Bクラスで過ごす男の話   作:冬獅郎

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投稿機関が空きまくってたくせに今回は文字数も少なく内容もつまらないと思います。
それでもいいという方は見てやってください。


7話

「え……嘘って……え? どういうこと……?」

 

 どうやら一之瀬はまだうまく俺の言葉を飲み込めていないらしい。

 そんな一之瀬に俺は改めて事実を突きつける。

 

「言葉通りの意味だ。俺にそんな過去はない」

 

「ど……どうしてこんなことを……?」

 

 一之瀬は気丈に振舞おうと必死になっているようだが、困惑や恐怖といった感情を隠しきれていない。

 まあそれもそうか。俺は今気味の悪い奴として映っているに違いない。

 むしろこの状況で気丈に振舞おうとしているあたり、さすがと言うべきか。

 

「どうして、か。まあ、そうだな。一言でいえば、単なる俺の好奇心、といったところか」

 

「好奇心?」

 

いきなりこんなことを言っても分かるわけがないか。順を追って説明することにしよう。

 

「この学校には、入学した時点で優秀な生徒から順にクラスへ配属されるという特殊なルールがある。最も優秀な生徒はAクラス、ダメな生徒はDクラス、といった具合にな」

 

 これを聞いた一之瀬は何か言おうとしていたが、それを制するように言葉を続ける。

 

「この学校のルールはほかにもいくつかある。後でまとめて話すから今はとりあえず聞いていてくれ」

 

 どうせ話すのなら後からまとめて話した方が楽だしな。

 

「この学校の仕組みを知ったとき、思ったんだ。一之瀬は学力も運動能力も人並み以上、そしてコミュニケーション能力も申し分なく誰からも信頼されている。そんな生徒はAクラスにもそうそういない。にもかかわらずなぜ一之瀬がBクラスにいるのかってな。俺はその理由を知りたくなった」

 

「それが東城くんの言う好奇心……」

 

 思わずといった様子で呟く一之瀬。

 

「その通りだ。少し話は逸れるがそういう生徒は一之瀬以外にもいる。例えば……そうだな。高円寺六助という男を知っているか?」

 

「名前は聞いたことあるけど……詳しくは知らないかな」

 

 まあ他クラスの人間のことなんて詳しく知っているはずもないか。まだ入学して一か月しか経ってないしな。

 

「俺は高円寺と少し関わりがあるから知っているが、高円寺の身体能力は学年……いや学校全体で見てもトップレベルだ。そして頭も相当キレる。学力に関してはわからないがこれもおそらく相当なものだろう。こんな風にポテンシャルだけで見れば間違いなくAクラスレベルだ。だが高円寺はDクラスに配属されている。どうしてか気にならないか?」

 

「それは確かに……気になるかも」

 

「そういうことだ。まあ高円寺の場合は考えるまでもなく答えは出ていたが」

 

「え? なんでDクラスにいるのかわかったの?」

 

「簡単な話だ。あいつは確かに能力は高いが協調性というものが欠如している。つまり能力だけじゃなく考え方や人格といった要素もクラス分けに絡んでいるということだ」

 

「なるほどね……」

 

 少し話が逸れ過ぎたか。そろそろ本題に戻ろう。

 

「ここからヒントを得た俺は最初一之瀬の人格に何らかの問題があるんだろうと考えていた。だが、お前は裏表もないし、協調性もある。高円寺のように人間性に問題があるとは思えなかった」

 

 まあいつも演技をしていて、なにかとんでもない本性を隠している、という可能性も考えないではなかったが。

 

「だから考え方を変えた。社会で人が人を評価する基準は大体が能力と内面、そして経歴だ。能力と内面に問題がないのなら、過去になにかあったのかもしれない、とな」

 

「けどそんな憶測だけじゃこんなことをしようとは思わないよね?」

 

 なかなかに核心を突いている質問だな。この状況下でも冷静さを取り戻しつつあるということか。

 

「それがただの憶測だったらな。けどその憶測を確信に変える出来事があったのさ」

 

「その出来事って?」

 

「監視カメラのことを教えた時。具体的に言うなら、『万引きの防止』と俺が言った時だ。気づいていたか? 俺がそう言った時、自分の目が泳いでいたことに」

 

「そ、そんなこと……」

 

 動揺するのも無理はない。そんなことは意識すらしていなかっただろう。

 

「ないと思うならそれでもいい。が、実際にほんの一瞬だけお前は反応していた。その時点で確信したんだ。経緯はどうであれ一之瀬は万引きをしたんだと」

 

 あの時、一瞬だけ瞳が泳いだのを俺は見逃さなかった。

 無意識のうちに現れる反応。それは何よりも真実であることを確定づける材料になる。

 

「過去に何があったのか、それはわかった。だがお前のような人間が一体どういう経緯で万引きという行為に及んだのか、そのことがより知りたくなった。その手段として、こうして作った『悲劇のストーリー』をお前に聞かせることにした訳だ」

 

 俺が最初に秘密を打ち明けることで、話しやすい環境を作る。加えて、『東城にだけ過去の話をさせてしまった』という罪悪感を利用する。

 

「……なるほどね。私は東城くんの策にまんまと乗せられていたってわけだね。……けど、東城くんは私の過去を知ってどうするつもりなの……?」

 

「言っただろ? ただの好奇心だと。これをネタにお前を脅迫したりすることもないし、このことを誰かに言いふらすつもりもない。それは約束しよう」

 

 これを聞いて一之瀬は安心したのか少しだけ表情を崩す。だが、俺の話はこれで終わりじゃない。

 

「ただ、それでいいのか? 確かに今年一年、俺が黙っていればお前の過去が公になることはないだろう。が、一年後、二年後はどうだ? お前と同じ中学の奴がこの学校に来る可能性は十分にある。そしてお前の過去が広められる可能性もな。そうなった時、お前はまた自分の殻に籠るのか?」

 

「そ、それは……」

 

 容赦なく現実を突きつける。

 そう、俺が黙っていることは問題の先延ばしに過ぎない。そのうち必ず己の過去を克服しなければならない時が来る。

 

「そうじゃないだろ。お前は確かに万引きという犯罪行為をした。それは許されざることだったかもしれない」

 

 そこで一旦言葉を区切る。

 

「でも、刑罰に問われたわけじゃない。なら、償うべき罪なんてものはないはずだ。お前はただ、自らの罪の意識に囚われ、自分を責め続けているだけだ」

 

 一之瀬の目を見て、言葉を紡ぐ。

 

「過去に囚われるな、前を見ろ。失敗は誰にだってある。それをこれから先にどう活かすか、それが大切なんだ」

 

 それを聞いた一之瀬は、うつむいたまま何も言葉を発さなくなった。

 果たして、俺の言葉は一之瀬の助けになっただろうか。願わくば、これをきっかけに己の過去を克服してほしい。

 もちろんそれは簡単なことではないだろう。自分の罪を認め、向き合い、克服するということは誰にでもできることではない。

 ただ、俺は一之瀬にならそれができると、そう信じている。

 

 

 

 

 

 

 

 

****

 

 

 

 

 

 

 

しばらくして、一之瀬は顔を上げた。

 

「落ち着いたか?」

 

「うん、もう大丈夫。東城くんの言う通り、いつまでもこうしている訳にはいかないからね。私はもう過去を振り返らない」

 

「そうか。その方がお前らしいよ」

 

 暗く落ち込んでいる姿より、堂々と明るく過ごしている姿のほうが一之瀬には似合う。

 個人的にも落ち込んでいる一之瀬はあまり見たくないしな。




内容がスカスカだし一之瀬の心情の変化もうまくかけてないですごめんなさい
続きは近いうち投稿します

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