Bクラスで過ごす男の話   作:冬獅郎

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 作者が一之瀬帆波好きなので書きました。
 正直原作で1番聖人なのに1番弱いクラスって不遇過ぎると思いませんか?自分は思いました。自己満足です。それでも良ければ見てってください。


第1章
1話


 今日は俺の新たな門出となる日だ。俺はこれから始まる高校生活のことを想像しながら胸を躍らせていた。

 高揚した気分のまま、家を出る。ああ、なんて素晴らしい天気なんだろう。まるで俺の門出を天が祝福しているかのようだ。と、雲1つない晴天の空を仰ぎながらバカなことを考え、歩き出す。

 俺がこれから向かうのは東京都高度育成高等学校。日本政府が作り上げた学校だ。倍率はかなり高く、俺が合格するとは思ってもいなかった。しかし合格した以上、俺は狭き門をくぐり抜けたエリートということになる。

 まあ、俺にとってエリート云々は正直言ってどうでもいい。なんなら高校もどこだって良かった。なぜなら俺の目標はどこの高校に行こうと頑張れば達成できるからだ。

 そんな俺の目標とは……友達を作ることだ。俺には今まで友人と呼べる人物がいたことがない。所謂ボッチと言うやつだ。

 しかしこの青春真っ只中の時期に友達の1人も居ないなんて悲しすぎる。俺もキラキラ輝く青春を友人と共に過ごしてみたいのだ。

 なぜそんなどこでも達成出来そうな目標なのに学校を選んだのか、強いて言うなら進学率、就職率がほぼ100%という所に釣られたからだ。受かれば儲けもんくらいの気持ちで受かってしまったのだから、この学校を本気で志望して落ちてしまった人には本当に申し訳なく思う。

 そんなことを考えながら歩いていたからだろうか。いつの間にか目的の場所の校門前まで到達していた。すごいな、天然石を連結加工した門とか、さすがは政府主導の学校なだけある。

 そんな感想を抱きながら校門を眺めていた俺のすぐそばに、1台のバスが停車した。なんとなくそちらに視線を向けると、中からぞろぞろと俺と同じ制服を着た学生たちが出てくる。この中に俺の友達になってくれる人はいるのだろうか。と思いながらその学生たちが校門に吸い込まれていくのを見送った。

 しかし、こんな晴天の中、バスで登校とは。出てきた学生の多さから考えるとバスの中は相当な密集率だったんじゃないだろうか。ストレスも相当溜まりそうだ。徒歩で来ていて良かった。徒歩の方がこの清々しい天気を味わえるしな。

 改めて俺は校門の前に立ち、深呼吸をして、新たな生活に対する気持ちを作る。よし、高校生活で俺は変わる! 脱ボッチ! と覚悟を決め、足を踏み出そうとしたところで足が止まる。

 原因は俺の傍にいる女子が「ちょっと」と声を発したからだ。

 これ、もしかして俺が話しかけられてる? と少し浮かれながら視線を向けると、残念。他の男子に声をかけたようだ。

 声を発した女子は黒髪ロングの美人で、声をかけられた男子はどこか抜けているような、冴えない感じのイケメンだった。結構お似合いのカップルに見える。

 しかし入学初日に話しかけるとは、同じ中学校出身だったとか、もしくは初対面だがその男子のことが気になっている、とかだろうか。後者の場合、一目惚れには少し早すぎる気もするが。少し気になったので、2人の会話を聞いてみることにした。

 

「さっき私の方を見ていたけれど、なんなの?」

 

 なんだろう、俺の想像とは違うベクトルの話のような気がする。

 

「悪い。ただちょっと気になっただけなんだ。どんな理由があったとしても、あんたは最初から老婆に席を譲ろうなんて考えを持っていなかったんじゃないかって」

 

「ええそうよ。私は譲る気なんてなかった。それがどうかしたの?」

 

「いや、ただ同じだと思っただけだ。オレも席を譲るつもりはなかったからな。事なかれ主義としては、ああいうことに関わって目立ちたくない」

 

「事なかれ主義? 私をあなたと同じ扱いにしないで。私は老婆に席を譲ることに意味を感じなかったから譲らなかっただけよ」

 

「それ、事なかれ主義より酷いんじゃないか?」

 

「そうかしら。自分の信念を持って行動しているに過ぎないわ。ただ面倒事を嫌うだけの人種とは違う。願わくばあなたのような人とは関わらずに過ごしたいものね」

 

「……同感だな」

 

 ……なんて切れ味の鋭い言葉のナイフだろう。この会話が始まる前に想像していた俺の考えは粉々に打ち砕かれた。口ぶりから察するに初対面だろうから同中という線は消えるし、まさかあの毒舌で一目惚れなんてあるはずもないだろう。

 会話の内容から推察すると、バスの中で老婆に席を譲らなかったという行動そのものは同じだったのだろう。しかし、その行動にたどり着くまでの考え方が違うだけでこうもズタボロに言われるとは。俺は男子生徒に少し同情してしまった。

 と、その場に留まり過ぎていたのが悪かったのか、それとも視線を向けていたのがバレたのか分からないが、俺にもその矛先が向いてきた。

 

「あなた、一体いつまで私たちの話を聞いているつもり? 人に聞かせるために話している訳ではないのだけれど」

 

 一瞬男子生徒に向かって言っているのかと思ったが、この2人の会話を聞いているやつなんて俺しかいない。そもそも校門前には既に俺たち以外の生徒の姿はないのだから、俺に向かって放たれた言葉で間違いないだろう。

 

「……す、すまない。人様の会話を聞くなんてマナー違反だよな」

 

「マナー違反だということが分かっているのなら、早急に立ち去るべきだと思うのだけれど」

 

「お、おっしゃる通りです……すいませんでした……」

 

 怖すぎる。最後の方は敬語になってしまった。それに紛うことなき正論。反論する余地もないし怖いので何も言い返せない。いや、言い返すつもりなんて最初からなかったが。

 これは俺が悪い。それは分かっているが……もっとオブラートに包んで欲しかった。これがガラスのハートの持ち主なら、今すぐ回れ右して帰宅していたぞ。

 ともあれ、立ち去れと言われたところでそれに反抗するつもりもない。最後に2人を一瞥してからそそくさと立ち去る。あの男子生徒からは同情をするかのような目を向けられていた。それがまた俺の惨めさを引き立てていた。

 

 

 

 

 

 

****

 

 

 

 

 

 俺はあの2人と別れた後、自分の所属クラスを確認した。

 俺の配属されるクラスはBクラスのようだ。教室の前にたどり着き、深呼吸をする。まずはスタートダッシュが肝心だからな。しっかりとスタートダッシュを決めて友達を1人作る。これが俺の今日の目標だ。

 しかし、いくら始めが肝心といっても急にテンション高く教室に入って挨拶でもしようものなら『なんだあの変人』と思われるかもしれない。

 ここは普通に教室に入ることにしよう。変なリスクを冒す必要もないからな。

 そして俺は扉に手をかけ、第1歩を踏み出す。それと同時に頭に浮かぶ疑問。

 

 なぜ、教室の中に監視カメラがあるのだろう。

 

 校舎に入る前、いや入ってからも見かけた異常な数の監視カメラ。

 それが教室にも設置されている。何故だろうか。

 校舎の外ならまだ分かる。学校が所有しているコンビニやショッピングモールなどで万引きが起きないように設置していると考えられるからだ。しかし、校舎の中となると話は別。考えられるとすればいじめが起こらないように見張っているとかだが、さすがに数が多すぎる。とてもそれだけが理由だとは思えない。

 とはいえ、ここで考えて分かることでも無いのでスルーしよう。俺は自分のネームプレートが置かれた席に着く。両隣を見てみるが、まだ登校していないのか、空席のままだった。

 俺の席は中心寄りの最後尾という位置。いやー俺の目が悪くなくて良かった良かった。

 自分の席が分かったところで、俺は戦いを始めることにする。俺はこれといった特徴のない人間だ。強いて言えば生まれつき髪が白いくらいなものだが、この学校では髪色が黒ではない生徒を何人か見掛けた。大した特徴にはならないだろう。

 そんな俺が友達を作る方法はただ1つ。自分から話しかけるしかない。なぜなら、話しかけられれば友達になれるかもしれないが、話しかけられるかも分からないからだ。

 改めてクラスを見回して見る。埋まっている席は半数程だろうか。既にかなりの人数が談笑しているようだった。談笑している生徒達は皆同じ中学校出身なのだろうか。あまりに仲が良さそうなのでそう考えてしまう。しかし、その線は薄いだろうとすぐさま否定する。答えは1つ、この短い時間で仲良くなったに違いない。こんな短時間で仲良くなる方法があるのならぜひ教えて貰いたい。

 正直言って、話しかけたところで共通の話題があるのか分からないが、幸いにも今日は入学初日だ。これからよろしくとかそんな感じの会話から始めれば仲良くなれる。そう信じたい。

 いやー誰かに話しかけるというのは緊張するな。普段誰にも話しかけることなど無いので尚更だ。しかし、これは言わば試練だ。俺が青春を謳歌するための登竜門だ。避けて通ることなど出来はしない。

 よし、最初に話しかけるのはあそこに1人で座っている物静かそうな男子にしよう。いきなり談笑している集団に話しかけるのなんてハードルが高すぎるからな。

 ターゲットが決まった俺は即座に行動に移──

 

ろうとしたが肩を叩かれたので、左隣の席へ視線を向ける。

 先程までは空席だった場所だが、今はストロベリーブロンドの髪をした美少女が座っていた。

 

「初めまして! 私の名前は一之瀬帆波。皆と仲良くなりたいと思ってるんだ! もちろん君ともね。仲良くしてくれると嬉しいな。これからよろしくね!」

 

 そう天真爛漫に俺に告げてくる少女。友達作りを始めようとしていた俺の前に仲良くしてくれと言ってくる美少女が現れるとは、まさに天は俺の味方をしているのではないかと錯覚してしまいそうになる。

 向こうが仲良くしてくれと言っているんだ。返す言葉はひとつしかない

 

「俺の名前は東城京司。これといった特徴はないが俺も皆と仲良くなりたいと思っていたんだ。俺とも仲良くしてくれると嬉しい。これからよろしくな、一之瀬」

 

「うん! よろしくね、東城くん」

 

 いやー緊張した。自己紹介だけでこんなに緊張するとは。やっぱり自分から話しかけに行ってたら爆死していたかもしれない。一之瀬が話しかけてくれて良かったと心からそう思う。

 しかし、これでは俺の目的は達成出来ていない。非常識かもしれないが、言ってみることにしよう。

 

「なぁ、一之瀬。ひとつ頼みがあるんだが、聞いてもらえるか?」

 

「なにかな? 内容にもよるけど、私ができることなら力になるよ」

 

「ありがとう、一之瀬。俺の頼みというのは……」

 

 そこで俺の言葉が途切れる。喉からなかなか言葉が出てこない。一之瀬はそんな俺の言葉の続きを待ってくれているようだった。意を決してその先を口にする。

 

「俺は一之瀬と友達になりたい。だから、俺と……友達になってくれないか」

 

 友達の定義は非常に難しいと俺は思う。どこからが友達なのか、その境界線は人によって違うだろう。だからこそ口に出した。

 自分には友達が出来たと、胸を張って言えるように。

 返ってくる言葉を楽しみ半分、不安半分で待っていると、一之瀬が口を開いた。

 

「私も東城くんと友達になりたかったんだ。もちろん友達になるよ」

 

 その言葉を聞いた途端、俺の内心は狂喜乱舞していた。もちろん表情には出していないが、俺の人生初の友達だ。喜ぶなという方が無理な話だろう。

 

「ありがとう、一之瀬。俺の最初の友達になってくれて」

 

「それはこちらこそだよ。でも、最初の友達って高校に入ってってこと?」

 

 あ、舞い上がり過ぎて言わなくてもいい言葉が漏れていたみたいだ。まあ隠すようなことじゃないし別にいいか。

 

「いや、人生で初めての友達だ。けど、だからといって変に気にかけないでくれると嬉しい。自然体で話せるのが1番だからな」

 

「うん、わかったよ。じゃあ……改めてよろしく、東城くん」

 

「ああ、改めてよろしく、一之瀬」

 

 こうして、俺に人生初の友達が出来たのだった。

 




 読んで頂きありがとうございました。
 ちなみに主人公の名前は東城 京司(とうじょう きょうじ)です。
 なんかルビ振るのよくわかんなかったんでルビつけませんでした。
 主人公のデータベースを書きたいと思いつつ、どう書けばいいか分かりません。特に学籍番号。
 至らない点は多々あると思いますが、多目に見てやってください。
 改めて、読んで頂きありがとうございました。
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