴィヴィは叫ぶ。

 

「来ているぞ! 避けろ!」

 

 心の裡ではもう間に合わないと分かってはいるものの咄嗟に叫んでしまっていた。

 ヴィヴィの未来を視ることは出来る強力だが、やはり強い能力には制限がある。十数秒先の未来を視た後、未来視した同じ時間だけ未来が視えなくなるという能力の制限が架せられていた。

 もし、あのとき数秒だけ先を見ることを遅らせていたなら。

 既に変えようの無い事実だと理解していても、反射的に行動へと移ってしまっていた。

 しかし、どんな足掻いたとしても現実は非情なものであり、そして生物もまた弱者に対し一片たりとも慈悲の心を持つことは無かった。

 逃げる兵士たちは自分たちの周囲がいきなり暗くなったことに驚き、空を見上げる。その眼に映るのは白く棘の様な突起物が並ぶ生物の腹部。

 声すら上げる暇も無く兵士たちは生物の下敷きとなった。

 生物の着地と同時に重みで湖面の氷に亀裂が生じ、衝撃で隆起する部分もある。

 生物は何事も無かったかのように立ち上がる。生物の腹部の下では一体どのような惨状が広がっているのか想像し難いものであったが、幸いというべきか生物の重みで着地点は深く沈み込んでおり、ヴィヴィたちからは中がどのようになっているか見えなかった。

 

「……もはや私一人か……」

 

 力無く呟き、兵士長は戦いの中であるにも関わらず脱力したかのように肩を落とす。兵士長が言ったように、街から連れて来た部下の兵士たちは先程の攻撃によって全滅した。

 部下を失ってしまったことと、生物に対する畏怖のせいか、兵士長の顔は最初の頃よりも十ほど老けて見える。

 

「落ち込むのは結構だが、少しシャキッとしてくれないかね?」

 

 立て続けに部下を失った兵士長に対し、ヴィヴィは気を遣うことなどせず最初のときのように冷たい言葉を投げ掛ける。

 だが、そんな言葉を受けても兵士長は睨みつけるわけでも反論するわけでも無く力無く、項垂れるのみ。それを見てヴィヴィは溜息を吐く。

 

「顔を上げたらどうだ? あちらはこちらを見ているぞ?」

 

 兵士を圧殺した生物は次なる狙いとしてヴィヴィたちへと視線を向ける。

 その視線を受け、兵士長はびくりと肩を震わせた。

 体躯のせいで小さく見えるがそれでも人の頭ほどの大きさはある瞳。その瞳から感情などは全く読めなかったが、向けられるだけで寿命が縮み、極寒の地であるにも関わらず衣服が吸い付くような量の冷たい汗が皮膚から染み出してくる。

 理性も本能も生物が放つ圧迫感、威圧感、命あるモノとしての格の違いを敏感に覚り、肉体を使って警鐘を鳴らす。

 

「全く嫌になる」

 

 自分の現状を呪う言葉、あるいは今の立場を嘆く言葉を吐きながらもヴィヴィの表情には絶望など無く、傲慢且つ嫌味に満ちた笑みを口元に浮かべている。

 圧倒的絶望を前にして笑みを一つ浮かべている時点で、並の胆力の持ち主では無いことが分かる。

 生物は狙いをヴィヴィたちへと定めたのか、視線だけでは無く体の向きも変え正面からヴィヴィたちを視る体勢となる。そして、そのままその口を大きく開いた。

 最初に見せた絶対零度のブレスを吐く体勢へと入った生物を見たヴィヴィは、逃げる素振りを見せず真っ向から生物を睨みつける。

 やがて生物がブレスを吐く直前までいったとき、不意にその動きが止まった。

 自然に動きが止まったのではなく何か別の力が働いて生物の動きを止めたのか、急に動きを止めた生物は小刻みに震え、身体を動かそうと抵抗しているような動きを見せる。

 その直後、生物の顔面に紅蓮の華が咲いた。

 ディネブが砲剣から放った火球が生物の顔面に直撃したのである。

 目を狙って放たれたが、炎が消えるとそこには目元に僅かな焦げ跡を付けられた生物の姿。ディネブの砲撃は外れてしまっていた。

 生物は舞う黒煙を鬱陶しがる様に首を振り掻き消す。

 機会を逃してしまったディネブは僅かに表情を顰め、生物に注意を向けつつ横目でヴィヴィの方を見る。

 ヴィヴィは苦痛に耐えるように顔を顰めていた。その表情が現すように、今のヴィヴィは激しい頭痛に襲われていた。

 あのとき生物が僅かに動きを止めたのはヴィヴィの魔術によるものである。ヴィヴィの目に備わった複数の魔術の中に、相手の記憶を探る力が在る。白猿たちに襲われた時、彼らの名を曖昧ながらも呟いたのはこれによるものであった。

しかし、獣の考えを人が理解することは出来ない。その為ヴィヴィが視たものは白猿たちが集団で襲い掛かったときの記憶。そこで襲われた者たちが口にした異国の言葉から白猿の名前をおおよそ把握したのである。

 先程も短時間ではあるもののヴィヴィはあの生物の記憶を探っていた。だが、得られたものは無い。何度か生物と対峙する巨大な武器を持った人間たちの記憶を視ることが出来たが、何も情報を口にしないまま生物によって葬られていた。

 そして、ヴィヴィが生物の動きを止められたのはこの能力の応用である。探っている記憶の中にヴィヴィの魔力を叩き込むことによって相手の頭の中を短い時間掻き回し、真面に考えられさせなくするというものであった。

 しかし、それにも代償ともいうべきものを払う。

 相手との実力の差があればあるほど、叩き込んだ魔力が送り込んだヴィヴィの下へより強い力で跳ね返されるのである。

 白い猿のときにはヴィヴィが格上であった為にその反動が無かったが、この生物は全力で叩き込んだヴィヴィの魔力をほんの数秒で跳ね返すという、生き物として桁違いの我の強さをヴィヴィの身体に刻み込んだ。

 その結果、ヴィヴィは脳が弾けるのではないかと思える程の頭痛を覚え、そして無理矢理魔力を弾き返されたことで鼻の片穴から鮮血を流していた。

 数秒動きを止めた代償としては重過ぎるものである。

 だが、それでも膝を屈せずに立ち続けているのは、持ち前の精神力とこのような相手に対し絶対に負けられないという意地であった。

 

「もう少し……もう少しだ……」

 

 頭が割れるような痛みに耐えながらも、ヴィヴィは生物と対峙していたときから続けていた『ある行為』を途切れさせていなかった。それこそが現状、ヴィヴィたちを生き残らせる策であり、そして唯一の希望であった為に。

 

「耐えてくれよ……」

 

 生物に砲撃を乱射するディネブを見ながら、ヴィヴィは一秒でも早く『ある行為』を完成させるために意識を集中させる。

 体の至る所に砲撃を受けながらも、速度を緩めることなく生物はディネブに向かって突進する。山一つが迫って来ている様な圧迫感と重圧の中でもディネブの照準は狙いを外さず、全ての弾が生物へと直撃していった。

 しかし、いくら放とうとも生物の甲殻は分厚く堅牢であり、ディネブの砲撃を通さない。せいぜい外殻に張り付いている氷を剥ぐことしか成果を見せてはいなかった。

 生物との距離が縮まったときディネブが構えている砲身の向きを僅かにずらす。その状態で砲撃を放つと火球は生物の肩付近へと当たるが損傷は無い。それはディネブにとって分かり切った結果であり、狙いはそれではない。

 砲撃の反動でディネブの身体が真横へと滑る。地面に根付くようにして踏ん張っていた足から力を緩め、砲撃の熱で僅かに解け始めていた足元の氷を利用しての回避であった。

 ディネブの狙い通り、生物は先程までディネブが立っていた位置を通過していく。一度付いた加速は中々止めることが出来ないのか、生物は四肢を突き立てて急停止しようとするもののそこから十数メートルの距離を滑っていく。

 その隙にディネブは懐からあるものを取り出す。出されたものは金属で出来た杭のような物体。

 重量が有る為少数しか携行出来ないが、その金属の杭こそディネブが持つ砲剣専用の弾である。

 相手が体勢を変えている内に弾を筒の中へと押し込む。時間にすれば一秒にも満たない作業であったが、その間だけでも生物から目を離すと言う行為は精神に重圧が掛かるものであった。

 弾を装填し、砲口を生物へと向ける。丁度、生物も旋回し終え正面からディネブを睨みつけている体勢であった。

 間髪入れずディネブは自身の魔力を砲身へと注ぎ込む。それに応じ、砲身に刻まれた魔力文字が輝きを放ち流し込まれた魔力を変換し、砲身の中でそれを爆発させた。

 つんざく音と共に砲身から込められた弾が発射される。全体に特殊な加工で造った溝が刻まれており、向かい風に反応し弾全体を錐揉み状に回転させ貫通力と命中精度を上げる効果がある。

 大気の壁を穿ちながら飛ぶ弾は生物の肩口付近へと命中する。硬い甲殻と鋼の弾。それらが衝突し合ったとき、雪山に破砕音と金属音が同時に鳴り響く。

 激しく回転しながら杭状の弾が生物の白い甲殻にその先端を埋め込む。戦いが始まって初めて損傷らしい損傷を与えた瞬間であった。

 だがそれを見ていたディネブは表情を険しくし、短く舌打ちをする。

 旋回して一見先端を埋めているかのように見える弾であったが、よく見れば削れて巻き上がっているのは白い甲殻の屑ではなく鉛色に輝く鉄片である。

 徐々に回転が弱まり始めると、やがて埋没していたかに見えた弾が肩口から落ちる。その先端は平らに削られており、刺さっていた肩口部分は僅かに凹みが出来た程度であった。

 対ドラゴン用に開発され、一度刺さればその硬い鱗すら貫通していく弾であったが、この生物の甲殻にはほんの少し傷を付ける程度の効果しかなかった。

 今ある武器が全て使えないことを悟るディネブであったが、その眼に諦めの色は無い。常人ならばとっくに心が折れていてもおかしくない状況で強い生をその目に宿し、真正面から見てくる生物を睨み返す。

 自分の使える武器は無くなってしまったが、まだヴィヴィの策が残っている。全て諦めるにはその策が通じなかった後でも遅くは無い。尤もディネブは仮にその策が破られたとしても諦めるつもりは全く無かったが。

 二射目の為に弾を装填しようとするが、そのとき生物が二本足で大きく立ち上がる。

 只でさえ大きな図体が倍の大きさとなり、自然と見上げる格好となった。

 見上げた先に見える者は大きく口を広げる生物の顔。それを見た瞬間、装填の動作を中断しその場から駆け出す。

 直後、生物の口から絶対零度の水流が吐き出される。

 触れれば即凍り付くが、それよりも先に触れた箇所から水圧によって抉り取られる。

 仮に掠めることがあればその箇所は肉、あるいは骨ごと削ぎ落とされであろう。そして傷口は超低温に晒されることで血が一滴すら流れることなく、受けた本人は凍り付いた断面を視る破目となる。

 そのような事態を想像しながらも身を竦ませることなく、吐き出されたブレスの射線から外れるようにして素早く移動する。

 ディネブの後を追う様にしてブレスが足元の氷を砕きながら迫る。ディネブが十数歩走る距離も、生物にしてみれば首を僅かに傾ける程の距離でしかない。しかし、老体とは思えぬほどの快速で迫るブレスから逃れるディネブ。

 生物との距離はあるものの、ブレスの速度やその射程の長さのせいで、余裕を持って移動してもかなり際どいタイミングであった。

 長時間吐き出すことが出来ないのか、生物のブレスによる攻撃は数秒吐き出された後に止まり、二本足で立っていた生物も元の四足に戻る。

 ディネブもまた氷上で急停止しつつ、目線を生物の方に向けながら軽く服を引っ張る。すると服の表面から薄い氷が剥げ落ち、足下へと落ちていく。直接触れてもいないのに、ブレスの余波で身体の表面に薄い氷の膜が張られていたのだ。

 脳裏についさっき起こった兵士の惨劇を思い浮かべる。だがそれでもその精神は恐怖に縛られない。その恐怖に抗う為にディネブは心の奥底に沈ませている『怒り』を滾らせる。

 溶岩のように煮え滾る怒り。それに触発されてディネブの頭の中に過去の出来事が断片的に蘇る。

 最初に浮かぶのは自慢の優秀な部下たち。次に浮かぶのはその優秀な部下たちの焼き尽くされた姿。流す涙すら乾いてしまう灼熱の中で咆哮を上げる一匹の龍。

 屈辱、憤怒、哀しみ。全ての感情が混じり合い、怒りとも嘆きとも言えない凶相がディネブの顔に浮かび上がった。

 

「オオオオオオオオオオオオオッ!」

 

 魂の奥底から吐き出すような叫び。裡に蠢く感情を込めた声が雪山へと響き渡る。

 砲剣に残り全ての魔力を注ぎ込む。

 それと同時にディネブが掴む砲剣の砲身は輝き始め、外へと向けて放たれる光は魔術の影響を受けて熱を持ち、周囲に張る氷を融解させていく。

 二撃目、余力といった考えを全て捨て去った渾身の一撃。外れようと当たろうと構わず己の全てを今から放つものに込める。

 砲口から巨大な火球が放たれる。漂う冷気すら熱気へと変えてしまう程の熱を秘めた一撃が生物に向かう。

 だが生物は目の前に迫る膨大な熱量を前にしても逃げようとも隠れようともせず、再びその口を大きく開く。

 そして生物も放つ絶対零度のブレス。熱と冷気がぶつかり合い、それによって周囲を包み込む程の水蒸気が発生し視界が一気に閉ざされる。

 辺りを包み込む靄の中でディネブは歯を食い縛った。長年戦いの中で身を置いてきた者だからこそ分かる手応えの無さ。

 渾身の一撃は届かなかった。視界が晴れていない状態からでもそれを悟ってしまっていた。

 心の裡ではこうなることは分かっていた。どのように肉体を鍛えようともどのように技を研鑽しようとも、相手は生き物として別次元の段階にいる存在だと。

 倒すべき仇の前に、あれと同類の存在に対しどれほど自分の実力が通じるのか試してみたが、結果としては何一つ通用していない。

 完全な敗北である。

 そんなことを考えるディネブを肯定するかのように白い靄を突き破り、生物の尖った顎が姿を見せる。靄の中から現れた生物の身体には外傷など無くディネブの感じた手応えの通り、全く通じてはいない。

 山や氷塊すら容易く砕く顎がディネブの眼前まで迫る。

 風を大きく斬り裂きながら鋭くも分厚い顎が天に向かって突き上げられた。これによって一名の兵士が空へと打ち上げられた後に絶命している。

 ディネブもまた同じ運命を辿る――かに思われたがディネブの姿は未だに地上にある。

 それもそのはず、生物の顎はディネブとの距離約一メートル辺りで振り上げられていたからである。当たらなければ致命傷にはならず、せいぜい出来たことは振り上げた勢いでディネブの髪型を僅かに乱した程度である。

 何故目測を誤ったのか。その答えは生物の後脚にあった。

 大木よりも太い脚が氷の上にめり込む、否、沈んでいる。それによって生物は無理矢理後ろへと仰け反らせられている格好となっていたのだ。

 ディネブは自分の足元を見る。先程まで霜が降り、完全に凍り付いていた湖の氷であったが今は霜も消え始め、表面が溶けて濡れ始めていた。

 気温は一切変わらないにも関わらず溶けて行く湖の氷。明らかな異常現象。だがそれを見てもディネブは焦らない。

 こうなることは予め分かっていたからだ。

 

「時間稼ぎお疲れ様です。ディネブ殿」

 

 いつの間にか側にはヴィヴィの姿。その手には半ば放心状態の兵士長が掴まれている。

 

「もう少し早く出来てればここまで追い込まれずに済んだんですがね」

 

 ヴィヴィたちの前でどんどんと生物が湖へと沈み込んでいく。

 ディネブに時間を稼いで貰っていた理由は、この術式を発動させる為のものであった。

 通常はこれほどの質量の氷を融解させるのには多くの人員と大規模な魔法陣などが必要であるが、ヴィヴィは己の眼を最大限にまで利用してたった一人で行った。

 魔力を見ている対象に流し込む能力を応用し、湖中に魔力による魔法陣を刻み込むことで相手に悟られずに今のような状況を作り出していた。

 氷は生物を中心にして次々と水へと変わり、生物の身体を湖中に沈めて行く。何とか耐えようと前脚を突き立てるものの濡れた氷の上ではただ滑るだけであり、容赦なくその身体を呑み込んでいく。

 

「これで逃げる時間を稼げる」

 

 正直な所、ヴィヴィもディネブも完全に生物を湖に沈めた所で死ぬとは微塵も思ってはいなかった。この雪山に来たのはあくまで『とある目的』の為であり、生物との交戦ではない。

 少しでも逃げる時間を稼ぎ、相手がこちらを見失えばそれで良かった。

 だが、最後の最後まで相手はこちらの思惑通りに動かないということを、この直後に悟らされることとなる。

 沈み行く生物は天へと向かい、今までで最大の咆哮を上げる。

 声の振動だけで身体が大きく震える。幸いにもヴィヴィたちに向けられていなかったのでその程度で済んだが、もし直接向けられていたら命に関わるかもしれないほどの轟音であった。

 やがて生物の巨体は湖へと沈んでいく。

 最後の足掻き。そう考えることが自然であった。手も足も出ない状態でやったことと言えば大声を上げる程度。

 だというのにヴィヴィもディネブも表情が優れない。彼らの表情にあるのは勝者としての顔ではなく追い詰められた者の顔であった。

 そのとき地響く音と細かな震動が身体を揺さぶる。

 音も震動も時間が経つ度にその大きさを増していく。

 

「これは……!」

 

 考えるよりも先にヴィヴィは眼の力を使い音と振動の源を探る。

 答えはすぐに見つかった。

 雪山の斜面に積もる大量の雪が崩れ、それがこちらへと向かって凄まじい勢いで移動してきている。

 

「雪崩かっ!」

 

 ヴィヴィたちの頭に浮かぶのはあの生物の放った最後の咆哮。もしそれによって引き起こされたものならば――

 

「最後の最後まで楽をさせてくれないな」

 

 何処までも豪快なことをするあの生物に向けて忌々しげに吐き捨てる。

 放心状態の兵士長、疲労が限界に近いディネブ、ただでさえ真面に動けない二人がいる上に雪崩の速度はこちらの移動速度を完全に上回っている。

 迷う事無くヴィヴィはディネブと兵士長の腕を掴み、凄まじい速度で言葉を紡ぐ。息を継ぐ間も無く並べて行く言葉の羅列は、一つの音のように聞こえた。

 それから数十秒後、圧倒的質量を持った雪崩がその場を呑み尽くしていく。その場に在ったものを全て押し潰し、雪の下へと埋まらせていく。

 

「やれやれ……」

 

 それを上空から眺めるのはヴィヴィたちであった。ヴィヴィたちの足元には円形の魔法陣が描かれており、それが宙に居るヴィヴィたちの足場となっている。

 雪崩に呑み込まれる寸前にヴィヴィが詠唱したのは浮遊の魔法であった。

 

「このまま目的の場所まで飛ぶ――といきたい所だが流石に無理だ。適当な場所で降りてあとは徒歩で行く。あの怪物が埋もれている間にね」

 

 多量の魔力を消費している為、額から汗を流し顔には疲労の色を浮かべているヴィヴィは簡単な指示を出す。それにディネブは無言で頷くが、兵士長の方は殆ど反応しなかった。生物や仲間の死で精神がかなり消耗しているらしい。

 足元に描かれた魔法陣を動かし、魔力が続く限りなるべく遠くを目指す。その間もヴィヴィやディネブは生物への注意を怠らなかった。

 湖に沈み、更にその上に大量の雪が被さった状態であるが、二人は生物が生存していることについて微塵も疑いを抱かなかった。

 

 

 

 

 生物から逃げた後、どれほどの時間が経過したであろう。

 時折、周囲を確認しながら生物が後を追って来ていないことを確認しつつ、ヴィヴィたちの足は先を目指していた。

 ヴィヴィ、ディネブの表情には疲労の色が浮かんでいるもののその眼は足を進める度にギラつき、爛々とした輝きを放つ。

 それに追従する兵士長は対照的に、まるで人形のように淡々とした歩みであり、最初のときと比べるとその精悍であった表情は数十歳齢を重ねたように老け込んでいた。生物の重圧と恐怖、部下の全滅、それらが彼の肉体と精神を限界まで追い詰め、廃人寸前まで来ており、ヴィヴィたちに付いて行くのもただ少しでもそれらの記憶を紛らわせたい一心と、独りで居ればこのまま本当に壊れてしまいそうになる怖れからであった。

 

「……着いた」

 

 ヴィヴィの足が止まる。彼が止まった先には雪山に偶然出来た洞穴があった。

 躊躇う事無くその中へと入るヴィヴィ。その後ろをディネブと兵士長が付いて行く。

 光源など無い道であったが、何故か薄暗い程度。よく見れば洞窟の奥の方から光が見える。

 光の指す方を目指し、洞窟を抜けて行く。やがて目の前には自然かあるいは人の手によって出来たのか広がった空間が出てきた。天井には大きな穴が開いており、そこから日の光が入っているらしい。

 だがそんなことを気にする暇など三人には無く、その空間の中心で横たわるものに釘づけとなっていた。

 

「こ、これは……!」

「見つけた……ついに見つけたぁぁぁぁ!」

 

 それを見て慄く兵士長とは違い興奮した様子でヴィヴィは叫ぶ。それこそ周りに人がいなければ小躍りしそうな程であった。

 

「これだ! これだ! ようやく……ようやく! この時が来たぁぁぁぁ!」

 

 その場から駆け出し、それに駆け寄るヴィヴィ。

 

「これが……これがお前たちの目的なのか……! その化物が!」

 

 震える指先で示した先にあるのは真紅の鱗を持つ一頭の竜。大きな翼を畳み、眠るようにして横たわる体には霜が降りており、長い年月誰にも触れられていなかったことを現している。

 ヴィヴィは霜の降り立つ、岩壁のように荒々しい鱗に触れた。

 

「怯える必要は無い。こいつはとっくに死んでいる。死因はなんだろうな? 寿命か? 病気か? それともこっちの食い物は合わなかったか? まあ、どれでもいいか。これほど完全な状態で残っていることにこそ意味が有る」

 

 どこか危うい笑みを浮かべながら、舐めるようにしてその全身を眺めるヴィヴィ。その姿には狂気的なものが感じられた。

 

「あ、あいつといい……こいつといい……一体何なんだ……」

「知らんよ」

 

 兵士長の問いに対しあっさりとした態度で答える。だがその後に「――ただ」と付け加えた。

 

「基本的にこいつらは強い。いや、『強過ぎる』。この世界で生きる上で不必要なぐらい過剰な力を持っている。……どういった訳かね」

「何故、そんな生物が……」

「あくまでここから先は推測に過ぎないのだがね。もしかしたらこの生物たちはこの世のものではないのかもしれない」

 

 思いも寄らない言葉に兵士長の眼が見開かれた。

 

「馬鹿な――」

「馬鹿な話だと思うかね? だがそうでなければ納得が出来ないのだよ。この世のものでなければどこぞの魔法使いの優秀な弟子たちが皆殺しに遭うことも、その師が片目を失うことになることも、一騎当千とまで言われた部隊が成す術も無く全滅することも納得出来る。――そう、納得出来るんだよ!」

 

 語りながらヴィヴィは、今は無き己の片目に爪を突き立てるようにして触れる。指先から伝わってくる義眼の下の空虚。それに触れる度に思い出すのは嵐と共に現れ、全てを吹き飛ばし斬り裂いた鋼の龍の姿。

 ぎちりと奥歯を噛み締めるヴィヴィの顔は歪んだ笑みを浮かべている。

 

「だがようやくその力に手を届かせることが出来るかもしれない! この死骸はその為の一歩だ! この一歩の為にどれだけ血が流れ、屍が重なったのかは分からない。しかし、それは決して無駄じゃなかったという訳だ!」

 

 昂揚し演説を思わせるような声高な喋り方。最初のときの飄々とした雰囲気は既に無く、底知れない狂気が滲み出ており、その雰囲気に兵士長は呑まれつつあった。

 

「お前たちは……何者なんだ……?」

「ただの馬鹿だよ。大事なものを奪われ、勝てるはずの無い相手に戦いを挑む馬鹿――いや、狂人と言ってもいいかもしれない」

 

 自らを正気では無いと語るヴィヴィ。ディネブもその言葉を否定しない。

 

「――それで君はどうする?」

「何……?」

 

 言葉の意味が理解出来ず、呆けた言葉を返す。

 

「私たちと同じくアレに奪われた立場だ。……復讐したいという気持ちは湧かないかね? もし、そうだと言うのなら私たちの仲間に入ってもらいたい」

「わ、私は……」

 

 ヴィヴィが言うように兵士長はあの生物によって部下を全て皆殺しにされた。怒り、憎悪を抱いてもおかしくはない

 だが――

 

「わ、わ、私は……!」

 

 声が震える。あの生物の姿を思い出すだけで心の底から恐怖が湧き上がる。部下の死やそれに対する思いを全て塗り替えてしまうほどの恐怖が。

 

「まあ、普通の反応だ」

 

 兵士長の態度を見て、ヴィヴィの顔に浮かんだのは軽蔑や失望ではなく当然と言わんばかりの納得した表情であった。

 

「だとしたら私がすることは一つだ」

 

 突如、兵士長の顔を両手で挟み、頭を固定するとその眼を覗き込む。

 

「アレに関してはまだ公にするのは危険だ。功名心から先走って要らない犠牲を出す輩がいるかもしれないのでね。――少しいじらせてもらう」

「な、何を、私に何を!」

 

 ヴィヴィの眼が白い閃光を放ったように見えた瞬間、兵士長の記憶はそこで途切れるのであった。

 

 

 

 

 目を覚ます。見えるのは白い天井。目だけを動かす。周りを囲む白いカーテン。記憶に間違いが無ければここは兵士用の医務室である。

 

「目を覚ましたか」

 

 カーテンを開け、中を覗きこむ初老の男性。兵士長の更に上の階級であり、全てを総括する総隊長の位にある男性である。

 

「私は……?」

「大変な目に遭ったな……慰めの言葉にはならないが、君だけでも生き延びてくれて良かった」

 

 安堵する声を聞き、兵士長は何故自分がここにいるのか段々と思い出してきた。

 

「そうだ。私は雪崩に巻き込まれて……部下は全滅を……」

「監視目的であったが、まさかこのような不運が訪れるとはな。彼らの話ではたまたま君が近くにいたので助けることが出来たというが……」

「はい。それで間違いありません」

 

 雪崩によって部下が呑み込まれていく中、魔法使いの彼によって自分は救われた。それで間違いない。そう記憶している。

 

「当分はあの山へ行くことを禁止すべきです。いつ雪崩が起きるか分かりません」

「ああ、分かっている。既に手配をしている」

 

 総隊長はそういって白いカーテンを開く。開かれたカーテンの先にあるのは白い雪山が見える開放された窓であった。

 

「小さな頃よりずっと眺めてきた山だが、やはり自然というものは恐ろしい」

 

 日の光を受け、白く輝く雪山を見ながらしみじみと呟いたとき――

 地響きのような音が山の方から聞こえてきた。まるで大地を揺るがすような、深く染み込むような音。

 

「また雪崩か? なあ――」

 

 そこで言葉が止まった。

 声を掛けようとした兵士長が総隊長の目の前で頭を抱え込み、暗闇に放り出された幼子のように震えていたのだ。

 

「あれは……! あれは……! 雪崩だ! 雪崩の音なんだ! そうだ! そうなんだ! そうでなきゃいけないんだ!」

 

 まるで自分に言い聞かせるように声を荒げる兵士長。

 雪崩に怯えるのではなくそれ以上の何かに怯えていた。

 

 

 

 

「何か用かな?」

 

 一仕事終えたヴィヴィは、急遽連絡が入ってきた通信用の水晶石を耳に当てていた。

 

『ようやく繋がったか。お主、一体何をしていた?』

「何でもいいだろうが。一々報告するほど親しい仲でもないだろう、オー?」

『相変わらず態度が悪いのう……』

「まだすることが沢山あるんだ。要件は手短に言え」

『分かった、分かった』

 

 旧知の間柄であるオーの話を聞き、ヴィヴィは僅かに眉間に皺を寄せた。

 

「いいだろう。ちょうどそのギルドに向かうつもりだったのでね。ついでに視よう」

『感謝する。『天眼』よ』

「そのダサい二つ名で呼ばないでくれるか? それにとっくにその名は返上した」

 

 そう言うと相手の返答も聞かずに通信を切る。

 

「さて、ディネブ殿。どうやらまた新しいアレが出て来たらしい」

 

 それを聞くとディネブは置いてあった砲剣を無言で担ぐ。

 

「まあ、私たちのやることは変わらないか」

 

 そのときヴィヴィとディネブの耳に、風に乗って地響きのような音が聞こえてきた。それは間違いなくあの生物の咆哮である。

 それを聞き、ヴィヴィは口の端を吊り上げて笑う。

 

「今の所はさようならと言わせてもらおうかね。――だが、いつかお前たち殺してやる。必ずな」

 

 




ようやく後編が終わりました。
これで当初から出す予定だったモンスターたちの話を書き終わることが出来ました。
次回はまた番外の話になる予定です。

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