Bクラスで過ごす男の話   作:冬獅郎

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キャラ崩壊してるかもしれません(N回目)


5話

 学校二日目、授業初日ということもあって、授業の大半は勉強方針等の説明だけだった。

 先生たちは進学校とは思えないほど明るくフレンドリーで、多くの生徒が拍子抜けしていた。

 まあ、先生たちがどれだけフレンドリーであろうとも気を抜かない方がいいだろうが。

 時は変わって昼休み。顔見知りになったと思われる生徒たちが話をしながら、次々と教室から出ていく。

 俺も行動を起こさなければ。そう思い昨日話しかけようと思っていた生徒のもとへと向かった。

 幸い、と言っては悪いがその生徒は一人で教室から出ていこうとしていた。話しかけるチャンスだ。

 昨日の自己紹介で覚えた名前を呼び、声をかける。

 

「神崎、ちょっといいか」

 

「ん? ああ、構わないが。お前は確か東城だったか?」

 

 ファーストコンタクト成功だ。しかし名前を呼ばれるとは。昨日の自己紹介の時に覚えてくれたのだろうか。結構嬉しいな。

 

「ああ。東城京司だ、改めてよろしく」

 

「神崎隆二だ、こちらこそよろしく。ところで、俺に何か用か?」

 

「昼飯でも一緒にどうかと思ってな。もちろん無理にとは言わないが」

 

「いや、俺も今から食べに行こうと思ってたところだ。断る理由もないし、一緒に行かせてもらっていいか?」

 

「もちろんだ。誘ったのは俺だしな」

 

 無事に神崎を誘うことに成功し、二人で食堂に向かった。

 食事をしながら色々と話しをしていく。

 といっても、俺が無趣味なせいで俺からはあまり話を振れない。なので、神崎に振られた話に答えるという感じで会話は進行していた。

 その時に、この学校はどこかおかしいと思わないか? と聞かれたが、おかしい点はあるが結論は出せてないと濁しておいた。

 それにしても自分から食事に誘ったくせに話も振れないとは。情けないし、神崎に申し訳ない。とりあえず今日話に出てきたものに関しては学んでおこうと、そう思った。

 そんな神崎との食事を終え、教室に戻る道中。俺は話を切り出した。

 

「なあ神崎。こんなこといきなり言い出して悪いんだが、俺と友達になってくれないか?」

 

 話をしていて感じたが、神崎とは結構気が合うし色々と話しやすい。なので友達になりたいと思っていた。

 

「もちろんだ。俺も東城とは良い友人になれそうだと思っていたんだ」

 

 嬉しいことに、神崎も俺と似たようなことを考えていたようだ。

 

「そう言ってもらえると嬉しい。実は、断られるんじゃないかと思って結構不安だったんだ」

 

 そう言った直後、スピーカーから女性の声が流れてきた。

 

『本日、午後5時より、第一体育館の方にて、部活動の説明会を開催いたします。部活動に興味のある生徒は、第一体育館の方に集合してください。繰り返します、本日──』

 

 説明会か、どうするかな。

 今のところ部活をするつもりはないが、もしかしたら興味を引くものがあるかもしれない。

 放課後に予定もないし、行ってみるか。

 

「東城は説明会に行くのか?」

 

 部活動に興味があるのか、神崎がそう聞いてきた。

 

「部活に入るつもりはないが、一応見ておこうとは思ってる。神崎は興味あるのか?」

 

「いや、俺は部活動に興味はない。東城が部活に興味があるのか聞いてみただけだ」

 

「そうか」

 

 それを聞いて神崎を誘おうかと考えたが、やめておいた。本人が興味がないと言っている以上、無理に誘うのはよくないだろうと考えたからだ。

 そんなやりとりを終えた後、俺は一つ聞き忘れていたことを思い出した。

 

「そうだ神崎。よかったら連絡先を交換しないか?」

 

「そうだな、その方が何かと便利そうだ」

 

 携帯を取り出し、神崎と連絡先を交換する。

 俺の携帯に初めて人の連絡先が追加された瞬間だ。そのことに感動を覚えながら、俺は自席へと戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

****

 

 

 

 

 

 

 

 

 時は変わって放課後。

 俺は体育館へと向かうべく席を立つ。と、そのタイミングで一之瀬から声をかけられた。

 

「東城くんはこれから部活動の説明会に行くのかな?」

 

「ああ、そのつもりだが」

 

「私も行こうと思ってたんだ。よかったら一緒に行かない?」

 

 どうやら誘ってくれているらしい。一人で行くつもりだったが、断る理由もない。

 

「そういうことなら、俺も一緒に行かせてくれ」

 

 そう返事を返し、二人で体育館に向かう。

 その道中、少し気になることがあったので一之瀬に話しかけた。

 

「一之瀬は部活に興味があるのか?」

 

「私の場合は部活動にそこまで興味があるわけじゃなくてね。生徒会に入りたいから見に行く感じかな」

 

 なるほど、生徒会か。しかし……。

 

「生徒会の紹介なんてあるのか?」

 

「それは星之宮先生に聞いたんだ。一番最後に生徒会の紹介があるんだって」

 

 なるほど。部活の紹介だけだと思っていたが、どうやら生徒会も同じことをするようだ。

 

「東城くんはなにか部活動をするのかな?」

 

「いや、今のところするつもりはない。けど、なにか面白そうなものがあるかもしれないからな。一応見ておこうと思ったんだ」

 

 そんなことを話している間に体育館についた。早く来たせいだろうか。体育館の中には予想していたよりも生徒はいない。 

 そのおかげで、俺たちは比較的前の場所を取ることができた。

 始まるまで結構時間があったので、一之瀬と連絡先を交換してもらった。驚くべきことに、もうクラスのチャットグループというものができていたらしく、俺もそれに入れてもらった。

 そんな折、一つの衝動が俺に襲いかかってくる。

 

「悪い、少し外す」

 

 俺はトイレに行く旨を短く伝え、その場所を後にした。

 トイレから戻ってくると、生徒の数が先ほどよりかなり増えていた。これはもう一之瀬のところに戻ることはできないかもしれない。そう思わせるほどの密度だった。

 結局元の場所に戻ることは諦めて、後ろの方で説明会が始まるのを待つ。このことは一之瀬にもチャットで伝えておいた。初めて使ったがすごい便利だな、これ。

 そんなわけで始まるまでやることもない。ボーっと突っ立っていた俺の耳に、とても聞き覚えのある声が届いた。

 この声は昨日の二人組か……? いやいやまさか。男の方はあんなにボロボロに言われてたんだ。一緒に行動してるとかありえないだろう。

 そう思って声のする方向──つまりは隣に視線を向けると、俺の予想を裏切るように昨日校門前で見た男女二人がいた。しかも昨日と同じような話をしている。

 なぜそんな二人が今も一緒にいるのかは気になるが、俺も同じ轍を踏みたくはない。昨日は二人のことを見ていたから俺にも矛先が向いたのだ。

 男子の方とは話をして見たかったが、今日は知らぬ存ぜぬで通すとしよう。

 

「一年生の皆さんお待たせしました。これより部活代表による入部説明会を始めます。私はこの説明会の司会を務めます、生徒会書記の橘と言います。よろしくお願いします」

 

 どうやら始まるみたいだ。体育館の舞台上に、ズラッと部の代表者が並ぶ。本堂先輩の姿もそこにあった。

 しかし、二人の話を聞くつもりはなかったが、場所的に嫌でも聞こえてしまう。そのため、隣の会話が気になって、部活の紹介が全く耳に入って来ない。

 なんでそんなに生々しい話をこの場でするんだよ。周りの奴らのやる気が削がれちゃうだろ。

 心の中でそうツッコミを入れていると、不意に二人の会話が途切れた。さっきまであんなに楽しそう? に話していただけに、なにかあったのかと気になってしまう。

 結局俺は好奇心に負け、隣を見てみる。その瞬間、男子生徒と目が合った。

 ……なんか気まずいな。そもそもなんでこっちを見てるんだろう。

 そんな俺の考えが伝わったのか、男子生徒が口を開いた。

 

「あー、えーと、昨日校門の前にいたやつだよな? さっきもこっちを見ていたみたいだし、ちょっと気になって声をかけようとしていたんだ」

 

 まさか向こうもこっちに気づいていたとは。

 先ほどの二人の会話の内容から考えると、クラスで友達ができなかったから俺に声をかけようとしたとか、そんなとこだろうか。

 

「ああ。俺は確かに昨日校門の前にいた。だからこそ、昨日あれだけ険悪そうだったのになぜ今も一緒にいるのか気になってな。名前は、綾小路と堀北だったか」

 

「話、聞いてたんだな」

 

「悪い。聞くつもりはなかったんだが……どうしても聞こえてしまってな」

 

 これに関しては本当に申し訳なく思う。昨日人の会話を聞くなと堀北に言われたばかりだし。

 

「いや、気にしないでくれ。ただ、名前を教えてもらってもいいか?」

 

 確かに、自分の名前は知られているのに、相手の名前は知らないというのは気持ちのいいものではないだろう。

 

「俺の名前は東城京司、Bクラスだ。趣味なんかは特にないが、仲良くしてくれると嬉しい。よろしく」

 

「じゃあオレも改めて。オレの名前は綾小路清隆、Dクラスだ。オレも趣味は特にないが、何にでも興味はある。そして事なかれ主義だ。それから友達も募集中だ。よろしくな」

 

 友達募集中か。これは好都合だ、ここで切り出してみるとしよう。

 

「友達募集中なら、俺と友達になってくれないか?」

 

「それはもちろん大歓迎だが……ずいぶんと唐突だな」

 

「昨日の話とさっきの話を聞いて、お前とは気が合いそうだと思ったんだ。それに、俺も友達を募集中なんだ」

 

「ということは、お前も事なかれ主義なのか?」

 

 そう聞かれて考えてみる。俺は事なかれ主義なんだろうか? ……考えてみたがよくわからない。

 

「事なかれ主義かどうかはわからないな。ただ、青春を謳歌した高校生活を友達と送ってみたいとは思ってる」

 

「そうか。よければもう一つ教えてくれ。友達を作るときって、お前みたいに相手に切り出すのが普通なのか? オレはなんというかこう、自然と友達になっていくものだと思ってたんだが」

 

「すまないが、これが普通なのかどうかはわからない。でも、友達の線引きって人によって違うだろ? こっちが友達だと思っていても相手はそう思ってない、なんてことになるのが嫌なんだ。だから俺は、極力相手に直接言うようにしようと思ったんだ」

 

 俺のこの考え方は綾小路の参考にはならないかもしれないな。それどころか、もしかしたら変人だと思われているかもしれない。

 ところが、俺のこの予想は綾小路の次の一言でひっくり返ることになる。

 

「なるほど、そういう考え方もあるのか。オレには今まで友達がいなかったから参考になった。教えてくれてありがとな」

 

 どうやら綾小路も俺と同じように友達がいなかったらしい。こう言っては悪いが、その点でも気が合いそうだった。

 

「参考になったんならよかった。じゃあまあ、これからよろしく、綾小路」

 

「こちらこそよろしくな、東城」

 

 俺たちは連絡先を交換し、舞台に視線を戻した。

 綾小路と長く話をしていたのか、舞台の上にはもう数人しか残っていなかった。

 そこから一人二人と去っていき、いよいよ最後の一人となった。

 あの人物が生徒会の紹介をするんだろう。いったいどんな紹介をするんだろうか。

 そう思って見ていたが、その人物は一向に言葉を発さない。ほかの生徒も不思議に思ったのか、ヤジを飛ばす奴まで現れていた。

 

「頑張ってくださ~い」

 

「カンペ、持ってないんですか~?」

 

 そんな言葉が投げかけられても、舞台上の人物が声を発することはない。ただ静かに、ジッと一年生たちを見下ろしていた。

 それからしばらくすると、ざわめきに包まれていた体育館の空気が、徐々に変わっていった。話してはいけないと思わせるほどの、静かで張り詰めた空気に。

 もはや何人にも口を開くことはできない。そんな静寂が、30秒ほど続いた頃だろうか。ゆっくりと全体を見渡しながら舞台上の人物が演説を始めた。

 

「私は、生徒会長を務めている、堀北学と言います。生徒会もまた、上級生の卒業に伴い、一年生から立候補者を募ることとなっています。特別立候補に資格は必要ありませんが、もしも生徒会への立候補を考えている者が居るのなら、部活への所属は避けて頂くようお願いします。生徒会と部活の掛け持ちは、原則受け付けていません」

 

 口調こそ柔らかいものだったが、肌を突き刺すような空気だ。この人が生徒会長だと言うのなら、一之瀬は結構苦労するかもしれないな。

 

「それから──私たち生徒会は、甘い考えによる立候補を望まない。そのような人間は当選することはおろか、学校に汚点を残すことになるだろう。我が校の生徒会には、規律を変えるだけの権利と使命が、学校側に認められ、期待されている。そのことを理解できる者のみ、歓迎しよう」

 

 淀みなく演説すると、真っ直ぐに舞台を降り体育館を出ていった。

 周りの生徒たちは皆一言も発さない。というより、発せないようだった。もちろん俺も例外ではないが。

 

「皆さまお疲れ様でした。説明会は以上となります。これより入部の受付を開始いたします。また、入部の受付は4月いっぱいまで行っていますので、後日を希望される生徒は、申込用紙を直接希望する部にまで持参してください」

 

 のんびりとした司会者の声で、張り詰めていた空気から解放された。

 

「じゃあ、綾小路。人を待たせてるから俺はこれで。今日はありがとな」

 

「ああ、またな」

 

 綾小路と別れの挨拶を済ませて、一之瀬のもとへ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

****

 

 

 

 

 

 

 

 

 一之瀬と合流した俺は、先ほどのことについて話を始めた。

 

「さっきの生徒会長すごかったな。なんというか、場を支配する空気というか」

 

「そうだね。やっぱり生徒会長は伊達じゃないってことかな」

 

「それにしても厳しそうな人だった。なあ一之瀬。本当に生徒会に入るつもりなのか?」

 

 俺ならあんな厳しそうな人の下で働きたくないと思ってしまうが。

 

「うん。そのつもりだよ。生徒会には絶対に入りたいかな」

 

 そう言う一之瀬の言葉には確固たる意志を感じた。ならこれ以上口出しするのは野暮ってものだろう。

 

「東城くんはなにか面白そうな部活を見つけられた?」

 

 そういえば綾小路と話していて紹介のほとんどを聞いていなかったな。まあいいか、元々部活をするつもりなんてなかったわけだし。

 

「いや、残念ながらそんな部活は見つからなかった。だから部活以外で学校生活を楽しむことにする」

 

 そんな感じの会話をしながら、俺たちは寮へと戻っていった。




 話全然進んでなくてすみません。今回は神崎と綾小路の登場回にしました。本当なら柴田に主人公を部活説明会に誘わせようと思ってたんですが、一之瀬が出てこなくなるのでやめました。
 主人公が壊れた機械のように友達になってくれと言っていますが、それは作者のせいです。というのも、作者にはほとんど友達がおらず、友達の作り方というものをよくわかってないんです。許してください。
 あと、話の大筋は決めてるんですが、こういう細かいところは考えてなかったので、執筆がかなり遅れました。前回の高円寺なんかは最初から考えていたのですんなり書けたんですけどね……。
 ここまで読んでいただきありがとうございました。
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