2000年9月13日、
突如、南極で発生した大爆発、セカンドインパクト。
その影響で、地軸は大きく変動し、
日本は、常夏の国へと変わった。
そんな史上最悪の大災害から、14年。
降り注ぐ日差しが、じりじりと肌を焼くなか、
アタシは、こんな日に待ち合わせを設定した人物を心底恨みながら、地図に示された待ち合わせ場所へと向かっていた。
「おかしいわね、この辺のはずなんだけど…」
相手には悪いけど、待ち合わせの時間は過ぎてしまっている。
帰っちゃったのかしら?
まさかね、用事があるのは相手のほうだもの。
なら自分から呼び出しておいてさらに遅刻したって事?
「帰っちゃおうかしら」
ほんとに
「あの…」
後ろから声がした。
ん?アタシ…?
「惣流さん…だよね?」
あ、コイツ、同じクラスのヤツじゃない…えっと…
「碇…くん?どうしたの?」
「えっと、避難、しないの?」
「避難?何のこと?」
「気づかなかったの?…ほら」
そう言って、碇はスマホを差し出した。
「なになに…関東、東海地方全域に緊急事態宣言が発令されました…何よこれ!」
やけに
「逃げ遅れたらまずいよ、避難しないと」
「わかってるわ、でも…」
「どうかしたの……危ないっ!!」
「きゃっ!!何なのよぉ!!」
すごい音!鼓膜破れるかと思ったわよ!!
「何よ、今の!ミサイル!?」
「攻撃が始まってる…逃げ遅れたんだ」
「逃げ遅れたって……きゃっ!!」
立て続けに爆発音、続いて爆風がビルの間を吹き抜けていく。
「ちょっと!死ぬのはイヤよ!どこに逃げればいいのよ!?」
「それは…もう遅いかもしれない」
はぁ!?
「じゃ、じゃあどうすんのよ!?」
「うん……」
「何がうん、よ!!………待って、何か聞こえる」
これは…車の音…?
「やっと来たよ、ミサトさん」
あっ!車!!こっちよ!!助けて!!
碇が車に向かって手を振っている、アタシも同じように手を振った。
こちらに気付いてくれたのか、車は一直線に向かってくる。
そのまま減速、見事にスピンターンをきめて、停車。
「惣流さん!乗って!」
そう言って碇は助手席に乗り込んだ、アタシも後部座席に滑り込む。
「出すわよ、しっかりつかまってて!」
そう言うと運転手の女は、派手にスキール音を響かせながら、車を発進させた。
アタシと碇を乗せた車は、市街地を抜け、幹線道路を走っていた。
「ふー、ここまで来れば安全か」
「あなたが碇シンジくんね?で…」
ルームミラー越しに女と目が合う。
「同じクラスの子です、逃げ遅れたみたいで…」
「あー、いいのいいの、惣流アスカちゃんよね?」
…?アタシのこと知ってんの?
「はい…そうですけど」
「あなたを迎えに来たのよ。てか写真見なかった?」
写真……ああ、地図と一緒にしてあったやつか。アンタのだったのね、あのフザけた写真…
「迎えに来たって、どういうことですか?」
「シンジくんには言ってなかったかしら、アスカちゃんも一緒よ」
あたしも聞いてない。
「そうですか…」
碇はどこか腑に落ちない様子。
「ま、それはそうとして…ちょうど後ろ、見えるかしら?」
何が?…見えるったって、ビル以外…ん?あそこ…飛行機がたくさん…
「…あれ何…動いてる?」
人型で…黒っぽい、結構な大きさだ。周りに群がっている飛行機が小さく見える。
「見えたかしら、あれが緊急事態宣言の原因よ」
葛城ミサトは、何事もないかのように車を走らせる。
「原因って…じゃあ、こっちに向かって来てるのはマズいんじゃない!?」
「住民の避難は、ほぼ完了してるわ。確認済みよ」
確かにアタシと碇以外には誰もいなかった。
「見てください、離れていきますよ…」
碇の言う通り、群がっていた飛行機が離れていく。
「どうかしたの?」
葛城ミサトが振り返る。
「…ちょっと…ちょっと!!ちょっと!!N2地雷を使う気!?…ふせて!!!」
瞬間、凄まじい閃光が目を焼く。遅れて轟音。大気が歪むのがわかる………凄まじい衝撃と共に体が宙に浮いた。
……
「うーん…大丈夫じゃない?…ほら、かかった…あ、シンジくん?悪いけど惣流さんのこと、一人で大丈夫よね?…ありがと」
……
「…なんでアスカが……」
話し声が聞こえる。あぁ…眠い、何してたんだっけ…アタシ。
「もうすぐ、ジオフロントが見えるわ、本物を見るのは初めてでしょう?」
……車に乗って…で、あのでっかいバケモノ…それで…
「目が覚めたのね、アスカちゃん?気分はどう?」
葛城…さんが、覗き込んでくる。
「爆発があったのは覚えてる?…それに巻き込まれて、あなたは気絶していたの」
なんとなく思い出してきた。
「自衛隊がやったんだけど、あの爆発で一時的にヤツの進行は止まったわ」
それで?
「今はジオフロントに向かってるの、もうすぐよ、ほら、見えてきた」
規則正しく並ぶランプの先にトンネルの出口が見える。
「すごい…」
本物のジオフロントだ!写真でしか見たことなかった。
集光ビルに集められた光が明るく木々を照らす。
もし何も知らないままこれを見せられて、ここが地底だなんて誰が思うだろう。
「どう、驚いた?…あそこに黒い建物が見えるでしょ、この線路はあそこに続いてるの」
つまりそこに向かってるのね、でもジオフロントにある施設なんて…
「まだ暫くかかるから、景色でも楽しんでて。あとこれ、今は読まなくてもいいわ」
そう言って、冊子が手渡された。
”ようこそネルフ江”……じゃあやっぱり
「アタシ達、ネルフに行くんですか」
国連所属の研究機関ネルフ、その本部はここ、第三新東京市にある。
「ええ、あなた達には、ネルフ本部に来てもらいます」
それにしても、わざわざ呼び出したってことは何か要件があったんだろう、まあ、今となってはそれどころじゃないんだけど。
破れた窓を流れていく景色をただぼんやりと眺める。
光が地底湖に降り注いで湖面をきらきらと輝かせる。きれい…とてものどか、地上での混乱がまるで嘘みたい。
「もうすぐ本部に着くわ、降りる準備しておいて」
景色に気を取られているうちに、本部のすぐそばまで来ていたみたいだ。
「本部って構造がすごく複雑だから…はぐれないようにね」
葛城さんは、どこか苦々しげにそう念を押した。
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葛城さんの言った通り、ここはまるで迷路みたい。
どの通路も、照明やドアの配置がそっくり同じように作られていて、先に進んでる実感が全くない。
暫く歩くと丁字路、右に…今度は十字路、直進。廊下、廊下、……………行き止まり。
「ここ、さっきも通りましたよ」
アタシと碇の冷ややかな視線に葛城さんは”うっ…”と言って固まる。
「しっ、システムは活用するためにあるんだもの!」
そう言うと、急いで近くにあったインターホンをコールし始めた。
「おカタい感じかと思ったら、案外そうでもないみたいね」
隣にいる碇に小声で言う。
「うん」
むっ…なんかテキトーな感じ…
会ったときからいやに落ち着き払ってるし…変わったヤツね。
「うん、えーっと…日向くんは無理に決まってるわね…えっ…いやいや!!いいわよ!……あっ副指令……そういうわけでは!……はい、わかりました、ありがとうございます!」
静かに受話器を戻すと、鬼気迫る表情でこちらを振り向く。
「アスカちゃん、シンジくん、急ぐわよ!!」
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葛城さんを先頭に、アタシ達は廊下を突っ走る。
「ただ、案内を頼んだだけなのに、エラいもんが来ちまったわよ!」
はぁ?…何のこと言ってんのよ!?
「道案内をっ…よこしてくれっつったの!そしたらご丁寧に来てくれたわ!…ここのナンバー2がねっ!」
つまり…はぁ…二番目に偉いって…こと…………速いわよっ!!
「ほら二人ともっ…もっと急いで!………げっ!!」
急げって……ちょっ!!急に止まるな!!!!
いったーい……もう最悪…
「おいおい……大丈夫かね?」
ん?……誰かが手を差し出した。
「てて…ありがとうございます」
「ああ、気にするな。……葛城くん」
手を貸してくれたのは、おじいさん、というにはちょっと若い…初老ぐらいのおじさんだった。
「う~……あっ、副指令!葛城一尉ただいま…」
「そう構えんでいい、副指令としてここにいるわけではない」
あら?、てことは、この人がその…
「シンジくんに、惣流くんだな…よろしい、ついてきなさい」
暫く歩くとベルトコンベアーのある広い通路に出た。
「それにしても、わざわざ副指令がいらっしゃらなくても…」
「皆忙しいからな、この状況でケージまで案内できるのは私ぐらいなものだ」
「でも…こう言っては何ですが、作戦に支障はなかったのですか?」
「知っているだろう、全て赤木くんに任せられている」
「赤木博士…リツコですか…」
「君は彼女と同期だったな…まあ、構わんさ、戦争のことに関して私は素人だ、委員会が権力を与えたに過ぎん」
「そうだ、自己紹介がまだだったな」
思い出したようにそう言って、フクシレイはこちらを見る。
「私の名前は冬月コウゾウ、ここの副指令をやっている…まあ、今は気にしなくてもいいがな」
冬月さんは外見に見合った、落ち着いた声色でそう言った。
「君達がなぜここに呼ばれたのかは、まだ聞いていないのだろう……じきにわかることだ、すぐ着く」
何やら言い淀んで、冬月さんはもとのように向き直った。
ベルトコンベアーの終着点、進路の先に扉が見えた、いままで通ってきたものより頑丈そうなやつだ。
「私が開けよう」
そう言うと、冬月さんは扉の横にあるリーダーにカードを通す。
エアー音とともにゆっくりと扉が開く。
「真っ暗じゃない」
「心配いらない、入りたまえ」
冬月さんに促されて恐る恐る中に入る。
扉が閉まった。
「っ…!まぶしっ…!」
もう!どーなってんのよ!?この施設!!
突然ついた照明に目がくらむ。
「も~目がちかちかする~……きゃっ!!何!?顔!?」
目に飛び込んできたのは、真紅、巨大な顔…それに四つの目。
驚くアタシに冬月さんが説明する。
「人型汎用決戦兵器、人造人間エヴァンゲリオン、これはその弐号機だ」
これが人造人間?見た目はロボットにしか見えない。
「君の”お母さん”の遺作でもある」
え……ママ…の?
「あなたが乗るのよ」
は…?何言ってんの…?
声の主を探す。
「惣流さん、上だよ」
碇が睨むように正面を見上げる、視線を辿るとガラス張りの管制室があって、白衣を着た女が立っていた。
喋ったのはこの女…?
「ちょっと待って!!まさかこの子を乗せる気!?今着いたばかりなのよ!!」
「これは司令の命令です、黙りなさい、葛城一尉」
「っ…!しかしっ…」
「ちょ…ちょっと!何の話してんのよ」
「いま言った通りよ、あなたも見たでしょう、あの怪物、あれと戦うの、エヴァに乗ってね」
白衣の女が淡々と答える。
アタシが乗る?、これに?……乗り方なんて知らないし、そんなことは聞いてない。
ましてや、あのバケモノと戦えだなんて…
あまりにも非現実的で、思考も感情も追いつかない。
皆、まるで答えを催促するかのように黙ってアタシを見つめる。
ちょっと…待ってよ、ムリよ…そんな…
動悸がしてくる。
いつの間にか現れた作業員達も手を止めてこっちを見てる。
皆がアタシを待っている、アタシが”うん”と言うのを待っている…
不安が押し寄せてくる、押しつぶされそうになる。
碇が沈黙を破った。
「僕じゃ、だめなんですか?」
碇…!
「あなたにも乗ってもらうわ、でも今じゃない、弐号機とシンクロできるのは彼女だけなの」
女の答えを聞くと、再びこちらに向き直った。
「別に…僕は、乗らなくたっていいと思うんだ」
え……?
「だって、何も聞かされないままここに連れてこられて、それでいきなり、戦えって言われたって…」
「殺されるかもしれないんだよ?そうでなくたって勝てなければどうせ死ぬんだ」
「勝てなければ死ぬ…?」
どういうこと…?
「シンジくんが何故知ってるのかは知らないけど…事実よ、あの怪物がここネルフ本部に到達すれば、第二のセカンドインパクト、サードインパクトが発生して人類は滅びるわ」
サードインパクト……人類が滅びる……
「でも、人に言われてやるようなことじゃない…惣流さん、君が決めるんだ」
アタシが決める……アタシは…………でも…まだ死にたくない。
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「乗ります、アタシが乗ります」
人生初投稿です。拙い文章ですがよろしくお願いします。
セカンドインパクトの日付を訂正しました。ご指摘ありがとうございます。20/5/26