Bクラスで過ごす男の話   作:冬獅郎

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キャラ崩壊しないように書いたつもりですが、キャラ崩壊が起きてるかもしれません。


4話

 今俺の目の前にいる逆立ちをした男。

 いったい何者なんだ? こんな朝早くに外で逆立ちしてるとかどう考えても普通じゃない。

 それにしてもこいつは何年生なんだろうか? 場所は一年生の寮の傍だし、普通なら一年生だろうと判断できるが……。先ほどの口調がどうにも同じ一年生のものとは思えない。

 ……いや、俺はこいつと同じ顔を昨日どこかで見た気がする。どこで見たっけな……。

 ああ、思い出した。昨日校門の前に止まったバス。その中から出てきた人のうちの一人だ。

 この学校では敷地の外に出ることが禁止されている。あのバスの中にいたということは新しくこの学校に来た人間、つまり一年生で間違いないだろう。

 俺がそう結論付けていると、男は足を下ろし立ち上がりながら声をかけてきた。

 

「そこのホワイトヘアー君。初対面の相手に向かって、なんだこいつ、とはいささか失礼ではないかな?」

 

 どうやら俺の呟きが聞こえていたらしい。無意識にこぼれた言葉だったとはいえ、確かに初対面の相手に言う言葉じゃないな。

 しかし、相手が同級生だと分かってよかった。先輩である可能性が捨てきれなかった場合、同級生のことを先輩だと勘違いして敬語で話す間抜けな男、という悲しい構図が出来上がってしまうからな。

 

「悪い。理解の追い付かない状況に、思わず言葉がこぼれてしまったんだ」

 

 おお。同級生と話してるのにあんまり緊張していないぞ、俺。

 昨日いろんな人と接したから、人と話すのに慣れたのかもしれない。

 まあそのことは置いとくとして、これからどうするかを考えよう。

 Bクラスにこんなやつはいなかった。来月から始まるであろうクラス間の戦い。それが始まってしまったら他クラスの人間と深い仲になるのは難しいんじゃないだろうか。

 俺はBクラス以外の生徒とも友達になりたいと思っている。同じ人間なのに、クラス間で戦っているからという理由で仲良くなれないとかあほらしい。

 違うクラスに俺と気が合うやつがいるかもしれないしな。

 そう考えて俺はこいつに話しかけてみることにした。それにこいつは面白い。いきなり俺のことをホワイトヘアーと呼んできたこととか。

 とりあえず自己紹介をしてみようか。相手の名前くらいは知っておきたい。

 

「なあ、こんな時間にこんな場所で出会ったのも何かの縁だと、そう思わないか?」

 

「そういうセリフはレディに言われたいのだがね」

 

「それは悪かったな。とにかく、俺はこれも何かの縁だと思ってる。だから自己紹介のようなものをしたいんだが、どうだ?」

 

 これで向こうが自己紹介などどうでもいいと突っぱねてくれば、残念だがこの話は終わりだ。

 それでも名前くらいは聞き出したいが。

 

「ふむ……いいだろう。だが、貸し一つだ」

 

 なぜ俺が借りを作ることになっているのかはわからないが、受けてくれるようだ。

 

「じゃあ俺から……俺の名前は東城京司。Bクラスだ。これといった趣味はないが、運動は得意だ。ここにいるのも走り込みをするためだ。よろしく。」

 

「私の名前は高円寺六助。Dクラスさ。高円寺コンツェルンの一人息子にして、いずれはこの日本社会を背負って立つ人間となる男だ。それから……」

 

 そこで言葉を切られた。気になったので、聞き返す。

 

「それから、なんだ?」

 

 それを聞いた高円寺はニヤリと笑い、こう続けた。

 

「私が不愉快と感じる行為を行った際には、容赦なく制裁を加えることになるだろう。その点には十分配慮したまえ」

 

 ……なんて傲岸不遜なやつなんだろうか。

 

「不愉快と感じる行為とは何か聞いてもいいか?」

 

「1つ例を挙げるとすれば、醜い行動などかな? 私は醜いものが嫌いだからねえ。そんなものを目にしたら、果たしてどうなってしまうのやら」

 

 どうせならどうなってしまうのかも教えてほしかったが、教えてくれなさそうなので聞くのはやめた。こういうのって言葉にしないほうが怖いしな。

 さて、自己紹介も終わったしこれからどうしようか。

 俺は高円寺の自己紹介を聞いて、友達になりたいと思った。理由は単純、面白いからだ。

 しかし、高円寺に『友達になってくれ』なんて言っても蹴られるのがオチだ。となるとやっぱり共通の時間を積み重ねていくしかないか。

 こういう曖昧なものはあまり好きではない。こちらが友達だと思っていても向こうはそう思ってない、なんてことが起きるからだ。だからこそ昨日一之瀬に『友達になってくれ』と頼んだ訳だし。

 だが今回は仕方ない。『共通のことをやってたらいつの間にか友達になってた作戦』で行くとしよう。

 といっても、今の俺にできることはほとんどない。できることといえば走り込みに誘うくらいなものか。

 とりあえず誘ってみるか。そう思ったところで、高円寺から声をかけられる。

 

「ところで、先ほど君は走り込みをするためにここにいると言っていたね。私も似たようなことをしていたんだ。どうだい? 私のトレーニングについてくる気はないかね?」

 

 まさか向こうから誘ってくるとは。これに乗らない手はない。

 

「ああ、俺も一緒にやらせてくれ」

 

「ふむ。では、まず逆立ちをしたまえ」

 

 ……は? なぜ逆立ち?

 

「なんで逆立ちをするのか、聞いてもいいか」

 

「逆立ちの状態で、寮の外周を歩く。それが私のトレーニングメニューだからだよ。まさかできないなどと言うつもりはないだろうねえ」

 

 そういえば高円寺は逆立ちで俺の前に現れたな。

 思ったよりもハードなメニューだったが、一度話を受けた以上やらない訳にはいかない。

 

「いいや、やって見せるさ」

 

 俺は逆立ちの状態になる。高円寺もそれに続いた。

 

「それでは行くとしようか。しっかりついてきたまえ」

 

 そう言って高円寺は歩き出した。俺も遅れないように歩き出す。

 しかし、この構図はちょっとしたホラーなんじゃないだろうか。

 早朝に男二人が逆立ちで寮の周りを闊歩している。俺なら絶対に遭遇したくない場面だ。

 その内の一人が俺というのが、なんとも悲しいが。

 それにしてもこいつ……なんで俺のことを誘ったんだ? 今も鼻歌を歌っていてこちらに見向きもしないが。

 そんな俺の考えを見透かしたように高円寺が声をかけてきた。

 

「ところで君はこの学校になにかおかしな点があるとは思わないかい?」

 

「おかしな点って?」

 

「わざわざ説明しなくてもわかっているだろう?」

 

 確かに大半の生徒はおかしなところがあると思っているだろう。10万支給されたことだったり、無料商品の存在だったり。あるいは監視カメラに気づいた生徒もいるかもしれない。

 

「まあ確かにおかしなところはあるな。でも、それがどうしたって言うんだ?」

 

「そのことについて君の意見が聞きたいのさ。安心してくれたまえ、答えられなかったとしても責めたりはしないさ。これは私の気まぐれなのだからねえ」

 

 どう答えようか。とぼけてもいいが、そうすればこいつは俺に興味を失うだろう。そうなれば二度と話してくれないかもしれない。できればそれは避けたい。

 となると、適当に興味を持つように返すしかないか。すべてを話さなくても興味くらいは引けるだろう。

 

「ちょっとした仮説ならあるぞ」

 

「ほう? ではそれを聞かせてもらうとしようか」

 

「ああ。昨日うちのクラスの先生が『ポイントは毎月一日に振り込まれる。君たちには10万ポイントが既に支給された』って言っててな。そっちのクラスは言われたかどうかわからんが」

 

「確かにこっちのティーチャーも同じようなことを言っていたねえ」

 

「普通なら毎月10万だと思ってしまう言い回しだが、一言も『毎月10万支給される』とは言ってないだろ? だから毎月支給されるポイントは変動するんじゃないか、というのが俺の仮説だ」

 

「ふむ、君の言う仮説は可能性が高そうだねえ。だが……」

 

 だが? この話になにかおかしな点があっただろうか。

 

「君、私になにか言ってないことがあるだろう? 隠したところで私の前では無駄さ、正直に話したまえ」

 

「なんのことだかさっぱりわからないんだが」

 

「あくまでもしらを切ろうというのだね。では、先ほどの貸しをここで返してもらおうじゃないか」

 

 かまをかけているのか? ……いや、違うか。こいつは絶対の自信を持って言っている。

 どうやら逃げることはできないらしい。それにしても……。

 

「なあ。なんで俺が隠してるってわかったんだ? 表情には出てなかったと思うんだが」

 

「確かに君のポーカーフェイスはなかなかのものだったが、私には通用しない。なに、気を落とすことはないさ。相手が私じゃなかったら、確実に騙されていただろうからねえ」

 

 別に根拠があったわけではないようだが、それであそこまで自信満々に言えるとは。

 

「そうか。隠していて悪かったな、次は隠さず話す。だが、口外するのはやめてくれよ? あまり人に言いふらすような話じゃないからな」

 

「すまないが、それを決めるのは君ではなく私だ。君の望むようにことが動くかは話を聞いた私の気分次第なのだよ」

 

 参ったな、これは。高円寺は自分の好きなように行動するようだ。それを縛ることは容易ではないだろう。口外しないと誓ってくれるのなら教えようと思っていたんだが。

 改めて、俺はどうするべきか考える。

 次もごまかしてみるか? 正直言って、もっとうまく嘘を吐ける自信はある。ある、が……それも高円寺に見破られるかもしれない。

 そうなれば、高円寺の言う『制裁』とやらが待っている可能性もある。『次は隠さず話す』と言われたのに嘘を吐かれたとわかれば、誰であろうと不愉快に感じるはずだ。

 ならば本当のことを話すか? これもあまり人に教えたいような内容ではない。

 この時点でのクラスポイントの採点基準はおそらく生活態度だろうと俺は考えている。これが合っていた場合、生徒の優劣でクラスが決まる学校の性質上、おそらく4月の終了時点でBはD相手にかなりの差をつけることになるはずだ。

 その差が俺の言葉一つで無くなることになるかもしれない。もちろん高円寺が言いふらせばだが。

 ……よし、決めた。学校のシステムについては話さない。

 俺が制裁を受けることと、クラスの未来。天秤にかければ後者を選ぶのは当然だろう。

 

「すまないがやっぱり話すことはできない。この話はこれからのことを大きく左右するかもしれないからだ」

 

「ふむ……まあいいだろう。今の君の言葉で大体のことはわかったからね。あとは自分で突き止めてみるさ」

 

 ああ。許してくれるのか、よかった。

 それにしても今の俺の言葉で大体わかったとか、化け物か? こいつ。

 

「それに、私の興味の対象はもうそこにはないのだよ」

 

「どういうことだ?」

 

「君、今寮を何周したか覚えているかい?」

 

「いや、話に夢中でそんなものを数えてはいなかったが」

 

「今は8週目さ。ここまでくると相当な距離になる。なのに君は苦しそうな顔一つせずに私についてきている。それに先ほどの話といい、私の興味は既に君に移っているのだよ」

 

 どうやら俺に興味を持ってくれたようだ。友達になれる可能性が出てきたな。

 

「なら、そろそろ俺のことを名前で呼んでくれないか? 君とかホワイトヘアーとかでしか呼ばれてないからさ」

 

「では、東城ボーイと呼ばせてもらうことにしようか。ところでさっきの学校についての話だが、ほかのBクラスの生徒たちは知っているのかな?」

 

 と、東城ボーイって……。まあ確かに名前を呼んでくれている訳だし、いいか……?

 

「いや、この話はBの皆にもしていないし、するつもりもない。危機的状況になれば気づけるように促すことくらいはするかもしれないが、答えを教えるつもりはないな」

 

「では私も黙っておいてあげよう」

 

「いいのか?」

 

「これも私の気まぐれさ。なに、約束は守る、安心してくれたまえ」

 

「ありがとな、高円寺」

 

 このやり取り、なんだか友達っぽいな。向こうはそう思ってなさそうだが。

 

「俺はこの辺で部屋に戻ることにする」

 

 そろそろ部屋に戻って学校へ行く用意をしなければならない時間だ。

 

「おや、もう行くのかね? まだ早いのではないかな?」

 

「ちょっと用事があるんだ。できれば早めに終わらせておきたい」

 

 そう。俺は学生証と端末を取りに行って、飯を食いたいのだ。普通に登校して返してもらったのでは、朝食を食べる時間がないからな。

 

「その用事とやらも気になるが、聞かないでおいてあげよう」

 

「悪いな、助かる」

 

 ここで別れるのももったいないな、ちょっと聞いてみるか。

 

「ところで、高円寺は明日もここにいるのか?」

 

「それはわからないねえ。すべては私の気分次第さ」

 

 明日もいるなら走り込みに誘ってみようと思ったが、そううまくは進まないようだ。

 

「そうか。今日はいろいろと楽しかった、ありがとな。それじゃあまた」

 

「シーユー、東城ボーイ」

 

 そう言って、俺は寮へと戻った。ちなみに高円寺はまだ続けるようだ。

 それにしても面白いやつだった。また寮の周りで見かけたら声をかけてみよう。

 そんなことを考えながらシャワーで汗を流し、手早く着替えて学校に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

****

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 学校についた俺は職員室へと足を運び、星之宮先生を呼び出した。

 

「昨日お願いしたもの、もうできてますか?」

 

「うん、できてるよ。でもずいぶんと来るのが早いね。なにかあったのかな?」

 

「実は昨日学生証を渡していたので何も食べてないんですよ。なので早めに返してもらって何か買いに行こうと思っているんです」

 

 なんともまあ間抜けな話だ。それを聞いた星之宮先生は苦笑いをしながら説明を始めた。

 

「じゃあ説明するね。新しく作った口座は簡単に言えば金庫のようなものかな。任意の額を振り込んで貯めておいたり、引き出したりして使うことができるよ。でも、毎月振り込まれるポイントや、買い物なんかは前の口座で行われるから、そこは注意してね」

 

 そう言って星之宮先生は学生証と2つの端末を渡してきた。

 

「こっちが新しい口座が入ってる端末だよ。とは言ってもポイントの移動と確認しかできないけどね。何か質問はあるかな?」

 

「いえ、特にはないですね。それではこれで失礼します」

 

「ちゃんと栄養あるもの食べてきなよ~」

 

 そんな先生からの気遣いの言葉を聞いてこの場から立ち去る。

 通常の端末で所持ポイントを確認してみると、0ポイントと表示されていた。続けて金庫の端末を確認してみると、400万ちょっとの額が表示されていた。

 通常の端末と金庫の端末って呼びづらいから、財布と金庫というふうに呼ぶことにしよう。

 俺は金庫から10万ポイントを引き出し、財布へと移動させる。とりあえずはこれでいいだろう。

 金庫にあるポイントは基本的には使わないことにしよう。これはいざという時の保険だからな。日々の生活は毎月振り込まれるポイントだけで十分だろう。

 それにしてもこの金庫、持ち歩いていると何かと不安なので一旦寮に戻り、しっかりと保管しておいた。余談だが、もう高円寺は寮の周りにはいなかった。

 俺は適当にコンビニでパンを見繕い、食べながら学校へと向かった。




パソコンを自作してたのでここ数日書けませんでした。
高円寺がうまくかけているか不安です。こいつのセリフや行動を考えるだけで時間が消し飛びました。
あと、お気に入り登録ありがとうございます。モチベが上がりました。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
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