念獣をもふもふするよ!   作:ここへんて

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ハンター試験編
4. くじら島から旅立つ少女


 ミトの宣言があったあの日から、ノンとミトの関係は並外れて良好になった。ノンは、ミトのことをそれまでは、”ミトさん”と呼んでいたが、あれからは”ママ”と呼ぶようになった。ノンが初めてミトのことをママと呼んだときは、ミトが感嘆しノンのことを強く抱きしめ親愛を深めた。

 

 ノンは、ミトのことを積極的に手伝うようになり、掃除、洗濯、炊事、買物など、修行ともふみ以外にも目が向くようになった。家事を行うようになってから、ノンは今までの自分が少し異常だったことを反省した。その反面で、ノンは家事中でもできる念能力修行を開発し実行しているので、修行バカは大して治っていないのである。

 

 ノンの成長の一方で、モフリストになると語ったミトは、日常で使う道具をさりげなくもふもふした製品に置き換えるようになった。それだけでなく、キツネグマのママコンのお腹に大の字ダイブできるようになった。そのもふみへの挑戦心から、ノンはミトにモフリスト3級を授賞した。

 

 今やノンとミトは、娘と母として、そして、モフリストとしての確かな絆が結ばれていた。ミトのお婆ちゃんは、ミトとノンの和気藹々とした姿を見て涙したという。

 

 家族の変化の様子に、ゴンは、ミトから教わった言葉を思い返していた。

 

 ”約束を守れないような人間にはなるな”

 

 きっと、そいうことなんだと1人達観していた。

 

 

 1998年12月某日。11歳にノンはなっていた。ノンは以前からミトと約束していたハンター試験応募カードを提出した。ノンとミトの関係は極めて友好的で、保護者のサインも直ぐにもらうことができた。それに代わりゴンは、沼の主を釣り上げることで、ミトにサインをもらうことに成功した。

 

 ゴンは、自分だけ主を釣り上げる必要があるのはなぜかとミトに質問したことがあった。ミトは遠い目をして答えた。

 

「ノンは、空飛んだり、丸太を枝で切ったりできるでしょ?」

 

 ゴンには分かりきった答えだったが、黙るしかなかった。そして思う。ノンはおかしい。人なのかどうか。双子で同じ時間を過ごしているのに、どうしてここまで違うのだろうかと。

 

 ゴンはこれについても分かりきった答えを受けるだろうと考え、ノンに話しかける。

 

「ノンは、どうして空を飛んだり、丸太を枝で切れたりするの?」

「もふみへの執念があるから」

 

 堂々とした笑顔できっぱりとノンに返され、ゴンはやっぱりそう言うかと口籠る。双子の慣例と化している押し問答であった。だが、この日は違った。

 

「もしも、ゴンがハンター試験に合格できたなら、この能力の使い方を教えてあげる」

 

 数年の定石が、新手で壊された。ゴンにとっては、いつも、もふみがあーだこーだ言って何一つ揺らがなかったノンが、この時ばかりは、本人なのかを疑った。

 

「さすがに、空を自由に飛んだりはできないけど、ハンターならそれっぽいことがみんなできるよ。私は、小さいときの記憶があるぐらい特殊で鍛錬したからできた。パパもカイトも持っている力だよ」

 

 ゴンには、寝耳に水だった。ゴンは目をぐわっと開き、直ぐ様、ノンに迫り聞き返す。

 

「ジンもカイトも使える力なの!?」

 

 ノンは、にっこり笑い、首を縦にふる。

 

「詳しく知りたかったら、ハンターになるしかないね!」

 

 ゴンの持つ目は、カイトに会ってハンターになると決心したときのような光があった。

 

 

 1999年1月初頭。くじら島から出立する日になった。ノンは、島のボスとして、森の仲間たちに挨拶周りを済ませておいた。ノンはゴンと一緒になって、島に住んでいる人達から餞別をたくさんもらいながら港にいた。島中の人に囲まれた後、ノン達はミトのところに向かう。ゴンがミトの前に立つ。キラキラした目をミトに向け、深呼吸する。

 

「母さん。今までありがとう。立派なハンターになって戻ってくるから」

 

 いつの間にか、ノンに絆されたのか、それとも、ゴンなりに区切りがついたのか、ゴンはミトのことを母として明確に接するようになっていた。ミトは、ゴンのことを抱きしめる。

 

「うん。絶対にハンターになって戻ってきてね」

 

 ミトは一頻りゴンのことを抱き締めた。今度はノンがミトの前に立つ。ノンは姿勢を正し真面目顔になってミトに話す。

 

「もふみと共にあらんことを」

 

 その言葉を聞くとミトも姿勢を正し真面目顔になってノンに話す。

 

「もふみと共にあらんことを」

 

 ゴンは、そのやりとりにやれやれと首を横に振り、人前でやるのは切実に辞めてほしいと心に留めた。こうして、ノンのもふみへの道が始まった。

 

 ノン達の乗った船は、荒れ狂う波を物ともせず、無事に航海中である。ゴンは、ぶっ倒れた乗客の介抱に務めている。優しい。

 

 ノンは、絶をしながらハンモックで寝ている金髪青年のクラピカの顔をじっと覗き込んでいた。クラピカの性別はどちらなのだろうか。近くで見たら判断できるのではないかと考えクラピカを数十分眺めていた。結局、分からなかった。

 

 その次に、ノンは黒髪メガネスーツのレオリオを見た。レオリオが持っている本をノンは覗き込む。ノンは頬が熱くなるのを感じた。これ以上は見てはいけない。ノンは、直ぐに甲板に飛び出し、人目を憚らずにハンガルーを出現させもふった。ノンにそっち方面の耐性は全くなかった。

 

 ノンがもふもふして心を落ち着かせていると、船長からこれまでにない嵐が来ると連絡があった。それを聞いた、乗客達は船から小型ボートで逃げ出して行った。乗客の中で残ったのは、主人公組3人とノンだけであった。4人は船長に集められた。ノン達は船長に名を聞かれた。ノンは、3人の名前の紹介の後に続けて元気よく名乗った。

 

「私はノン!」

 

 続けてなぜハンターになりたいのかを船長に聞かれた。ゴンが最初に話した。それに、レオリオが絡んだ。その後に、クラピカがごねた。見かねた船長にハンター試験が既に始まっていることを告げられた。クラピカは理由を話し、レオリオも理由を話し、2人は喧嘩しにいった。ゴンは放っておこうと話した。最後には、突如現れた船員に予想以上の嵐だと言われ、船長もゴンも甲板に向かった。あっという間の出来事だった。

 

 茫然とノンは立っていた。ノンはちょっとムカついていた。ほとんど脇役のようになっていたからだ。主人公組のやりとりを見ることができて嬉しいとは思っている。しかし、それ以上に、話しを一切できなかったことに苛立った。

 

 嵐で揺れる船の中、水しぶきに動じずノンは船首に向かった。ノンは船首に立ち右手にオーラを込める。込め終わると、右手の拳を上にあげた。同時に、込めたオーラを天に向かって解き放った。眩い光が上空に向かって雲を貫く。その瞬間、貫かれた場所を中心に青空が広がり、地平線の彼方まで青空が広がった。荒れ狂う波を引き起こした嵐は霧散した。

 

 先ほどまでの嵐が突如として消えたことに、甲板に出ていた誰もが驚いた。しばらくの間、空を眺めると、次第に何があったのか思い出し始める。そして、嵐が消える寸前に船全体を襲った威圧感が放たれた方向に顔を向ける。

 

 皆が顔をむけた方向。船首にいたのは、右手の拳を空に向かって掲げていた黒髪の少女だった。少女は、船尾の方にくるっと体を向け、どこかすっきりした様子で話し始める。

 

「私は、ノン=フリークス!最高のもふみライフをおくるために、ハンターを目指しているの!よろしく!」

 

 嵐が消えたことに船員達は喜ぶ。その後は、非常事態の態勢から通常の業務に戻った。この時、明るくにこやかに挨拶をキメタ少女の姿を、未来永劫、甲板にいた誰もが忘れることはなかったという。

 

 クラピカとレオリオは、ノンの嵐を飛ばしたオーラで怒りが綺麗さっぱりなくなった。本来ならカッツォダイブが果たした役割を、代わりにノンの怒りの嵐晴らしが果たした。

 

 一旦、怒りが吹き飛ぶと、レオリオとクラピカは直ぐに和解した。その様子にゴンは満足してノンに駆け寄った。レオリオとクラピカは、ノンに駆け寄っていくゴンを目で追った。

 

 船長は、船首に立つノンの姿を見て、冷や汗を流しニイっと笑い帽子を目深にかぶり直した。毎日海で遊んでも、とても出来ねェ芸当だぜ。船長はそう思った。

 

「嵐を晴らしたのって、ノンがやったの?」

 

 他の人よりもノンの異常に慣れているゴンは、ノンに平然と声をかけた。ノンは甲板全体を見渡し、クラピカ、レオリオ、船長を一瞥すると腕を腰にあてて、ドヤ顔でゴンに答える。

 

「えっへへ!そうよ!私がやったの!」

 




誤字報告ありがとうございます! 頭の中で勝手に文字が補完されてしまい、足りない文字に気づきませんでした。
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